第8章 株式保有・役員兼任・合併・営業譲受け等
第1 概 説
独占禁止法第4章は,持株会社の禁止(第9条),大規模会社の株式保有
総額の制限(第9条の2),金融会社の株式保有の制限(第11条)並びに一
定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な
取引方法による場合の会社等の株式保有・役員兼任・合併・営業譲受け等の
禁止並びに届出又は報告義務(第10条及び13条から第16条まで)を規定して
いる。
第2 株式保有
1 | 大規模会社の株式保有 |
独占禁止法第9条の2第1項の規定に基づき,大規模会社(金融業以外 で資本金100億円以上又は純資産300億円以上の株式会社)は,自己の資本 金又は純資産のいずれか多い額を超えて国内の会社の株式を保有してはな らないこととされているが,大規模会社が,外国会社等と共同出資により 設立した会社の株式をあらかじめ当委員会の認可を受けて保有する場合 (同項第6号)又はやむを得ない事情により国内の会社の株式をあらかじ め当委員会の承認を受けて保有する場合(同項第9号)等におけるこれら の株式の保有については,同項の規定が適用されないこととされている。 本年度において,当委員会が同項第6号の規定により認可したもの及び 同項第9号の規定により承認したものはいずれもなかった。 なお,平成7年4月21日の閣議において,独占禁止法第9条の2の規定 により株式保有総額の制限を受ける大規模会社の規模要件である資本金額 及び純資産額を引き上げるため,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関 する法律施行令の改正が決定され,独占禁止法第9条の2の規定により株 式保有総額の制限を受ける大規模会社は,資本金100億円以上又は純資産 300億円以上の株式会社(金融業を除く。)から,資本金350億円以上又は 純資産1400億円以上の株式会社(金融業を除く。)となった(平成7年4 月26日公布,施行)。 |
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2 | 会社の株式保有 |
独占禁止法第10条第2項の規定に基づき,総資産が20億円を超える国内 の会社(金融業を営む会社を除く。)又は外国会社(金融業を営む会社を 除く。)は,国内の会社の株式を所有する場合には,毎事業年度終了後3 か月以内に当委員会に株式所有報告書を提出しなければならないこととさ れている。本年度において,当委員会に提出された会社の株式所有報告書 の件数は8,954件,うち外国会社によるものは610件であった。 当委員会は,株式所有報告書に基づいて,国内の会社の株式の取得若し くは所有により,一定の取引分野における競争を実質的に制限することと なるか,又は株式の取得若しくは所有が不公正な取引方法によるものであ るかについて調査を行っており,前者については,個々のケースごとに, ①株式所有による結合関係の有無,②当事会社の市場占拠率,③当該市場 の競争の状況,④当該市場に関連する市場の状況,⑤その他当該市場にお ける競争に関する諸事情等を総合的に判断し,処理している。 |
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3 | 金融会社の株式保有 |
独占禁止法第11条第1項の規定に基づき,金融会社は,国内の会社の株 式をその発行済株式総数の100分の5(保険業を営む会社にあっては,100 分の10)を超えて保有してはならないこととされているが,金融会社があ らかじめ当委員会の認可を受けた場合には,同項の規定が適用されないこ ととされている。 本年度において,当委員会が認可した金融会社の株式の保有件数は59件 であった。このうち,同条第1項ただし書の規定に基づくものは57件(銀 行に係るものは45件,保険会社に係るもの9件,外国会社に係るもの3 件)であり,同条第2項の規定に基づくものは2件(いずれも銀行に係る もの)であった。 |
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4 | 会社以外の者の株式保有 |
独占禁止法第14条第2項の規定に基づき,会社以外の者は,国内におい て相互に競争関係にある2以上の国内の会社の株式をそれぞれその発行済 株式総数の100分の10を超えて所有することとなる場合には,その所有の 日から30日以内に当委員会に株式所有報告書を提出しなければならないこ とされている。本年度において,当委員会に提出された報告書の件数は18 件であった。 |
第3 役員兼任
独占禁止法第13条第3項の規定に基づき,会社の役員又は従業員は,国内
において競争関係にある国内の会社の役員の地位を兼ねる場合において,い
ずれか一方の会社の総資産が20億円を超えるときはその兼ねることとなった
日から30日以内に当委員会に届け出なければならないこととされている。本
年度において,当委員会に提出された役員兼任届出件数は5,137件であっ
た。
当委員会は,役員兼任届出書に基づいて,役員兼任について第2の2の会
社の株式保有の場合とおおむね同様に調査し,処理している。
第4 合併・営業譲受け等
1 | 概 要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
独占禁止法第15条第2項又は第16条の規定に基づき,会社が合併,営業 の全部又は重要部分の譲受け等をしようとする場合には,あらかじめ当委 員会に届け出なければならいこととされている。本年度において,届出を 受理した件数は,合併2,000件,営業譲受け等1,255件,合計3,255件で あった。このうち,合併後の総資産が300億円以上となる会社の合併(当 事会社のいずれかの総資産が100億円未満のものを除く。)は47件,行為後 の譲受け等会社の総資産が300億円以上となる営業譲受け等(当事会社の いずれかの総資産が100億円未満のものを除く。)は51件である(付属資料 4-11表,4-12表)。 当委員会は,合併・営業譲受け等の届出があった場合には,当該行為に より一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか,又は 当該行為が不公正な取引方法によるものであるかについて調査を行ってお り,前者については,個々のケースごとに,①当事会社の市場占拠率,② 当該市場の競争の状況,③当該市場に関連する市場の状況,④その他当該 市場における競争に関する諸事情等を総合的に判断し,処理している。 また,合併等により直ちに一定の取引分野における競争を実質的に制限 することとはならない場合であっても,経済事情の変化等によっては競争 政策上の問題が生じ得ると考えられる事案については,当事会社に対し事 業活動の状況を定期的に報告すること等を求めるとともに,当事会社の動 向等を監視することとしている。 本年度に届出を受理したもののうち,独占禁止法第15条第1項(同法第 16条において準用する場合を含む。)の規定に違反するとして,同法第17 条の2第1項の規定に基づき排除措置を採ったものはなかった。 なお,卸売市場法第32条の規定に基づき,卸売業者がする合併又は営業 譲受けを農林水産大臣が認可するに当たり,当委員会に対して行う協議の 事例はなかった。 次に本年度の合併・営業譲受け等の届出を形態別に見ると,合併につい ては,1,990件が吸収合併,10件が新設合併であった。営業譲受け等につ いては,1,224件が独占禁止法第16条第1号(営業の譲受け),5件が同条 第2号(営業上の固定資産の譲受け),17件が同条第3号(営業の貸借), 9件が同条第4号(経営の受任)の規定に該当するものであった。なお, 同条第5号(営業の損益共通契約)の規定に該当するものはなかった。 |
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2 | 合併・営業譲受け等の動向 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
合併の届出受理件数は,昭和55年度から増加傾向を示し,平成3年度に おいて2,091件と過去最高となった後,平成4年度は2,002件,平成5年度 は1,917件と減少したが,本年度は2,000件と増加した(第1図)。 また,営業譲受け等の届出受理件数は,昭和40年度から増加傾向を示 し,平成3年度において1,266件と過去最高となった後,平成4年度は 1,079件と減少したが,平成5年度は1,153件となり,本年度は1,255件と なった(第2図)。 本年度に届出を受理した合併・営業談受け等を総資産額別,業種別,形 態別,様式別に見ると,次のとおりである(第1表,第2表,第3表。な お,合併・営業譲受け等についての詳細な統計については,付属資料4- 2以下参照。)
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