第4章 法運用の透明性の確保と独占禁止法違反行為の未然防止     

第1 概 説

 独占禁止法違反行為の未然防止を図るとともに,独占禁止法の運用を効果
的なものとするためには,独占禁止法の目的,規制内容及び運用の方針が国
内外における事業者や消費者に十分理解され,それが深められていくことが
不可欠である。このような観点から,当委員会は,各種の広報活動を行うと
ともに,事業者及び事業者団体の独占禁止法違反行為を具体的に明らかにし
た各種のガイドラインを公表し,それに基づいて,個々の具体的なケースに
ついて事業者等からの相談に応じている。
 平成7年度においては,平成7年10月に「事業者団体の活動に関する独占
禁止法上の指針」を改定・公表した。

第2 事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針の改定

 当委員会は,事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防止を図り,そ
の適正な活動に役立てるため,昭和54年8月に「事業者団体の活動に関する
独占禁止法上の指針」(事業者団体ガイドライン)を作成・公表した。その
後16年以上が経過し,社会経済状況の変動の中で事業者団体の活動内容も変
化しており,事業者団体に係る独占禁止法上の問題にも新しい形のものが出
てきていることなどから,事業者団体ガイドラインを全面的に改定すること
とし,平成7年10月30日に新しいガイドライン(以下「新ガイドライン」と
いう。)を公表した。

趣旨及び経緯
(1)  現在,我が国経済社会は,規制緩和の推進,市場開放等を通じた重要
な構造改革の時期にあり,その中で,独占禁止法の有効かつ適切な運用
により,内外事業者の公正かつ自由な競争を促進することが,ますます
重要となっている。
 事業者団体は,各産業分野において,引き続き重要な位置を占めてお
り,この時期にあって,事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防
止の一層の徹底を図り,その活動が競争促進の方向に合致したものとな
るよう努力することがより強く求められている。
(2)  規制緩和推進計画においても,競争政策の積極的展開の一環として,
「『事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針』(事業者団体ガイド
ライン)の改定案を早急に公表し,関係方面からの意見を踏まえて検討
の上,平成7年中に最終的な指針を策定する」ことが決定された。
(3)  以上を踏まえ当委員会は,平成7年4月3日に改定原案を作成・公表
し,広く内外の関係各方面に,原案に対する意見を求めた。
 原案に対しては,国内関係機関,外国政府等から多数の意見が寄せら
れた。当委員会は,これらの意見をつぶさに検討し,十分参酌した上,
更に明確で分かりやすいものにするとの観点から,原案の一部を修正
し,新ガイドラインを策定したものである。
主な改定点
 新ガイドラインにおいては,事業者団体の実際の活動に即して,主要な
活動類型ごとに独占禁止法の定めるところとの関係について,参考例を挙
げながら考え方を示しており,昭和54年に作成・公表した「事業者団体の
活動に関する独占禁止法上の指針」からの改定点のうち,特に重要な点と
しては次のものが挙げられる。
(1) 公的規制,行政等に関連する行為についての指針の提示
 規制緩和が進む中で事業者団体による競争制限行為を防止する必要が
高まっていること等にかんがみ,新ガイドラインでは,「公的規制,行
政等に関連する行為」を新設し,事業者団体の公的規制,行政等に関連
する行為に係る独占禁止法上の問題点について,主要な類型を挙げつつ
考え方を明らかにしている。
(2) 参入制限行為等についての指針の提示
 我が国市場の開放性の一層の向上を図ることが極めて重要な課題と
なっていること等にかんがみ,新ガイドラインでは,「参入制限行為
等」を新設し,事業者団体による参入制限行為等について,具体的な活
動例を挙げる等により独占禁止法上の問題点を明らかにしている。
(3) 自主規制等についての指針の提示
 事業者団体が環境の保全,安全の確保等の種々の目的に基づいて自主
規制等の活動を行う場合が多くなっているため,新ガイドラインでは,
「種類,品質,規格等に関する行為」等において,これらの自主規制等
の活動によって生じ得る独占禁止法上の問題点について,自主規制等の
多様性を踏まえつつ,基本的考え方を示すとともに,具体的な活動例を
挙げて指針を提示している。