第3 下請代金の支払状況等

 当委員会は,定期親事業者調査により報告された結果を基に,昭和33年度
以降,毎年,下請代金の支払状況等を取りまとめ,これを公表している。平
成7年度の親事業者調査の対象とした資本金3000万円以上の製造業者等のう
ち,10,155社(26,368事業所)について,その下請取引の概要及び下請代金
の支払状況をみると,次のとおりである。

1 下請取引の実態

(1) 下請取引をしている割合
下請取引をしている事業者の割合は73.0%(7,411社)であった。
 下請取引をしている事業者の割合を業種別にみると,「輸送用機械
器具製造業」(93.3%),「一般機械器具製造業」(93.0%),「精密機械
器具製造業」(92.8%)及び「電気機械器具製造業」(91.5%)にお
いて9割を超えているが,「木材・木製品製造業」(37.6%),「石油
製品・石炭製品製造業」(34.4%)及び「窯業・土石製品製造業」
(33.1%)などの業種では低い。
(2) 取引先下請事業者数
親事業者の1事業所当たり取引先下請事業者の数は29社である。
 1事業所当たりの取引先下請事業者の数を業種別にみると,最も多
いのは「精密機械器具製造業」(1事業所当たり62社の下請事業者と
取引している。),次いで「出版・印刷・同関連産業」(同47社),「輸
送用機械器具製造業」(同44社)であり,一般に下請取引をしている
企業の割合の高い機械関係の業種では取引先下請事業者数も多く,下
請取引をしている企業の割合の低い「飲料・飼料・たばこ製造業」
(同6社),「食料品製造業」(同8社),「窯業・土石製品製造業」(同
10社)などでは取引先下請事業者数も少ない傾向にある。

2 下請代金の支払状況等

(1) 支払期間
 納品締切日から支払日までの月数(以下「支払期間」という。)を
事業所ごとにみたものの平均は0.81か月(24.3日)となっており,総
体としてみると,納品締切日を月末とした場合,下請代金は翌月25日
までには支払われているということになる。
 支払期間を業種別にみると,繊維関係の業種において比較的短く,
機械関係の業種において比較的長いという傾向がある。
 支払期間が1.0か月を超えるもの(この場合は,納品されてからそ
の代金が支払われるまでの期間が60日を超えることがあるので,下請
法第4条第1項第2号の規定に違反するおそれがあるものである。)
は,186事業所(集計対象事業所数の2.0%)である。なお,これらの
ケースはすべて違反被疑事件として調査の対象としている。
(2) 現金支払割合
 下請代金のうち,現金で支払われる割合(以下「現金支払割合」と
いう。)を事業所ごとにみたものの平均は60.6%であり,総体として
みると,下請代金の約6割は現金で支払われているということにな
る。
 現金支払割合を業種別にみると,業種ごとに大きな差異があり,
「衣服・その他の繊維製品製造業」(89.2%),「食料品製造業」(79.0%),
「繊維工業」(76.1%),「飲料・飼料・たばこ製造業」(75.1%),「な
めし革・同製品・毛皮製造業」(73.6%),「木材・木製品製造業」
(72.4%)などが高いのに対し,「ゴム製品製造業」(48.8%),「精密機
械器具製造業」(45.4%),「一般機械器具製造業」(44.3%)などは低
い。
(3) 手形期間
 下請代金を手形により支払っている場合の手形期間(各事業所が交
付した手形のうち,最も期間が長い手形について集計)をみると,
手形期間が90日以下のものは15.9%,90日超120日以下のものは
68.0%,120日超のものは16.1%である。
 120日超の手形を交付している事業所の割合が高い主要な業種は,
「衣服・その他の繊維製品製造業」(54.1%),「繊維工業」(47.6%)
などである。

3 下請代金の支払状況の推移

 支払代金の支払状況の推移をみると次のとおりであり,長期的には昭和
40年代以降,徐々に改善されてきている。

(1) 支払期間は,昭和30年代は1.0か月(締切日から30日)を超えていた
が,昭和40年代に入ると大幅に改善され,昭和50年代以降は0.8か月
(締切日から24日)前後で推移している。
(2) 現金支払割合は,昭和40年代前半までは低下傾向にあったが,昭和40
年代後半から徐々に高くなっており,近年は60%程度が現金で支払われ
る状態が定着している。
(3) 120日を超える手形を交付している事業所の割合は,昭和40年代前半
までは増加傾向にあったが,昭和45年度の約60%をピークに,それ以降
は減少傾向にあり,昭和56年度以降は20%前後となっている。特に平成
2年度以降は20%を下回る状態が続いている。

第4 下請法の普及・啓発等

1 違反行為の未然防止及び再発防止の指導

 下請法の運用に当たっては,違反行為が生じた場合,これを迅速かつ効
果的に排除することはもとより必要であるが,違反行為を未然に防止する
ことも肝要である。この観点から,平成7年度においては,以下のとおり
各種の施策を実施し,違反行為の未然防止を図っている。

(1) 下請取引適正化推進月間
 毎年11月を「下請取引適正化推進月間」と定め,中小企業庁と共同し
て,新聞,雑誌,テレビ,ラジオ等で広報活動を行うほか,全国各地に
おいて下請法に関する講習会を開催する等下請法の普及・啓発に努めて
いる。
 平成7年度は,親事業者を対象に30都道府県(うち当委員会主催分16
都道府県〔16会場〕)において講習会を開催した(受講者は当委員会主
催分1,770名)。
 また,当委員会は,下請取引を適正化するためには,取引のもう一方
の当事者である下請事業者にも下請法の趣旨内容を周知徹底する必要が
あることにかんがみ,昭和60年度以降,下請事業者を対象とした下請法
講習会を実施しており,平成7年度において15都道府県(18会場)で開
催した(受講者数903名)。
(2) 下請法遵守の要請
 円高や企業の海外展開の動きもあり,中小企業の景況感の回復に向け
た動きは極めて緩慢なものとなっている。特に年末の金融繁忙期におい
ては下請中小企業の資金繰り等が悪化することが懸念されるため,平成
7年12月8日,公正取引委員会委員長・通商産業大臣連名で資本金1億
円以上の親事業者約8,500社に対し下請法の遵守を要請し,同時に関係
約430団体に対し,傘下事業者への下請法の周知徹底等を要請した。
(3) 広報,相談・指導業務
 購買・外注担当者らに対する社内研修の実施及び購買・外注担当者向
けの下請法に関する遵守マニュアルの作成を積極的に指導したほか,関
係団体等の研修会に講師の派遣,資料の提供等を行い,下請法の普及・
啓発を行った。

2 都道府県との相互協力体制

 下請法をきめ細かく,かつ,的確に運用して全国各地の下請事業者の利
益保護を図るためには,地域経済に密着した行政を行っている都道府県と
の協力が必要であることから,昭和60年4月から下請取引適正化に関する
都道府県との相互協力体制を発足させ,下請法の普及・啓発等の業務につ
いて協力を得ている。
 平成7年度においては,平成7年6月に都道府県下請企業行政担当課長
会議を開催した。

3 下請取引改善協力委員

 下請法の的確な運用に資するため,昭和40年度以降当委員会の業務に協
力する民間有識者に下請取引改善協力委員を委嘱している。平成7年度に
おける下請取引改善協力委員は101名である。
 平成7年度においては,平成7年6月に全国会議を,平成8年2〜3月
にブロック別会議をそれぞれ開催し,最近の下請取引の状況について意見
を交換した。また,円高や長引く景気低迷の影響による下請取引の状況等
の調査に関し協力を得た。

第5 下請取引に関する実態調査及びこれに基づく指導等

1 製造物責任法の施行に伴う下請取引への影響等についての調査

 平成7年7月の製造物責任法の施行に伴い,親事業者,下請事業者のい
かんを問わず製造の欠陥による賠償責任を負う可能性が増大することとな
るとともに,その対応策について関心が高まっているところ,下請事業者
に不当に負担が及ぼされる懸念もあることなどから,同法の施行に伴う下
請取引への影響等に関し,アンケート調査を実施した。
 この調査結果などを踏まえ,下請取引の適正化の観点から,親事業者及
び下請事業者が留意すべき主要な点について取りまとめを行い,これを平
成7年6月に公表するとともに,公正取引委員会事務局長・中小企業庁長
官連名で関係親事業者団体に対し,傘下の事業者への周知方を要請した。

2 円高等による下請取引の変化についての調査

 円高や長引く景気の低迷等の影響により,我が国の産業構造も変化して
いるといわれているところであるが,このような状況において,下請取引
にどのような変化が起こっているのか,また,その影響はどのようなもの
であるか等の事情を把握するため,平成7年1月以降,親事業者2,049社
及び下請事業者3,773社に対してアンケート調査を実施し,平成7年7月
に調査結果を公表した。
 調査の結果,今次の景気低迷や円高により,親事業者,下請事業者を問
わず,その経営環境は非常に厳しいとの回答が7割を超え,特に,下請事
業者では,2年前に比較して,発注量が相当減少したとした者が多く,一
部の親事業者から発注がなくなったとする回答が2割強あった。さらに,
下請事業者のほとんどが,下請単価について「ほとんどの納入先で低下」
又は「一部の納入先で低下」と回答している。
 また,経営環境の悪化に対する対策として,リストラ,合理化等が図ら
れており,具体的には,親事業者は,「設備の効率化,集約化」,「賃金引
下げ,残業抑制,雇用調整」等を挙げ,下請事業者は,「製造方法,作業
方法の見直し」,「営業力強化による受注確保」等を挙げている。合理化の
妨げとなる商慣行等として,多頻度小口配送,価格の事後調整,返品,リ
ベート,材料・部品購入先の指定などが存在するとし,輸入制限,運賃規
制等の政府規制についての指摘もあった。
 このような経済構造の変革の過程あるいは変革後の市場においては,下
請中小事業者に不当な不利益が一方的にもたらされるおそれもあることか
ら,当委員会では,取引の公正化,透明化という観点から,下請法上ある
いは独占禁止法上問題となる行為が生じることのないよう一層監視の強化
に努めるなど厳正に対処していくこととしている。

第6 建設業の下請取引における不公正な取引方法の規制

 建設業の下請取引において,元請負人等が下請負人に対し,請負代金の支
払遅延,不当な減額等の不公正な取引方法を用いていると認められるとき
は,建設業法第42条又は第42条の2の規定に基づき,建設大臣,都道府県知
事又は中小企業庁長官が当委員会に対し,独占禁止法の規定に従い適当な措
置を採ることを求めることができることとなっている。
 なお,平成7年度においては,措置請求はなかった。