第5 訴 訟

審決取消請求事件
 平成8年度当初において係属中の審決取消請求事件は,次の東京もち株
式会社(以下「東京もち」という。)による審決取消請求事件1件であっ
たが,年度中に新たに大日本印刷,トッパン・ムーア及び小林記録紙によ
る審決取消請求事件が3件提起されたため,平成8年度末現在,係属中の
審決取消請求事件は4件である。
(1) 東京もち株式会社による審決取消請求事件
事件の表示
最高裁判所平成8年(行ツ)第151号
審決取消請求事件
上告人(原告)東京もち
被上告人(被告)公正取引委員会
 審決年月日 平成6年 9月29日
 提訴年月日 平成6年10月19日
 判決年月日(東京高等裁判所)
         平成8年3月29日(請求棄却)
 上告年月日 平成8年4月12日
審決の概要
 本審決は,東京もちに対し,景品表示法第7条第2項の規定に基づ
いて,一般消費者の誤認を排除する措置等を命じたものであり,本審
決が認定した違反行為の概要は次のとおりである。
 東京もちは,同社が製造・販売している包装もちの包装袋に「純も
ち米100%使用」,「原材料名 水稲もち米」及び「本品は厳選したも
ち米が原料の『きねつき』による本格製法の生もちです。」と記載
し,あたかも,当該商品がもち米のみを原材料として製造されたもち
であるかのように表示していたが,当該商品は,原材料として,もち
とうもろこしでん粉が約15パーセントの割合で使用されていた。
事案の概要
 本件は,東京もちが,本審決には,(ア)聴聞手続等における違法,(イ)
裁量基準を定立しなかった違法,(ウ)主張・立証責任の分配を誤った違
法,(エ)実質的証拠の欠缺及び理由不備の各違法が存するとして,その
取消しを求めているものである。
一審(東京高等裁判所)判決の概要
 一審判決は,
(ア)  改正前の景品表示法第6条第2項の聴聞手続において,構成要件
事実のほかに原告に不利益に斟酌される事情を告知をすることは必
要ではないし,また,聴聞手続における瑕疵は,審決の違法を来す
ものではない,
(イ)  公正取引委員会は,同法第4条第l号違反事件について規制権限
を行使するに当たり,準則又は裁量基準をあらかじめ定立するか又
はこれを定立しないで個々の事案ごとに前記規制権限を行使するか
若しくはいかなる内容の措置を講ずるか等をその裁量権に基づいて
定めることができる,
(ウ)  本件審決に,裁量権の濫用,範囲逸脱を裏付ける事実についての
主張・立証責任の分配を誤った等の違法はない,
(エ)  本件審決において,実質的証拠の欠缺及び理由不備の各違法は存
しない,
と判示して,原告の請求を棄却した。
訴訟手続の経過
 本件については,本判決後,原告が上告し,平成8年度末現在,最
高裁判所に係属中である。
(2) 大日本印刷株式会社ほか2名による審決取消請求事件
事件の表示
東京高等裁判所平成8年(行ケ)第179号,第188号,第189号
各審決取消請求事件
原告 大日本印刷,トッパン・ムーア,小林記録紙
被告 公正取引委員会
 審決年月日 平成8年8月 6日
 提訴年月日 平成8年8月28日(第179号事件)
         平成8年9月 2日(第188号事件)
         平成8年9月 3日(第189号事件)
審決の概要
 本審決は,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,大日本
印刷に金4109万円,トッパン・ムーアに金9211万円,小林記録紙に金
3736万円の課徴金の納付を命じたものであり,本審決が認定した事実
は次のとおりである。
 大日本印刷,トッパン・ムーア及び小林記録紙は,日立情報と共同
して,本件シールについて,あらかじめ受注予定者を決定することに
より,不当な取引制限で商品の対価に係る違反行為をしていたもので
ある。
事案の概要
 本件は,原告らが,@原告らに対する刑事罰が確定し,かつ,国か
ら不当利得返還請求訴訟が提起されている状況の下での本件課徴金納
付命令は,憲法第39条等に違反する,A前記不当利得返還請求訴訟に
おける国の主張のとおり本件シール納入契約が無効であるとすると,
課徴金賦課の基礎となる「売上額」が存在しないことになり,課徴金
を賦課することはできない,B消費税相当額を課徴金算定の基礎とな
る売上額に算入することはできない,C訴外日立情報を課徴金納付命
令の対象から除外することはできない,D本件においては、独占禁止
法施行令第6条の「契約基準」ではなく同施行令第5条の「引渡基
準」により売上額を算定すべきであるとして,本件審決の取消しを求
めているものである。
訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所は,平成9年2月28日に第1回口
頭弁論を行い,同期日に弁論は終結した。なお,判決言渡し期日は,
追って指定するとされている。
独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)の規定に基づく損害賠償請求
事件
 平成8年度当初において係属中の独占禁止法第25条の規定に基づく損害
賠償請求事件は,次の岩留工業株式会社による請求事件1件であったが,
本件は平成8年12月に和解が成立した。また,平成8年度中に新たに提起
された事件はなかった。
(1) 事件の表示
東京高等裁判所平成5年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原 告 岩留工業株式会社
被 告 三蒲地区生コンクリート協同組合
 提訴年月日 平成5年2月17日
(2) 事案の概要
 当委員会は,平成3年12月2日,三蒲地区生コンクリート協同組合が
原告に対して行った砂利の購入妨害行為の排除を命じる審決を行った。
当該審決が確定した後,原告は,同協同組合に対して独占禁止法第25条
の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
(3) 訴訟手続の経過
 本件について,東京高等裁判所から平成5年3月 9日付けであった独
占禁止法第84条第1項の規定に基づく独占禁止法違反行為によって生じ
た損害額についての求意見に対し,当委員会は,平成5年10月1日に意
見書を同裁判所に提出した。
(4) 和解成立
 本件は,平成8年12月26日,和解(和解金3000万円)が成立した。
その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等
(1) 旧埼玉土曜会談合事件に係る住民訴訟
事件の表示
浦和地方裁判所平成4年(行ウ)第13号
損害賠償請求事件
原 告 岩木英二ほか60名
被 告 鹿島建設株式会社ほか65名(訴えの一部取下げがあったの
     で29名に減少した。)
 提訴年月日 平成4年8月14日
事案の概要
 当委員会は,埼玉県発注に係る土木一式工事の入札談合について,
平成4年6月3日に鹿島建設株式会社ほか65名に対し当該行為の排除
を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,埼玉県の住民が,当
該建設業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき埼玉
県に代位して損害賠償を求める住民訴訟を浦和地方裁判所に提起し
た。
訴訟手続の経過
 浦和地方裁判所は,本件に関し当委員会に対し平成5年5月31日に
文書送付嘱託を行い,当委員会は,同年8月27日,同裁判所に資料を
提供した。その後,同裁判所から,平成6年3月24日に再度文書送付
嘱託及び調査嘱託があり,同年8月12日回答を行った。
 本件訴訟は,平成8年度末現在,同裁判所に係属中である。
(2) 日本下水道事業団発注の電気設備工事に係る住民訴訟
事件の表示
(ア) 津地方裁判所平成7年(行ウ)第13号
損害賠償請求事件
原 告 松川栄太郎ほか2名
被 告 日本下水道事業団及び富士電機株式会社
 提訴年月日 平成7年12月21日
(イ) 横浜地方裁判所平成8年(行ウ)第10号ないし第15号
損害賠償請求事件
原 告 益子良一ほか51名
被 告 株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年2月19日
(ウ) 東京地方裁判所平成8年(行ウ)第36号
損害賠償請求事件
原 告 古宮杜司男ほか12名
被 告 株式会社日立製作所ほか8名
 提訴年月日 平成8年2月22日
(エ) 鳥取地方裁判所平成8年(行ウ)第1号
損害賠償請求事件
原 告 高橋敬幸
被 告 日本下水道事業団及び株式会社東芝
 提訴年月日 平成8年2月24日
(オ) 浦和地方裁判所平成8年(行ウ)第7号
損害賠償請求事件
原 告 竹下悟ほか4名
被 告 株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年4月9日
事案の概要
 当委員会は,日本下水道事業団発注の電気設備工事の入札談合につ
いて,平成7年7月12日に株式会社日立製作所ほか8名に対し,課徴
金納付命令を行った。前記原告住民らが,前記被告らに対して,地方
自治法第242条の2の規定に基づき各地方自治体に代位して損害賠償
を求める住民訴訟を前記各地方裁判所に提起した。
訴訟手続の経過
 前記各事件について,本年度中に,それぞれの裁判所から当委員会
に文書送付嘱託があり,当委員会は,当該裁判所に資料を提供した。
 前記各事件については,平成8年度末現在,前記各裁判所において
係属中である。
(3) デジタル計装制御システム工事の入札に係る住民訴訟
事件の表示
(ア) 東京地方裁判所平成8年(行ウ)第37号
損害賠償請求事件
原 告 木村トモほか6名
被 告 横河電機株式会社ほか5名
 提訴年月日 平成8年2月22日
(イ) 津地方裁判所平成8年(行ウ)第3号
損害賠償請求事件
原 告 大橋剛ほか3名
被 告 横河電機株式会社
 提訴年月日 平成8年3月13日
(ウ) 津地方裁判所平成8年(行ウ)第6号
損害賠償請求事件
原 告 岡田賢一ほか6名
被 告 富士電機株式会社
 提訴年月日 平成8年5月20日
事案の概要
 当委員会は,デジタル計装制御システム工事の入札談合について,
平成7年8月8日に横河電機株式会社ほか3名に対し,課徴金納付命
令を行った。前記原告住民らが,前記被告らに対して,地方自治法第
242条の2の規定に基づき各地方自治体に代位して損害賠償を求める
住民訴訟を前記各地方裁判所に提起した。
訴訟手続の経過
 前記各事件について,本年度中に,それぞれの裁判所から当委員会
に文書送付嘱託があり,当委員会は,当該裁判所に資料を提供した。
 前記各事件については,平成8年度末現在,前記各裁判所において
係属中である。
(4) 社会保険庁発注に係る支払通知書等貼付用シールの供給業者に対する
不当利得返還請求訴訟
事件の表示
東京地方裁判所平成5年(ワ)第24034号
不当利得返還請求事件
原 告 国
被 告 トッパン・ムーアほか2名
 提訴年月日 平成5年12月17日
事案の概要
 本件は,本件シールの入札談合について,国が,民法第704条の規
定に基づき,本件入札談合による落札価格と客観的価格(時価)との
差額は被告らの不当利得であるとして,その返還を求める訴訟を東京
地方裁判所に提起したものである。
 なお,当委員会は,本件入札談合について,トッパン・ムーア,大
日本印刷及び小林記録紙の3社に対し課徴金納付命令を行ったが,3
社は,これを不服としたので,審判手続を経て審決を行った。しか
し,3社は,審決の取消しの訴えを東京高等裁判所に提起し,平成8
年度末現在,同裁判所に係属中である。
訴訟手続の経過
 本件について,東京地方裁判所は,平成8年度中に口頭弁論を4回
行い,平成8年度末現在,同裁判所に係属中である。
(5) アメリカ合衆国を債権者とする資産の仮差押異議申立事件(横須賀米
軍基地談合事件関係訴訟)
事件の表示
東京高等裁判所平成6年(ネ)第1295号
仮差押異議申立事件
控訴人  米国政府
被控訴人 保坂建設株式会社
 提訴年月日 平成2年6月27日
 判決年月日(横浜地方裁判所川崎支部)
       平成6年3月17日(米国政府敗訴)
 控訴年月日 平成6年3月30日
事案の概要
 本件は,横須賀基地を中心とする在日海軍基地等における建設工事
等を競争入札により発注しているアメリカ合衆国の極東建設本部等
が,競争入札に参加する業者らのいわゆる談合行為により損害を被っ
たとして,談合行為が存在した契約のうち,当委員会が課徴金納付命
令の対象とした建設工事等に限定し,その損害賠償請求権を被保全権
利として仮差押申請を行い,仮差押決定を得ていたのに対し,債務者
が異議を申し立てたものである。なお,横浜地方裁判所川崎支部は,
本件に関し,当委員会に対し,平成3年7月31日,文書送付嘱託を行
い,当委員会は,同年10月23日,同裁判所に資料を提供した。
横浜地方裁判所川崎支部判決の概要
 本判決は,債務者らの行為は独占禁止法に違反する談合行為に当た
り,一応,民法上の共同不法行為に該当し,債務者は同行為と相当因
果関係にある債権者の被った損害を賠償すべき義務があるとした上
で,債権者の主張する損害額を認めるに足る疎明はないことから,本
件各仮差押申請は,少なくとも,その被保全権利の存在につき,いま
だこれを認めるに足りる疎明が不十分であるとして,本件各仮差押決
定をいずれも取り消し,債権者の本件各仮差押申請をいずれも却下し
た。
訴訟手続の経過
 本件について,東京高等裁判所は,平成8年度中に口頭弁論を3回
行い,平成8年度末現在,同裁判所に係属中である。
(6) 米軍厚木基地における入札談合事件損害賠償請求訴訟
事件の表示
東京地方裁判所平成6年(ワ)第18372号
損害賠償請求事件
原 告 米国政府
被 告 荒澤建設株式会社ほか52名
 提訴年月日 平成6年9月16日
事案の概要
 本件は,米国政府が米国海軍航空施設(厚木基地)における建設工
事等を競争入札により発注しているアメリカ合衆国の厚木駐在建設事
務官が,競争入札に参加する厚木建設部会会員73社の昭和59年から平
成2年にかけての談合行為により損害を被ったとして損害賠償を求め
る「通告書」を送付したが,これに応じなかった荒澤建設株式会社ほ
か52社に対して,民法第709条及び第719条の規定に基づき損害賠償請
求訴訟を東京地方裁判所に提起したものである。
訴訟手続の経過
 本件について,東京地方裁判所は,平成8年度中に口頭弁論を3回
行い,平成8年度末現在,同裁判所に係属中である。
その他の当委員会関係の訴訟
 平成8年度において係属中の当委員会が関係する訴訟は,いわゆる豊田
商法の被害者による国家賠償請求事件2件,株式会社一光社はか29名によ
る行政処分取消等請求事件(いわゆる消費税定価表示事件)1件の計3件
であり,いずれも平成8年度末現在係属中である。
(1) 豊田商法の被害者(867名)による国家賠償請求事件(大阪豊田商事
事件)
事件の表示
大阪高等裁判所平成5年(ネ)第2733号
国家賠償請求事件
控訴人 (原告) 田中俊男ほか866名
被控訴人(被告) 国
 提訴年月日   昭和63年 4月23日(一次)
         昭和63年11月 4日(二次)
 判決年月日(大阪地方裁判所)
         平成5年10月 6日(請求棄却)
 控訴年月日   平成5年10月19日
事案の概要
 本件は豊田商事株式会社(以下「豊田商事」という。)による
「金地金の売買」と「純金ファミリー契約」を組み合わせた,いわゆ
る豊田商法によって被害を受けたとする者らが,被告国の公務員であ
る当委員会,法務省,警察庁,大蔵省,経済企画庁の各担当者には豊
田商法による被害の発生を防止すべくその有する規制権限を行使すべ
き義務があり,また,通商産業省の担当者には同様に上記被害を防止
すべくその権限に属する行政指導をすべき義務があるのにこれを怠っ
たことにより被害を被ったとして,国家賠償法第1条第1項の規定に
基づいて,被告国に対し,損害の賠償を求めているものである。
 なお,当委員会に対する控訴人らの主張は、いわゆる豊田商法が独
占禁止法第19条(「不公正な取引方法」一般指定第8項のぎまん的顧
客誘引)及び景品表示法第4条第1号及び第2号(不当表示)の各規
定に該当することは明らかであり,当委員会はこれを認識し,調査す
ることが可能であったから,前記各法律に基づき,その権限を行使し
て,排除勧告,排除命令等の行政措置を行う作為義務を負っていたに
もかかわらず,漫然と豊田商法の継続,拡大を放置したため,控訴人
らに被害をもたらしたとするものである。
一審(大阪地方裁判所)判決の概要
(ア) 総論(規制権限行使義務の発生要件)
 本判決は,規制権限の不行使が違法となる要件として,次の5点
を挙げた。
 当該個別の国民の生命,身体,健康並びにこれに匹敵するほど
重要な財産等に具体的危険が切迫していたといえるか(危険の切
迫)
 当該公務員がその危険を知り又は容易に知り得る状態にあった
といえるか(予見可能性)
 当該公務員が当該規制権限の行使により容易に結果を回避し得
たといえるか(結果回避可能性)
 当該公務員が当該規制権限を行使しなければ結果発生を防止し
得なかったといえるか(補充性)
 国民が当該公務員による当該規制権限の行使を要請ないし期待
している状況にあったといえるか(国民の期待)
(イ) 当委員会の責任に関する裁判所の判断
 本判決は,豊田商事が独占禁止法第19条の「事業者」に当たるこ
とを肯定し,不作為の違法の要件である危険の切迫,予見可能性,
補充性(上記(ア)a,b及びd)が存在したことは認めたが,結果回
避可能性及び国民の期待(上記(ア)c及びe)についてはいずれも認
めず,また,当委員会が有する広範な裁量権をも総合考慮すれば,
規制権限の不行使が著しく不合理であったとはいえないとした。
訴訟手続の経過
 本件について,大阪高等裁判所は,平成8年度,口頭弁論を3回行
い,平成9年3月26日弁論終結した。なお,判決言渡し期日は追って
指定するとされている。
(2) 豊田商法の被害者(2名)による国家賠償請求事件
事件の表示
神戸地方裁判所昭和60年(ワ)第826号,第849号
国家賠償請求事件
原告 石田三奈子ほか1名
被告 国
 提訴年月日 昭和60年6月11日(第826号事件)
       昭和60年6月14日(第849号事件)
                 (第826号事件に併合)
事案の概要
 本件は,昭和56年から60年にかけて豊田商事が行った顧客との間で
純金の売買契約を締結し,同時に顧客が購入した純金を同社が預かっ
て運用することなどを内容とする純金ファミリー契約と称する契約を
締結して純金の現物の代わりに証券を交付するといういわゆる豊田商
法により,純金の売買代金及び手数料名下に金員を騙し取られたとし
て,顧客ら2名が,国に対し,国家賠償法第1条第1項の規定に基づ
き,損害の賠償を求めているものである。
 なお,当委員会に関する原告らの主張は,いわゆる豊田商法は独占
禁止法の不公正な取引方法及び景品表示法の不当表示に該当する行為
であり,両法に違反することは比較的客観的に解明できるのであるか
ら,これを認識していた当委員会は,その権限を行使して必要な措置
を採る法律上の義務があったにもかかわらず,何ら権限を行使するこ
となく消費者の利益を確保する義務を怠ったとするものである。
訴訟手続の経過
(ア)  本件は,いわゆる豊田商法の被害者2名が,国及び豊田商事に対
し損害賠償の支払いを求めたものであったが、 豊田商事について
は,昭和62年12月11日の第13回口頭弁論期日において訴えが取り下
げられている。
 なお,国に対する請求は,当初,国会議員,通商産業省,経済企
画庁,農林水産省,法務省,警察庁及び内閣のいわゆる豊田商法に
対する不作為の違法を主張していたが,昭和62年9月11日の第12回
口頭弁論期日において,当委員会についてもいわゆる豊田商法に対
する規制権限の不行使は違法であるとして,追加主張がされた。
(イ)  本件について,神戸地方裁判所は,口頭弁論期日を追って指定す
ることとしており,本件訴訟は,平成8年度末現在,同裁判所に係
属中である。
(3) 株式会社一光社ほか29名による行政処分の取消等請求上告事件(消費
税定価表示事件)
事件の表示
最高裁判所平成6年(行ツ)第136号
行政処分の取消等請求上告事件
上告人(原告・控訴人)  株式会社一光社ほか29名
被上告人(被告・被控訴人)公正取引委員会,国
 提訴年月日         平成元年7月20日
 判決年月日(東京地方裁判所)平成4年3月24日(請求棄却)
 判決年月日(東京高等裁判所)平成6年4月18日(控訴棄却)
 上告年月日         平成6年4月27日
事案の概要
 本件は,出版社等30名(提訴時は35名)が,再販売価格は消費税込
みの価格であるとする当委員会の平成元年2月22日付け「消費税導入
に伴う再販売価格維持制度の運用について」と題する公表文(以下
「本件公表文」という。)の公表や指導等によって,書籍の定価の表
示のし直しを強制されたことにより,カバーの刷り直し,新表示の
シール貼り等の出費を余儀なくされ,損害を被ったとして,当委員会
に対しては本件「行政処分」(公表文の公表)の取消しあるいは無効
確認を,国に対しては国家賠償を求めるものである。
一審(東京地方裁判所)判決の概要
(ア) 本件公表文の公表の取消し等を求める訴えについて
 本件公表文の公表は,抗告訴訟の対象となる行政処分には該当し
ないとして,その取消しあるいは無効確認を求める当委員会に対す
る本件各訴えを却下した。
(イ) 国家賠償請求の訴えについて
 独占禁止法第24条の2第1項にいう再販売価格は消費者が支払う
消費税込みの価格であるとする本件公表文中の当委員会の法解釈は
正しく,当委員会の事務当局者による指導あるいは本件公表文の公
表は,国家賠償法第1条第1項にいう国の公務員の違法な公権力の
行使には当たらないとして,国に対する請求を棄却した。
二審(東京高等裁判所)判決の概要
 二審判決は,原判決の理由に対して若干の付加,訂正を加えたほか
は,原判決を維持し,控訴人らの控訴を棄却した。
訴訟手続の経過
 本件については,二審判決後,控訴人ら(30名)が上告しており,
本件訴訟は,平成8年度末現在,最高裁判所に係属中である。