第7章 経済及び事業活動の実態調査

第1 概  説

 当委員会は,競争政策の運営に資する目的から,経済力集中の実態,主要
産業の実態等について調査を行っている。平成8年度においては,独占的状
態調査,一般用カラー写真フィルム及びカラー写真用印画紙の取引に関する
実態調査,住宅用資材・設備機器等の取引に関する実態調査,清涼飲料水,
食肉加工品及び婦人衣料品の流通・取引慣行に関する実態調査,外資系企業
からみた我が国事業者団体の活動に関する調査等を行った。

第2 独占的状態調査

 独占禁止法第8条の4は,独占的状態に対する措置について定めている
が,当委員会は,独占禁止法第2条第7項に規定する独占的状態の定義規定
のうち,事業分野に関する考え方についてガイドラインを公表しており,そ
の別表には,独占的状態の国内総供給価額要件及び市場占拠率要件(国内総
供給価額が1000億円を超え,かつ,上位1社の市場占拠率が50%を超え,又
は上位2社の市場占拠率の合計が75%を超えるもの)に該当すると認められ
る事業分野並びに今後の経済事情の変化によってはこれらの要件に該当する
こととなると認められる事業分野が掲げられている。
 当委員会は,市場構造要件について調査を実施し,国内総供給価額及び市
場占拠率に関する平成6年の調査結果を踏まえてガイドライン別表の改定を
行い,平成9年6月1日から実施した。
 この結果,新たに石こうボード製品製造業,建設用クレーン製造業及び電
気照明器具(一般用)製造業の3事業分野が別表に掲載され,家庭用合成洗
剤製造業,閉鎖型配電盤製造業,充電発電機製造業,搬送装置製造業及び医
療用X線装置製造業の5事業分野が別表から削除されることになった。改定
後の別表掲載事業分野数は25である(第1表)。
 これらの別表掲載業種については,公表資料及び通常業務で得られた資料
の整理・分析を行うとともに,特に集中度の高い業種については,生産,販
売,価格,製造原価,技術革新等の動向,分野別利益率等について,関係企
業から資料の収集,事情聴取等を行うことにより,独占禁止法第2条第7項
第2号(新規参入の困難性)及び第3号(価格の下方硬直性,過大な利益
率,過大な販売管理費の支出)の各要件に則し,企業の動向の監視に努め
た。

第1表 独占的状態に係わる監視対象事業分野

第3 企業間取引の実態調査

 当委員会は,競争政策の観点から,主要な産業を対象として,継続的取引
の要因,株式保有等と取引との関係,排他性・閉鎖性を有する取引慣行や内
外価格差の有無等を含む企業間取引を中心とした市場における競争の実態に
ついて,調査を行ってきている。
 平成8年度は,@住宅用資材・設備機器等,A一般用カラー写真フィルム
及びカラー写真用印画紙を対象として実態調査を行い,それぞれの業種にお
ける取引実態及び競争政策上の観点からの問題点を取りまとめ,前者につい
ては平成8年6月に,後者については平成9年7月にそれぞれ公表した。

住宅用資材・設備機器等の取引に関する実態調査
(1) 調査対象・方法
 今回,欧米に対して2倍程度の内外価格差が存在するといわれ,国民
生活における豊かさの実現のために当該内外価格差の解消が特に必要と
考えられる住宅関連分野を取り上げ,競争政策の観点から実態調査を実
施することとした。住宅関係団体等から内外価格差があるのではないか
との指摘がなされた住宅用資材及び設備機器のうち,輸入品があまり使
用されていない住宅用アルミサッシ(以下「アルミサッシ」という。),
タイル,システムキッチン及び衛生陶器(水洗便器をいう。以下同
じ。)を対象として,メーカー,流通業者,ユーザー(工事施工業者
等)間の取引を取り上げ,企業間取引など取引慣行の実態,輸入品の取
扱状況などについて調査を実施したものであり,アンケート調査及びヒ
アリング調査によって調査を行った。
 また,今回の調査においては,補足的な調査として,当委員会の消費
者モニターの住宅の購買行動及び住宅メーカーの価格表示状況等につい
て調査を行った。
(2) アルミサッシ(出荷額3441億円,ビル用を含めたアルミサッシの上位
3社集中度67.0%)
アルミサッシ製造業界の概要
 我が国の木造住宅に合ったアルミサッシは,昭和40年に商品化さ
れ,軽くてさびにくい上,気密性,遮音性に優れた建材であり,低価
格で,取付工事も容易であったこと等から,その後急速に普及した。
アルミサッシの生産量は,昭和40年代に急増したが,昭和54年の349
千トンをピークに減少し,最近では210〜250千トンで推移している。
我が国のアルミサッシメーカーの数は,昭和43年に28社を教えたが,
石油危機後減少しており,昭和60年末以降6社となっている。
アルミサッシの流通経路
 アルミサッシは,メーカーが半完成品の状態で出荷し,流通業者が
これを組み立て,ガラスを入れた上で,工務店等に販売するという形
で流通するが,このアルミサッシの組立やガラスのはめ込みを行う販
売店までの流通については,一般の建材問屋を経由するもの(特約店
ルート)と,メーカーから直接流通するもの又はメーカーが設立した
販売会社を経由するもの(直販ルート)とに大別できる。メーカーと
特約店の間には,人的・資本的なつながりがないのが一般的である。
 また,アルミサッシの品種が増えたことや,メーカーの物流体制が
整備されたことなどにより,特約店が在庫を持つことは例外的なもの
となり,商流では特約店を通す取引についても,物流はメーカーが販
売店に直接納入していることが多い。
メーカー間等の競争の実態
(ア) 特約店の取引先メーカーの状況
 アルミサッシ業界では,昭和40年代において,メーカーの新規参
入が盛んであり,メーカーでは,まず,販路を確保することを重視
したため,昭和40年代中頃には,流通業者は既に併売店的なものと
なっていたといわれており,現在においても,ほとんどの特約店が
併売店となっている。
(イ) 販売店の取引先メーカーの状況
 メーカーによりアルミサッシの組立方法に異なる点があるため,
一般的には,販売店では特定のメーカーの製品のみを取り扱おうと
する傾向があるが,どのメーカーの製品を使用するかは販売店の取
引先である工務店等が決定することから,販売店の中には,主たる
取扱メーカーがあるものの,複数のメーカーの製品を取り扱ってい
るものも多くなっている。
輸入品の取扱状況
 最近の輸入品のほとんどは,アルミニウムと木材で製造された複合
サッシにペアガラスを入れたものである。このような複合サッシにつ
いては,国内ではほとんど生産されておらず,生産する場合は,特注
品となることが多いので,輸入品より高くなり,内外価格差が生じる
といわれている。
競争政策上の評価
(ア) メーカーと特約店等の取引について
 メーカーと特約店等との取引については,継続的なものとなっ
ているものの,主要な取引先メーカーが変化することがあるな
ど,必ずしも固定的なものとはなっていない。
 アルミサッシ業界においては,昭和40年代における需要の急増
という背景もあり,後発メーカーが販売店に直接販売するなどに
より新たな流通経路を構築したことが,その後のメーカー間及び
流通業者間の競争を促進した一因となったものと考えられる。
 今回の調査では,競争政策上特に問題となる取引慣行等は認め
られなかった。 
 なお,先発メーカーの古い取引基本契約書の一部に,競合他社
製品を取り扱う場合や需要先が競合した場合にメーカーとの協議
を要請する条項が設定されている例がみられたことについては,
メーカーでは,今回の調査を契機として,既存の契約書を見直
し、当該条項が残っていた契約書については、これを削除してい
る。
(イ) メーカー間の競争関係について
 近年におけるアルミサッシの価格については,コストの変化に対
して下方硬直的な面がみられるようになっている。
 このような変化がもたらされた原因は必ずしも明確ではないが,
メーカー数の減少とともに,メーカー間の競争関係がいわゆる寡占
的なものへと変化しつつあると考えられるので,当委員会として
は,今後とも,アルミサッシ業界の動向を注視していくこととす
る。
(ウ) 内外価格差について
 アルミサッシについて内外価格差があるとされる場合,その主た
る理由は,国産品と海外製品で仕様等が異なることによるものであ
り,一般に内外価格差があるとされているアルミと木材の複合サッ
シについては,これを取り扱う住宅メーカーも増加している。
 したがって,このような複合サッシについて内外価格差があるこ
とをもって,アルミサッシの輸入を阻害したり,内外価格差を生じ
させるような取引慣行が存在するとはいえず,また,木製サッシや
複合サッシの場合を含め,今回の調査においては,そのような企業
間の取引慣行が存在するとは認められなかった。
(3) タイル(出荷額1902億円,上位3社集中度約60%)
タイル製造業界の概要
 我が国のタイルメーカーは,約160社で,その大部分が愛知県及び
岐阜県に集中している。一般に,内装タイルを主体に製造している
メーカーは,企業規模が大きいのに対し,外装タイル及びモザイクタ
イルについては,中小メーカーにより製造されるものが多くなってい
る。
 国内のタイルメーカーは,国内生産の4割以上を占める株式会社イ
ナックス(以下「イナックス」という。)など一部の大手メーカーを
除けば,そのほとんどが中小メーカーであり,中小メーカーの中に
は,タイル生産の安定化を目的に大手メーカーの受託生産を行ってい
るところが多い。
タイルの流通経路
タイルの流通経路は,おおむね下図のとおりである。
 タイル工事については,ゼネコンや住宅メーカーから施工業者が材
工一式で受注することが多く,その場合,タイルの直接のユーザーは
施工業者である。一般に流通業者は売れ筋のタイルのみを在庫に持
ち,施工業者へ多頻度小口配送を行っており,大量の発注があった場
合には,メーカーが物流センターから施工現場に配送することが多く
なっている。
メーカー間等の競争の実態
(ア) 流通業者の取引先メーカーの状況
 産地問屋は,中小メーカーから購入したタイルや,中小メーカー
に委託生産させたタイルを都市部の消費地問屋等へ販売している。
また,消費地問屋の多くは大手メーカーの特約店となっており,複
数のメーカーの特約店となっているところも多い。
(イ) メーカーの競争手段の変化
 従前のタイルの流通においては,タイルの種類もそれほど多くな
かったため,流通業者が在庫を持ち,施工業者に売り込むことに
よって使用するタイルが決定されていたが,近年においては,タイ
ルの種類が増加するにつれ,流通業者が在庫を持ち切れなくなると
ともに,メーカー側としても,流通業者のみに商品の売り込みや説
明を任せられず,自ら設計事務所,施主などのユーザー側へPRや
売り込みを行うようになっている。
輸入品の取扱状況
 タイルの輸入比率はあまり高くない(平成7年で3%弱)。その理
由としては,欧州製の内装タイルについては,需要が限定されるこ
と,また,台湾等から輸入される外装タイルについては,品質面で国
産品に劣る点があることなどが挙げられている。
競争政策上の評価
(ア) 大手メーカーと中小メーカーとの生産受委託について
 タイルの製造業界においては,住宅等に使用されるタイルにつ
き設計事務所,施主等が指定するようになったことから,販売す
るタイルの品ぞろえを充実し自己の競争力を強化するため,大手
メーカーを中心として,他のメーカーに委託生産を行う動きが増
加している。
 大手メーカーの中でもイナックスは,自社製品に対する需要の
増加に対して,主として中小メーカーに積極的に委託生産を行う
ことで対応しており,これにより我が国のタイル市場において高
い地位を占めるに至っている。
 しかし,イナックスと受託メーカーとの間の取引をみると,受
託メーカーの多くは,同社からの受託生産を行うことにより我が
国のタイル市場への参入が可能となったり,タイルの生産量を大
幅に増加させることが可能となったものであるので,同社の生産
委託行為が直ちに競争政策上問題であるとまではいえないもので
ある。
 今後,当委員会では,同社の生産委託行為によりタイル市場に
おける競争が制限されることのないよう,同社の動向を注視する
こととした。
 なお,イナックスでは,生産受委託契約において,生産委託の
対象タイルが受託メーカーの独自開発品であるなど,同社の技
術,ノウハウ等が使用されていない商品についても,他への販売
を制限する条項を設けているが,同社のような市場における地位
の高いメーカーがこのような条項を設けること自体,競争政策上
の問題があるほか,その運用いかんによっては独占禁止法上の問
題も生じかねないものである。
 今回の調査においては,上記条項が問題となるような運用はな
されていなかったが,当委員会が当該条項の問題点を指摘したと
ころ,同社では,受託メーカーの開発品など同社の技術,ノウハ
ウ等が使用されていない商品の他への販売は自由である旨を各受
託メーカーに通知するとともに,契約書の改定を行っている。
(イ) メーカーと特約店との取引について
 大手メーカーの中には,特約店契約の中で,競合品の取扱いを制
限する条項を設けていたものもあったが,メーカー側では当該条項
には実効性がないとしており,今回の調査を契機に自主的に当該条
項を削除することとしている。
(ウ) 輸入品の取引について
 タイルの輸入については,輸入品の価格メリットをいかすための
需要者側の関心は高くなりつつあるといわれており,平成7年には
輸入量は急増している。
 輸入タイルについては,デザイン,品質,価格等に種々のものが
あり,現地価格ベースで比較した場合に大きな内外価格差が存在す
るものもみられるが,流通業者の在庫経費などが必要となるため
ユーザー渡し価格ではほとんど差がないものも多くなっている。
 しかし,外装タイルなど,輸入品との競争により国産品の価格が
長期的に下落傾向となっているものもあり,今回の調査において
は,内外価格差の観点から特に問題となる点や輸入品の流通を阻害
するような取引慣行も認められなかった。
(4) システムキッチン(出荷額,推計約1兆円,上位3社集中度49.7%)
システムキッチン製造業界の概要
 システムキッチンが普及する以前は,セクショナルキッチン(流し
台,コンロ台等の色,デザインは統一されているものの,各パーツが
独立しているもの)が中心で,ステンレス流し台の専業メーカーが主
要な地位を占めていたが,システムキッチンの普及とともに,システ
ムキッチンの部材や機器等の関連から,家庭用電気機器,住宅設備・
資材,給湯機器,家具等多様な業種のメーカーがシステムキッチンの
市場へ参入しており,システムキッチンの主要メーカーは,現在25社
程度存在するといわれている。
システムキッチンの流通経路
 システムキッチンの流通経路は,一般的には,@代理店(卸),販
売店,工務店等を経て流通するもの(一般流通部門),Aメーカーか
ら直接住宅メーカー,ゼネコン,ディベロッパーへ流通するもの(直
需部門)とがある。それらの割合は,都市部でほぼ5割ずつ,地方で
は前者が約6割となっている。物流については,メーカーから直接工
務店,住宅メーカー等の建設現場へと配達されるものがほとんどであ
る。
メーカー間等の競争の実態
(ア) 流通業者の取引先メーカーの状況
 システムキッチンの各大手メーカーは,一般に全国で200店前後
の住宅関連資材・設備機器の一次間屋を代理店として取引を行って
おり,他方,代理店は,少ないところで3社,多いところで6社程
度のメーカーの製品を取り扱っている。また,代理店と経常的に取
引を行っている販売店は,全国で2〜3千店あり,これらの販売店
で専門店となっているものは皆無に近いといわれている。
(イ) システムキッチンに係る競争の実態
 システムキッチンは,住宅の新築,リフォーム等における建築資
材・設備の中で最終ユーザーである施主の意向が強く反映されるも
のといわれており,住宅にどのメーカーのシステムキッチンが選択
されるかについては,使用する製品の決定権も販売店や工務店から
最終ユーザーへと移ってきているといわれている。
輸入品の取扱状況等
(ア) 輸入品の特徴取扱状況
 システムキッチンの輸入については,主として欧米の高級品が輸
入されているが,その輸入数量は我が国出荷量の1%未満とみられ
ている。
(イ) 内外価格差の状況等
 欧米の一般家庭で使用されているシステムキッチンについて
は,価格的には国産品に比べて安いといわれているが,日本の市
場にあった製品とするためのコストが必要であり,国内で流通す
る段階では,国産の製品よりも高額なものになるといわれてい
る。
 また,我が国においては,国内メーカーは,高額な輸入システ
ムキッチンに対抗するためにデザイン等を日本人の好みに合うよ
うにした廉価なシステムキッチンを開発し,販売してきたことか
ら,輸入品は,使い勝手のよい国産品に取って替わられており,
例えば,国内メーカー品の普及品である100万円前後のシステム
キッチンに対応する輸入品の日本国内での価格は国産同等品の2
〜3倍の水準にあるといわれている。
競争政策上の評価
(ア) メーカーと代理店等の取引について
 システムキッチン業界においては,市場の急激な拡大に伴い,
多様な業種からメーカーの参入が相次いでおり,代理店や販売店
も複数のメーカーの製品を取り扱っている。
 今回の調査においては,システムキッチンの取引について競争
政策上特に問題となる点は認められなかった。
(イ) 輸入品の取引について
 輸入システムキッチンが,住宅設備機器として我が国の一般家庭
での使用が定着しているといい難いが,これは,主として,国内
メーカーが輸入システムキッチンと同等の機能を有し,かつ廉価な
システムキッチンを開発,販売し,我が国システムキッチン市場に
おける地位を獲得したためであり,輸入品の取引について,企業間
の取引慣行で競争政策上特に問題となるおそれのある点は認められ
なかった。
(5) 衛生陶器(出荷額774億円,上位3社集中度92.5%)
衛生陶器製造業界の概要
 我が国の衛生陶器メーカーは,東陶機器株式会社(以下「東陶機
器」という。),イナックスなど7社であり,平成4年における上位3
社累積生産集中度は92.5%となっており,特に東陶機器のシェアは
6〜7割と高いものになっている。
衛生陶器の流通経路
 衛生陶器の一般的な流通経路のほとんどは特約店経由になってい
る。メーカーは,量のまとまったものについては直接現場に納入する
ケースがあるが,基本的には特約店に納入し,特約店の物流機能に任
せている。特に,水道工事業者など小規模な施工業者向けに販売され
るものについては,その納期が短いため,特約店や販売店の物流機能
が重視されている。
メーカーと販売業者の取引
(ア)  メーカーと特約店の間の取引は継続的なものとなっており,特約
店が直接取引しているメーカーは,特定メーカー1社の場合がほと
んどであるが,他のメーカーの製品についても当該メーカーの特約
店を通じて取引を行っている。特に,東陶機器以外のメーカーの特
約店の中には,東陶機器の販売店として,同社の製品も販売してい
るところも多くなっている。
 メーカーと特約店の間には,人的・資本的な関係がないのが一般
的である。
 特約店と販売店の間においては,各販売店が取引する特約店はあ
る程度固定的なものとなっている。
(イ)  東陶機器では,特約店を対象に,特約店の営業所,倉庫などの配
送先ごとに,最低基準金額以上のストック注文(在庫のための早目
の注文)を毎月継続して行った場合に値引きをするストック注文値
引制度を設けている。この値引率は,発注金額に応じて5〜8%と
かなり高率なものとなっている。
 実際の注文額に占めるストック注文の割合は,衛生陶器の種類が
あまり多くなく,需要も戸建て住宅向けなど小口のものが多かった
ころはかなり高かったといわれているが,現在では,個別に仕入価
格の交渉が行われる大口物件の割合が大きくなったことなどから,
10%以下と低いものになっている。
 また,東陶機器では,販売店のうち一定の売上高を維持し,将来
とも同社製品を主力に営業を行うところを選んで,特約店に対する
ストック注文値引制度とほぼ同様のリベート制度を設けている。
輸入品の取扱状況
(ア)  海外メーカーの中には,我が国の生活様式・生活習慣や法的制約
を解決するために日本向けの製品を生産しているところもあるが,
その製品は,特別に製造ラインを設け,特別な検品をするなどコス
トが高くなり,国産品とあまり変わらない価格で販売されている。
(イ)  我が国に実際に輸入されている衛生陶器の輸入価格(CIF価
格)をみると,タイなど東南アジアから輸入されているものは国産
品(メーカー出荷価格)の半額以下となっているが,欧米から輸入
されているものは国産品より高くなっている。
(ウ)  輸入品については,一般的に,寸法の許容差が大きい,日本の団
地サイズには大きすぎる,給水圧力が小さいといった問題点の指摘
がなされている。また,我が国においては,衛生陶器の価格面や品
質面のほか,メンテナンスやデリバリー体制についても重視されて
おり,輸入品については,この面からの問題も指摘されている。
(エ)  メーカーは,海外の合弁会社などで製造したものを自社の生産能
力の補完部分として,あるいは用途を限定して直接輸入したり,欧
米のメーカーの製品を商社経由で仕入れているが,売上高に対する
輸入品の割合は小さい。
競争政策上の評価
(ア) メーカーと特約店等の取引について
 メーカーと特約店との取引が継続的なものとなっている要因につ
いては,@メーカーの数が少ないこと,A特約店では,同じような
製品を複数のメーカーから幅広く仕入れるよりも特定のメーカーに
絞った方が品ぞろえがよく,在庫も効率的であることなどが挙げら
れており,それ自体では問題となるものではない。
 また,特約店は,特約店となっているメーカーの製品を主力商品
として取り扱う傾向があるが,他のメーカーの製品も取り扱ってお
り,その取引を阻害するような事実は特段認められなかった。
(イ) メーカー間の競争関係について
 衛生陶器業界においては,東陶機器が非常に高いシェアを有して
おり,その理由としては,同社の製品の品質が優れていること,同
社の企業としての実績や知名度などから同社の製品を使えば安心で
あると一般に考えられていることなどのほか,同社製品の流通段階
での在庫量が他社製品に比べ各段に多いことが挙げられている。
 このように,東陶機器製品の流通段階での在庫量が多くなってい
ることについては,在庫スペースの関係から流通業者が複数のメー
カーの製品の在庫を行うことが難しいため,流通業者が在庫しよう
とする製品は商品回転率の速い東陶機器の製品が中心となっている
ことが挙げられるが,同社が特約店及び販売店を対象に設けている
ストック注文値引制度が流通段階における同社製品の在庫を確保す
る機能を有することとなる可能性があるものと考えられる。
 しかしながら,現在では,このストック注文値引制度の対象とな
るものの割合はかなり低くなっており,ストック注文以外でも取引
量により値引きが行われるため在庫を保有する場合でもストック注
文値引制度のメリットはないとする特約店等も存在するなど,現在
の同制度の内容や同社製品の流通在庫に及ぼす影響からみて,独占
禁止法上特に問題となるものではないと考えられる。
(ウ) 内外価格差について
 衛生陶器については,内外価格差があるものも存在するが,この
内外価格差は,それぞれの現地価格ベースのものであり,輸入費用
やメンテナンス費用などを考慮すると必ずしも問題のあるものでは
ないといわれており,また,今回の調査においては,輸入品の流通
を阻害するような企業間の取引慣行も存在するとは認められなかっ
た。
(6) 消費者モニターの商品選択行動,住宅メーカーの価格表示状況等から
みた注文住宅市場の特徴について
注文住宅を購入した消費者モニターの取引先選択行動
(ア) 建築依頼先選定に当たり重視した事項
 依頼先の住宅メーカーの規模や住宅の工法のいかんにかかわらず
「丈夫な基礎や構造材を使用していること」を重視して建築依頼先
や建築する住宅を決定したとする消費者モニターが多く,頑丈さや
耐久性といった住宅の構造面での品質を重視した商品選択が行われ
ている。
(イ) 建売住宅等を購入した消費者モニターが重視した事項との相違
 戸建て住宅を入手するに当たっては,土地を購入するなどして注
文住宅を建築する方法と建売住宅を購入する方法とがあるが,建売
住宅を購入した者が購入する住宅を決定するに当たり重視した事項
(住宅の立地条件,間取りや用意できる資金の制約以外のもの)と
しては,住宅価格を重視した者が最も多く,「丈夫な基礎や構造材
を使用していること」を重視した者は1割程度にすぎず,住宅の工
法についてもあまり重視されていない。
住宅価格についての消費者モニターの認識及び表示状況
(ア) 住宅価格についての消費者モニターの認識
 消費者モニター調査によれば,住宅メーカーから提示された見積
価格や実際の支払額と見積依頼を行う前の想定額との異同について
は,地元の工務店に依頼した者では異同はなかったとする者が多い
のに対し,大手住宅メーカーに依頼した者では,事前に考えていた
価格より高かったとして,購入しようとした住宅の価格について十
分な事前知識(相場感)がなかった者が多くなっている。
(イ) 住宅の価格表示をめぐる最近の動き
 最近においては,輸入住宅メーカーやフランチャイズ方式により
店舗展開を行っているメーカーを中心として,低価格であることを
セールスポイントとして営業する住宅メーカーも現れており,その
中には,実際に購入者が支払うこととなる価格を事前に把握できる
ような広告活動を行っているところもみられる。
戸建て住宅価格の状況
 戸建て住宅(住宅金融公庫融資個人住宅)の価格は,全体としては
毎年上昇しているが,平成6年には上昇幅が縮小したほか,プレハブ
住宅についてはわずかに価格が低下している。さらに,かつては高級
住宅として販売されていた輸入住宅の価格は低下傾向にある。
競争政策上の評価
(ア)  注文住宅の購入者が在来木造注文住宅の主たる供給者である小規
模な住宅メーカーと取引するに当たり,購入者側が知人からの紹介
等の当該住宅メーカーの事業者としての信頼性を重視しているとす
ると,価格による建築依頼先の選択が行われにくく,住宅メーカー
間において競争が活発に行われることもあまり期待できない。
 また,大手住宅メーカーと取引する場合においては,価格を重視
した取引先の選択を行うことも比較的容易となっているが,住宅
メーカーの広告活動が価格面以外の事項を中心として行われている
など,住宅購入者が各社の実際の販売価格を事前に把握することは
必ずしも容易ではなく,住宅メーカー間で価格による競争が活発に
行われているとまではいえない。
(イ)  住宅メーカー間の価格競争が活発に行われない場合には,住宅の
価格が高くなりがちであるだけでなく,住宅メーカーが資材や設備
機器を調達するに当たっても,できるだけ安く購入しようとする誘
因も働きにくくなる。
 また,我が国においては,注文住宅の購入者が住宅用資材や設備
機器を選択する際に,デザインや使いやすさなど価格以外の要素を
重視する傾向が強いので,この面からも住宅メーカーができるだけ
安い資材や設備機器を使用しようとする誘因が働きにくくなる可能
性がある。
(ウ)  住宅市場及び住宅用資材・設備機器市場における価格競争を促進
するためには,住宅の購入者が価格により取引先を選択し得る環境
を整備することが必要であり,中小住宅メーカーが積極的な広告活
動を行っていない現状の下では,まず,活発な広告活動を行ってい
る大手住宅メーカーが自己の供給する住宅について,その価格面に
ついても正確な情報を積極的に提供することが期待される。
一般用カラー写真フィルム及びカラー写真用印画紙の取引に関する実態
調査
(1) 調査の対象・方法
 一般用カラー写真フィルム(以下「カラーフィルム」という。)及び
カラー写真用印画紙(以下「カラー印画紙」という。)を対象として,
メーカー,販売会社・特約店等の一次卸業者,二次卸業者,小売業者,
系列・独立ラボ業者に対しヒアリング調査及び書面調査を,業界団体,
発注元である地方公共団体等からヒアリング調査を,それぞれ実施し
た。また,消費者の動向を調査するための消費者モニター調査等を実施
した。
(2) 調査結果の概要
カラーフイルム
(ア) 市場の構造
 我が国のカラーフィルム市場には,世界の主要4大メーカーの製
品が流通している。なお,製造面での新規参入は極めて困難である
が,OEM,PB(プライベートブランド)による流通面での参入
はみられる。
 各社のシェアは流通構造の変化等により,首位メーカーのシェア
が低下する一方,下位メーカー製品のシェアが伸びている。
 他方,一般消費者による特定のブランド選好が強く存在してお
り,このことが富士写真フイルム株式会社(以下「富士」とい
う。)のシェアの高さや各ブランド間のシェア変動を抑制する要因
の一つとなっていると考えられる。
(イ) 流通構造
我が国のカラーフィルムの流通経路は次のとおりである。
一次卸分野の状況
 富士は有力な卸売業者を特約店とし,各特約店は,事実上富士
の専売となっている。コニカ株式会社,イーストマン・コダック
社及びアグフア・ゲバルト社はそれぞれ,同社製品を専ら取り扱
う販売子会社を通じて販売しており,各販売子会社は,富士の特
約店と同様の機能を担っている。これら特約店や販売会社は,そ
の販売量の50%以上を量販店等の小売店に直接販売しており,こ
の分野では,それぞれ自ら構築した販売チャネルを有している。
二次卸分野の状況
 二次卸は,主として一次卸の取引先に比べフィルムの取扱量の
少ない小売業者に対して供給しており,全国に500社以上存在し
ているとみられる。
 二次卸と一次卸との取引は,通常,長期・継続的であるが,特
定のブランドに係る専売契約はなく,顧客の要望に応じて複数の
ブランドを複数の卸売業者から仕入れて取り扱っている者が多
い。また,最近では,二次卸の中でも,現金取引によりカラー
フィルムを安く大量に仕入れて販売する,いわゆる現金問屋の取
扱量が伸張している。
 メーカーにとって二次卸の活用が可能であれば,独自の流通網
を構築することに比べ比較的少ない参入コストで,全国に広範に
散在する小売業者への流通網が確保されることとなる。したがっ
て,競争政策の観点からは,二次卸が取り扱うフィルムについ
て,二次卸が市場の需給等に対応して自由に複数のブランドを選
択できる環境を確保することが重要であり,現状においても二次
卸の多くが複数のブランドを取り扱っていると認められる。
小売分野の状況
 カラーフィルムの小売は,写真専門店のほか,カメラ系量販
店,スーパー等多様な業態にわたっている。このうち,写真専門
店の販売割合は30%ないし40%であるが,カメラ系量販店等低価
格・大量販売を行う有力小売(我が国においてカラーフィルムの
取扱量が多い小売業者上位約150社をいう。)分野が形成されてお
り,そのシェアは30%程度で更に拡大しつつあるといわれてい
る。
 これら写真専門店の多くや有力小売分野の大部分は,複数のブ
ランドを現に取り扱い,又は取り扱える状況にある。
まとめ
 現状では,どのメーカーにとっても全国に広範に散在する小売
業者へ流通させる機会は確保されていると評価できる。
(ウ) 価格動向
 卸売価格の動向をみると,最近の3年間で一次卸からの出荷価格
が平均3割程度引き下げられている。これには,末端小売価格の低
下,リベート,販売促進費の出荷価格への織込みが影響している。
また,小売価格は,最近の3年間で平均12%低下している。消費者
モニター調査においても,低価格を標榜する量販店でパック品を中
心に購入する傾向が強まっていることがうかがわれ,このことが小
売価格の実質的な低下の大きな要因になっているものと思われる。
なお,カラーフィルムの内外価格差については,政府機関等の調査
によれば,むしろ我が国の方が安いとの結果が得られている。
カラー印画紙
(ア) 市場の構造
 我が国のカラー印画紙市場には,世界の主要5大メーカーの製品
がそろっている。なお,逆輸入品を含む輸入の増加もみられる。
 各社のシェアをみると,上位3社の集中度は依然として高い(70%
超)が,首位集中度は低下している。
 カラーフィルムとの関係でいわゆる純正処理を望むなど,印画紙
にもある程度のブランド力が存在しているが,ブランド名の表記の
ない印画紙を用いている独立系の基幹ラボのシェアが伸長するな
ど,消費者の選好は二極分化している状況にある。
(イ) 流通構造
 我が国のカラーDPE市場は,ミニラボ機の導入以降,ミニラボ
店及びそのチェーンの拡大や低価格プリント表示を行う独立系基幹
ラボの伸長が著しく,系列基幹ラボのシェアは3割を下回り,ミニ
ラボ店がDPE市場の6割を占めている。
 各印画紙メーカーは,それぞれ出資する販売子会社を一次卸とし
ている。系列基幹ラボは,系列メーカーの一次卸から直接仕入れて
いる。その他の独立系の基幹ラボやミニラボ店は,一次卸から直接
に,又は系列基幹ラボ若しくは二次卸を通じて仕入れている。ただ
し,系列基幹ラボによる自社内処理用を除いた市場に対しては,各
ブランドとも一次卸とメーカー系列基幹ラボが主として供給してお
り(全体としてみれば両者の比率はほぼ同じ。),二次卸を通じる比
率は低い。このほか,逆輸入印画紙を扱う卸売業者もある。
 系列基幹ラボは,おおむね特定メーカーの印画紙を長期・継続的
に使用している。また,独立系の基幹ラボやミニラボ店も,ミニラ
ボ機の調整の必要があること等から,ある程度の期間は継続して使
用する傾向がある。他方,一部の独立系の基幹ラボやミニラボ店は
使用する印画紙のブランドの変更を行うことがある。
 なお,一次卸や系列基幹ラボは,印画紙の販売先を確保するた
め,自社が取り扱う印画紙と同ブランドのミニラボ機の販売促進活
動を積極的に行うようになっている。
(ウ) 価格動向
 卸売価格についてみると,一次卸は平成5年から8年にかけて,
出荷価格を平均35%引き下げている。また,二次卸の販売価格も同
時期に平均26%低下しており,低価格の逆輸入品の流通,DPE価
格の低下の影響を受けて,ラボ業者が実際に購入している価格はか
なり低下している。
小  括
 上記のとおり,カラーフィルム及びカラー印画紙市場は,3社集中
度が高く,かつ,新規参入が極めて困難である。他方,流通構造につ
いてみると,フィルム販売・DPE取扱窓口の多様化,量販店等低価
格販売窓口の伸長,DPE料金の低下等小売分野の構造変化や現金問
屋の伸長等の流通経路の多様化が生じている。こうした流通構造の変
化がメーカー段階の構造にも変化をもたらし,例えば,首位企業の
シェアは低下傾向にある。また,カラーフィルム及びカラー印画紙の
出荷価格や末端価格は漸次低下する傾向にある。
 以上のとおり,カラー写真フィルム製造業及び写真用印画紙製造業
については,流通構造の変化に伴い市場構造や市場成果に変化がみら
れるものの,集中度の高さ等にかんがみ,引き続き,独占的状態の観
点からも同事業分野の動向を監視していく必要がある。
取引慣行に関する論点
 我が国のカラーフィルム及びカラー印画紙市場に関して,極めて有
力な事業者である富士の企業行動及びその他の取引慣行等について検
討し,競争政策の観点から主として次のような指摘を行った。
@ 富士と特約店との取引関係
 富士とその特約店との取引関係に関して,独占禁止法に違反する
事実があると疑うに足る情報には接しなかったが,特約店の営業活
動の自由度を高めるため,富士は積立保証金,販売奨励金等につい
て見直しを行うこと。
A フィルムメーカー間の技術提携
 フィルムメーカー間において共同研究開発や技術提携が行われる
場合には,それが競争制限的なものとなることのないようにするこ
と。
B ミニラボ機の販売方法
 各メーカーは,ミニラボ機を原価を著しく下回る価格で継続して
販売しないようにすること及びミニラボ機の販売の際にカラー印画
紙の購入義務付けを行わないようにすること。
C 同時プリント料金の表示方法
 関係事業者は,同時プリントにおける現像料金及びプリント料金
の表示の明確化(両料金の明記又は合計金額の表示,焼増しプリン
ト料金に関する表示)を図ること。
D 地方公共団体の入札方法
 地方公共団体によるカラーフィルム調達において,合理的理由が
ないのに特定ブランドの指定又は例示を行わないようにすること。