(1) |
オーストラリア |
|
オーストラリアの競争法である取引慣行法は,1995年に全面的な改正
が行われた。この改正により,連邦政府と州・準州政府の競争法の統一
が図られ,同国内のすべての事業者が同一の競争法規の下に服すること
となった。なお,当該改正に合わせて,同法の施行機関である取引慣行
委員会の競争・消費者委員会への改組,取引慣行裁判所の競争裁判所へ
の名称変更,諮問機関である国家競争評議会の設置,州政府企業(準州
を含む。)に対する適用などが盛り込まれたほか,取引慣行法の規制行
為については,適用除外規定の整理及び再販売価格維持の禁止対象とし
てサービスを追加することなどの改正が行われた。 |
(2) |
中 国 |
|
中国は,社会主義市場経済の導入に伴う施策として,1993年に不当競
争禁止法を制定した。同法は本格的な競争法とはいえないが,国家工商
行政管理局公正交易局を施行機関として,入札談合,不公正取引(不当
廉売,抱き合わせ販売,不当表示等),競争制限的行為(政府機関によ
る行為を含む。)等,11類型の行為を「不当競争行為」と定め,禁止し
ている。 |
(3) |
イ ン ド |
|
インドの競争法は,1969年独占及び制限的取引慣行法である。同法
は,資源の広範囲な分配と,富と権力が分散した経済体制の確立を基本
方針としている。同法は,独占的・制限的取引慣行,不公正な取引慣行
を規制しており,施行機関である独占・制限的慣行委員会は,調査を行
い,公共の利益に反する行為が存在する場合,独占的取引慣行について
は政府に対し改善を求める答申を提出し,制限的取引慣行と不公正な取
引慣行については当該行為の禁止を命じることができる。このほか,被
害者の申立てにより損害賠償を命じることができる。 |
(4) |
インドネシア |
|
インドネシアは,現在,計画経済体制から市場経済への移行が行われ
ており,その過程において,反競争的行為の禁止,合併規制等を含む本
格的な競争法の導入が検討されている。
なお,現在,インドネシアは,競争法を有していないが,経済政策と
して公正競争の創出,有害な経済活動の防止のための措置を採ってい
る。現行法上競争政策に関するものとしては,原産地に関する虚偽表示
等が刑法の処罰対象となるほか,計量法,産業法等による不公正な取引
慣行の規制が実施されている。 |
(5) |
マレイシア |
|
マレイシアは,1983年以降,国有企業の民営化と規制緩和を積極的に
推進しており,競争政策を担当する国内取引消費者問題省が,不公正な
取引方法,市場構造規制を内容とする競争法の法案の策定を準備中であ
る。現在は,体系的な競争法を有していないことから,個別法規によっ
て競争政策上の問題に対処している。例えば,産業調整法は,政府が特
定産業の競争に有害な影響を与えると考えられる行為を排除できると規
定しており,取引表示法は不当表示を禁止し,年割賦購入法は割賦購入
取引における不公正な取引を規制している。 |
(6) |
モンゴル |
|
モンゴルは,l992年に新憲法を採択し,市場経済への移行に伴う競争
促進政策の一環として,1993年に不正競争禁止法を制定・施行した。同
法は,市場原理の下での経済主体の競争を原則とし,国の経済活動に対
する監督権限を制限した。具体的には,市場支配的地位を有する経済主
体による濫用行為を禁止するとともに,同様に経済主体による競争制限
的協定(入札談合など)等を禁止している。施行機関である国家開発庁
は,違反被疑行為を調査し,必要な排除措置を命じることができる。 |
(7) |
ニュージーランド |
|
ニュージーランドの競争法である商業法は,1984年以降の国家による
管理経済から市場経済への転換において,中心的な役割を果たした。同
法は,1975年に制定されたが,1986年に全面的な改正が行われ,さらに
1996年にニュージーランド市場に影響を及ぼす外国における合併を規制
するため等の改正がされた。同法は,制限的取引慣行(カルテル,再販
売価格維持行為,市場支配的地位の濫用等),競争制限的な企業結合を
規制している。同法の所管官庁は商務委員会であり,同委員会は,違反
被疑事件を調査し,違反行為が認められた場合,裁判所に提訴する。裁
判所は,違反行為の差止めを命じることができるほか,法人に対して最
高500万ニュージーランド・ドル,個人に対しては最高50万ニュージー
ランド・ドルの過料を課すことができる。 |
(8) |
パキスタン |
|
パキスタンの競争法は,独占及び制限的取引慣行法である。同法は,
過度の経済力集中,不当な独占力,不当な制限的取引慣行を規制してい
る。施行機関である独占規制庁は,同法の施行に必要な調査・情報収集
を行い,公共の利益に反する行為が存在する場合には,当該行為の中
止,所有株式の売却など必要な措置を命じることができる。 |
(9) |
スリランカ |
|
スリランカの競争法は,1987年公正取引委員会法である。同法は,独
占状態,企業結合及び反競争的行為を規制している。施行機関である公
正取引委員会は,調査・情報収集を行い,公共の利益に反する行為が存
在する場合には,当該行為の差止め,契約の修正,所有株式の売却等必
要な措置を命じることができる。 |
(10) |
タ イ |
|
タイの競争法は,価格統制及び独占禁止法である。同法は,不公正な
価格統制を規制する消費者保護規定と,独占及び制限的取引慣行による
不当利得の排除を目的とした禁止規定等から構成されている。施行機関
は,価格統制及び独占禁止委員会であり,同委員会は,監視対象商品及
び監視対象事業の指定・公表とそれらに対する監視・監督等の権限を有
している。
なお,タイ政府は,1997年3月に,価格統制及び独占禁止法に代わる
カルテル規制,市場支配的地位の濫用規制,合併規制,新しい施行機関
の設置等を含む本格的な競争法の法案を議会に提出した。 |
(11) |
ベトナム |
|
ベトナムは競争法を有していないが,経済的停滞を打開するため,
1986年以降,市場経済の導入を図っており,国営企業の改革,民間企業
の活性化等の施策を実施している。ベトナム政府は,現在,競争法の導
入を検討している。 |