第5 訴   訟

審決取消請求訴訟
 平成9年度当初において係属中の審決取消請求事件は4件であったが,
このうち,大日本印刷株式会社(以下「大日本印刷」という。),トッパ
ン・フォームズ株式会社(以下「トッパン・フォームズ」という。)及び
小林記録紙株式会社(以下「小林記録紙」という。)による審決取消請求
事件3件については,東京高等裁判所で請求棄却の判決が下された後,上
告された。また,平成9年度中に,新たに,広島県石油商業組合広島市連
合会による審決取消請求事件並びにこれに関連して同連合会による審決執
行停止の申立て及び審決執行免除の申立てが提起されたが,審決執行停止
の申立てについては取り下げられ,審決執行免除の申立てについては東京
高等裁判所で決定が行われたため,平成9年度末現在,係属中の審決取消
請求事件は5件である。
(1) 東京もち株式会社による審決取消請求事件
事件の表示
最高裁判所平成8年(行ツ)第151号
審決取消請求事件
上告人(原告) 東京もち株式会社
被上告人(被告) 公正取引委員会
 審決年月日 平成6年9月29日
 提訴年月日 平成6年10月19日
 判決年月日 (東京高等裁判所)
平成8年3月29日(請求棄却)
 上告年月日 平成8年4月12日
審決の概要
 本審決は,東京もち株式会社(以下「東京もち」という。)に対
し,景品表示法第7条第2項の規定に基づいて,一般消費者の誤認を
排除する措置等を命じたものであり,本審決が認定した違反行為の概
要は次のとおりである。
 東京もちは,同社が製造・販売している包装もちの包装袋に「純も
ち米100%使用」,「原材料名 水稲もち米」及び「本品は厳選したも
ち米が原料の『きねつき』による本格製法の生もちです。」と記載
し,あたかも,当該商品がもち米のみを原材料として製造されたもち
であるかのように表示していたが,当該商品は,原材料として,もち
とうもろこしでん粉が約15パーセントの割合で使用されていた。
事案の概要
 本件は,東京もちが,本審決には,(ア)聴聞手続等における違法,(イ)
裁量基準を定立しなかった違法,(ウ)主張・立証責任の分配を誤った違
法,(エ)実質的証拠の欠缺及び理由不備の各違法が存するとして,その
取消しを求めているものである。
一審(東京高等裁判所)判決の概要
 一審判決は,
(ア)  改正前の景品表示法第6条第2項の聴聞手続において,構成要件
事実のほかに原告に不利益に斟酌される事情を告知をすることは必
要ではないし,また,聴聞手続における瑕疵は,審決の違法を来す
ものではない,
(イ)  公正取引委員会は,同法第4条第1号違反事件について規制権限
を行使するに当たり,準則又は裁量基準をあらかじめ定立するか又
はこれを定立しないで個々の事案ごとに前記規制権限を行使するか
若しくはいかなる内容の措置を講ずるか等をその裁量権に基づいて
定めることができる,
(ウ)  本件審決に,裁量権の濫用,範囲逸脱を裏付ける事実についての
主張・立証責任の分配を誤った等の違法はない,
(エ)  本件審決において,実質的証拠の欠缺及び理由不備の各違法は存
しない,
と判示して,原告の請求を棄却した。
訴訟手続の経過
 本件については,本判決後,原告が上告し,平成9年度末現在,最
高裁判所に係属中である。
(2) 大日本印刷株式会社ほか2名による審決取消請求事件
事件の表示
最高裁判所平成9年(行ツ)第214号,第215号,第216号
各審決取消請求事件
上告人(原告) 大日本印刷株式会社(第214号事件)
トッパン・フォームズ株式会社(第215号事
件)
(旧商号 トッパン・ムーア株式会社)
小林記録紙株式会社(第216号事件)
被上告人(被告) 公正取引委員会
審決年月日 平成8年8月6日
提訴年月日 平成8年8月28日(東京高裁平成8年(行ケ)第
179号事件)
平成8年9月2日(東京高裁平成8年(行ケ)第
188号事件)
平成8年9月3日(東京高裁平成8年(行ケ)第
189号事件)
判決年月日 (東京高等裁判所)
平成9年6月6日(請求棄却)
上告年月日 平成9年6月18日(最高裁平成9年(行ツ)第214
号事件)
平成9年6月19日(最高裁平成9年(行ツ)第215
号事件)
平成9年6月20日(最高裁平成9年(行ツ)第216
号事件)
審決の概要
 本審決は,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,大日本
印刷に4109万円の,トッパン・ムーアに9211万円の,小林記録紙に37
36万円の課徴金納付命令を行ったものであり,本審決が認定した事実
の概要は次のとおりである。
 大日本印刷,トッパン・ムーア,小林記録紙は,株式会社日立情報
システムズ(以下「日立情報」という。)と共同して,社会保険庁が
指名競争入札の方法により発注する国民年金,厚生年金及び船員保険
年金の各種通知書等貼付用シール(「以下本件シール」という。)につ
いて,あらかじめ受注予定者を決定することにより,不当な取引制限
で商品の対価に係る違反行為をしていたものである。
事案の概要
 本件は,原告らが,@原告らに対する刑事罰が確定し,かつ,国か
ら不当利得返還請求訴訟が提起されている状況の下での本件課徴金納
付命令は,憲法第39条等に違反する,A前記不当利得返還請求訴訟に
おける国の主張のとおり本件シール納入契約が無効であるとすると,
課徴金賦課の基礎となる「売上額」が存在しないことになり,課徴金
を賦課することはできない,B消費税相当額を課徴金算定の基礎とな
る売上額に算入することはできない,C訴外日立情報を課徴金納付命
令の対象から除外することはできない,D本件においては,独占禁止
法施行令(以下「施行令」という。)第6条の「契約基準」ではなく
施行令第5条の「引渡基準」 により売上額を算定すべきであるとし
て,本件審決の取消しを求めているものである。
判決主文
(ア) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(イ) 訴訟費用は原告らの負担とする。
判決(東京高等裁判所)の概要
(ア) 本件審決の合憲性
 課徴金制度は,一定のカルテル行為による不当な経済的利得をカ
ルテルに参加した事業者から剥奪することによって,社会的公正を
確保するとともに,違反行為の抑止を図り,カルテル禁止規定の実
効性を確保するために設けられたものであって,カルテル行為の反
社会性ないし反道徳性に着目し,これに対する制裁として,刑事訴
訟手続によって科せられる刑事罰とは,その趣旨・目的,性質等を
異にするものであるから,本件カルテル行為に関して,刑事罰とし
ての罰金を科すほか,課徴金の納付を命ずるとしても,それが二重
処罰を禁止する憲法第39条に違反するものではない。また,民法上
の不当利得の制度と課徴金制度とは,その趣旨・目的を異にするも
のであり,課徴金制度の仕組みに照らせば,本件課徴金賦課の段階
で,国の不当利得返還請求との間の調整を考慮した措置をとる余地
はない。
(イ) 課徴金賦課の基礎となる「売上額」の存否
 独占禁止法は,「売上額」の算定上の控除の要因を施行令第5条
第1号ないし第3号が掲げる控除,返品,割戻に限定し,かつ,こ
れらは,カルテル行為の実行期間中にされたものであることを要す
るとしており,本件シール納入契約が無効であるとしても,本件カ
ルテルの実行期間中に契約により定められた対価の額の控除も返品
もされていないから,「売上額」の算定に何らの影響も及ぼさな
い。
(ウ) 課微金算出基礎への消費税相当額の算入の可否
 一般に商品の販売の対価とは商品の販売価格を指すものというこ
とができるばかりでなく,右消費税相当額は直ちに国に消費税とし
て納付されるわけではなく,法定の納付期限が到来するまでは原告
らの許に留保されている仕組みであること,加えて,そもそも独占
禁止法自体が,課徴金によって剥奪しようとする事業者の不当な経
済的利得の把握の方法として,具体的なカルテル行為による経済的
利得そのものとは切り離し,一律かつ画一的に算定する売上額に一
定の比率を乗じて算出された金額を,観念的に,剥奪すべき事業者
の不当な経済的利得と擬制する立場を採っていること等の諸点を考
慮すると,課徴金の額を算出するに当たり,右消費税相当額を算入
したことの相当性については疑問を払拭しえないとはいえ,右の取
扱いが直ちに独占禁止法第7条の2,施行令第6条に違反するもの
とまでは未だ断定することはできない。
(エ) 日立情報の課徴金の納付命令の対象除外の適否
 本件審決の適否は,独占禁止法第7条の2,第54条の2等の関係
規定の要件に適合するものであるか否かによって決せられるもので
あって,本件カルテル行為に参加した一員である日立情報に課徴金
の納付を命じなかったことの適否によって左右されるものではな
い。
(オ) 施行令第6条の「契約基準」採用の適否
 施行令第6条が設けられた趣旨や,当時の事実関係からすれば,
被告が,施行令第6条を適用して本件における売上額を算定したと
しても違法なものと断ずることはできない。
訴訟手続の経過
 本件については,原告3社とも上告しており,平成9年度末現在,
最高裁判所に係属している。
(3) 広島県石油商業組合広島市連合会による審決取消請求事件
事件の表示
東京高等裁判所平成9年(行ケ)第151号
審決取消請求事件
原 告 広島県石油商業組合広島市連合会
被 告 公正取引委員会
 審決年月日 平成9年6月24日
 提訴年月日 平成9年6月26日
審決の概要
 本審決は,市連合会に対し,独占禁止法第54条第1項の規定に基づ
いて,普通揮発油の小売価格の引上げに関する決定等の破棄等の措置
を命じたものであり,本審決が認定した事実の概要は次のとおりであ
る。
 市連合会は,平成4年8月18日に開催した執行部会において,同年
9月1日から会員の普通揮発油の小売価格を1リットル当たり4円引
き上げること及びその価格引上げの周知徹底を図ることを決定し,市
連合会の会員は,大部分の給油所において,右決定に従い,平成4年
9月1日から一斉に普通揮発油の小売価格を1リットル当たり4円引
き上げている。
事案の概要
 本件は,市連合会が,本件審決には主要事実を立証する実質的な証
拠がないとして,審決の取消しを求めているものである。
訴訟手続の経過
 本件について,東京高等裁判所は,平成9年度に準備手続を2回
行った。なお,口頭弁論は,平成9年度内には行われなかった。
(4) 広島県石油商業組合広島市連合会による審決執行停止申立事件
 本件は,公正取引委員会が市連合会に対して行った前記平成6年
(判)第2号審決について,市連合会が行政事件訴訟法第25条に基づ
き,平成9年9月1日,当該審決が確定するまでその執行停止を求めた
ものであるが,同年12月19日取り下げられた。
(5) 広島県石油商業組合広島市連合会による審決執行免除申立事件
事件の表示
東京高等裁判所平成9年(行夕)第35号
審決執行免除申立事件
申立人  広島県石油商業組合広島市連合会
被申立人 公正取引委員会
 審決年月日 平成9年6月24日
 申立年月日 平成9年10月23日
 決定年月日 平成9年12月19日
事案の概要
 本件は,市連合会に対して行った平成6年(判)第2号審決につい
て,独占禁止法第62条第1項の規定に基づき,当該審決が確定するま
でその執行免除を求めたものである。
決定の要旨
 市連合会は,公正取引委員会が平成9年6月24日に行った審決(平
成6年(判)第2号)につき,保証として300万円を供託することに
より,当該審決が確定するまでその執行を免れることができる。
独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)に基づく損害賠償請求事件
 平成9年度当初において係属中の独占禁止法第25条の規定に基づく損害
賠償請求事件はなく,また,平成9年度中に新たに提起された事件もな
かった。
その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等
(1) 旧埼玉土曜会談合事件に係る住民訴訟
事件の表示
浦和地方裁判所平成4年(行ウ)第13号
損害賠償請求事件
原 告 岩木英二ほか60名
被 告 鹿島建設株式会社ほか65名(訴えの一部取下げがあったの
     で29名に減少した。)
 提訴年月日 平成4年8月14日
事案の概要
 当委員会は,埼玉県発注に係る土木一式工事の入札談合について,
平成4年6月 3日に鹿島建設株式会社ほか65名に対し当該行為の排除
を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,埼玉県の住民は,当
該建設業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,埼
玉県に代位して損害賠償を求める住民訴訟を浦和地方裁判所に提起し
た。
訴訟手続の経過
 浦和地方裁判所は,本件に関し当委員会に対し平成5年5月31日に
文書送付嘱託を行い,当委員会は,同年8月27日,同裁判所に資料を
提供した。その後,同裁判所から,平成6年3月24日に再度文書送付
嘱託及び調査嘱託があり,同年8月12日,回答を行った。
 本件訴訟は,平成9年度末現在,同裁判所に係属中である。
(2) 日本下水道事業団発注の電気設備工事に係る住民訴訟
事件の表示
(ア) 津地方裁判所平成7年(行ウ)第13号
損害賠償請求事件
原 告 松川栄太郎ほか2名
被 告 日本下水道事業団及び富士電機株式会社
 提訴年月日 平成7年12月21日
(イ) 横浜地方裁判所平成8年(行ウ)第10号ないし第15号
損害賠償請求事件
原 告 益子良一ほか51名
被 告 株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年2月19日
(ウ) 名古屋地方裁判所平成8年(行ウ)第9号
損害賠償請求事件
原 告 佐々木伸尚ほか1名
被 告 三菱電機株式会社ほか3名
 提訴年月日 平成8年2月21日
(エ) 東京地方裁判所平成8年(行ウ)第36号
損害賠償請求事件
原 告 古宮杜司男ほか12名
被 告 株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年2月22日
(オ) 鳥取地方裁判所平成8年(行ウ)第1号
損害賠償請求事件
原 告 高橋敬幸
被 告 日本下水道事業団及び株式会社東芝
 提訴年月日 平成8年2月24日
(カ) 浦和地方裁判所平成8年(行ウ)第7号
損害賠償請求事件
原 告 竹下悟ほか4名
被 告 株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年4月9日
事案の概要
 当委員会は,日本下水道事業団発注の電気設備工事の入札談合につ
いて,平成7年7月12日,株式会社日立製作所ほか8名に対し課徴金
納付命令を行った。前記原告住民らは,前記被告らに対し,地方自治
法第242条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を
求める住民訴訟を前記各地方裁判所に提起した。
訴訟手続の経過
 前記各事件について,平成8年度又は平成9年度中に,それぞれの
裁判所から当委員会に文書送付嘱託があり,当委員会は,当該裁判所
に資料を提供した。
 前記各事件については,平成9年度末現在,前記各裁判所において
係属中である。
(3) デジタル計装制御システム工事の入札に係る住民訴訟
事件の表示
(ア) 奈良地方裁判所平成8年(行ウ)第2号
損害賠償請求事件
原 告 川田賢司ほか3名
被 告 横河電機株式会社ほか4名
 提訴年月日 平成8年2月21日
(イ) 名古屋地方裁判所平成8年(行ウ)第8号
損害賠償請求事件
原 告 北村三郎ほか2名
被 告 富士電機株式会社ほか3名
 提訴年月日 平成8年2月21日
(ウ) 東京地方裁判所平成8年(行ウ)第37号
損害賠償請求事件
原 告 木村トモほか6名
被 告 横河電機株式会社ほか5名
 提訴年月日 平成8年2月22日
(エ) 津地方裁判所平成8年(行ウ)第3号
損害賠償請求事件
原 告 大橋剛ほか3名
被 告 横河電機株式会社
 提訴年月日 平成8年3月13日
(オ) 津地方裁判所平成8年(行ウ)第6号
損害賠償請求事件
原 告 岡田賢一ほか6名
被 告 富士電機株式会社
 提訴年月日 平成8年5月20日
事案の概要
 当委員会は,デジタル計装制御システム工事の入札談合について,
平成7年8月 8日,横河電機株式会社ほか3名に対し課徴金納付命令
を行った。前記原告住民らは,前記被告らに対し,地方自治法第242
条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求める住
民訴訟を前記各地方裁判所に提起した。
訴訟手続の経過
 前記各事件について,平成8年度又は平成9年度中に,それぞれの
裁判所から当委員会に文書送付嘱託があり,当委員会は,当該裁判所
に資料を提供した。また,平成9年度に調査嘱託があった裁判所に
は,回答を行った。
 前記各事件については,平成9年度末現在,前記各裁判所において
係属中である。
(4) 社会保険庁発注に係る支払通知書等貼付用シールの供給業者に対する
不当利得返還請求訴訟
事件の表示
東京地方裁判所平成5年(ワ)第24034号
不当利得返還請求事件
原 告 国
被 告 トッパン・フォームズ株式会社(旧商号 トッパン・ムー
     ア株式会社)ほか2名
 提訴年月日 平成5年12月17日
事案の概要
 本件は,本件シールの入札談合について,国が,民法第704条の規
定に基づき,本件入札談合による落札価格と客観的価格(時価)との
差額は被告らの不当利得であるとして,その返還を求める訴訟を東京
地方裁判所に提起したものである。
 なお,当委員会は,本件入札談合について,トッパン・ムーア(現
トッパン・フォームズ),大日本印刷及び小林記録紙の3社に対し課
徴金納付命令を行ったが,3社はこれを不服としたので,審判手続を
経て審決を行った。しかし,3社は,審決の取消しの訴えを東京高等
裁判所に提起し,平成9年6月 6日の判決後,上告し,平成9年度末
現在最高裁判所に係属中である。
訴訟手続の経過
 本件について,東京地方裁判所は,平成9年度中に口頭弁論を2回
行い,平成9年度末現在,同裁判所に係属中である。
(5) アメリカ合衆国を債権者とする資産の仮差押異議申立事件(横須賀米
軍基地談合事件関係訴訟)
事件の表示
東京高等裁判所平成6年(ネ)第1295号
仮差押異議申立事件
控訴人  米国政府
被控訴人 保坂建設株式会社
 提訴年月日 平成2年6月27日
 判決年月日(横浜地方裁判所川崎支部)
         平成6年3月17日(米国政府敗訴)
 控訴年月日 平成6年3月30日
事案の概要
 本件は,横須賀基地を中心とする在日海軍基地等における建設工事
等を競争入札により発注しているアメリカ合衆国の極東建設本部等
が,競争入札に参加する事業者らのいわゆる談合行為により損害を
被ったとして,談合行為が存在した契約のうち,当委員会が課徴金納
付命令の対象とした建設工事等に限定し,その損害賠償請求権を被保
全権利として仮差押申請を行い,仮差押決定を得ていたのに対し,債
務者が異議を申し立てたものである。なお,横浜地方裁判所川崎支部
は,本件に関し,当委員会に対し,平成3年7月31日,文書送付嘱託
を行い,当委員会は,同年10月23日,同裁判所に資料を提供した。
横浜地方裁判所川崎支部判決の概要
 本判決は,債務者らの行為は独占禁止法に違反する談合行為に当た
り,一応,民法上の共同不法行為に該当し,債務者は同行為と相当因
果関係にある債権者の被った損害を賠償すべき義務があるとした上
で,債権者の主張する損害額を認めるに足る疎明はないことから,本
件各仮差押申請は,少なくとも,その被保全権利の存在につき,いま
だこれを認めるに足りる疎明が不十分であるとして,本件各仮差押決
定をいずれも取り消し,債権者の本件各仮差押申請をいずれも却下し
た。
訴訟手続の経過
 本件について,平成9年度末現在,東京高等裁判所に係属中であ
る。
(6) 米軍厚木基地における入札談合事件損害賠償請求訴訟
事件の表示
東京地方裁判所平成6年(ワ)第18372号
損害賠償請求事件
原 告 米国政府
被 告 荒澤建設株式会社ほか52名(訴えの一部取下げがあったの
     で,35名に減少した。)
 提訴年月日 平成6年9月16日
事案の概要
 本件は,米国海軍航空施設(厚木基地)における建設工事等を競争
入札により発注しているアメリカ合衆国の厚木駐在建設事務官が,競
争入札に参加する厚木建設部会会員73名の昭和59年から平成2年にか
けての談合行為により損害を被ったとして損害賠償を求める「通告
書」を送付したが,これに応じなかった荒澤建設株式会社ほか52名に
対して,民法第709条及び第719条の規定に基づき損害賠償請求訴訟を
東京地方裁判所に提起したものである。
訴訟手続の経過
 本件について,東京地方裁判所は,平成9年度中に口頭弁論を5回
行い,平成9年度末現在,同裁判所に係属中である。
その他の当委員会関係の訴訟
 平成9年度当初において係属中の当委員会が関係する訴訟は,いわゆる
豊田商法の被害者による国家賠償請求事件2件(いわゆる大阪豊田商事事
件及び神戸豊田商事事件),株式会社一光社ほか29名による行政処分取消
等請求事件(いわゆる消費税定価表示事件)1件の計3件であり,このう
ち,本年度中に,大阪豊田商事事件については,大阪高等裁判所で控訴棄
却の判決が下された後,上告され,神戸豊田商事事件については訴えが取
り下げられた。なお,株式会社一光社ほか29名による行政処分取消等請求
事件(いわゆる消費税定価表示事件)については平成9年度末現在係属中
である。
(1) 豊田商法の被害者(365名)による国家賠償請求上告事件(大阪豊田
商事事件)
事件の表示
最高裁判所平成10年(オ)第1446号
国家賠償請求上告事件
上告人(原告・控訴人) 田中俊男ほか365名
被上告人(被告・被控訴人)
 提訴年月日(一審) 昭和63年4月23日(一次)
昭和63年11月4日(二次)
 判決年月日(一審) 大阪地方裁判所
平成5年10月6日(請求棄却)
 判決年月日(二審) 大阪高等裁判所
平成10年1月29日(控訴棄却)
 上告年月日 平成10年2月10日
 
事案の概要
 本件は,豊田商事株式会社(以下「豊田商事」という。)による
「金地金の売買」と「純金ファミリー契約」を組み合わせた,いわゆ
る豊田商法によって被害を受けたとする者らが,国が,被害の発生を
防止すべく,その有する規制権限を行使しなかったことを理由とし
て,国家賠償法第1条第1項に基づいて,国に対し,損害の賠償を求
めているものである。
 なお,当委員会に対する控訴人らの主張は,いわゆる豊田商法が独
占禁止法第19条(「不公正な取引方法」一般指定第8項のぎまん的顧
客誘引)及び景品表示法第4条第1号及び第2号(不当表示)の各規
定に該当することは明らかであり,当委員会はこれを認識し,調査す
ることが可能であったから,前記各法律に基づき,その権限を行使し
て,排除勧告,排除命令等の行政措置を行う作為義務を負っていたに
もかかわらず,漫然と豊田商法の継続,拡大を放置したため,控訴人
らに被害をもたらしたとするものである。
判決の概要(大阪地方裁判所)
 一審判決は,当委員会の責任について,豊田商事が独占禁止法第19
条の「事業者」に当たることを肯定し,不作為の違法の要件である危
険の切迫,予見可能性,補充性が存在したことは認めたが,国民が公
務員による規制権限の行使を期待している状況にあったこと及び公務
員が規制権限を行使すれば容易に結果を回避できたことについてはい
ずれも認めず,また,当委員会が有する広範な裁量権をも総合考慮す
れば,規制権限の不行使が著しく不合理であったとはいえないとし
た。
判決の概要(大阪高等裁判所)
(ア) 総論(規制権限行使義務の発生要件)
 二審判決は,公務員の権限不行使が著しく合理性を欠くか否か
は,行政権限の行使に裁量権を付与した法の趣旨,目的,当該法規
の定める裁量の幅の大小,規制ないし監督の相手方及び方法等を前
提として,@危険の切迫性,A危険の認識又は予見可能性,B結果
回避可能性といった事情や,C補充性,D国民の期待といった規制
権限の不行使が違法と判断されることについて積極的に作用する事
情のみならず,権限行使に支障となる事情の存否,従前の同種事例
において行政庁の採った措置との均衡,当該事案において行政権眼
を行使しない代わりに,その前後にわたり具体的に採られた行政措
置の有無とその内容といった,右判断に消極に作用する事情,更に
は,直接の加害者,被害者側の個別具体的な事情等諸般の事情を総
合考慮して決すべきであるとした。
(イ) 当委員会の責任に関する裁判所の判断
 二審判決は,豊田商事が独占禁止法第19条の「事業者」に当たる
こと,危険の切迫性,予見可能性,結果回避可能性,補充性及び国
民の期待が存在したことを認めた。しかし,公正取引委員会の担当
者が当時,得ていた資料や情報からは,豊田商事の営業実態が十分
把握できず,悪質業者と断定できるものではなかったから,担当者
が契約内容について拘泥した判断をしたのもやむを得ないというべ
きであり,また,仮に,担当者が金地金の現物の存在を前提とした
取引の安全性,有利性に関する表示について,ぎまん的顧客誘引な
いしは不当表示に該当する旨正しい判断をしたとしても,豊田商事
に契約高に見合う金地金の現物が存在していないことについては,
ある程度推測できたものの,客観的な裏付けがなく,担当者が同時
点はもとより,その後においても,同時点で取得した以上に,同事
実を認定できる的確な証拠を入手していたことを認めるに足りる証
拠も無いのであって,結局,公正取引委員会は,控訴人らを含む本
件訴訟の第一審原告らの最終損害発生の日である昭和60年6月14日
までの時点において,独占禁止法の排除措置命令や景品表示法の排
除命令を発することはできなかったと判示した。
 本件については,二審判決後,控訴人(365名)が上告しており,
本件訴訟は,平成9年度末現在,最高裁判所に係属中である。
(2) 豊田商法の被害者(2名)による国家賠償請求事件(神戸豊田商事事
件)
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神戸地方裁判所昭和60年(ワ)第826号,第849号
国家賠償請求事件
原告 右田三奈子ほか1名
被告 国
 提訴年月日 昭和60年6月11日(第826号事件)
          昭和60年6月14日(第849号事件)
                     (第849号事件は第826号事件に併合)
 取下げによる終結年月日 平成10年3月17日
事案の概要
 本件は,昭和56年から60年にかけて豊田商事が行った,顧客との間
で純金の売買契約を締結し,同時に顧客が購入した純金を同社が預
かって運用することなどを内容とする純金ファミリー契約と称する契
約を締結して純金の現物の代わりに証券を交付するといういわゆる豊
田商法により,純金の売買代金及び手数料名下に金員をだまし取られ
たとして,顧客ら2名が,国に対し,国家賠償法第1条第1項に基づ
き,損害の賠償を求めているものである。
 なお,当委員会に関する原告らの主張は,いわゆる豊田商法は独占
禁止法の不公正な取引方法及び景品表示法の不当表示に該当する行為
であり,両法に違反することは比較的客観的に解明できるのであるか
ら,これを認識していた当委員会は,その権限を行使して必要な措置
を採る法律上の義務があったにもかかわらず,何ら権限を行使するこ
となく消費者の利益を確保する義務を怠ったとするものである。
訴訟手続の経過
(ア)  本件は,いわゆる豊田商法の被害者2名が,国及び豊田商事に対
し損害賠償の支払を求めたものであり,国に対する請求は,当初,
国会議員,通商産業省,経済企画庁,農林水産省,法務省,警察庁
及び内閣のいわゆる豊田商法に対する不作為の違法を主張していた
が,昭和62年9月11日の第12回口頭弁論期日において,当委員会に
ついてもいわゆる豊田商法に対する規制権限の不行使は違法である
として,追加主張がされた。
(イ) 本件について,原告は,被告豊田商事に対しては,昭和62年12月
11日の第13回口頭弁論期日において訴えを取り下げ,被告国に対し
ても平成10年3月17日訴えを取り下げた。
(3) 株式会社一光社はか29名による行政処分の取消等請求上告事件(消費
税定価表示事件)
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最高裁判所平成6年(行ツ)第136号
行政処分の取消等請求上告事件
上告人(原告・控訴人)  株式会社一光社ほか29名
被上告人(被告・被控訴人)公正取引委員会,国
提訴年月日 平成元年7月20日
判決年月日(一審) 東京地方裁判所
平成4年3月24日(請求棄却)
判決年月日(二審) 東京高等裁判所
平成6年4月18日(控訴棄却)
上告年月日 平成6年4月27日
   
事案の概要
 本件は,出版社等30名(提訴時は35名)が,再販売価格は消費税込
みの価格であるとする当委員会の平成元年2月22日付け「消費税導入
に伴う再販売価格維持制度の運用について」と題する公表文(以下
「本件公表文」という。)の公表や指導等によって,書籍の定価の表
示のし直しを強制されたことにより,カバーの刷り直し,新表示の
シール貼り等の出費を余儀なくされ,損害を被ったとして,当委員会
に対しては本件「行政処分」(公表文の公表)の取消しあるいは無効
確認を,国に対しては国家賠償を求めるものである。
判決の概要(東京地方裁判所)
(ア) 本件公表文の公表の取消し等を求める訴えについて
 本件公表文の公表は,抗告訴訟の対象となる行政処分には該当し
ないとして,その取消しあるいは無効確認を求める当委員会に対す
る本件各訴えを却下した。
(イ) 国家賠償請求の訴えについて
 独占禁止法第24条の2第1項にいう再販売価格は消費者が支払う
消費税込みの価格であるとする本件公表文中の当委員会の法解釈は
正しく,当委員会の事務当局者による指導あるいは本件公表文の公
表は,国家賠償法第1条第1類にいう国の公務員の違法な公権力の
行使には当たらないとして,国に対する請求を棄却した。
判決の概要(東京高等裁判所)
 二審判決は,原判決の理由に対して若干の付加,訂正を加えたほか
は,原判決を維持し,控訴人らの控訴を棄却した。
訴訟手続の経過
 本件については,二審判決後,控訴人ら(30名)が上告しており,
本件訴訟は,平成9年度末現在,最高裁判所に係属中である。