第4 訴  訟

審決取消請求訴訟
 平成10年度当初において係属中の審決取消請求事件は5件であったが,
このうち,大日本印刷株式会社(以下「大日本印刷」という。),トッパ
ン・フォームズ株式会社(以下「トッパン・フォームズ」という。)及び
小林記録紙株式会社(以下「小林記録紙」という。)による審決取消請求
事件3件については,最高裁判所で上告棄却の判決が下された。また,平
成10年度中には,新たに,協業組合カンセイによる審決取消請求事件が提
起されたが,東京高等裁判所で請求棄却の判決が下された後,上告され
た。平成10年度末現在係属中の審決取消請求事件は3件である。
 なお,3件のうち,広島県石油商業組合広島市連合会による審決取消請
求訴訟は,訴えの取下げにより平成11年4月9日,終了した。
(1) 東京もち株式会社による審決取消請求事件
事件の表示
最高裁判所平成8年(行ツ)第151号
審決取消請求事件
上告人(原告) 東京もち株式会社
被上告人(被告) 公正取引委員会
 審決年月日 平成6年9月29日
 提訴年月日 平成6年10月19日
 判決年月日(東京高等裁判所)
平成8年3月29日(請求棄却)
 上告年月日 平成8年4月12日
 
審決の概要
 本番決は,東京もち株式会社(以下「東京もち」という。)に対
し,景品表示法第7条第2項に基づいて,一般消費者の誤認を排除す
る措置等を命じたものであり,本審決が認定した違反行為の概要は次
のとおりである。
 東京もちは,同社が製造・販売している包装もちの包装袋に「純も
ち米100%使用」,「原材料名 水稲もち米」及び「本品は厳選したも
ち米が原料の『きねつき』による本格製法の生もちです。」と記載
し,あたかも,当該商品がもち米のみを原材料として製造されたもち
であるかのように表示していたが,当該商品は,原材料として,もち
とうもろこしでん粉が約15パーセントの割合で使用されていた。
事案の概要
 本件は,東京もちが,本審決には,(ア)聴聞手続等における違法,(イ)
裁量基準を定立しなかった違法,(ウ)主張・立証責任の分配を誤った違缺
法,(エ)実質的証拠の欠缺及び理由不備の各違法が存するとして,その
取消しを求めているものである。
一審(東京高等裁判所)判決の概要
 一審判決は,
(ア)  景品表示法(平成5年改正前)第6条第2項の聴聞手続におい
て,構成要件事実のほかに原告に不利益に斟酌される事情を告知す
ることは必要でなく,また,聴聞手続における瑕疵は,審決の違法
を来すものではない
(イ)  公正取引委員会は,同法第4条第1号違反事件について規制権限
を行使するに当たり,準則又は裁量基準をあらかじめ定立するか又
はこれを定立しないで個々の事案ごとに前記規制権限を行使するか
若しくはいかなる内容の措置を講ずるか等をその裁量権に基づいて
定めることができる
(ウ)  本件審決に,裁量権の濫用,範囲逸脱を裏付ける事実についての
主張・立証責任の分配を誤った等の違法はない
(エ)  本件審決において,実質的証拠の欠缺及び理由不備の各違法は存
しない
と判示して,原告の請求を棄却した。
訴訟手続の経過
 本件については,一審判決後上告されており,平成10年度末現在,
最高裁判所に係属中である。
(2) 大日本印刷株式会社ほか2名による審決取消請求事件
事件の表示
最高裁判所平成9年(行ツ)第214号,第215号,第216号
各審決取消請求事件
上告人(原告) 大日本印刷株式会社(第214号)
トッパン・フォームズ株式会社(旧商号 トッ
パン・ムーア株式会社)(第215号)
小林記録紙株式会社(第216号)
被上告人(被告) 公正取引委員会
 審決年月日 平成8年8月6日
 提訴年月日 平成8年8月28日(東京高裁平成8年(行ケ)第
179号)
平成8年9月2日(同第188号)
平成8年9月3日(同第189号)
 判決年月日(東京高等裁判所)
平成9年6月6日(請求棄却)
 上告年月日 平成9年6月18日(最高裁平成9年(行ツ)第214
号)
平成9年6月19日(同第215号)
平成9年6月20日(同第216号)
 判決年月日(最高裁判所)
平成10年10月13日(上告棄却)
審決の概要
 本審決は,独占禁止法第54条の2第1項に基づいて,大日本印刷に
4109万円の,トッパン・ムーアに9211万円の,小林記録紙に3736万円
の課徴金の納付を命じたものであり,本審決が認定した事実の概要は
次のとおりである。
 大日本印刷,トッパン・ムーア,小林記録紙は,株式会社日立情報
システムズ(以下「日立情報」という。)と共同して,社会保険庁が
指名競争入札の方法により発注する国民年金,厚生年金及び船員保険
年金の各種通知書等貼付用シール(以下「本件シール」という。)に
ついて,あらかじめ受注予定者を決定することにより,不当な取引制
限で商品の対価に係る違反行為をしていたものである。
事案の概要
 本件は上告人らが,@上告人らに対する刑事罰が確定し,かつ,国
から不当利得返還請求訴訟が提起されている状況の下での本件課徴金
納付命令は,憲法第39条等に違反する,A消費税相当額を課徴金算定
の基礎となる売上額に算入することはできない等として,本件審決の
取消しを求めたものである。
一審(東京高等裁判所)判決の概要
 一審判決は,@本件カルテル行為に関して,刑事罰としての罰金を
科すほか,課徴金の納付を命ずるとしても,それが二重処罰を禁止す
る憲法第39条に違反するものでない,A課徴金の額を算出するに当た
り,消費税相当額を算入することが独占禁止法第7条の2,施行令第
6条に違反するとはいえない等と判示して,請求を棄却した。
判決(最高裁判所)主文(第214号,第215号,第216号共通)
(ア) 本件上告を棄却する。
(イ) 上告費用は上告人の負担とする。
判決(最高裁判所)の概要
(ア) 本件審決の合憲性
 本件カルテル行為について独占禁止法違反被告事件において上告
人に対する罰金刑が確定し,かつ,国から不当利得の返還を求める
民事訴訟が提起されている場合において,本件カルテル行為を理由
に上告人に対し独占禁止法第7条の2第1項の規定に基づき課徴金
の納付を命ずることが,憲法第39条,第29条,第31条に違反しない
ことは,最高裁昭和29年(オ)第236号同33年4月30日大法廷判決・民
集12巻6号938頁の趣旨に徴して明らかである。
(イ) 課徴金算出基礎への消費税相当額の算入の可否
 原審の適法に確定した事実関係の下においては,実行期間におい
て引き渡した商品の対価の額を合計する方法ではなく実行期間にお
いて締結した契約により定められた対価の額を合計する方法により
課徴金の計算の基礎となる売上額を算定し,かつ,その際に消費税
相当額を控除しなかったことが違法ではないとした原審の判断は,
正当として是認することができる。
(3) 協業組合カンセイによる審決取消請求事件
事件の表示
東京高等裁判所平成10年(行ケ)第102号
審決取消請求事件
原 告  協業組合カンセイ
被 告  公正取引委員会
 審決年月日  平成10年3月11日
 提訴年月日 平成10年4月8日
 判決年月日 (東京高等裁判所)
平成11年1月29日(請求棄却)
 上告年月日 平成11年2月13日
審決の概要
 本審決は,協業組合カンセイ(以下「カンセイ」という。)に対
し,独占禁止法第7条の2第1項の規定を適用して,課徴金の納付を
命じたものである。
事案の概要
 本件は,協業組合である原告に対する課徴金の算出に際して,売上
額に乗ずるべき一定率として独占禁止法第7条の2第1項(売上額の
6%)を用いたところ,原告が同法第7条の2第1項と第2項の適用
区分は,課徴金対象事業者の企業規模に基づくものであり,対象事業
者の存立形態(法形式)が「会社及び個人」かそれ以外かの区別に
よってされるべきでないから,企業規模において中小企業者に該当す
る原告には第2項(売上額の3%)を適用すべきであるとして,被告
が平成10年3月11日付けでした審決のうち,金967万円を超えて納付
を命じた部分の取消しを求めた事案である。
判決主文
(ア) 原告の請求を棄却する。
(イ) 訴訟費用は原告の負担とする。
判決の概要
 以下の点を総合勘案すると,独占禁止法第7条の2第2項各号の
「会社及び個人」に協業組合が含まれると解することはできない。
(ア) 平成3年の独占禁止法の改正の経緯及びその立法趣旨
 課徴金制度の平成3年独占禁止法改正の趣旨は,法違反行為に対
する抑止力の強化のための具体的方策の一環として,課徴金を引き
上げることにしたものであるが,規模の小さい企業については,カ
ルテルを実行した場合,その経済的利得も相対的に小さくなる傾向
があり,また,一般に企業の規模に応じて営業利益率にかなりの幅
があることを踏まえ,適切な措置を講ずることが妥当であることか
ら,中小企業については,原則の算定率より軽減した算定率(以下
「軽減率」ともいう。)を用いることとし,この軽減率が適用され
る中小事業者(中小企業)の範囲については,経済法及び競争政策
の体系の中で用いられている企業規模の区分と整合性のあるもので
あること,安定的な指標すなわち頻繁に変更されないこと,事業者
に理解しやすいものであることを踏まえ,中小企業関係法令におい
て一般に用いられている中小企業者の範囲によることとし,「会社
及び個人」に限定することとした。
(イ) 中小企業関係法令との整合性
 独占禁止法第7条の2第2項は,中小企業関係法令における中小
企業者の定義づけを踏まえて,中小企業関係法令の基本法である中
小企業基本法(昭和38年法律第154号。以下「基本法」という。)及
び中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年法律第185号。以下
「中団法」という。)における定義と同様,軽減率を適用する中小
企業者の範囲を「会社及び個人」に限定し,協業組合,企業組合等
を除外したものと解される。
(ウ) 会社と協業組合その他の組合との関連性
 協業組合については,一定の取引分野において,ある業種に属す
る事業者のすべて又はその大部分のものが一つの協業組合を設立
し,協業を図る場合には,いわゆる地域独占体を構成することが考
えられ,しかも,中団法第5条の5,6によると,定款で定めたと
きは中小企業者以外の者も総組合員の4分の1を限度として加入
が認められているから,大規模事業者が加入しているものの,組合
自体の出資の総額及び常時使用する従業員の数は,独占禁止法第7
条の2第2項各号に規定する中小事業者の要件を充たす協業組合が
存在し得ることになるが,そのような大規模事業者の加入した協業
組合の組織の実態としては,その企業規模等において大規模事業者
としての実質を備え,経済的な競争単位として大規模事業者に匹敵
する経済的活動を行うことが可能であり,したがって,これがカル
テルを実行すれば,国民経済に広くかつ重大な影響を与え,その経
済的利得も大きいという場合が生じることになる。以上のような中
小企業関係法令に基づく協同組合その他の組合の特質を考慮する
と,組織体自体の出資の額及び従業員数の基準のみによって,その
取引上の地位が劣るものとみることは必ずしも適当ではなく,課徴
金の算定基準を改正するに当たり,協同組合その他の組合について
は,原則の算定率を適用し,軽減率を適用すべき中小企業者の範囲
から除外することに合理性があるものというべきである。
(エ) 条文の文理解釈
 文理解釈からしても,独占禁止法第7条の2第2項各号の「会
社」とは合名会社,合資会社及び株式会社並びに有限会社を指す
ものといわざるを得ないのであり,これを「事業者」と同視してこ
れに協業組合その他の組合が含まれるものと解することはできな
い。
訴訟手続の経過
 本件については,一審判決後上告されており,平成10年度末現在,
最高裁判所に係属中である。
(4) 広島県石油商業組合広島市連合会による審決取消請求事件
事件の表示
東京高等裁判所平成9年(行ケ)第151号
審決取消請求事件
原 告 広島県石油商業組合広島市連合会
被 告 公正取引委員会
 審決年月日  平成9年6月24日
 提訴年月日  平成9年6月26日
 取下げによる終了年月日 平成11年4月9日
審決の概要
 本審決は,広島県石油商業組合広島市連合会(以下「市連合会」と
いう。)に対し,独占禁止法第54条第1項の規定に基づいて,普通揮
発油の小売価格の引上げに関する決定等の破棄等の措置を命じたもの
であり,本審決が認定した事実の概要は次のとおりである。
 市連合会は,平成4年8月18日に開催した執行部会において,同年
9月1日から会員の普通揮発油の小売価格を1リットル当たり4円引
き上げること及びその価格引上げの周知徹底を図ることを決定し,市
連合会の会員は,大部分の給油所において,右決定に従い,平成4年
9月1日から一斉に普通揮発油の小売価格を1リットル当たり4円引
き上げている。
事案の概要
 本件は,市連合会が,本件審決には主要事実を立証する実質的な証
拠がないとして,審決の取消しを求めたものである。
訴訟手続の経過
 本件については,平成10年9月25日に第1回口頭弁論が開かれ,同
日弁論が終結した後,平成11年4月7日市連合会が訴えを取り下げ,
同月9日当委員会がこれに同意したため,終了した。これにより,平
成9年6月24日付け審決(平成6年(判)第2号)が確定した。
(参考) 広島県石油商業組合広島市連合会に係る保証金没取申立事件
事件の表示
東京高等裁判所平成11年(行夕)第16号
保証金没取申立事件
申立人 公正取引委員会
相手方 広島県石油商業組合広島市連合会
 申立年月日  平成11年4月14日
 決定年月日 平成11年5月11日
事案の概要
 本件は,東京高裁に係属していた審決取消請求訴訟(東京高裁平成
9年(行ケ)第151号)が,平成11年4月9日,訴えの取下げにより
終了し,審決(平成6年(判)第2号)が確定したため,相手方が,
審決が確定するまで執行を免れるため供託していた保証金300万円に
ついて,当委員会がその全部を没取する旨の申立てを行ったものであ
る。
決定の主文
 申立人が平成9年6月24日にした審決(平成6年(判)第2号)に
ついて,相手方がその執行を免れるために供託した保証金(300万
円)のうち金150万円を没取する。
決定の概要
 申立人の平成9年6月24日付け審決(平成6年(判)第2号)に対
し,相手方は,同月26日東京高等裁判所に審決の取消しを求める訴え
(東京高裁平成9年(行ケ)第151号)を提起するとともに,同年10
月23日,独占禁止法第62条第1項に基づいて前記審決の執行免除の申
立てをし,同年12月19日,保証として300万円を供託することによ
り,前記審決が確定するまでその執行を免れることができる旨の決定
を得て,平成10年1月26日,300万円を供託したこと,前記審決取消
請求事件は,同年9月25日に開かれた第1回口頭弁論期日において弁
論が終結されたが,相手方は,平成11年4月7日に前記訴えを取り下
げ,同月9日に申立人がこれに同意したことにより審決が確定するに
至ったこと,以上の事実は記録上明らかである。そして,本件事案の
内容,前記訴えの取下げに至る経緯等を斟酌すると,同法第63条によ
り,相手方の供託した保証金のうち150万円を没取するのが相当であ
る。
独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)に基づく損害賠償請求事件
 本年度においては,独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求事件とし
て,次の訴訟が提起された。この訴訟以外に係属中の独占禁止法第25条の
規定に基づく損害賠償請求事件はない。
(1) 事件の表示
東京高等裁判所平成10年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原 告  東京都
被 告  愛知時計電機株式会社ほか24名
 提訴年月日  平成10年4月14日
(2) 事案の概要
 当委員会は,平成9年4月18日,株式会社金門製作所ほか24名に対し
て,共同して,東京都発注の特定水道メーターについて,受注予定者を
決定し,受注予定者が受注できるようにしていた行為が独占禁止法第3
条の規定に違反するとして,当該行為の排除等を命ずる審決を行った。
当該審決確定後,発注者である東京都は,被番人である愛知時計電機株
式会社ほか24名に対して,独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)に
基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した(平成10年4月14
日提起)。
(3) 訴訟手続の経緯
 本件は,本年度中に口頭弁論が3回行われ,平成11年2月24日,東京
高等裁判所から当委員会に対し,独占禁止法第84条第1項に基づき,独
占禁止法違反行為によって生じた損害額についての求意見書が送達され
た。なお,本件は,平成10年度末現在,同裁判所に係属中である。
その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等
(1) 旧埼玉土曜会談合事件に係る住民訴訟
事件の表示
浦和地方裁判所平成4年(行ウ)第13号
損害賠償請求事件
原 告  岩木英二ほか60名
被 告  鹿島建設株式会社ほか65名(訴えの一部取下げがあったの
で29名に減少した。)
 提訴年月日  平成4年8月14日
事案の概要
 当委員会は,埼玉県発注に係る土木一式工事の入札談合について,
平成4年6月3日に鹿島建設株式会社ほか65名に対し当該行為の排除
を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,埼玉県の住民は,当
該建設業者等に対して,地方自治法(昭和32年法律第67号)第242条
の2の規定に基づき,埼玉県に代位して損害賠償を求める住民訴訟を
浦和地方裁判所に提起した。
訴訟手続の経過
 浦和地方裁判所は,本件に関し当委員会に対し平成5年5月31日に
文書送付嘱託を行い,当委員会は,同年8月27日,同裁判所に資料を
提供した。その後,同裁判所から,平成6年3月24日に再度文書送付
嘱託及び調査嘱託があり,一同年8月12日,回答を行った。
 本件訴訟は,平成10年度末現在,同裁判所に係属中である。
(2) 日本下水道事業団発注の電気設備工事に係る住民訴訟
事件の表示
(ア) 津地方裁判所平成7年(行ウ)第13号
損害賠償請求事件
原 告  松川栄太郎ほか2名
被 告  日本下水道事業団及び富士電機株式会社
 提訴年月日  平成7年12月21日
(イ) 横浜地方裁判所平成8年(行ウ)第10号ないし第15号
損害賠償請求事件
原 告  益子良一ほか51名
被 告  株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日  平成8年2月19日
(ウ) 名古屋地方裁判所平成8年(行ウ)第9号
損害賠償請求事件
原 告  佐々木伸尚ほか1名
被 告  三菱電機株式会社ほか3名
 提訴年月日  平成8年2月21日
(エ) 東京高等裁判所平成11年(行コ)第49号
損害賠償請求控訴事件
原 告  古宮杜司男ほか12名
被 告  株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日  平成8年2月22日
 判決年月日  平成11年1月28日(請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日  平成11年2月5日(東京高等裁判所)
(オ) 鳥取地方裁判所平成8年(行ウ)第1号
損害賠償請求事件
原 告  高橋敬幸
被 告  日本下水道事業団及び株式会社東芝
 提訴年月日  平成8年2月24日
(カ) 浦和地方裁判所平成8年(行ウ)第7号
損害賠償請求事件
原 告  竹下悟ほか4名
被 告  株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日  平成8年4月9日
事案の概要
 当委員会は,日本下水道事業団発注の電気設備工事の入札談合につ
いて,平成7年7月12日,株式会社日立製作所ほか8名に対し課徴金
納付命令を行った。前記原告住民らは,前記被告らに対して,地方自
治法第242条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償
を求める住民訴訟を前記各裁判所に提起した。
東京地方裁判所判決の概要(平成8年(行ウ)第36号事件・前記ア
(エ)事件原審判決)
@  怠る事実の相手方に対する損害賠償請求権の行使を求める住民監
査請求につき,監査請求期間の制限が及ぶか否か
 ある財務会計行為の内容,手続に当該行為を行う職員として審査
すべき要件を客観的に満たさない違法があり,当該行為による損害
を補てんするために必要な是正措置として行使すべき請求権,すな
わち当該行為が違法であることに基づいて発生する実体法上の請求
権の不行使をもって「財産の管理を怠る事実」とする住民監査請求
については,当該請求権の相手方が当該行為の直接の相手方でない
場合であっても,当該請求権の行使が可能である以上,当該行為の
あった日又は終わった日を基準として地方自治法第242条第2項の
規定が適用されるものと解すべきである。
A  本件監査請求における地方自治法第242条第2項の適用
 本件監査請求は,客観的に,支出負担行為(本件各年度実施協定
の締結)が違法であることに基づいて発生した損害を補てんするた
めに必要な是正措置の一つとして,その違法の原因を作出した被告
らに対する損害賠償請求権の行使を求めるものということができる
のであって,これが「怠る事実」に対する住民監査請求であるとし
ても,その監査請求期間は,本件各年度実施協定締結の時を基準と
して判断されるべきものである。本件各年度実施協定はいずれも平
成5年度末までに締結されており,平成7年11月27日にされた本件
監査請求は,監査請求期間を経過したものというべきである。
B  本件監査請求につき地方自治法第242条第2項ただし書に規定す
る「正当な理由」が存すると認められるか否か
 被告事業団発注に係る下水道施設電気設備工事の入札における談
合を巡る一連の報道の経緯に照らせば,市の住民が相当の注意力を
もって調査したときには,遅くとも,公取委が被告9社に対し,独
占禁止法第3条違反の行為をしたとして,課徴金納付命令を発し,
そのことが報道されている平成7年7月13日までには,客観的にみ
て本件各委託工事に係る支出負担行為の存在及び右支出負担行為が
被告らの談合行為に係る金額を基礎とするものではないかとの疑い
を抱くに足りる事実を知ることができたものというべきであり,課
徴金納付命令の発令の報道がなされた時点から4か月余を経過した
同年11月27日にされた本件監査請求は住民監査請求のための措置請
求書作成や証する書面の準備といった作業が行われるのに必要にし
て十分な期間内にされたものということはできないものというべき
である。
 したがって,本件監査請求が監査請求期間経過後にされたことに
ついて,地方自治法第242条第2項ただし書に規定する「正当な理
由」が存するものと認めることはできず,本件監査請求は,監査請
求期間を徒過した不適法なものというべきである。
訴訟手続の経過
 前記各事件について,平成8年度又は平成9年度中に,それぞれの
裁判所から当委員会に文書送付嘱託があり,当委員会は当該裁判所に
資料を提供した。また,平成10年度に調査嘱託があった裁判所には回
答を行った。
 前記各事件については,平成10年度末現在,東京高等裁判所へ控訴
された前記(ア)事件を含め,各裁判所において係属中である。
(3) デジタル計装制御システム工事の入札に係る住民訴訟
事件の表示
(ア) 奈良地方裁判所平成8年(行ウ)第2号
損害賠償請求事件
原 告  川田賢司ほか3名
被 告  横河電機株式会社ほか4名
 提訴年月日  平成8年2月21日
(イ) 名古屋地方裁判所平成8年(行ウ)第8号
損害賠償請求事件
原 告  北村三郎ほか2名
被 告  富士電機株式会社ほか3名
 提訴年月日  平成8年2月21日
(ウ) 東京地方裁判所平成8年(行ウ)第37号
損害賠償請求事件
原 告  木村トモほか6名
被 告  横河電機株式会社ほか5名
 提訴年月日  平成8年2月22日
(エ) 名古屋高等裁判所平成10年(行コ)第27号
損害賠償請求控訴事件
原 告  大橋剛ほか3名
被 告  横河電機株式会社
 提訴年月日  平成8年3月13日
 判決年月日  平成10年8月20日(請求棄却,津地方裁判所)
 控訴年月日  平成10年8月31日(名古屋高等裁判所)
(オ) 名古屋高等裁判所平成10年(行コ)第28号
損害賠償請求控訴事件
原 告  岡田賢一ほか6名
被 告  富士電機株式会社
 提訴年月日  平成8年5月20日
 判決年月日  平成10年8月20日(請求棄却,津地方裁判所)
 控訴年月日  平成10年9月2日(名古屋高等裁判所)
事案の概要
 当委員会は,デジタル計袋制御システム工事の入札談合について,
平成7年8月8日,横河電機株式会社ほか3名に対し課徴金納付命令
を行った。前記原告住民らは,前記被告らに対して,地方自治法第
242条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求め
る住民訴訟を前記各裁判所に提起した。
津地方裁判所判決の概要(平成8年(行ウ)第3号事件・前記ア(エ)
事件原審判決,同(オ)事件原審判決も同旨)
@ 本件監査請求に係る期間制限の適用の有無
 原告らの主張する損害賠償請求権が成立するには,被告と三重県
との間で,不当に高い工事代金で請負契約が締結されることが理論
的前提であるから,本件監査請求は,客観的には,「不真正怠る事
実」を対象とする監査請求であると解すべきであり,地方自治法第
242条第2項の期間制限の適用があると解するのが相当である。
A 監査請求期間の起算点
 「不買正怠る事実」を対象とする監査請求については,当該財務
会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として地方自治法第
242条第2項の規定を適用すべきであるから,本件においては,本
件請負契約が締結された平成5年8月6日から監査請求期間を起算
するのが相当である。
B 地方自治法第242条ただし書の「正当な理由」の有無
 三重県の住民は,平成7年8月9日付の中日新聞及び伊勢新聞の
報道により,三重県が発注した計装設備工事の談合に関して課徴金納
付命令があったことを知り,その後,新聞社や公正取引委員会に対し
て問い合わせるなどの方法により,右命令の対象工事が本件工事であ
ることを具体的に知り得たことが認められる。したがって,三重県の
住民が相当な注意力をもって調査すれば,平成7年8月9日には,本
件請負契約の不当・違法について疑義を呈することができるように
なったというべきである。本件においては,平成7年8月9日付の中
日新聞及び伊勢新聞若しくは公正取引委員会が作成した対象役務リス
トを添付すれば十分であったのであり,「証する書面」の入手に時間
を要するとも考えられない。そして,監査請求人は,監査委員が監査
を行うに当たって,証拠の提出及び陳述の機会を与えられることに
なっているから(地方自治法第242条第5項),監査請求の時点で,す
べての証拠資料をそろえなければならないわけでもない。したがっ
て,住民が監査請求をなすべき相当期間としては,長くても3か月を
超えることはないというべきであって,平成7年8月9日から4か月
以上経過した平成7年12月21日になされた本件監査請求は,相当な期
間内になされた請求とは認め難い。
訴訟手続の経過
 前記各事件について,平成8年度又は平成9年度中に,それぞれの
裁判所から当委員会に文書送付嘱託があり,当委員会は当該裁判所に
資料を提供し,また,平成9年度に調査嘱託があった裁判所には回答
を行った。
 前記各事件については,平成10年度末現在,名古屋高等裁判所へ控
訴された前記ア(エ)及び(オ)事件を含め,各裁判所において係属中であ
る。
(4) 東京都水道局発注の水道メーター入札談合に係る住民訴訟
事件の表示
東京地方裁判所平成9年(行ウ)第142号
損害賠償請求事件
原告  小竹紘子ほか23名
被告  東京都水道局長,株式会社金門製作所ほか24名
 提訴年月日  平成9年6月9日
事案の概要
 当委員会は,東京都発注に係る水道メーターの入札談合について,
平成9年4月18日に株式会社金門製作所ほか24名に対し当該行為の排
除を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,東京都の住民は,
東京都水道局長,株式会社金門製作所ほか24名に対して,地方自治法
第242条の2の規定に基づき,東京都に代位して損害賠償を求める住
民訴訟を東京地方裁判所に提起した。
訴訟手続の経過
 東京地方裁判所は,当委員会に対し平成10年5月19日に損害額等に
ついての調査嘱託を行い,当委員会は,同年10月5日,同裁判所に前
記嘱託に対する回答を行った。
 本件訴訟は,平成10年度末現在,同裁判所に係属中である。
(5) 群馬県及び同県沼田市発注の土木一式工事等入札談合に係る住民訴訟
事件の表示
前橋地方裁判所平成10年(行ウ)第4号
損害賠償請求事件
原告  杉山弘一
被告  群馬県知事,群馬県沼田土木事務所長,沼田市長,萬屋建設
株式会社ほか3名
 提訴年月日  平成10年4月20日
事案の概要
 当委員会は,群馬県沼田市及び群馬県沼田土木事務所発注に係る土
木・建築・舗装工事の入札談合について,平成10年1月23日に,同県
沼田市所在の土木工事業者等に対し当該行為の排除を命じる審決を
行った。当該審決が確定した後,同県沼田市の住民は,当該土木工事
業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,沼田市等
に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前橋地方裁判所に提起した。
訴訟手続の経過
 前橋地方裁判所は,当委員会に対し平成10年7月17日に文書送付嘱
託を行い,当委員会は,同年12月22日,同裁判所に資料を提供した。
 本件訴訟は,平成10年度末現在,同裁判所に係属中である。
(6) 社会保険庁発注に係る支払通知書等貼付用シールの供給業者に対する
不当利得返還請求訴訟
事件の表示
東京地方裁判所平成5年(ワ)第24034号
不当利得返還請求事件
原 告 
被 告  トッパン・フォームズ株式会社(旧商号 トッパン・ムー
ア株式会社)ほか2名
 提訴年月日  平成5年12月17日
事案の概要
 本件は,本件シールの入札談合について,国が,入札談合に基づい
て締結されたシール製造契約は無効であり,民法第704条に基づき,
本件入札談合による落札価格と客観的価格(時価)との差額は被告ら
の不当利得であるとして,その返還を求める訴訟を東京地方裁判所に
提起したものである。
 なお,当委員会は,本件入札談合について,トッパン・ムーア(現
トッパン・フォームズ),大日本印刷及び小林記録紙の3社に対し課
徴金納付命令を行ったが,3社はこれを不服としたので,審判手続を
経て審決を行った。これに対し,3社は,審決の取消しの訴えを東京
高等裁判所に提起したが,当該請求は棄却された。その後,上告され
ていたが,平成10年10月13日,最高裁判所において上告棄却の判決が
下された。
 本件について,東京地方裁判所は,平成10年度中に口頭弁論を5回
行い,平成10年度末現在,同裁判所に係属中である。
(7) 米国を債権者とする資産の仮差押異議申立事件(横須賀米軍基地談合
事件関係訴訟)
事件の表示
東京高等裁判所平成6年(ネ)第1295号
仮差押異議申立事件
控訴人   米国政府
被控訴人  保坂建設株式会社
 提訴年月日  平成2年6月27日
 判決年月日(横浜地方裁判所川崎支部)
平成6年3月17日(米国政府敗訴)
 控訴年月日  平成6年3月30日
事案の概要
 本件は,横須賀基地を中心とする在日海軍基地等における建設工事
等を競争入札により発注している米国の極東建設本部等が,競争入札
に参加する事業者らのいわゆる談合行為により損害を被ったとして,
談合行為が存在した契約のうち,当委員会が課徴金納付命令の対象と
した建設工事等に限定し,その損害賠償請求権を被保全権利として仮
差押申請を行い,仮差押決定を得ていたのに対し,債務者が異議を申
し立てたものである。なお,横浜地方裁判所川崎支部は,本件に関
し,当委員会に対して,平成3年7月31日,文書送付嘱託を行い,当
委員会は,同年10月23日,同裁判所に資料を提供した。
横浜地方裁判所川崎支部判決の概要
 本判決は,債務者らの行為は独占禁止法に違反する談合行為に当た
り,一応,民法上の共同不法行為に該当し,債務者は同行為と相当因
果関係にある債権者の被った損害を賠償すべき義務があるとした上
で,債権者の主張する損害額を認めるに足る疎明はないことから,本
件各仮差押申請は,少なくとも,その被保全権利の存在につき,いま
だこれを認めるに足りる疎明が不十分であるとして,本件各仮差押決
定をいずれも取り消し,債務者の本件各仮差押申請をいずれも却下し
た。
訴訟手続の経過
 本件について,平成10年度末現在,東京高等裁判所に係属中であ
る。
(8) 米軍厚木基地における入札談合事件損害賠償請求訴訟
事件の表示
東京地方裁判所平成6年(ワ)第18372号
損害賠償請求事件
原 告  米国政府
被 告  荒澤建設株式会社ほか52名(訴えの一部取下げがあったの
で,35名に減少した。)
 提訴年月日  平成6年9月16日
事案の概要
 本件は,米国海軍航空施設(厚木基地)における建設工事等を競争
入札により発注している米国の厚木駐在建設事務官が,競争入札に参
加する厚木建設部会会員73名の昭和59年から平成2年にかけての談合
行為により損害を被ったとして損害賠償を求める「通告書」を送付し
たが,これに応じなかった荒澤建設株式会社ほか52名に対して,民法
第709条及び第719条の規定に基づき損害賠償請求訴訟を東京地方裁判
所に提起したものである。
訴訟手続の経過
 本件について,平成10年度末現在,東京地方裁判所に係属中であ
る。
その他の当委員会関係の訴訟
 平成10年度当初において係属中の当委員会が関係する訴訟は,いわゆる
豊田商法の被害者による国家賠償請求事件(いわゆる大阪豊田商事事
件),株式会社一光社ほか29名による行政処分取消等請求事件(いわゆる
消費税定価表示事件)の計2件であり,このうち,消費税定価表示事件に
ついては,最高裁判所で請求棄却の判決が下された。なお,大阪豊田商事
事件については平成10年度末現在係属中である。
(1) 豊田商法の被害者(366名)による国家賠償請求事件(大阪豊田商事
事件)
事件の表示
最高裁判所平成10年(オ)第1446号
損害賠償請求上告事件
上告人(控訴人・原告) 田中俊男ほか365名
被上告人(被控訴人・被告) 
 提訴年月日(一審)  昭和63年4月23日(一次)
昭和63年11月4日(二次)
 判決年月日(一審)  大阪地方裁判所
平成5年10月6日(請求棄却)
 判決年月日(二審)  大阪高等裁判所
平成10年1月29日(控訴棄却)
 上告年月日      平成10年2月10日
事案の概要
 本件は,豊田商事株式会社(以下「豊田商事」という。)による
「金地金の売買」と「純金ファミリー契約」を組み合わせた,いわゆ
る豊田商法によって被害を受けたとする者らが,国が,被害の発生を
防止すべく,その有する規制権限を行使しなかったことを理由とし
て,国家賠償法(昭和22年法律第125号)第1条第1項に基づいて,
国に対し,損害の賠償を求めているものである。
 なお,当委員会に対する上告人らの主張は,いわゆる豊田商法が独
占禁止法第19条(「不公正な取引方法」一般指定第8項のぎまん的顧
客誘引)及び景品表示法第4条第1号及び第2号(不当表示)の各規
定に該当することは明らかであり,当委員会はこれを認識し,調査す
ることが可能であったのであるから,前記各法律に基づき,その権限
を行使して,排除勧告,排除命令等の行政措置を行う作為義務を負っ
ていたにもかかわらず,漫然と豊田商法の継続,拡大を放置したた
め,上告人らに被害をもたらしたとするものである。
一審(大阪地方裁判所)判決の概要
 一審判決は,当委員会の責任について,豊田商事が独占禁止法第19
条の「事業者」に当たることを肯定し,不作為の違法の要件である危
険の切迫,予見可能性,補充性が存在したことは認めたが,国民が公
務員による規制権限の行使を期待している状況にあったこと及び公務
員が規制権限を行使すれば容易に結果を回避できたことについてはい
ずれも認めず,また,当委員会が有する広範な裁量権をも総合考慮す
れば,規制権限の不行使が著しく不合理であったとはいえないとし
た。
二審(大阪高等裁判所)判決の概要
(ア) 総論(規制権限行使義務の発生要件)
 二審判決は,公務員の権限不行使が著しく合理性を欠くか否か
は,行政権眼の行使に裁量権を付与した法の趣旨,目的,当該法規
の定める裁量の幅の大小,規制ないし監督の相手方及び方法等を前
提として,@危険の切迫性,A危険の認識又は予見可能性,B結果
回避可能性といった事情や,C補充性,D国民の期待といった規制
権限の不行使が違法と判断されることについて積極的に作用する事
情のみならず,権限行使に支障となる事情の存否,従前の同種事例
において行政庁の採った措置との均衡,当該事案において行政権限
を行使しない代わりに,その前後にわたり具体的に採られた行政措
置の有無とその内容といった,右判断に消極に作用する事情,さら
には,直接の加害者,被害者側の個別具体的な事情等諸般の事情を
総合考慮して決すべきであるとした。
(イ) 当委員会の責任に関する裁判所の判断
 二審判決は,豊田商事が独占禁止法第19条の「事業者」に当たる
こと,危険の切迫性,予見可能性,結果回避可能性,補充性及び国
民の期待が存在したことを認めたが,公正取引委員会の担当者が当
時得ていた資料や情報からは,豊田商事の営業実態が十分把握でき
ず,悪質業者と断定できるものではなかったのであるから,担当者
が契約内容について拘泥した判断をしたのもやむを得ないというべ
きであり,また,仮に,担当者が金地金の現物の存在を前提とした
取引の安全性,有利性に関する表示について,ぎまん的顧客誘引な
いしは不当表示に該当する旨正しい判断をしたとしても,同事実を
認定できる的確な証拠を入手していたことを認めるに足りる証拠も
無いのであって,結局,公正取引委員会は,控訴人らを含む本件訴
訟の第一審原告らの最終損害発生の日までの時点において,独占禁
止法の排除措置命令や景品表示法の排除命令を発することはできな
かったと判示した。
訴訟手続の経過
 平成10年度末現在,最高裁判所に係属中である。
(2) 株式会社一光社ほか29名による行政処分の取消等請求上告事件(消費
税定価表示事件)
事件の表示
最高裁判所平成6年(行ツ)第136号
行政処分の取消等請求上告事件
上告人(原告・控訴人)   株式会社一光社ほか29名
被上告人(被告・被控訴人)  公正取引委員会,国
 提訴年月日     平成元年7月20日
 判決年月日(一審)     平成4年3月24日(請求棄却)
 判決年月日(二審)     平成6年4月18日(控訴棄却)
 判決年月日(上告審)    平成10年12月18日(上告棄却)
事案の概要
 本件は,出版社等30名(提訴時は35名)が,再販売価格は消費税込
みの価格であるとする当委員会の平成元年2月22日付け「消費税導入
に伴う再販売価格維持制度の運用について」と題する公表文(以下
「本件公表文」という。)の公表や指導等によって,書籍の定価の表
示のし直しを強制されたことにより,カバーの刷り直し,新表示の
シール貼り等の出費を余儀なくされ,損害を被ったとして,当委員会
に対し本件「行政処分」(公表文の公表)の取消しあるいは無効確認
を,また,国に対し国家賠償を求めるものである。
一審(東京地方裁判所)及び二審(東京高等裁判所)判決の概要
 一審判決は,@本件公表文の公表は,抗告訴訟の対象となる行政処
分には該当しない,A独占禁止法第24条の2第1項にいう再販売価格
は消費者が支払う消費税込みの価格であるとする本件公表文中の当委
員会の法解釈は正しく,当委員会の事務当局者による指導あるいは本
件公表文の公表は,国家賠償法第1条第1項にいう国の公務員の違法
な公権力の行使には当たらないとして,原告の請求を却下,棄却し
た。
 二審(東京高等裁判所)判決は,原判決の理由に対して若干の付
加,訂正を加えたほかは,原判決を維持し,控訴人らの控訴を棄却し
た。
判決(最高裁判所)の主文
(ア) 本件上告を棄却する。
(イ) 上告費用は上告人らの負担とする。
判決(最高裁判所)の概要
 記録に照らせば,本件公表文の公表が抗告訴訟の対象となる処分に
該当しないとして被上告人公正取引委員会に対する訴えをいずれも不
適法とした原審の判断は,正当として是認することができる。
 原審の適法に確定した事実関係の下においては,本件公表文の公表
等が違法なものとはいえないとした原審の判断は,正当として是認す
ることができ,その過程に所論の違法はない。