第10章 再販適用除外制度

第1 概説

 再販契約とは,商品の供給者がその商品の取引先である事業者に対して転売する価格を指示し,これを遵守させること(以下「再販行為」という。)を内容とする契約である。再販行為は,原則として,不公正な取引方法(再販売価格の拘束)に該当し,独占禁止法第19条違反に問われるものであるが,おとり廉売防止等の観点から,同法第24条の2の規定に基づき,当委員会が指定する再販指定商品及び著作物を対象とするものについては,例外的に独占禁止法の適用を除外されている(再販適用除外制度)。
 独占禁止法の適用を除外される行為は,「再販売価格を決定し,これを維持するためにする正当な行為」であるが,「一般消費者の利益を不当に害することとなる場合」及び「その商品を販売する事業者がする行為にあってはその商品を生産する事業者の意に反してする場合」には適用除外とはならない。また,消費者・勤労者の互助を目的とする消費生活協同組合等の団体に対して販売する場合にも,適用除外とならない。

第2 再販適用除外制度の見直し

 再販適用除外制度を含む独占禁止法適用除外制度については,累次の閣議決定においてその見直しが決定されており,当委員会は,これらを踏まえ再販適用除外制度の見直しに取り組んできた。このうち指定再販制度については,化粧品14品目及び一般用医薬品14品目の指定を平成9年4月1日に取り消した。これにより,昭和28年以降行われてきた再販指定商品の指定はすべて取り消された。
 また,著作物再販制度については,「規制緩和推進3か年計画」(平成10年3月31日閣議決定),「規制緩和推進3か年計画(改定)」(平成11年3月30日閣議決定)及び「規制緩和推進3か年計画(再改定)」(平成12年3月31日閣議決定)において,「著作物(書籍・雑誌,新聞及びレコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)の再販価格維持制度については,独占禁止法上原則禁止されている再販行為に関する適用除外制度であることから,制度を維持すべき相当の特別な理由が必要であり,今後,行政改革委員会最終意見の指摘する論点に係る議論を深めつつ,適切な措置を講ずるものとする。当面,現行の再販制度の下で見られる各種の流通・取引慣行上の弊害について,消費者利益の確保の観点から,迅速かつ的確にその是正を図ることとする」旨決定されているところである。

第3 著作物再販制度の取扱い

  当委員会の見解の公表及び新聞業における特定の不公正な取引方法の改正
 著作物再販制度については,平成10年3月31日,(1)競争政策の観点からは廃止の方向で検討されるべきものであるが,文化の振興・普及と関係する面もあるとの指摘もあることから,これを廃止した場合の影響について配慮しつつ引き続き検討し,一定期間経過後に制度自体の存廃について結論を得ることが適当,(2)著作物再販制度の対象品目を書籍・雑誌,新聞及びレコード盤・音楽用テープ・音楽用CDに限定して解釈・運用,(3)流通取引上の弊害について迅速かつ的確に是正を図っていくため所要の取組を実施,との当委員会としての結論を公表した。これを受けて,当委員会は,平成10年4月以降,関係業界に対し,流通・取引慣行改善等の取組を進めるよう要請を行うとともに,価格設定の多様化が阻害されることのないようにするなどの観点から,「新聞業における特定の不公正な取引方法」の見直しの検討を行い,広く意見を聴取するために公聴会を開催し(平成11年6月30日),平成11年7月21日,全部改正の告示を行った(平成11年9月1日施行)。改正の主な内容は,次のとおりである。
(1)  「学校教育教材用であること,大量一括購読者向けであることその他正当かつ合理的な理由をもってする」新聞の異なる定価の設定又は定価の割引については,不公正な取引方法に該当しないことを明確化する(告示第1項)。
(2)  新聞特殊指定の対象となる販売業者は,「新聞を戸別配達の方法により販売することを業とする者」とする(告示第2項)。
(3)  発行業者が販売業者に指示して注文部数自体を増やすようにさせる行為についても,不公正な取引方法として規制されることを明確化する(告示第3項)。
(4)  当該特殊指定の対象となる「日刊新聞」の範囲を限定・明確化する(告示備考)。
  著作物再販制度下における関係業界の流通・取引慣行改善等の取組状況等について
 平成10年4月以降,当委員会が関係業界に対し,現行の再販制度下での流通・取引慣行上の阻害の是正を求めたことを受けて,関係業界において,弊害是正に向けた取組がみられるところ,当委員会は平成100年12月及び平成11年12月に,これらの取組のうち当委員会が把握している主要なものを取りまとめて公表した。このうち,平成10年12月ころ以降になされた取組を中心として当委員会が把握している主要なものは次のとおりである。
(1)  書籍・雑誌
 再販品として発行された書籍を一定期間経過後,又は一定期間非再販化して販売するなど再販制度の運用の弾力化の動きが拡大しており,また,書籍の一括・大量購入者に対する定価の割引・送料無料等のサービスの実施などの価格設定の多様化の動きがみられる。このほか,消費者に対するサービスとして,書店等が単独又は他の事業者と共同でポイントカード制等を実施している例や,出版社・大型書店等がインターネット等の通信手段や宅配を利用して読者からの注文受付・配達を行うなどの動きが拡大している。
(2)  新聞
 学校教育教材用に係る定価の設定について,多くの新聞社が平成12年度から導入又は検討しているなど価格設定の多様化の動きがみられるほか,一部の全国紙に,長期購読者を中心とした購読者等を対象に自社が発行している一部の書籍の価格を割り引いて販売している例がみられる。
(3)  レコード盤・音楽用テープ・音楽用CD
 各メーカーにおいて,一部の品目については,発売後2年とされている再販期間を6か月又は1年に短縮したほか,一部の品目については,非再販品として発売されている。また,大手小売店等では,時限再販期間切れCDを対象とした割引セール等を行っており,小売店では,サービス券やポイントカード制等によるCD等との引換えや金券の提供等の顧客サービスが広く行われているほか,メーカーや大手小売店等においてインターネット等を利用した通信販売が行われており,その規模が拡大している。