第5章 規制改革・競争政策に関する調査・提言等

第1 概論

1 規制改革の必要性
 我が国では,社会的・経済的な理由により,参入,設備,数量,価格等に係る事業活動が政府により規制されていたり,独占禁止法の適用が除外されている産業分野がみられる。
 このような政府規制は,第二次世界大戦後における我が国経済の発展過程において一定の役割を果たしてきたものと考えられるが,社会的・経済的情勢の変化に伴い,当初の必要性が薄れる一方で,効率的経済や企業家精神の発揮の阻害,競争制限的問題を生じさせてきているものも少なくない。
 また,我が国経済は,現在,極めて厳しい環境下にあるが,これを克服し将来に向けて活力ある発展を遂げていくためには,規制改革とそれを通じた経済システムの改革により,我が国経済の構造改革を図り,国際的に開かれ,自己責任原則と市場原理に立った,民間活力が最大隈に発揮される創造的な経済社会へ変革していくことが喫緊の課題となっている。
 政府においても,規制改革を通じた経済の活性化は最重要の課題と位置付け,これまで「規制緩和推進計画について」(平成7年3月閣議決定,平成8年3月改定,平成9年3月再改定),「規制緩和推進3か年計画」(平成10年3月閣議決定,平成11年3月改定,平成12年3月再改定),「規制改革推進3か年計画」(平成13年3月閣議決定)等に基づき計画的に規制改革等を推進してきたところであり,さらに,規制改革推進3か年計画の改定が行われ,平成14年3月29日に「規制改革推進3か年計画(改定)」が閣議決定されたところである。当委員会は,こうした規制改革を推進するためのプログラムの策定に当たって積極的に関与するとともに,個別の政府規制制度についても必要に応じて改善のための提言を行うなど,積極的に規制改革に取り組んでいる。
 また,適用除外制度は,自由経済体制の下ではあくまでも例外的な制度であり,適用除外分野においては,市場メカニズムを通じた良質,廉価な商品・サービスの供給に向けた経営努力が十分に行われず,消費者利益が損なわれるおそれがあることから,これを必要最小限にとどめる必要がある。
2 規制改革推進3か年計画(改定)
 「規制改革推進3か年計画(改定)」(平成14年3月29日閣議決定)においては,近年,我が国が直面する経済のグローバル化,少子高齢化,情報通信技術革命(IT革命),環境問題の深刻化等の構造的な環境変化に対応して,経済社会の構造改革を進めることにより,経済活性化による持続的な経済成長の達成,透明性が高く公正で信頼できる経済社会の実現,多様な選択肢の確保された国民生活の実現,国際的に開かれた経済社会の実現等を図り,もって,生活者・消費者本位の経済社会システムの構築と経済活性化を同時に実現する観点から,行政の各般の分野について計画的に規制改革の積極的かつ抜本的な推進を図ることを基本目的とするとともに,規制改革の推進に当たっては,市場機能をより発揮するために競争政策の積極的展開を図っていくこととされている。
 競争政策分野に関しては,経済社会構造を見直し,市場における公正かつ自由な競争を積極的に推進するため,執行・事務処理に当たっては,
(1) 公正取引委員会の審査体制等の充実を含め,独占禁止法の執行力の強化を図り,同法違反行為に対する告発を含め積極的に対処すること
(2) 規制改革後の市場の公正な競争秩序を確保するため,中小事業者等に対する不当な不利益を与える不当廉売,優越的地位の濫用等の不公正な取引方法に対し,巌正かつ積極的に対処すること
(3) 規制緩和後において競争制限的な行政指導が行われないよう関係省庁は公正取引委員会と事前調整を図るとともに,いわゆる民民規制等について厳正に対処すること等に留意して取り組むこととされている。
 また,重点事項として,独占禁止法の執行力の強化,規制産業における競争の促進,一般集中規制の見直し,景品類に関する規制の見直し等の項目が挙げられるとともに,個別事項として,景品表示法における表示規制の見直し,フランチャイズ・ガイドラインの見直し等が挙げられている。(附属資料5-1参照)
3 規制改革推進3か年計画(改定)に伴う競争政策に関する取組の公表
 当委員会は,「規制改革推進3か年計画(改定)」に示された政府として行うこととしている規制改革推進のための施策の趣旨を踏まえ,かつ,競争政策の果たすべき役割の重要性にかんがみ,我が国市場における公正かつ自由な競争を促進するため,独占禁止法違反行為に対して,引き続き,厳正に対処するとともに,規制改革をめぐる調査・提言,消費者政策の推進等を積極的に進めることにより,我が国市場における公正かつ自由な競争を確保・促進するよう取り組んでいくこととしており,その具体的な取組方針を平成14年3月29日に公表した(附属資料5-2参照)。
 その取組方針の概要は以下のとおりである。
(1) 構造改革の流れに即した法運用(独占禁止法違反行為の処理,事業活動の国際化に対応した取組)
(2) 競争環境の積極的な創造(独占禁止法の見直しに向けた取組,規制産業における競争の促進,違反行為の未然防止と競争の唱導等)
(3) ルールある競争社会の推進(中小事業者に不当に不利益を及ぼす不公正取引への厳正・迅速な対処,不当表示への対応等)
(4) 情報通信技術革命(IT革命)に対応した取組(情報通信分野における競争の促進,電子商取引への対応,知的財産権等をめぐる問題等)

第2 公益事業分野等における規制改革・競争政策に関する調査・提言

1 政府規制等と競争政策に関する研究会における検討
 当委員会は,従来から競争政策の観点から政府規制制度について中長期的に見直しを行ってきており,昭和63年7月以降,政府規制制度の見直し及び関連分野における競争確保・促進政策の検討を行うため,「政府規制等と競争政策に関する研究会」(座長 岩田規久男 学習院大学教授,平成12年度までの座長は鶴田俊正 専修大学教授)を開催している。
 同研究会は,平成11年6月以降,公益事業分野について,電気事業,ガス事業,国内航空旅客運送事業及び電気通信事業をモデルとして,新規参入を促進し,新規参入者と既存事業者との公正な競争条件を確保する観点から検討を行ってきた。平成13年度においては,5月以降,「通信と放送の融合問題検討ワーキンググループ」(座長 井手秀樹 慶應義塾大学教授)を開催し,通信と放送の融合が進展する状況における競争政策について検討を行い,同研究会が取りまとめた報告書を平成13年12月に公表した。
 同報告書の概要は以下のとおりである。
(1) 現状認識
 インターネットの普及,ブロードバンド化,放送メディアの多様化及び放送のデジタル化を背景に,従来の通信や放送の概念ではとらえきれない,いわば通信と放送の中間領域的なサービスが登場しており,同様の現象は,伝送路,端末及びサービスの提供主体である事業者の各面においても,複合的に生じている。今後,通信と放送の融合は一層進展し,サービスの受け手にとって,通信と放送の区分は意味を持たなくなると考えられる。
(2) 問題意識
 現行の制度は,通信と放送に区分した上で,それぞれに対して別体系により規制する方式が採られており,通信と放送の融合が進展している実態とかい離しつつある。このことは,通信と放送の中間領域的なサービスの提供の拡大や中間領域的な分野への様々な事業者の参人を妨げるおそれがあり,また,情報技術の革新で可能になる良質で多様なサービスを,競争原理を活用して,安価に国民に提供されるようにすることへの障害ともなりかねない。
(3) 競争政策の観点からの提言
ア 通信と放送の融合の進展に対応した制度の再構築
 通信と放送の中間領域的なサービスの提供が今後急速に進展することを前提とすれば,通信と放送の融合の進展に対応した制度を再構築し,通信分野と放送分野における事業者の相互参入を促進すること等が重要であり、通信及び放送分野における各種規制・制度を見直し,事業者の事業活動を制限するような規制を行うのではなく,競争を阻害するおそれのある行為を競争の基本ルールである独占禁止法により排除していく等の対応を基本とすべきである。
 まずは,「通信衛星を利用した通信・放送の中間領域的な新たなサービスに係る通信と放送の区分に関するガイドライン」(平成9年12月。総務省)について,例示されたサービス以外はすべて通信に区分される方式へ変更する等により,放送の範囲を可能な限り限定する必要がある。
 将来的には,通信と放送を区別するのではなく,伝送路(ハード)とコンテンツの制作・配信(ソフト)とに分け,ハードについては希少性・不可欠性を有する設備等にのみ接続義務を課す等の必要最小限の規制を行い,ソフトについては視聴者数が多く,国民の思想,意見の形成に与える影響が大きいと認められる場合に限って必要最小限の規制を行うという制度の再構築を検討する必要がある。
イ 現行規制の緩和
(ア)放送分野における参入規制の緩和
 放送普及基本計画(昭和63年10月。郵政省告示第660号)において,放送局又は放送番組の数の目標が定められているが,新規参入を制限するような現行の運用を見直す必要がある。
 また,今後,デジタル化により多チャンネル化が進展すると考えられるが,電波の割当てに当たって,入札制度の導入や,放送用に割り当てられた電波を通信に使用したり,割り当てられた電波を自由に売買・貸与できる仕組みを設ける等電波の効率的な利用ができる制度の導入も検討する必要がある。
(イ)放送分野におけるマスメディア集中排除原則及び外資規制の緩和
 マスメディア集中排除原則については,対象となる放送メディアを可能な限り限定するとともに,必要性が認められる場合であっても,事業者の事業活動をより制約しない手段を選択する必要がある。
 また,外資規制についても,対象となる放送メディアをできる限り狭く限定し,新規参入を促進していく必要がある。
(ウ)放送分野における料金規制の緩和
 通信と放送の中間領域的な分野では,有料のサービスが中心になると考えられることから,料金規制の必要性の有無を含めて見直すことにより,価格競争を活発に行うことができる環境を整備していく必要がある。
(エ)放送分野におけるコンテンツ規制の対象・内容の見直し
 放送分野では,電波の有限希少性や社会的影響力の観点から,放送番組の編集等に関する規制(コンテンツ規制)が課されているが,視聴者数が多く,国民の思想・行動や意見の形成に与える影響が大きいと認められる場合に限って必要最小限の規制を行う等その範囲を縮小していく必要がある。
 少なくとも,通信と放送の中間領域的な新たなサービスや,有料放送・スクランブル放送のように,特定の受信者が自らの選択により受信するサービスについては,コンテンツ規制の対象から除外していく必要がある。
 将来的には,メディアの多様化の進展に即して,絶えずコンテンツ規制の見直しを行う必要がある。
(オ)通信分野における事業区分の見直し,諸規制の緩和
 通信分野では,電気通信設備を有する事業者は,すべて第一種電気通信事業者として,参入,料金等の規制を受けているが,中間領域的な分野への新規参入等を通じ,競争を促進していくためには,電気通信事業法による事業者区分を見直し,新規参入者等を規制の対象から除外する等の必要がある。
ウ コンテンツの流通促進のための競争環境整備
 今後急速に進展していくと考えられる中間領域的な分野に様々な事業者が参入し,活発な競争が行われるためには,多様なコンテンツを様々な事業者が活用できるような環境を整備することが重要である。
(ア)コンテンツの流通促進のための著作権処埋ルールの確立
 現在,放送コンテンツのマルチユースに当たって,様々な著作権者の権利処理が課題となっていることから,コンテンツの流通促進の観点からの著作権処理ルールを確立することが必要である。
(イ)放送事業者の保有する放送コンテンツの活用
 様々な事業者が多様なメディアを使って放送コンテンツを配信できる仕組みを構築することが重要である。特に,現行の電波の割当てや受信料制度を継続していく場合には,様々な事業者が適正な料金で著作権法等の問題が解決できる放送コンテンツを利用できるようにすることが必要である。
(ウ)コンテンツの取引における公正なルールの確立
 コンテンツ制作者と配信する事業者が制作の実態に見合った契約(例えば,二次利用を含めた権利の帰属,その条件等)を締結できるようにするなど,コンテンツの取引における公正なルールを確立していくことが必要である。
(エ)公正かつ自由な競争を阻害する行為の排除
 公正取引委員会は,(1)新規参入の促進 (2)伝送路,コンテンツ配信及びコンテンツ制作の各階層における競争の促進,(3)階層をまたがった垂直的な統合・連携等による市場閉鎖効果の排除等の観点から,競争を阻害する行為等について,独占禁止法上の考え方を明らかにして,公正かつ自由な競争を阻害するおそれのある行為の排除と未然防止を行うことにより,競争環境の整備に努める必要がある。
2 電気通信事業分野における競争の促進に関する指針の策定
(1) 趣旨及び経緯
 平成13年1月6日に施行された高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)において,電気通信事業者間の公正な競争の促進に関する規定が設けられるなど,電気通信事業分野における公正かつ自由な競争を促進していくことが.政府全体としての重要な政策課題の一つとなっている。
 このような状況にかんがみ,当委員会は,総務省と共同して,電気通信事業分野における公正かつ自由な競争をより一層促進していく観点から,独占禁止法及び電気通信事業法それぞれに関する基本的考え方及び問題行為等を記した「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を作成することとした。平成13年9月14日に同指針の原案を作成・公表し.関係各方面から広く意見を求め,これを検討・参酌の上,同年11月30日に成案を作成・公表した。
(2) 指針の概要
 本指針は,「Ⅰ電気通信事業分野における競争の促進に関する指針の必要性と構成」,「Ⅱ独占禁止法又は電気通信事業法上問題となる行為」,「Ⅲ競争を一層促進 する観点から事業者が採ることが望ましい行為」及び「Ⅳ報告・相談,意見申出等への対応体制」から構成されている。
 本指針の内容は,「電気通信設備の接続及び共用に関連する分野」,「電柱・管路等の貸与に関連する分野」,「電気通信役務の提供に関連する分野」,「コンテンツの提供に関連する分野」,「電気通信設備の製造・販売に関連する分野」の各分野ごとにそれぞれ独占禁止法及び電気通信事業法に関する基本的考え方及び問題となる行為を記述するとともに,市場支配的な電気通信事業者等が自主的に採ることが望まれる行為として,接続部門と他部門等との情報遮断のための具体的措置,ファイアウォール遵守状況の公表,接続・コロケーション状況の公表等について記述している。
(3) 今後の対応
 当委員会としては,電気通信事業分野において公正かつ自由な競争を確保するため,本指針に基づいて,独占禁止法違反行為を厳正・迅速に排除していくとともに,その未然防止に努めていくこととしている。
 また,本指針の公表と同日に施行された改正電気通信事業法の目的にも掲げられている公正な競争の促進が,今後,着実に行われていくよう市場の状況を不断に監視していくとともに,今後の競争環境の変化や当委員会の違反事件処理の経験を踏まえ,独占禁止法上の考え方を明らかにする観点から,本指針を適宜機動的に見直すこととしている。
3 電力の部分供給等に係る独占禁止法上の考え方の策定
(1) 趣旨及び経緯
 当委員会は,中部電力株式会社が特定規模電気事業者の電力小売事業への部分供給による参入を妨害している疑いで審査を行う中で,電力の部分供給について,現行の「適正な電力取引についての指針」では,具体的に想定していないもの等がみられたことから,本件審査の結果を踏まえ,同指針を補足するものとして,「電力の部分供給等に係る独占禁止法上の考え方」を作成し,平成13年11月に公表した。なお,本件審査については,独占禁止法上の問題は認められなかったことから,打切りとなっている。
(2) 「考え方」の概要
 電力会社が,部分供給により小売電力市場に参入しようとする事業者(新規参入者)に対し,部分供給の拒絶,負荷追随できない新規参入者に対する負荷追随の要求,バックアップ料金の一方的決定,従来購入していた余剰電力の購入拒絶や購入価格の差別的設定等を行うことや,当該新規参入者から供給を受けようとする需要家に対し,新規参入者からの供給予定量の事前通知の必要と認められる範囲を超える義務付け,料金の不当な設定等を行うことを,独占禁止法上違法となるおそれがある行為として例示した。
4 電気事業及びガス事業の制度改革への取組
(1) 電気事業
 平成11年の制度改革(電力小売の部分自由化)に係る電気事業法改正法の附則において,3年後の見直しが規定されており,平成13年11月から,経済産業省の電気事業分科会において,(1)自由化範囲の拡大,(2)託送の中立性確保等の論点が検討されている。当委員会もこれに出席し,競争促進の観点から意見を提出した。
(2) ガス事業
 平成11年の制度改革(ガス小売の部分自由化範囲の拡大)に係るガス事業法改正法の附則において,3年後の見直しが規定されており,平成13年1月から,経済産業省のガス市場整備基本問題研究会において,(1)自由化範囲の拡大,(2)託送の中立性確保等の論点が検討され,平成14年4月に報告書が公表された。当委員会もこれに出席し,競争促進の観点から意見を提出した。
   

第3 社会的規制分野等における規制改革・競争政策に関する調査・提言

1 政府規制等と競争政策に関する研究会における検討
 従来,医療,福祉,労働等の社会的規制分野では,情報の非対称性,平等なサービスの提供等を理由に,市場原理に馴染まないものとされ,サービスの提供主体,サービスの価格,質等について,数多くの規制が温存されてきた。しかし,今後,少子・高齢化,グローバル化,労働市場環境の変化,国民ニーズの多様化等,経済社会環境の変化が急速に進展していることから,こうした分野においても,できる限り競争原理を導入し,より良いサービスをより安価に提供できるようにすることが強く求められている。このような観点から,総合規制改革会議等において,各種の規制改革等の提言が行われている。
 当委員会としても,競争原理が導入される分野において,公正かつ自由な競争を阻害する行為を独占禁止法に基づき排除していくとともに,社会的規制分野の特性や今後の社会・経済環境の変化を踏まえつつ,可能な限り新規参入の促進及び公正かつ自由な競争条件の確保を図る観点から,これらの分野の規制・制度について検討を行っていく必要がある。
 そのため,当委員会においては,介護分野,医療分野,労働分野,公益法人による基準認証等に関する調査を行ってきており(平成13年度においては,介護分野及び公益法人による基準認証等に関する調査結果を,いずれも平成14年3月に公表。),これらの調査結果や総合規制改革会議の提言を踏まえ,介護,医療,労働分野を中心に,公正かつ自由な競争を促進する観点から検討を行うため,平成14年4月以降,政府規制等と競争政策に関する研究会「社会的規制等ワーキンググループ」(座長 井手秀樹 慶應義塾大学教授)を開催しているところであり,同年10月を目途に取りまとめを行うこととしている。
2 介護保険適用サービス分野における競争状況に関する調査
  第8章第9を参照
3 基準認証分野における公益法人改革と競争政策に関する調査
(1) 調査の趣旨
 基準認証の中には,公益法人が国から委託等を受けて検査・検定(以下「検査等」という。)を実施する制度が多数存在するが,規制改革や公益法人改革の流れの中で,営利法人等公益法人以外のもの(以下「非公益法人」という。)の参入を認める等の制度の見直しが行われている。
 競争政策の観点からは,検査等の実施主体を公益法人に限定するのではなく非公益法人にも開放し,当該事業で公正かつ自由な競争が行われることが重要であることから,非公益法人が当該検査等市場に参入することが可能な制度について,(1)非公益法人の参入を促進するためにどのような課題があるのか,(2)公益法人と非公益法人の間の競争条件を整備するためにどのような課題があるのか,(3)独占禁止法上の問題の可能性の有無等の点について整理することを目的として,平成13年9月20日に行政改革推進事務局が公表した「行政委託型公益法人改革の実施計画各府省案」において示された,法令に基づき国が公益法人に委託や推薦をしている検査等77制度のうち,非公益法人が参入可能な37制度を対象に調査を行い,平成14年3月に調査結果を公表した。
(2) 調査結果の概要
ア 非公益法人に開放されている検査等制度全体の概要
(ア)参入の状況
 国が法令に基づき公益法人に委託や推薦をしていた検査等77制度のうち,見直し等の結果37制度については,非公益法人が参入可能となっている。このうち実際に非公益法人が参入しているのは19制度であり,全体の25%にとどまる(第1図)。
 なお,37制度全体の市場規模(公益法人の手数料収入額の合計)は,約1524億円に上る。
(イ)参入の動機
 非公益法人が参入した理由としては,「追加的なコストをさほど必要とせず,既存の経営資源で参入が可能なため」(55.1%)が最も多く,次いで「会社としての知名度,信用度を高められるため」(32.3%)が多かった。 
 また,市場規模と新規参入の有無についてみると,市場規模が比較的大きい市場でも参入が無い制度もある一方,市場規模が小さくても,民間企業等が既存の経営資源を活用して参入することが可能な場合には新規参入は生じている。市場規模の大小にかかわらず,非公益法人の参入の促進を図るような制度設計としていくことが重要である。
(ウ)参入後の競争状況
 非公益法人の参入があった制度について競争の状況をみると,新規参入後シェアが低下したとする公益法人は67.3%であり(第2図),また,検査等の手数料を引き下げたとする公益法人は70.4%を占めている(第3図)。このように,非公益法人の参入があった場合,市場における競争が活発化し,検査等のユーザーにメリットがもたらされていることがうかがえる。

第1図 新規参入の状況


第2図 公益法人のシェアの変動状況 第3図公益法人の手数料設定状況


(エ)公益法人と非公益法人の競争条件
 検査等の事業は,基本的に収益事業に該当する請負業に当たるが,一般の法人に対する法人税率が30%であるところ,公益法人に対する法人税率は22%となっており,公益法人に対し軽減税率が適用される。一方,検査等の事業でも,手数料収入の額がその業務のために必要な費用の額を超えない「実費弁償」の方法で行われるとして,所轄税務署長の確認を受けた場合には、非課税とされている。
 実費弁償方式の場合には,利益の生ずる余地はないが,今回の調査によれば,実費弁償で検査等を行っている公益法人は29法人のみであり,全体の86.5%に当たる186法人は,当該検査等事業に軽減税率が適用されるとしている。
イ 個別の制度に関する調査
 規制緩和推進3か年計画による見直しにより,非公益法人の参入が可能となった表1の7制度を対象に,そのフォローアップとして,新規参入事業者やユーザー等にア

第1表 規制緩和推進3か年計画で非公益法人の参入が可能となった制度の概要


(注)市場規摸は,検査等実施主体の平成12年度の当該検査等からの手数料収入を合計した金額である。ただし,一般用電気工作物の技術基準適合調査については,電力会社からみた平成13年度見込額である。

ンケート.ヒアリング等を実施した。これら7制度のうち,新親参入のあった制度は2制度(水道水水質検査及び一般用電気工作物の技術基準適合調査)である。
(3) 競争政策上の課題
ア 競争政策上の考え方
 公益法人が実施する基準認証の制度については,基準の設置により事業者の自由な活動を制限する側面を有する場合もあることから,競争政策の観点からは,本来の政策目的達成のために必要最低限のものとするよう不断の見直しを図るとともに,基準が必要な場合であっても,できる限り基準の遵守を事業者の自主的な取組に委ねる仕組み(自己確認・自主保安)としていくことが基本となる。
 また,事業者の自己確認・自主保安のみに委ねることが必ずしも適当でない場合においては,公益法人や民間検査機関等の第三者機関が,基準を満たしているかどうかについて検査等を実施する仕組みが必要となるが,この場合,複数の検査機関の参入が可能となり,検査機関相互の競争を通じて価格やサービスの改善が図られることが肝要である。今後,複数の検査機関の参入を認める方向で見直しが行われる制度については,具体的な制度設計に際し,検査機関の間の競争を促進し,制度改革の成果を具体的なものとするとの観点から,以下の課題に取り組んでいくことが重要となる。
(ア)競争促進的な制度設計
a 参入事業者数に係る制限の撤廃
 調査結果によれば,検査等の実施機関の数を一つに限定しており,既に公益法人が検査機関となっているため,非公益法人の参入が実質的に不可能なものがあった(動力プレス等の型式検定)。また,所管府省が検査等の実施機関の数を調整できるとする制度があった(ボイラー等特定機器の性能検査,小型ボイラー
等の個別検査)。
 新規参入を促進する観点からは,実施機関の数を一つに限定したり,所管府省の裁量により検査機関の数が調整・制限され得ることは問題である。所管府省は検査等機関が満たすべき一定の要件を明示するにとどめ,その要件を満たす事業者はだれでも自由に参入できるような制度とすべきである。
b 参入障壁の低減
 調査結果によれば,検査機関となるためには,多種類の機器について検査を実施することが義務付けられたり(特定無線設備の技術基準適合証明),また,複数の都道府県で事務所を設置することが求められる制度があった(ボイラー等特定機器の性能検査,小型ボイラー等の個別検定)。
 競争政策の観点からは,検査等機関の満たすべき要件について,一部の機器や一部の地域への参入を認めること等により,新規参入者の追加的なコスト負担を軽減し,より多くの非公益法人が参入できるような制度とすべきである。
(注)検査機関となるための復数の都道府県での事務所設置の要件(ボイラー等特定機器の性能検査,小型ボイラー等の個別検定)については,平成14年3月末において廃止されている。
c 参入条件の明確化・公開
 調査結果によれば,公表されている法令等のみでは参入のための要件が事業者にとって明らかではなく,事業者が具体的要件について所管府省に問い合わせても明確な回答が得られないとする状態が,制度見直し後も相当期間継続している事例があった(特定無線設備の技術基準適合証明)。
 参入条件については,事業者が参入に当たっての判断を的確に行えるよう,また,所管府省による裁量の余地がないよう,制度の詳細について明確化を図り,インターネット等一般に入手可能な形でタイムリーに公開すべきである。
d 料金設定の自由度の確保
 調査結果によれば,検査等の料金が主務大臣の認可制となっている制度において,複数の検査機関の料金が完全に同一となり,各検査機関の間で料金競争が行われていない事例がみられた (ボイラ一等特定機器の性能検査,小型ボイラー等の個別検定)。
 検査機関相互の競争を促進するためには,基本的に,検査機関の料金設定の自由度が確保される制度設計とすべきである。
(イ)イコール・フッティングの確保
a 公益法人の優遇税制の見直し 
 調査結果によれば,当該検査等の事業について,課税所得を生じている86.5%の公益法人に対して,法人税について軽減税率が適用されている。
 競争条件のイコール・フッティングの確保という観点からは,公益法人と非公益法人が競合する分野において,課税所得に適用される法人税率の公益法人と非公益法人との格差について見直すよう検討すべきである。
b 地方公共団体の契約方式の改善
 調査結果によれば,地方公共団体が公益法人と随意契約を行うなど,検査等のユーザーが公益法人を選好することが,非公益法人が事業活動を行う上で障害となっている事例があった(水道水水質検査)。また,「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」として,「公益法人と直接契約を締結するとき」との規定を
設けている地方公共団体もみられた。
 競争政策の観点からは,地方公共団体は検査等の契約先について,随意契約ではなく競争入札により選定するシステムとすべきである。
(ウ)競争制限的な行為の防止
a 内部補助による参入阻止価格の防止
 調査結果によれば,非公益法人の参入後,公益法人が料金を引き下げ,採算割れを起こしている状況で,非公益法人が検査等を受注できていないと考えられる事例があった(水道水水質検査)。また,公益法人の設定する料金が非公益法人の設定する料金と比較して極端に低く,公益法人の当該分野での支出が収入を上回っている事例があった(特定無線設備の技術基準適合証明)。
 市場支配的地位にある公益法人が,非公益法人と競合する分野において,採算を度外視した低料金を設定することなどにより,非公益法人が受注の機会を得られないなど,その事業活動が困難になるおそれが生じる場合には,公正な競争を阻害し,独占禁止法問題となる。
b 検査実施機関の間の競争制限的行為の防止
 調査結果によれば,検査等の料金が主務大臣の認可制となっている制度において,複数の検査機関の料金が完全に同一となり,各検査機関の間で料金競争等が行われていない事例がみられた(ボイラー等の性能検査,小型ボイラー等の個別検定)。
 一般的に,料金設定の自由度が確保されている制度において,各検査機関が料金について相互に制限する場合には,独占禁止法上問題となる。また,所管府省が検査機関に対し,料金等について指導することにより,事業者が共同して料金等を決定するような場合にも,独占禁止法上問題となる。
(エ)ディスクロージャーの徹底
 以上のような課題の着実な実施のためには,検査等分野において,制度の内容や公益法人に関するディスクロージャーがより一層徹底される必要がある。今回の調査結果を踏まえれば,新規参入を促進し,既存の事業者による競争制限的な行為を防止する観点からも,今後,(1)所管府省による詳細な参入基準等の公開,(2)公益法人による検査等の区分経理情報等の公開が徹底される必要がある。
イ 今後の対応
 今回の調査結果によれば,非公益法人の参入が可能であるものの,個々の検査等における制度的な要因により,新規参入が制限されているとみられる事例や,検査等の市場における自由な競争が制限されているとみられる事例があった。
 当委員会としては,今後見直しが行われる検査等制度について,見直しの結果競争が有効に機能する制度となっているかどうか等改革の実効性につき,総合規制改革会議や行政改革推進事務局とも連携・協力しつつフォローアップしていく。また,「政府規制等と競争政策に関する研究会」において,社台的規制等の分野の一つとして,公正な競争条件の確保を図るための課題等につき,更に検討していくこととする。
   

第4 独占禁止法適用除外制度

1 独占禁止法適用除外制度の概要
 独占禁止法は,市場における公正かつ自由な競争を促進することにより,一般消費者の利益を確保するとともに国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とし,これを達成するために,私的独占,不当な取引制限,不公正な取引方法等を禁止している。他方,他の政策目的を達成する観点から,特定の分野における一定の行為に独占禁止法の禁止規定等の適用を除外するという適用除外制度が設けられている。
 適用除外制度の根拠規定は,独占禁止法自体に定められているもの及び独占禁止法以外の個別の法律に定められているものに分けることができる。
(1) 独占禁止法に基づく適用除外制度
 独占禁止法は,無体財産権の行使行為(第21条)。一定の組合の行為(第22条)及び再販売価格維持契約(第23条)を,それぞれ同法の規定の適用除外としている。
(2) 個別法に基づく適用除外制度
 独占禁止法以外の個別の法律において,特定の事業者又は事業者団体の行為について独占禁止法の適用除外を定めているものとしては,平成13年度末現在,保険業法等15の法律がある。
2 適用除外制度の見直しについて
(1) 適用除外制度見直しの必要性
 現行の適用除外制度の多くは,昭和20年代から30年代にかけて,産業の育成・強化,国際競争力強化のための企業経営の安定,合理化等を達成するため,各産業分野において創設されてきた。
 しかし,今日の我が国経済は当時とは大きく変化し,世界経済における地位の向上,企業の経営体質の強化,消費生活の多様化等が進んできており,政府規制と同様に適用除外制度の必要性も変化してきている。
 適用除外制度は,それが利用される場合には,当該産業における既存の事業者を保護する効果をもたらすおそれがあり,その結果,経営努力が十分行われず,消費者の利益を損なうおそれがある。また,現に利用されていない制度についても,時代の要請に合致しない適用除外制度が将来においてもそのまま利用されるおそれがあるほか,制度の存在それ自体を背景にして協調的行動が採られやすく,競争を回避しようとする傾向が生じるおそれがあり,このことにより,個々の事業者の効率化への努力が十分に行われず,事業活動における創意工夫の発揮が阻害されるおそれがある等の問題がある。
(2) 適用除外制度見直しの経緯
 適用除外制度については,近年,累次の閣議決定等においてその見直しが決定されている。個別法に基づく適用除外制度については,「規制緩和推進計画の改定について」(平成8年3月閣議決定)を受け,平成9年2月21日,20法律35制度について廃止等の措置を採るための「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案」が第140回国会に提出され,同年6月13日可決・成立し,同年7月20日に施行された。その他の適用除外制度についても,「規制緩和推進3か年計画」(平成10年3月31日閣議決定)等に基づき検討が行われ,平成11年2月16日,不況カルテル制度及び合理化カルテル制度の廃止,独占禁止法の適用除外等に関する法律の廃止等を内容とする「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案」が第145回国会に提出され,同年6月15日に可決・成立し,同年7月23日に施行された。
 さらに,「規制緩和推進3か年計画(改定)」(平成11年3月30日閣議決定)においては,独占禁止法第21条(自然独占に固有の行為に関する適用除外制度)について引き続き検討することとされたが,第21条については規定を削除するとの結論を得たことから,同条の削除を含む「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」が平成12年3月21日に第147回国会に提出され,同年5月12日に可決・成立し,同年6月19日に施行された。
 これらの措置により,平成7年度末において30法律89制度存在した適用除外制度は,平成13年度末現在,16法律22制度(再販売価格維持契約制度を含む。)まで縮減された。
3 適用除外カルテルの動向
(1) 概況
ア 適用除外カルテルの概要
 価格,数量,販路等のカルテルは,公正かつ自由な競争を妨げるものとして,独占禁止法上禁止されているが,その一方で,他の政策目的を達成する等の観点から,個々の適用除外制度ごとに設けられた一定の要件・手続の下で,特定のカルテルが例外的に許容される場合がある。
 このような適用除外カルテル制度が認められるのは,当該事業の特殊性のため(保険業法に基づく保険カルテル)地域住民の生活に必要な旅客輸送(いわゆる生活路線)を確保するため(道路運送法等に基づく運輸カルテル),国際的な協定にかかわるものであって諸外国においても適用除外が認められているため(航空法等に基づく国際運輸カルテル)等,様々な理由による。
 個別法に基づく適用除外カルテルについては,一般に,当委員会の同意を得,又は当委員会へ協議若しくは通知を行って主務大臣が認可を行うこととなっている。
 また,適用除外カルテルの認可に当たっては,一般に,当該適用除外カルテル制度の目的を達成するために必要であること等の積極的要件のほか,当該カルテルが弊害をもたらしたりすることのないよう,カルテルの目的を達成するために必要な限度を超えないこと,不当に差別的でないこと等の消極的要件を充足することがそれぞれの法律により必要とされている。
 さらに,このような適用除外カルテルについては,不公正な取引方法に該当する行為が用いられた場合等には独占禁止法の適用除外とはならないとする,いわゆるただし書規定が設けられている。
イ 通用除外カルテルの動向
 当委員会が認可し,又は当委員会の同意を得,又は当委員会に協議若しくは通知を行って主務大臣が認可等を行ったカルテルの件数は,昭和40年度未の1079件(中小企業団体の組識に関する法律に基づくカルテルのように,同一業種について都道府県等の地区別に結成されている組合ごとにカルテルが締結されている場合等に,同一業種についてのカルテルを1件として算定する,件数は415件)をピークに減少傾向にあり,また,適用除外カルテル制度そのものが大幅に縮減されたこともあり,平成13年度末現在,20件となっている。
(2) 独占禁止法に基づく適用除外カルテル
 独占禁止法に基づく不況カルテル制度及び合理化カルテル制度については.前記2(2)のとおり私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律により廃止されたが,不況カルテルについては平成元年10月以降,合理化カルテルについては昭和57年1月以降,それぞれ実施されたものはなかった。
(3) 個別法に基づく適用除外カルテル
ア 概要
 平成13年度において,個別法に基づき主務大臣から当委員会に対し同意を求め,又は協議若しくは通知のあったカルテルの処理状況は第2表のとおりでり,このうち現在実施されている個別法に基づくカルテルの動向は,次のとおりである。
第2表 平成13年度における適用除外カルテルの処理状況

    
イ 保険業法に基づくカルテル
保険業法に基づき損害保険会社が,
(ア)航空保険事業,原子力保険事業,自動車損害賠償補償法に基づく自賠責保険事業
若しくは地震保険契約に関する法律に基づく地震保険事業についての共同行為
又は
(イ)(ア)以外の保険で共同再保険を必要とするものについての一定の共同行為
を行う場合には,金融庁長官の認可を受ける必要があり,金融庁長官はその認可に際し当委員会の同意を得ることとされている。
 平成13年度において,金融庁長官から同意を求められたものは6件であった(いずれも変更認可に係るもの)。
 また,平成13年度未における同法に基づく共同行為は8件である。
ウ 損害保険料率算出団体に関する法律に基づくカルテル
 損害保険料率算出団体が自動車損害賠償責任保険及び地震保険について基準料率を算出した場合には,金融庁長官に届け出なければならないこととされており,金融庁長官は届出を受理したときは当委員会に通知しなければならないこととされている。
 平成13年度において,金融庁長官から通知を受けたものは1件であった。
 また,平成13年度末における同法に基づくカルテルは2件である。
エ 道路運送法に基づくカルテル
 一般乗合旅客自動車運送事業者が,輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる路線において地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため,又は旅客の利便を増進する適切な運行時刻を設定するため,同一路線において事業を経営する他の一般乗合旅客自動車運送車業者と共同経営に関する協定を締結,変更しようとする場合には,国土交通大臣の認可を受けなればならないとされており,国土交通大臣は認可する際には当委員会に協議することとされている。
 平成13年度において,国土交通大臣から協議を受けたものはなかった。
 また,平成13年度末における同法に基づくカルテルは0件である。
オ 内航海運組合法に基づくカルテル
 内航海運組合法に基づき内航海運組合が調整事業を行う場合には,調整規定又は団体協約を設定し,国土交通大臣の認可を受ける必要があり,国土交通大臣は認可をする際には当委員会に協議することとされている。
 平成13年度において,国土交通大臣から協議を受けたものは2件であった。
 また,平成13年度末における同法に基づくカルテルは1件である。
カ 海上運送法に基づくカルテル
(ア)内航海運カルテル
 本邦の各港間の航路に関しては,地域住民の生活に必要な族客輸送を確保するため,旅客の利便を増進する適切な運航日程・運航時刻を設定するため,又は貨物の運送の利用者の利便を増進する適切な運航日程を設定するため,定期航路事業者が行う共同経営に関する協定の締結・変更については,国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされており,国土交通大臣は認可をする際には当委員会に協議することとされている。
 平成13年度において,国土交通大臣から協議を受けたものは1件であった。
 また,平成13年度末における同法に基づくカルテルは9件である。
(イ)外航海運カルテル
 本邦の港と本邦以外の地域の港との間の航路に関しては,船舶運航事業者が他の船舶運航事業者とする運賃及び料金その他の運送条件,航路,配船並びに積取りに関する事項を内容とする協定,契約又は共同行為については,その締結・変更についてあらかじめ国土交通大臣に届け出なければならないこととされており,国土交通大臣は届出を受理したときは当委員会に通知しなければならないこととされている。
 平成13年度において,国土交通大臣から協定等の締結等について通知を受けたものは7件であった。
キ 航空法に基づくカルテル
 平成13年度において,個別法に基づき主務大臣から当委員会に対し同意を求め,又は協議若しくは通知のあったカルテルの処理状況は第2表のとおりであり,このうち現在実施されている個別法に基づくカルテルの動向は,次のとおりである。
 本邦内の地点と本邦外の地点との間の路線又は本邦外の各地間の路線において公衆の利便を増進するため,本邦航空運送事業者が他の航空運送事業者と行う連絡運輸に関する契約、運賃協定その他の運輸に関する協定の締結・変更については,国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされており,国土交通大臣は認可をする際には当委員会に通知することとされている。
 平成13年度において,国土交通大臣から通知を受けたものは241件であった。
4 著作物再販適用除外制度の取扱いについて
 商品の供給者がその商品の取引先である事業者に対してその販売する価格を指示し,これを遵守させることは,原則として,不公正な取引方法(再販売価格の拘束)に該当し,独占禁止法第19条違反に問われるものであるが,同法第23条の規定に基づき,著作物を対象とするものについては,例外的に独占禁止法の適用を除外されている(著作物再販適用除外制度)。
 著作物再販制度については,平成10年3月に,競争政策の観点からは廃止の方向で検討されるべきものであるが,本来的な対応とはいえないものの文化の振興・普及と関係する面もあるとの指摘があることから,著作物再販制度を廃止した場合の影響も含め引き続き検討し,一定期間経過後に制度自体の存廃について結論を得る旨の見解を公表した。
 これに基づき,著作物再販制度を廃止した場合の影響等について関係業界と対話を行うとともに,国民各層から意見を求めるなどして検討を進めてきたところ,平成13年3月,下記のとおり取り扱うこととしたところであり,平成13年度においては,下記の結論を受け,現行の著作物再販制度の下で関係業界における運用の弾力化の取組等,著作物の流通についての意見交換を行うため,当委員会,関係事業者,消費者,学識経験者等を構成員とする著作物再販協議会を設け,平成13年12月,第1回会合を開催した。
(1) 著作物再販制度は,独占禁止法上原則禁止されている再販売価格維持行為に対する適用除外制度であり,競争政策の観点からは伺制度を廃止し,著作物の流通において競争が促進されるべきであると考える。
 しかしながら,国民各層から寄せられた意見をみると,著作物再販制度を廃止すべきとする意見がある反面,文化・公共面での影響が生じるおそれがあるとし,同制度の廃止に反対する意見も多く,なお同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況にある。
 したがって,現段階において独占禁止法の改正に向けた措置を講じて著作物再販制度を廃止することは行わず,当面同制度を存置することが相当であると考える。
(2) 著作物再販制度の下においても,可能な限り運用の弾力化等の取組が進められることによって,消費者利益の向上が図られるよう,関係業界に対し,非再販商品の発行・流通の拡大,各種割引制度の導入等による価格設定の多様化等の方策を一層推進することを提案し,その実施を要請する。また,これらの方策が実効を挙げているか否かを検証し,より効果的な方途を検討するなど,著作物の流通についての意見交換をする場として,当委員会,関係事業者,消費者,学識経験者を構成員とする協議会を設けることとする。当委員会としては,今後とも著作物再販制度の廃止について国民的合意が得られるよう努力を傾注するとともに,当面存知される同制度が硬直的に適用されて消費者利益が害されることがないよう著作物の取引実態の調査・検証に努めることとする。
(3) また,著作物再販制度の対象となる著作物の範囲については,従来から当委員会が解釈・運用してきた6品目(書籍・雑誌,新聞及びレコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)に限ることとする。