第6章 法運用の透明性の確保と独占禁止法違反行為の未然防止

第1 概説

 独占禁止法違反行為の未然防止を図るとともに,同法の運用を効果的なものとするためには,同法の目的,規制内容及び運用の方針が国内外における事業者や消費者に十分理解され,それが深められていくことが不可欠である。このような観点から,当委員会は,各種の広報活動を行うとともに,事業者及び事業者団体のどのような行為が独占禁止法に違反するのかを具体的に明らかにした各種のガイドラインを策定・公表している。
 当委員会は,事業者及び事業者団体による独占禁止法違反行為を未然に防止するため,事業者及び事業者団体が行おうとする具体的な事業活動が独占禁止法上問題がないかどうかについて,個別の相談に応じるほか,他の事業者又は事業者団体の活動の参考に資すると考えられるものについては,それらの事例を主要相談事例集として取りまとめ,公表している。また,合併等に係る事前相談については,他の事業者の活動の参考に資すると考えられるものについて,個別にその都度,その内容を公表している。
 また,事業者における独占禁止法遵守のための取組,すなわち独占禁止法遵守プログラムの必要性・重要性について,普及・啓発に努め,独占禁止法遵守プログラムに関する事業者からの相談に応じるとともに,資料提供等の要望についても適切に対処するなど事業者の自主的な取組に対して支援・助力を行ってきている。
 なお,当委員会のこのような取組は,規制改革推進3か年計画(改定)(平成14年3月29日閣議決定)において盛り込まれているところである。

第2 法運用の明確化

1 概要
 当委員会は,事業者及び事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な活動に役立てるため,事業者及び事業者団体の活動の中でどのような行為が実際に独占禁止法違反となるのかを具体的に示した「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月),「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」(平成5年4月),「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成6年7月),「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成7年10月),「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針」(平成11年7月)等を策定・公表し,それに基づいて,個々の具体的なケースについて事業者等からの相談に応じている。
 平成13年度においては,「酒類の不当廉売に関する考え方の明確化について」を4月に,「リサイクル等に係る共同の取組に関する独占禁止法上の指針」を6月に,「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」を10月に,「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を11月に,「ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価等への対応について」を12月に,それぞれ公表した。また,「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(昭和58年)の改訂原案を,平成14年2月に公表した後,同年4月に改訂・公表した。 
2 リサイクル等に係る共同の取組に関する独占禁止法上の指針
 平成12年6月に循環型社会形成推進基本法が制定され,循環型社会形成のための基本的枠組みが定められたこと等から,今後,広範な分野の多数の事業者が,廃棄物の発生抑制,回収・運搬,再資源化等(以下「リサイクル等」という。)に対する取組を推進していくことが予想される。
 このため,事業者が実施するリサイクル等が競争を阻害することなく円滑に推進されるよう「リサイクル等に係る共同の取組に関する独占禁止法上の指針」を策定・公表した。
3 資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方
 法律上,業務独占が認められている事務系の専門職業のうち,公認会計士,行政書士,弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士及び弁理士の8資格については,資格者を会員とする団体の設立が義務付けられ,資格者には当該団体への入会が義務付けられている(このような性格を持つ8資格の団体を以下「資格者団体」という。)。また,資格者団体は,法律に基づき自主規制を行うこととされている。
 資格者団体による自主規制については,平成13年3月30日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画」を受け,各団体において見直しが進められているところであり,当委員会は,資格者団体による自主規制の見直しやその見直し後の適正な活動に資するため,資格者団体の活動,特に会員間の競争に与える影響が大きいと考えられる報酬,広告及び顧客に関する活動について,「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」を策定・公表した。
4 電気通信事業分野における競争の促進に関する指針
 平成13年1月6日に施行された高度情報通信ネットワーク社会形成基本法において,電気通信事業者間の公正な競争の促進に関する規定が設けられるなど,電気通信事業分野における公正かつ自由な競争を促進していくことが,政府全体としての重要な政策課題の一つとなっている。
 このような状況にかんがみ,当委員会は,総務省と共同して,電気通信事業分野における公正かつ自由な競争をより一層促進していく観点から,独占禁止法及び電気通信事業法それぞれに関する基本的考え方及び問題行為等を記した「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を策定・公表した(第5章第2参照)。

第3 事業活動に関する相談状況

1 概要
 当委員会は,従来から,独占禁止法違反行為の未然防止を図るため,事業者及び事業者団体が実施しようとする具体的な活動が,独占禁止法の不当な取引制限,不公正な取引方法,事業者団体の禁止行為等の規定に照らして問題がないかどうかについて,事業者及び事業者団体からの電話・来庁等による相談に積極的に応じてきており,業界の実情を十分に参酌して相談に対応し,実施しようとする活動について,独占禁止法上の考え方の説明を行っている。
2 事業者及び事業者団体の活動に関する相談の概要
 平成13年度において,事業者の活動に関して受け付けた相談件数は1,432件,事業者団体の活動に関して受け付けた相談件数は460件である(第1図)。
 このうち,特徴的な内容の相談を挙げると,業務提携に関する相談,電子商取引の導入に関する相談,リサイクルへの取組に関する相談などがある。
 なお,事業者及び事業者団体からの相談については,事業者等の独占禁止法に対する理解を一層深めるため,他の事業者等にも参考になると思われる相談の概要を相談事例集として取りまとめ,平成14年3月に公表した。
 また,当委員会は,従来から事業者等からの書面による事前相談に対して書面により回答する事前相談制度を実施してきたが,相談制度の一層の充実を図るため,これを整備し,公正取引委員会が所管する法律(独占禁止法,下請法及び景品表示法)について,平成13年10月に「事業者等の活動に係る事前相談制度」を設けた。
 本制度は,事業者や事業者団体が行おうとする具体的な行為が,前記法律の規定に照らして問題がないかどうかの相談に応じ,原則として,事前相談申出書を受領してから30日以内に書面により回答し,その内容を公表するものである。
3 独占禁止法相談ネットワークの実施
 当委員会は,中小事業者及び事業者団体(以下「中小事業者等」という。)からの独占禁止法(下請法及び景品表示法を含む。)に関する相談に適切に対処することができるように,商工会議所及び商工会の協力の下,独占禁止法相談ネットワークとして,全国の商工会議所及び商工会が有する中小事業者等に対する相談窓口を活用し,中小事業者等から相談を受け付けている。また,平成13年度においては,上記相談窓口への相談事例集等の参考資料の配布,相談業務に従事する経営指導員向けの研修会への講師の派遣,中小事業者向けの独占禁止法等講習会の開催等を行った。
第1図 相談件数の推移

第4 入札談合の防止への取組

 当委員会は,従来から積極的に入札談合の摘発に努めているほか,平成6年7月に「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」を公表し,入札に係るどのような行為が独占禁止法上問題となるかについて具体例を挙げながら明らかにすることによって,入札談合防止の徹底を図っている。
 また,入札談合の未然防止を徹底するためには,発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から,独占禁止法違反の可能性のある行為に関し,発注官庁等から当委員会に対し情報が円滑に提供されるよう,各発注官庁等において,公共入札に関する当委員会との連絡担当官として各省庁の会計課長等が指名されている。
 当委員会は,連絡担当官との連絡・協力体制を一層緊密なものとするため,平成5年度以降,「公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官会議」を開催しており,平成13年度においては,国の本省庁等の連絡担当官会議を9月28日に開催するとともに,国の地方支分部局等の連絡担当官会議を全国9か所で開催した。
 さらに,当委員会は,平成6年度以降,中央官庁,地方自治体,公団・事業団等の調達担当者に対する研修を実施しており,平成13年度においては,全国で32回の研修会に対して講師の派遣及び資料の提供等の協力を行った。

第5 知的財産権に係る競争政策上の問題の検討

1 ソフトウエアと独占禁止法に関する研究会における検討(「ソフトウェアライセンス契約等に関する独占禁止法上の考え方」の公表)
 当委員会では,平成11年7月に「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針」(以下「特許・ノウハウガイドライン」という。)を公表し,特許・ノウハウ等の技術取引に関する独占禁止法上の考え方を示しているところである。ソフトウェアについては,インターネットにかかわる高速かつ常時の接続環境の整備に伴い,ソフトウェアの流通形態が今後大きく変化していくことも予測されるところであるが,(1)ソフトウェアの取引が重要性を増していること,(2)いわゆるネットワーク効果によって市場が独占されやすいものがあること,(3)不断にバージョンアップが繰り返されるなど通常の財とは異なる特徴を持つこと等から,当委員会は,企業の事業活動において重要性を増しているソフトウェアの取引について,独占禁止法上の考え方の明確化を図るため,学識経験者及び実務家からなる「ソフトウェアと独占禁止法に関する研究会」(座長 稗貫俊文 北海道大学教授)を開催し,平成14年3月,本研究会の報告書を公表した。
(1) 検討の視点
 ソフトウェアの取引に関する以下の特徴を踏まえ,独占禁止法上の考え方を明確化した。
 ア コンピュータシステム全体を制御する基本ソフト(OS)などのソフトウェア(以下「プラットフォームソフト」という。)が存在する。
 イ ライセンス契約でソフトウェアの複製,譲渡,改変を禁止するなど,著作権法上の権利の行使とみられる制限が課されることがある。
(2) プラットフォームソフトの技術情報の提供に関する独占禁止法上の考え方
ア プラットフォームソフトは,ハードウェアやアプリケーションソフトが機能するために必要不可欠な基本的な機能を提供する。ハードメーカーやアプリケーションソフトのメーカーは,事実上の標準となったプラットフォームソフトのメーカーの提供するインターフェース等の「技術情報」の提供を受けることが必要であるため,プラットフォームソフトのメーカーによる競争制限的な行為は,プラットフォームソフトだけでなく,ハードウェアやアプリケーションソフトの製品市場又は技術市場における競争にも影響を及ぼす。
イ プラットフォームソフト(基本ソフト)の技術情報の提供に関しては以下の各制限事項について独占禁止法上の考え方の明確化を行った。
(ア)技術情報の提供に関する差別的取扱い・取引拒絶
基本ソフトのメーカーが,
a 競合する他の基本ソフトに対応した製品を供給しているハードメーカーやアプリケーションソフトのメーカー
b 自らが提供するアプリケーションソフトと競合する製品を供給しているアプリケーションソフトのメーカー
に対して,技術情報を提供するに当たり技術情報を提供する時期を遅らせるなど差別的取扱いを行ったり,技術情報を提供しないこと。
(イ)新機能の追加(機能的抱き合わせ)の際の技術情報の提供の拒絶
 基本ソフトのメーカーが,バージョンアップ等により既存の基本ソフトに新機能を追加した場合において,競合するアプリケーションソフトのメーカーが,当該新機能と競合するアプリケーションソフトを提供するためには当該基本ソフトのメーカーから技術情報の提供を受けることが必要であるにもかかわらず,他のアプリケーションソフトのメーカーに対して,当該技術情報を提供しない,又は,提供の時期を遅らせること。
(ウ)ハードメーカーやアプリケーションソフトのメーカーが独自に開発した技術の不当な集積
 基本ソフトのメーカーが,ハードウェアやアプリケーションソフトのメーカーに対して技術情報を提供し,ハードウェアやアプリケーションソフトのメーカーが当該基本ソフトに対応した製品の開発の際に得た技術情報について,基本ソフトのメーカーにフィードバックさせるだけでなく,ハードメーカーやアプリケーションソフトのメーカーが独自に開発した技術に関する権利・ノウハウを当該基本ソフトのメーカーに帰属させるよう義務付けたり,競合する基本ソフトに対応した製品の開発に利用することを禁止すること。
(エ)秘密保持義務の不当な拡張
 基本ソフトのメーカーが,ハードメーカーやアプリケーションソフトのメーカーに対して,自社の基本ソフトに対応した製品を開発するために必要な技術情報を提供する際,当該技術情報についての秘密保持義務を不当に拡張し,秘密性を持たない技術情報や,ハードメーカーやアプリケーションソフトのメーカーが独自に開発した技術情報まで秘密保持義務の対象に含めること。
(3) ソフトウエアライセンス契約に関する独占禁止法上の考え方
ア ソフトウェアは主として著作権法上の著作物として保護されるところ,ソフトウェアライセンス契約では,ソフトメーカーによる著作権法上の権利の行使とみられる制限が課される場合がある。
 著作権法上の権利の行使とみられる行為については,独占禁止法第21条の規定の趣旨に照らし,外形上又は形式的には著作権法上の権利の行使とみられるような行為であっても,
(ア)当該行為が不当な取引制限や私的独占の一環を成す行為として,又はこれらの手段として利用されるなど権利の行使に籍口していると認められる場合
(イ)行為の目的,態様や問題となっている行為の市場における競争秩序に与える影響の大きさも勘案した上で,個別具体的に判断した結果,著作権制度の趣旨を逸脱し,又は同制度の目的に反すると認められる場合
には,当該行為は「権利の行使と認められる行為」とは評価できず,独占禁止法が適用されることがあり得る。
 また,ソフトウェアに係る特許権やノウハウに関しては,特許・ノウハウガイドラインの考え方が適用されるものと考えられる。
イ ソフトウェアライセンス契約に関しては以下の各制限事項について独占禁止法上の考え方の明確化を行った。
(ア)複製に関する制限
複製に関して以下のような制限を課すこと。
a 契約に係るソフトウェアを複製した製品だけでなく,他のソフトウェアを複製した製品も含めた出荷実績をライセンス料の算定根拠として用いること。
b 複製回数の不当な上限又は下限の設定。
(イ)改変の制限
 ライセンシーが,ソフトウェアの効果的な利用を目的として,自ら又は第三者(システムインテグレータなど)に委託して,(1)当該ソフトウェアについてデバッグ(誤りの修正)やカスタマイズしたり,(2)当該ソフトウェアを他のソフトウェアやハードウェアに接続したり組み込んだりすることを制限すること。
(ウ)改変の成果に係る権利・ノウハウの譲渡,独占的な利用の許諾
 ライセンシーがライセンサーから許諾を得てソフトウェアを改変する場合において,ライセンサーがライセンシーに対して,ライセンシーが当該契約に係るソフトウェアを改変した場合に,改変の成果に係る権利・ノウハウをライセンサーに譲渡する義務又は独占的な利用を許諾する義務を課すこと。
(エ)リバースエンジニアリングの禁止
 ライセンス契約に係るソフトウェアとインターオペラビリティを持つソフトウェアやハードウェアを開発するために,(1)当該ソフトウェアのインターフェース情報が必要であり,(2)ライセンサーがインターフェイス情報を提供しておらず,(3)ライセンシーにとって,リバースエンジニアリングを行うことが,当該ソフトウェア向けにソフトウェアやハードウェアを開発するために必要不可欠な手段となっているような場合に,ライセンサーがライセンシーに対して,リバースエンジニアリングを行うことを禁止すること。
(注)リバースエンジニアリングとは,「既存の製品を調査・解析してその構造や製造方法などの技術を探知すること」を指す。
(オ)他の製品との抱き合わせ販売
a ソフトメーカーが,ハードメーカーとのプレインストール契約において,当該契約に係るソフトウェアに加えて,当該ソフトメーカーの他のソフトウェアについてもプレインストールして,抱き合わせてエンドユーザーに販売することを義務付けること。
b ソフトメーカーが,流通業者との販売代理店契約において,当該契約に係るソフトウェアに加えて,当該ソフトメーカーの他のソフトウェアについても,抱き合わせてエンドユーザーに販売することを義務付けること。
(カ)競争品の取扱い制限
a ソフトメーカーが,ハードメーカーとのプレインストール契約において,当該ソフトメーカーと競合するソフトメーカーの製品の取扱いを禁止すること。
b ソフトメーカーが,流通業者との販売代理店契約において,当該ソフトメーカーと競合するソフトメーカーの製品の取扱いを禁止すること。
2 技術標準と競争政策に関する研究会における検討
 当委員会は,技術標準に関し,その形成過程及び確立後における競争政策上の問題点を整理し,基本的な考え方について検討を行うため,平成13年4月以降,3回にわたり「技術標準と競争政策に関する研究会」(座長 稗員俊文 北海道大学教授)を開催し,同研究会が取りまとめた報告書を平成13年7月に公表した。その概要は以下のとおりである。
(1) 技術標準をめぐる企業行動
 技術標準とは,VHS(VTR)やウインドウズOS(パソコンの基本ソフト)のように業界において標準となった規格・仕様のことであり,近年の情報通信産業等の著しい技術革新,経済のグローバル化,世界的なプロパテントの潮流の中で,技術標準の重要性は世界的規模で急激に高まっている。
 このような技術標準の形成は、情報通信産業等におけるネットワーク効果を通じ,「独り勝ち」現象を生みやすい傾向にある。
(2) 技術標準をめぐる独占禁止法上の問題
 技術標準が確立すれば製品の便益は拡大し,これを前提に企業は競争を展開し,これを通じて消費者の利益も増大するため,競争政策は技術標準それ自体を問題視するものではない。
 しかしながら,その形成過程や確立後において,以下のような行為が行われる場合には,独占禁止法上問題となり,対処が必要である。
ア 技術標準の形成過程における問題
(ア)競争による技術標準の形成過程における競争制限行為の具体例
(イ)有力企業の連合(フォーラム)における合意による技術標準形成過程における競争制限行為の具体例

イ 技術標準確立後における問題
(ア)技術標準を専有していることを利用した競争制限行為の具体例
(イ)技術標準に関するアクセス拒絶についての考え方
 単独事業者による技術標準に係る特許等のライセンス拒絶は原則として独占禁止法上問題とならないが,フォーラムに係るライセンス拒絶の場合は,以下のように考えられる。
a フォーラム内の権利者によるライセンス拒絶の場合は,独占禁止法違反となり得る。
b フォーラム外の権利者によるライセンス拒絶の場合は,標準策定作業への関与の有無によって,独占禁止法上の評価が異なる。
(a)自己の技術が標準に取り込まれることを全く知らなかった場合等は,原則として独占禁止法上問題とならない。
(b)自己の技術が標準に取り込まれるよう働き掛けを行っていた場合等は,独占禁止法違反となり得る。
(ウ)接続情報の開示の取りやめについての考え方
 技術標準を獲得した本体製品(例:パソコンのOS)に補完製品(本体製品と接続することによって機能する製品 例:パソコンのアプリケーションソフト)を接続するために必要な情報の開示を取りやめ,補完製品市場における競争を制限した場合は,独占禁止法違反となり得る。
(エ)ライセンス料の問題についての考え方
a ライセンス料が事実上ライセンスを拒絶するのと同視できるほど高額な場合は,ライセンス拒絶の問題として取り扱う。
b 当初は権利を主張せず,標準化後に高額なライセンス料を要求する場合は,独占禁止法違反となる場合もある。
(3) まとめ
 公正取引委員会は,こうした独占禁止法違反行為への適切な対処として,(1)違反行為についての十分な監視,(2)情報収集や違反事件の処理についての国際的な連携・協調,(3)技術開発の動向を的確に把握し,違反行為への迅速な対応・効果的な排除措置の設計等の取組が必要である。
 また,技術標準に関する問題については,知的財産当局との連携を図り,競争政策と知的財産制度の双方の観点から検討・対応することが重要である。