第2 勧告等の法的措置

 平成14年度は37件の法的措置を行った。37件のうち,8件については関係人の一部について審判手続を開始し,その他については勧告審決を行った。平成14年度に法的措置を採った37件について違反法条をみると,第3条後段(不当な取引制限)違反33件,第8条第1項第4号(事業者団体による構成員の機能活動の制限)違反1件及び第19条(不公正な取引方法)違反3件となっている。
 法的措置を採った上記37件の概要は,以下のとおりである。
独占禁止法第3条後段違反事件
(1) (株)若鈴ほか32社に対する件(平成14年(勧)第1号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)
 三重県は,別表1記載の7県民局の農林商工部,農林水産商工部,農政部及び建設部において,指名競争入札の方法により測量業務,建設コンサルタント業務又は補償コンサルタント業務のほとんどを発注しており,指名競争入札に当たっては,原則として三重県が指名競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者の中から指名競争入札の参加者を指名している。
 なお,三重県は,平成11年7月31日までは指名した事業者名の公表を行っていたところ,同年8月1日以降は指名した事業者名の公表を取りやめている。
 三重県は,同県内に本店を置く前記有資格者のうち測量業を営む者を審査の上,A等級,B等級又はC等級に区分して格付しているところ,関係人33社(以下「33社」という。)のうち別表2記載の14社を除く19社は平成10年5月31日以前から,同表中(1)記載の7社は平成10年6月1日以降,同表中(2)記載の7社は平成12年6月1日以降,いずれも,三重県からA等級に格付されている。
(イ)  かねてから,三重県が発注する測量業務等について,三重県からA等級に格付された者により受注に関する話合いが行われてきたところ,33社は,遅くとも平成10年6月1日以降(別表2記載の事業者にあっては,それぞれ「期日」欄に記載された年月日ころ以降),三重県が指名競争入札の方法により別表1の7県民局の農林商工部,農林水産商工部,農政部及び建設部において測量業務(航空測量業務を除く。),建設コンサルタント業務(建築コンサルタント業務を除く。)又は補償コンサルタント業務として発注する業務(これらの業務のいずれかを併せて発注する業務を含み,単価契約に係る業務を除く。)のうち三重県内に本店を置く事業者のみが指名される業務(以下「三重県発注の特定測量・設計等業務」という。)について,受注価格の低落防止を図るため
 三重県から33社のうち複数の者が指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,当該業務を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する 
(a)  当該業務について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1社のときは,その者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは,過去の受注業務との関連性又は継続性の事情等を勘案して,受注希望者の間の話合いにより受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,必要に応じ,連絡先会社等と称する事業者を通じて指名状況の把握及び連絡を行い,また,指名競争入札の参加者として指名を受けたその他の事業者の協力を得るなどして,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。 
(ウ)  33社は,前記(イ)により,三重県発注の特定測量・設計等業務の大部分を受注していた。
(エ)  平成13年5月30日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,33社は,同月31日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
  33社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成10年6月1日以降(別表2記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄に記載された年月日ころ以降)行っていた,三重県発注の特定測量・設計等業務について,33社のうち複数の者が指名競争入札の参加の指名を受けた場合に受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を三重県に通知すること。
 前記ウ(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,三重県発注の特定測量・設計等業務について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,三重県が競争入札の方法により発注する特定測量・設計等業務について,受注予定者を決定しないこと。
別表1 7県民局において発注事務を担当する部署

別表2 合意へ中途参加した事業者
(1)
(2)

別表3 被勧告人のうち合併を行った事業者

(2) (株)高橋土建ほか16名に対する件(平成14年(勧)第2号)及び初雁興業(株)ほか14名に対する件(平成14年(勧)第3号)

ア 関係人


イ 違反事実等
(ア) 土木一式工事関係(平成14年(勧)第2号)
(a)  川越市(川越市水道事業管理者を含む。以下「川越市」という。)は,土木一式工事(単価契約の方法により発注するものを除く。以下同じ。)として発注する工事のほとんどすべてを一般競争入札又は指名競争入札の方法により発注しており,一般競争入札に当たっては,あらかじめ指名競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者(以下「有資格者」という。)を対象に,一定の条件を付して入札の参加希望者を募り,当該参加希望者を入札の参加者としており,また,指名競争入札に当たっては,有資格者の中から入札の参加者を指名している。
(b)
 川越市は,有資格者をその事業規模等によりAからDまでのいずれかの等級に格付しており,平成9年度以降,当該格付を2年ごとに見直している。
ii  川越市は,土木一式工事として発注する工事を土木工事又は下水道工事の工種に区分して,それぞれの工事について,その工事の設計金額によってAからDまでの等級に区分し,その発注に当たっては,原則として,前記区分に対応する等級に格付している者を一般競争入札又は指名競争入札の参加者としているところ,いずれの工事についても同一の等級に格付している者のみを入札の参加者としている。
(c)
 関係人17名(以下「17名」という。)のうち,(株)グリーンロードを除く16名は平成9年度以降,(株)グリーンロードは平成11年度以降,いずれも,川越市から有資格者として,土木一式工事についてAの等級に格付されている者である。
ii  別表1記載の3社(以下「3社」という。)のうち(株)加藤組を除く2社は平成9年度から平成12年度までの4年間,(株)加藤組は平成11年度及び平成12年度の2年間,川越市から有資格者として,土木一式工事についてAの等級に格付されていた者であるが,いずれも平成13年度以降,Bの等級に格付されている者である。
 17名及び3社の20名(以下「20名」という。)は,遅くとも平成9年4月1日((株)グリーンロード及び(株)加藤組にあっては平成11年6月22日ころ)以降,川越市が土木一式工事についてAの等級に格付し,埼玉県川越市内に本店又は営業所等を置く者のみを入札参加者として一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(以下「川越市発注の特定土木工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  川越市が行う一般競争入札に参加の申込みをした場合又は川越市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
 当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1名のときは,その者を受注予定者とする
ii  受注希望者が複数のときは,工事場所,過去の受注工事との関連性等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより,受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように.協力する
旨の合意の下に,必要に応じ,委員長等と称する者の助言を得て,また,一般競争入札又は指名競争入札に参加したその他の建設業者の協力を得て,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 20名は,前記bにより,川越市発注の特定土木工事のほとんどを受注していた。
(a)  3社は,平成13年度以降,川越市から,土木一式工事についてBの等級に格付されたことにより,平成13年4月1日以降,川越市発注の特定土木工事の入札に参加していないため,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
(b)  平成13年5月8日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,17名は,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。

(イ) ほ装工事関係(平成14年(勧)第3号)
(a)  川越市は,ほ装工事(単価契約の方法により発注するものを除く。以下同じ。)として発注する工事のほとんどすべてを一般競争入札又は指名競争入札の方法により発注しており,一般競争入札に当たっては,有資格者を対象に,一定の条件を付して入札の参加希望者を募り,当該参加希望者を入札の参加者としており,また,指名競争入札に当たっては,有資格者の中から入札の参加者を指名している。
(b)
 川越市は,有資格者をその事業規模等によりAからDまでのいずれかの等級に格付しており,平成9年度以降,当該格付を2年ごとに見直している。
ii  川越市は,ほ装工事として発注する工事について,その工事の設計金額によってAからDまでの等級に区分し,その発注に当たっては,原則として,前記区分に対応する等級に格付している者を一般競争入札又は指名競争入札の参加者としているところ,いずれの工事についても同一の等級に格付している者のみを入札の参加者としている。
(c)
 関係人15名(以下「15名」という。)のうち,別表2記載の事業者を除く11名は平成9年度以降,別表2記載の事業者は平成11年度以降,いずれも,川越市から有資格者として,ほ装工事についてAの等級に格付されている者である。
ii  別表3記載の3社(以下「3社」という。)は,平成9年度から平成12年度までの4年間,川越市から有資格者として,ほ装工事についてAの等級に格付されていた者であるが,平成13年度以降,いずれもBの等級に格付されている者である。
 15名及び3社の18名(以下「18名」という。)は,遅くとも平成9年4月1日(別表2記載の事業者にあっては平成11年6月18日ころ)以降,川越市がほ装工事についてAの等級に格付し,埼玉県川越市内に本店又は営業所等を置く者のみを入札参加者として一般競争入札又は指名競争入札の方法によりほ装工事として発注する工事(以下「川越市発注の特定ほ装工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  川越市が行う一般競争入札に参加の申込みをした場合又は川越市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,受注予定者を決定する
 当該工事について受注希望者が1名のときは,その者を受注予定者とする
ii  受注希望者が複数のときは,工事場所,過去の受注工事との関連性等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより,受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,必要に応じ,委員長等と称する者の助言を得て,また,一般競争入札又は指名競争入札に参加したその他の建設業者の協力を得て,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 18名は,前記bにより,川越市発注の特定ほ装工事のほとんどを受注していた。
(a)  3社は,平成13年度以降,川越市から,ほ装工事についてBの等級に格付されたことにより,平成13年4月1日以降,川越市発注の特定ほ装工事の入札に参加していないため,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
(b)  平成13年5月8日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,15名は,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置  
(ア)  土木一式工事関係
 17名に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも,平成9年4月1日((株)グリーンロードにあっては平成11年6月22日ころ)以降行っていた,川越市発注の特定土木工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を川越市に通知すること。
(a)  前記(ア)aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,川越市発注の特定土木工事について,受注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,川越市が競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事について,受注予定者を決定しないこと。
(イ)  ほ装工事関係
 15名に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも,平成9年4月1日(別表2記載の事業者にあっては平成11年6月18日ころ)以降行っていた,川越市発注の特定ほ装工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を川越市に通知すること。
(a)  前記(イ)aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,川越市発注の特定ほ装工事について,受注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,川越市が競争入札の方法によりほ装工事として発注する工事について,受注予定者を決定しないこと。

別表1  平成13年度以降川越市発注の特定土木工事の入札に参加していない事業者


別表2 合意へ中途参加した事業者(平成14年(勧)第3号)


別表3  平成13年度以降川越市発注のほ装工事の入札に参加していない業者


(3)  ライト工業(株)ほか26社に対する件(平成14年(勧)第4号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)  神奈川県及び神奈川県企業庁(以下「神奈川県等」という。)は,のり面保護工事(工種がのり面保護工のみであるもの又は主たる工種がのり面保護工であるものをいう。以下同じ。)のほとんどすべてを指名競争入札の方法により発注しており,指名競争入札に当たっては,競争入札に参加する資格を有することについて神奈川県知事の認定を受けた者の中から,当該のり面保護工事を発注する上で適格であると認めた者を指名競争入札の参加者として指名している。
(イ)  関係人27社(以下「27社」という。)及びフジ工業(株)(平成13年12月27日ころ以降,事業活動を取りやめ)の28社(以下「28社」という。)は,遅くとも平成10年4月1日以降(別表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ以降),神奈川県等が指名競争入札の方法により発注するのり面保護工事(以下「神奈川県等発注の特定のり面保護工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
 神奈川県等から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する 
(a)  当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1社のときは,その者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは,営業活動の実績,過去の受注工事との継続性又は関連性,工事場所,受注実績,指名実績等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,横浜市中区所在の横浜キリスト教女子青年会会館において会合を開催するなどして,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(ウ)  28社は,前記(イ)により,神奈川県等発注の特定のり面保護工事の大部分を受注していた。
(エ)  平成13年8月1日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,28社は,同日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
  27社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成10年4月1日以降(別表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」
欄記載の年月日ころ以降)行っていた,神奈川県等発注の特定のり面保護工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を神奈川県等に通知すること。
 前記ウ(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,神奈川県等発注の特定のり面保護工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,神奈川県等が競争入札の方法により発注するのり面保護工事について,受注予定者を決定しないこと。
別表 合意へ中途参加した事業者


(4) 大坪建設(株)ほか22社に対する件(平成14年(勧)第5号)及び五洋建設(株)ほか4社に対する件(平成14年(勧)第6号


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)  長崎県県北振興局等発注の港湾工事等関係(平成14年(勧)第5号) 
(a)  長崎県県北振興局及び同局田平土木事務所(以下「県北振興局等」という)。は,港湾又は漁港の区域内の海上においてコンクリートミキサー船,起重機船又はしゅんせつ船のいずれかを使用して施工する土木工事(以下「海上土木工事」という。)のほとんどを指名競争入札の方法により発注している。
 県北振興局等は,海上土木工事の指名競争入札に当たって,長崎県が,土木一式工事の競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者のうち,いわゆる海上工事業者として選定した,同県の区域においてコンクリートミキサー船,起重機船若しくはしゅんせつ船を保有している者又は過去10年間に同県が発注した海上土木工事を施工した実績を有する者の中から入札参加者を指名している。
(b)  関係人23社(以下「23社」という。)は,いずれも,長崎県から海上工事業者として選定され,県北振興局等が発注する海上土木工事の指名競争入札に参加している。
 かねてから,県北振興局等が指名競争入札の方法により発注する海上土木工事(以下「県北振興局等発注の特定海上土木工事」という。)について,指名競争入札の参加者として指名を受けた海上工事業者の間で,受注価格の低落防止等を図るため,過去の施工実績を相互に尊重することにより入札において競合しないようにする話合いが行われてきたところ,23社は,遅くとも平成10年4月1日以降,同工事について
(a)  県北振興局等から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合には,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
 発注される工事が施工される港湾又は漁港において海上土木工事の施工実績を有する者が当該工事の受注を希望するときは,その者を受注予定者とする
ii  前記i以外について,受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1名のときはその者を受注予定者とし,受注希望者が複数のときは,当該工事が施工される港湾若しくは漁港における過去の施工実績又は当該工事が施工される港湾若しくは漁港と受注希望者の有する施設との距離等の事情を勘案し,受注希望者の間の話合いにより受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 23社は,前記bにより,県北振興局等発注の特定海上土木工事のほとんどすべてを受注していた。
 23社は,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始した後の平成13年11月22日,23社が正会員として加入している社団法人長崎県港湾漁港建設業協会が,臨時総会において,今後会員は独占禁止法を遵守する旨の決議を行ったことを受けて,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(イ)  長崎県対馬支庁発注の美津島漁港広域防波堤本体築造工事関係(平成14年(勧)第6号)
(a)  長崎県は,離島等における漁場の開発又は漁船の避難上特に必要とされる第四種漁港である美津島漁港について,水産庁が策定した漁港整備長期計画に基づき,同漁港が所在する区域を管轄する同県対馬支庁(以下「対馬支庁」という。)に所管させて,平成3年度からの15年間を工期とする計画に基づき広域防波堤の整備を主たる内容とする美津島漁港修築事業を実施してきている。
 なお,漁港法の一部を改正する法律(平成13年法律第92号)が平成14年4月1日に施行されたことに伴い,水産庁が策定した漁港整備長期計画に基づく美津島漁港修築事業は,長崎県が策定した特定漁港漁場整備事業計画に継承されている。
 美津島漁港修築事業における広域防波堤本体のほとんどの部分は,消波機能等を持たせるため,その断面に切れ込みを備えた鉄筋コンクリート構造のケーソン(以下「スリットケーソン」という。)を製作して据え付けるという工法により築造されているところ,同防波堤のスリットケーソンの構造が複雑かつ大型であるなどのため,これを製作し,又は据え付ける工事を施工するには,高度な技術と長崎県の区域には保有する者がいない大型の作業船が必要とされている。
(b)  対馬支庁は,平成3年度から美津島漁港修築事業に係る工事の発注を開始し,平成7年度以降,毎年度,同事業に係る広域防波堤のスリットケーソンの製作又は据付けを含む数件の工事を,指名競争入札の方法により発注しており,指名競争入札に当たっては,長崎県が土木一式工事の競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者のうち,全国業者及び長崎県の区域に本店を置く海上における土木工事の施工能力を有する建設業者(以下「地元業者」という。)の中から指名競争入札の参加者を指名している。
(a)  関係人5社(以下「5社」という。)は,平成7年9月中旬ころ,長崎市所在の五洋建設長崎営業所会議室で開催した各社の営業所長級の者による会合において,対馬支庁が指名競争入札の方法により発注する美津島漁港における広域防波堤のスリットケーソンの製作又は据付けを含む工事(以下「対馬支庁発注の美津島漁港広域防波堤本体築造工事」という。)について,全国業者の中では5社のみが当該工事に係る指名競争入札に参加者として指名されること,その施工困難性等から地元業者が受注を希望しないこと及び各年度に数件の工事が継続して発注されることを予測した上で,対馬支庁から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合には,5社の中から受注予定者を定めることとし
(i)  各年度に発注される工事のうちいずれか1件の工事については五洋建設(株)を
(ii)  五洋建設(株)を受注予定者とする工事を除く工事について,東亜建設工業(株),東洋建設(株),若築建設(株),佐伯建設工業(株)の順に
ii  スリットケーソンの据付工事が当該スリットケーソンの製作工事とは別の工事として発注された場合には,当該スリットケーソンの製作工事を受注した者を
それぞれ,当該工事の受注予定者とし,受注予定者以外の者は受注予定者が受注できるように協力することに合意した。
(b)  5社は,上記(a)の合意に基づき,発注される工事ごとの受注予定者を決定し,当該工事の受注予定者が受注すべき価格を定め,当該工事に係る指名競争入札の参加者として指名された地元業者の協力を得て,受注予定者が受注できるようにしていた。
 5社は,前記bにより,対馬支庁発注の美津島漁港広域防波堤本体築造工事のほとんどを受注していた。
 5社は,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始した後の平成13年11月22日,5社が正会員として加入している社団法人長崎県港湾漁港建設業協会が,臨時総会において,今後会員は独占禁止法を遵守する旨の決議を行ったことを受けて,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
(ア)  長崎県県北振興局等発注の港湾工事等関係23名に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成10年4月1日以降行っていた,県北振興局等発注の特定海上土木工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を県北振興局等に通知すること。
(a)  前記(ア)aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,県北振興局等発注の特定海上土木工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,県北振興局等が競争入札の方法により発注する海上土木工事について,受注予定者を決定しないこと。
(イ)  長崎県対馬支庁発注の美津島漁港広域防波堤本体築造工事関係5名に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成7年9月中旬ころに開催した営業所長級の者による会合における合意に基づき,対馬支庁発注の美津島漁港広域防波堤本体築造工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を対馬支庁及び美津島漁港広域防波堤本体築造工事の指名競争入札に参加したことのある5社以外の建設業者に通知すること。
(a)  前記(イ)aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,長崎県対馬支庁発注の美津島漁港広域防波堤本体築造工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,対馬支庁が競争入札の方法により発注する美津島漁港広域防波堤本体築造工事について,受注予定者を決定しないこと。