(9) 四国ロードサービス(株)ほか3社に対する件(平成14年(勧)第19号)

ア 関係人

イ 違反事実等
(ア)  日本道路公団四国支社(平成8年6月30日までは同公団高松建設局。以下「四国支社」という。)は,平成9年度以降,順次,道路保全土木工事(交通規制,交通事故復旧・補修工事,清掃作業,雪氷対策作業,緊急作業及び植栽作業の各業務を年間を通じて総合的に実施する業務をいう。以下「保全工事」という。)を公募型指名競争入札の方法により発注しており,公募型指名競争入札に当たっては,四国支社が保全工事の競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者を対象に,公募の条件を示して入札の参加希望者を募り,当該参加希望者に施工計画等の技術資料を提出させ,これら技術資料の審査を行った上で,審査基準を満たしている者の中から指名競争入札の参加者を指名している。
 なお,四国支社は,保全工事を公募型指名競争入札の方法により発注した場合,原則として,その次年度及び次々年度の当該保全工事を随意契約の方法により当初年度の契約業者に発注している。
(イ)
(a)  四国ロードサービス(株)は,四国支社が平成8年度までに随意契約の方法により発注した保全工事のすべてを受注していたことなどから,四国支社が,平成9年度以降,順次,保全工事を公募型指名競争入札の方法により発注することとなっても,自社が四国支社発注の保全工事のすべてを受注したいとの強い希望を有していたところ,遅くとも平成9年2月ころまでに,四国支社においても公募型指名競争入札が導入され,当該公募型指名競争入札の実施においては複数の参加者が必要である等の情報を得た。
(b)  四国ロードサービス(株)は,四国支社発注の保全工事が公募型指名競争入札の方法により発注されると,自社が受注することができなくなるおそれがあることから,自社が四国支社発注の保全工事のすべてを確実に受注できるようにするための方策を講ずることとし,また,公募型指名競争入札の際には自社が受注することを前提とした上で複数の入札参加者を確保するため,中国地区において保全工事の受注実績を有する(株)山陽メンテック,(株)ショウテクノ,東中国道路メンテナンス(株)等に対し,四国支社が発注する保全工事の公募型指名競争入札に応募し,入札の参加者としての指名を受けるよう依頼した。
(c)  (株)山陽メンテック,(株)ショウテクノ及び東中国道路メンテナンス(株)(以下「中国地区3社」という。)は,当該依頼に応じれば,四国ロードサービス(株)は日本道路公団中国支社が公募型指名競争入札の方法により発注する保全工事の入札に参加しないと考え,平成9年5月ころまでに四国ロードサービス(株)からの当該依頼に応じることとした。
 日本道路公団が発注する保全工事の施工業者の大部分が加入していた日本道路管理協会維持管理部会の会員であった施工業者の間においては,かねてから,会合等において,競争入札制度の導入後の保全工事の受注のための方策が検討され,保全工事については競争入札制度の導入後も,その工事の性質等から,当該保全工事を既に施工している者が継続して受注することが望ましい旨の認識が醸成されていたところ,四国ロードサービス(株)及び中国地区3社の関係人4社(以下「4社」という。)は,前記aの入札参加の依頼の連絡等を通じて,遅くとも平成9年6月ころまでに,日本道路公団が発注する保全工事についてはその受注実績を尊重し,受注実績を有する事業者が引き続き受注することが望ましい旨認識し,平成9年6月ころ以降,四国支社が公募型指名競争入札の方法により発注する保全工事について,既に当該保全工事を施工している者が確実に受注できるようにする等のため
(a)  当該工事は四国ロードサービス(株)が受注する
(b)  中国地区3社は,四国支社から入札の参加の指名を受けた場合には,四国ロードサービス(株)が受注できるように協力する
旨の合意に基づき,四国ロードサービス(株)が中国地区3社にその入札すべき価格を連絡するとともに,その他の指名業者の協力を得るなどして,四国ロードサービス(株)が受注できるようにしていた。
(ウ)  四国ロードサービス(株)は,前記(イ)bにより,四国支社が公募型指名競争入札の方法により発注する保全工事の大部分を受注していた。
(エ)  平成13年12月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,4社は,四国支社が平成14年度以降公募型指名競争入札の方法により発注する保全工事について,前記(イ)bの合意に基づき四国ロードサービス(株)が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
 4社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  平成9年6月ころ以降行っていた,四国支社が公募型指名競争入札の方法により発注する保全工事について,四国ロードサービス(株)が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  4社は,次の事項を四国支社に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,四国支社が公募型指名競争入札の方法により発注する保全工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  4社は,今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,四国支社が競争入札の方法により発注する保全工事について,受注予定者を決定しないこと。
エ 発注者への要請
 日本道路公団が保全工事の発注に関連して,次のような公募型指名競争入札制度の趣旨にもとる運用等を行っていたことから,今後,同様の運用及び行為を行わず,情報管理を徹底し,競争入札の機能がいかされる方策を講ずるよう要請するとともに,要請に基づいて採った措置について,速やかに,文書をもって公正取引委員会に報告するよう要請した。
(ア)  株式の持ち合い関係若しくは役員の兼任関係があることにより競争機能の発揮が期待し難い事業者のみを公募型指名競争入札の参加者として指名している物件又は同入札の参加者の多くがこれらの関係にある事業者によって占められている物件が多数見受けられた。
(イ)  競争入札制度の導入に際して,公団のいわゆるファミリー企業などと称される一部の事業者にのみ一般への公告前に公募型指名競争入札に関する技術審査基準等の内部情報を伝えるなど,同入札において,これら事業者のみを利する差別的な行為を行っていた。
(ウ)  一部の保全工事の公募型指名競争入札において,その参加者に対し,当該保全工事の受注について発注者としての意向を示していた。
(10) (株)内田洋行ほか4社に対する件(平成14年(勧)第21号)

ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)
 関係人5社(以下「5社」という。)及び別表記載の(株)学習研究社は,九州及び沖縄県を除く富山県,岐阜県及び愛知県以西の地域(以下「西日本地域」という。)において,学校向け理科教材について,原則として,自社の学校向け理科教材の取扱販売業者の販売担当地区が重複しないように,一地区一販売業者として代理店契約等を締結している販売業者を通じて供給を行っている(別表記載のプラス(株)にあっては学校向け理科教材の製造販売業を取りやめるまで,また,同じく,(株)マリスにあっては破産宣告を受けるまでは,それぞれ,同様であった。)。
 西日本地域の地方公共団体,その教育委員会及び学校法人(以下「西日本地域の地方公共団体等」という。)は,学校向け理科教材を自ら又はその設置する各学校を通じて,指名競争入札,見積り合わせ等の方法により発注しており,発注に当たっては,発注仕様書等において発注に係る製品に関して特定の製造販売業者名,カタログの製品番号等を記載している場合が多い。
 なお,発注仕様書等において特定の製造販売業者名,カタログの製品番号等の記載が発注に係る製品に関して参考となる製品を例示するものである場合や発注仕様書等においてそれらの記載とともに「又は同等品」等と付記のある場合には,当該記載の製品と同等の製品を納入することが可能である。
 5社及び学習研究社は,西日本地域の地方公共団体等が発注する学校向け理科教材のほとんどすべてを供給している。
 5社並びに(株)学習研究社,プラス(株)及び(株)マリスの8社(以下「8社」という。)は,西日本地域の学校向け理科教材の営業を担当する各社の部長又は課長級の者による関西理科協議会と称する会合(以下「KRK」という。)を開催して,前記学校向け理科教材の取引に関する問題の検討を行っており,KRKでは各社の持ち回りで会長を選出していた。
(イ)
 8社は,かねてから,西日本地域の地方公共団体等が発注する学校向け理科教材の取引について,秩序ある販売活動が行われるようにするためとして,学校向け理科教材の取引に関する一定の事項を定めていたところ,取引先販売業者に対する指導を適切に行う必要から,平成8年5月15日ころ,大阪市西区に所在するプラス情報機器事業本部大阪営業部の会議室で開催したKRKにおいて 
(a)  西日本地域の地方公共団体等が発注仕様書等において,発注に係る製品に関して,特定の製造販売業者名,カタログの製品番号等を記載している場合には,これをメーカー指定がなされたもの(以下「メーカー指定」という。)として,当該メーカー指定された製品を納入することとし,取引先販売業者がメーカー指定されていない製品をメーカー指定された製品と同等のものとして納入することがないようにすること(以下「メーカー指定の尊重」という。)
(b)  取引先販売業者に対し,メーカー指定の尊重を指導すること
などを定めるKRKルール(以下「KRKルール」という。)を確認し,決定するとともに,これを実施していくこととした。
 8社は,前記aに基づき,日常の営業活動を通じて,取引先販売業者に対してKRKルールに定めるメーカー指定の尊重を周知するとともに
(a)  メーカー指定された製品を取り扱う取引先販売業者からの依頼に応じ,当該メーカー指定された製品が納入できるよう,KRKの会長会社を通じて,事前に他の学校向け理科教材の製造販売業者に対して,同一発注物件の入札等に参加する取引先販売業者への指導を要請し,その要請を受けた製造販売業者はメーカー指定の尊重に基づき取引先販売業者を指導する
(b)  KRKにおいて,地区問題と称してメーカー指定の尊重に反する疑いがある学校向け理科教材の取引が頻発する地区の対応について協議し,問題がある取引の解決を図る
(c)  取引先販売業者がメーカー指定の尊重に則した販売活動を行っていない地区については,取引先販売業者と合同の会合を開催し,当該地区においてメーカー指定の尊重に基づく販売活動が行われるよう指導する
(d)  メーカー指定の尊重に反する取引に関して,必要に応じ,8社間において違約金の授受を行う
などすることにより,西日本地域の地方公共団体等が発注する学校向け理科教材について,メーカー指定の尊重に則した納入が行われるようにしていた。
 (株)学習研究社は平成12年6月ころ以降,プラス(株)は平成13年6月ころ以降,それぞれ,KRKを退会し,KRKルールに基づく行為を行っていない。
(ウ)  8社は,前記(イ)により,西日本地域の地方公共団体等が発注する学校向け理科教材の取引について,おおむね,メーカー指定の尊重に則した納入がされるようにしていた。
(エ)  平成13年12月4日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,5社は,同日以降,前記(イ)のKRKルールに基づく行為を取りやめている。
ウ 排除措置
 5社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  西日本地域の地方公共団体等が発注する学校向け理科教材について,平成8年5月15日ころ,発注仕様書等において発注に係る製品に関して,メーカー指定された当該製品を納入することとし,メーカー指定の尊重を決定し,これを実施する行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  5社は,次の事項を西日本地域の地方公共団体等及びそれぞれの取引先販売業者に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,西日本地域の地方公共団体等が自ら又はその設置する各学校を通じて発注する学校向け理科教材について,前記(ア)の行為と同様の行為を行わず,各社がそれぞれ自主的に販売活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,西日本地域の地方公共団体等が自ら又はその設置する各学校を通じて発注する学校向け理科教材について,発注仕様書等において発注に係る製品に関して,メーカー指定された製品を納入することとし,メーカー指定の尊重を決定し,これを実施しないこと。
別表 関係人以外の事業者

(11) (株)ノザワほか1社に対する件(平成14年(勧)第22号)

ア 関係人

イ 違反事実等
(ア)
 関係人2社(以下「2社」という。)が製造販売する押出成形セメント板(土木用及びプレハブメーカー向けのものを除く。以下「ECP」という。)のうち,厚さ60ミリメートルであり,かつ,幅600ミリメートル以下の表面を平滑にしたもの(以下「60ミリ品」という。)が中心的な製品となっている。また,ECPは,使用される繊維質原料の種類によって,石綿を使用して製造される製品(以下「含アス品」という。)と石綿を使用せずパルプ等を使用して製造される無石綿製品(以下「ノンアス品」という。)に分類される。
 2社の60ミリ品の販売数量の合計は,我が国における60ミリ品の総販売数量のすべてを占めている。
 2社は,60ミリ品のほとんどすべてを,それぞれ,直接又は取引先販売業者を通じて販売施工業者に販売しており,取引先販売業者を通じて販売している場合も,販売施工業者渡し価格については,直接,販売施工業者と交渉して定めており,その価格から取引先販売業者の口銭を差し引いたものを自らの販売価格としている。
 2社及び別表記載の2社の4社は,ECPの製造販売業を営む者を会員として平成8年2月2日ころに設立された押出成形セメント板協会(以下「ECP協会」という。)に加入しており、前記4社の営業担当取締役等は,ECP協会の総務部会(平成11年9月13日ころ前は業務部会)等の会合に出席している(別表記載の2社は,平成12年3月31日ころをもって脱退している。)。
(イ)
 2社は,昭和電工建材(株)とともに,かねてから,アサノサイネックス(株)の安値販売の影響等により60ミリ品の販売価格が下落したことから,ECP協会の業務部会等の会合の場において,値戻しと称して60ミリ品の販売価格の引上げ等に関し情報交換を行ってきたところ,平成11年7月21日ころ,ECP協会の理事会において,アサノサイネックス(株)がECP協会への加入を認められたことから,2社は,同年8月下旬ころ,別表記載の2社を含む4社で60ミリ品の販売価格を引き上げることを企図し,平成11年9月13日ころ以降,前記4社による営業担当取締役等の会合を数次にわたって開催し,60ミリ品の販売価格の引上げ等について検討を行ってきた。 
 2社は,平成12年2月2日ころ,東京都中央区所在のひょうご倶楽部において開催されたECP協会の総務部会において,別表記載の2社がECP事業の業績悪化等を理由にECP事業から撤退することを表明したことから,同部会終了後に営業担当取締役等の会合を開催し,60ミリ品の販売施工業者渡し価格について,同年4月1日出荷分から,含アス品1平方メートル当たり3,800円,ノンアス品同4,200円を目標として引き上げることを決定した。
(ウ)  2社は,前記(イ)bの決定に基づき,おおむね,60ミリ品の販売価格を引き上げていた。
 なお,2社は,前記(イ)bの決定の実効を確保するために,60ミリ品の販売価格の引上げの状況等について話合いを行うとともに,一部の地域において,販売施工業者から提出させた60ミリ品を使用する建築工事物件の情報を提出し合い,当該工事物件について,60ミリ品を納入すべき製造販売業者を決定し,納入すべき製造販売業者が,受注すべき販売施工業者を決定していた。
(エ)  本件について,平成14年2月19日,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,2社は,同月21日ころ,前記(イ)bの決定を破棄するとともに,同日以降,60ミリ品を使用する建築工事物件について,60ミリ品を納入すべき製造販売業者を決定し,納入すべき製造販売業者が受注すべき販売施工業者を決定する行為を取りやめている。
ウ 排除措置
 2社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  それぞれ,平成12年2月2日ころに行った60ミリ品の販売価格の引上げに関する決定を破棄したことを確認すること。
(イ)  2社は,それぞれ,前記(ア)の決定の実効を確保するために,60ミリ品を使用する建築工事物件について,納入すべき製造販売業者を決定し,納入すべき製造販売業者が,受注すべき販売施工業者を決定する行為を取りやめていることを確認すること。
(ウ)  2社は,次のaないしcの事項を60ミリ品の販売施工業者及び需要者に,a及びbの事項を60ミリ品の取引先販売業者に,それぞれ,周知徹底させること。
 前記(ア)及び(イ)に基づいて採った措置
 今後,共同して,60ミリ品について,販売価格を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決める旨
 今後,共同して,60ミリ品を使用する建築工事物件について,納入すべき製造販売業者を決定せず,各社が自主的に営業活動を行う旨及び今後,それぞれが,当該建築工事物件について,受注すべき販売施工業者を決定せず,各販売施工業者がそれぞれ自主的に受注活動を行えるようにする旨
(エ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と60ミリ品について,販売価格に関する情報交換を行わないこと。
(オ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,60ミリ品を使用する建築工事物件について,納入すべき製造販売業者を決定しないこと及び今後60ミリ品を使用する建築工事物件を受注すべき販売施工業者をそれぞれにおいて決定しないこと。
別表 関係人以外の事業者


(12) 及川産業(株)ほか45社に対する件,(株)カツイほか41名に対する件,道央興産(株)ほか16社に対する件,北立舗道(株)ほか15社に対する件及び千葉電気工事(株)ほか16名に対する件(平成15年(勧)第1号〜第5号)

ア 関係人




(注)  みやけん(株)は,本件勧告の翌日の平成15年1月31日,東建工業(株)(札幌市白石区菊水八条四丁目9号)に吸収合併され,消滅したことから,審決を行っていない。
イ 違反事実等
(ア)
 岩見沢市は,建設部,水道部及び産業経済部において標準型指名競争入札と称する指名競争入札(以下「指名競争入札」という。)の方法により一般土木工事のほとんどすべて及び管工事の大部分を,また,建設部及び産業経済部において指名競争入札の方法により造園工事,建築工事及びほ装工事のほとんどすべて並びに電気工事のほとんどを発注しており,指名競争入札に当たっては,岩見沢市が競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者又は複数の有資格者が結成した経常建設共同企業体の中から指名競争入札の参加者を指名している。
 岩見沢建設協会は,北海道岩見沢市の区域に本店を有し,建設工事の請負業を営む法人を正会員とし,会員の技術的,経済的及び社会的地位の向上を図り,もって建設業の健全な発展に寄与すること等を目的とする任意団体であり,一般土木・造園工事の関係人46社(以下「46社」という。)のうち26社,建築工事の関係人42名(以下「42名」という。)のうち15名,管工事の関係人17社(以下「17社」という。)のうち2社及びほ装工事の関係人16社(以下「16社」という。)のうち1社は同協会の正会員である。
 また,岩見沢管工事業協同組合は,中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)の規定に基づき平成元年に設立された事業協同組合であり,17社のうち16社は同組合の組合員である。
(イ)
 岩見沢市が建設部,水道部及び産業経済部において一般土木工事及び管工事として発注する工事又は建設部及び産業経済部において造園工事,建築工事,ほ装工事及び電気工事として発注する工事の発注業務に関わる職員(以下「岩見沢市の発注業務担当職員」という。)は,かねてから,地元企業の安定的及び継続的な受注の確保等を目的として,毎年度,岩見沢市が一般土木工事又は造園工事として発注する工事を含む建設工事について事業者ごとの年間受注目標額を設定していた。
(a)  岩見沢市の発注業務担当職員は,前記(イ)aの年間受注目標額をおおむね達成できるようにするために,岩見沢市が指名競争入札の方法により,建設部,水道部及び産業経済部において一般土木工事若しくは管工事として発注することを予定している工事又は建設部及び産業経済部において造園工事,建築工事若しくは電気工事として発注することを予定している工事のうち岩見沢市の発注業務担当職員が北海道岩見沢市内若しくはその周辺に本店若しくは支店等を置く者が落札することが適当であると判断した工事又は建設部及び産業経済部においてほ装工事として発注することを予定している工事について,指名競争入札の執行前に,物件ごとに,過去の受注実績等を勘案して落札を予定する者(以下「落札予定者」という。)を選定し
 岩見沢市が建設部,水道部及び産業経済部において土木工事又は建設部及び産業経済部において造園工事,建築工事,ほ装工事,電気工事若しくは管工事として発注する工事については落札予定者の名称及び設計金額の概数を,平成13年9月まではかつて岩見沢建設協会の事務局長の職にあった者(以下「建設協会の元事務局長」という。)に,同年10月以降は岩見沢建設協会の会長の職にある者(以下「建設協会の会長」という。)に
ii  岩見沢市が水道部において管工事として発注する工事については,落札予定者の名称及び設計金額の概数又は設計金額を岩見沢管工事業協同組合の専務理事の職にある者(以下「岩見沢管工事業協同組合の専務理事」という。)に
それぞれ示していた。
(b)  また
 建設協会の元事務局長は平成13年9月まで,建設協会の会長から連絡の指示を受けた岩見沢建設協会の事務局長の職にある者は同年10月以降,
(i)  岩見沢市が建設部及び経済産業部において建築工事,管工事又は電気工事として発注する工事について
(ii)  岩見沢市が建設部,水道部及び産業経済部において一般土木工事又は建設部及び産業経済部において造園工事として発注する工事について,自ら,又は落札予定者として選定された者がほ装工事の資格も有する場合は関係人のうち北立舖道(株)の特定の従業員を通じて,
(iii)  岩見沢市が建設部及び産業経済部においてほ装工事として発注する工事について,関係人のうちの北立舗道(株)の特定の従業員を通じて
ii  岩見沢管工事業協同組合の専務理事は、岩見沢市が水道部において管工事として発注する工事について,
それぞれ,落札予定者として選定された者に対して,落札予定者として選定された旨及び設計金額の概数又は示された金額が設計金額の場合は設計金額から若干差し引いた金額を伝えていた(以下,これら建設協会の元事務局長,岩見沢管工事業協同組合の専務理事及び前記北立舗道(株)の特定の従業員を「連絡役」という。)。
 岩見沢市が発注する一般土木工事及び造園工事,建築工事,管工事,ほ装工事並びに電気工事については,かねてから,指名競争入札の参加者として指名を受けた者の間で,受注に関する調整が行われてきたところ,
(a)  46社及び別表1記載の事業者3社の49社(一般土木・造園工事関係)
(b)  42名及び別表2記載の事業者2社の44名(建築工事関係)
(c)  17社(管工事関係)
(d)  16社(ほ装工事関係)
(e)  電気工事の関係人17名(以下「17名」という。)及び別表3記載の事業者2社の19名(電気工事関係)
(各工事において,これらの者のうちの1名が代表者となって経常建設共同企業体を結成する場合を含む。以下同じ。)は,遅くとも平成11年4月1日以降(別表4記載の各工事の事業者にあっては,それぞれ「期日」欄に記載された年月日ころ以降),岩見沢市が指名競争入札の方法により,水道部,建設部及び産業経済部において一般土木工事若しくは管工事又は建設部及び産業経済部において造園工事,建築工事,ほ装工事若しくは電気工事として発注する工事(以下「岩見沢市発注の特定建設工事」という。)について,受注価格の低落防止並びに安定的及び継続的な受注の確保を図るため
 岩見沢市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合であって,連絡役から落札予定者として選定された旨の連絡を受けた者があるときは,その者を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)とする
ii  受注すべき価格は,連絡役から伝えられた金額を基に受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(ウ)  前記cの49社,44名,17社,16社及び19名は,前記(イ)cにより,岩見沢市発注の特定建設工事のほとんどすべて(電気工事にあってはほとんど)を受注していた。
(エ)
 17社のうち,別表5記載の11社が,平成14年4月8日,岩見沢市が指名競争入札の方法により発注する管工事のうち建設部及び産業経済部において発注する工事について,前記(イ)cの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめる旨決議したことにより,17社は,事実上,当該行為を継続することができなくなり,同日ころ以降,管工事に関する当該行為を取りやめている。
 また,17社は,平成14年5月9日,岩見沢市が指名競争入札の方法により発注する管工事のうち水道部において発注する工事について,前記(イ)cの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめる旨決議し,同日ころ以降,当該行為を取りやめている。 
 平成14年5月21日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,岩見沢市の発注業務担当職員は,同日以降,落札予定者の名称及び設計金額の概数を建設協会の会長に示すことを取りやめ,また,46社,42名,16社及び17名はそれぞれ,同日以降,前記(イ)cの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
 各工事の関係人(前記(注)記載の事業者を除く。)に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成11年4月1日以降(別表4記載の各工事の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ以降)行っていた,岩見沢市発注の特定建設工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,岩見沢市が競争入札の方法により発注する一般土木・造園工事,建築工事,管工事,ほ装工事及び電気工事について,受注予定者を決定しないこと。
エ 岩見沢市長に対する改善措置要求について
(ア)  本件について,岩見沢市の発注に関わる複数の職員が,地元企業の安定的及び継続的な受注の確保等を目的として,岩見沢市発注の特定建設工事について,反復,継続して,入札執行前に,同市の幹部の承認又は示唆の下に,事業者ごとに,最近5年間における平均受注金額を算出し,これを基に事業者ごとの当年度中の年間受注目標額を設定し,同目標額をおおむね達成できるように,個別工事ごとに,落札予定者を選定し,落札予定業者の名称及び工事の設計金額の概数等を連絡役に示していた事実が認められた。
(イ)  前記(ア)の岩見沢市の職員の行為は,
 反復,継続して,落札予定者を選定し,落札予定者の名称及び工事の設計金額の概数等を連絡役に教示することにより,入札参加業者に入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律(以下「入札談合等関与行為防止法」という。)第2条第4項に規定する入札談合等を行わせていた行為は同条第5項第1号の規定に該当し
 落札予定者の名称を業界団体の役員等に教示していた行為は同項第2号の規定に該当し
 秘密として管理されている工事の設計金額等を業界団体の役員等に教示していた行為は同項第3号の規定に該当し
いずれも規定する入札談合等関与行為と認められた。
(ウ)  公正取引委員会は,本件勧告と同日,岩見沢市長に対して,入札談合等関与行為防止法第3条第2項の規定に基づき,これらの同市職員の行為の排除のために,必要な改善措置の要求を行った。 
 会計検査院への通知
 入札談合等関与行為防止法のための衆参両院の国会審議において,公正取引委員会と会計検査院の連携協力等を内容とする附帯決議がなされており,公正取引委員会は入札談合等関与行為防止法の規定に基づき,岩見沢市長に対し,改善措置要求を行ったことを会計検査院へ通知した。

別表1  建設業に係る事業活動を取りやめている事業者(平成15年(勧)第1号)

別表2  建設業に係る事業活動を取りやめている事業者(平成15年(勧)第2号)

別表3  岩見沢市が電気工事として発注する工事に係る事業活動を取りやめている事業者(平成15年(勧)第5号)

別表4  合意へ中途参加した事業者

別表5  平成14年4月8日,管工事についての違反行為を取りやめる旨決議した事業者(平成15年(勧)第3号)

(13) 住友電気工業(株)ほか5社に対する件,(株)京三製作所ほか13社,(株)京三製作所ほか7社に対する件及び三球電機(株)ほか11社に対する件(平成15年(勧)第10号〜第13号)

ア 関係人

(注)  松下電器産業(株)については勧告を応諾しなかったので,平成15年4月21日審判開始決定が行われた。

イ 違反事実等
(ア)
 関係人(住友電気工業(株),オムロン(株)及び松下電器産業(株)を除く。)は,道路交通安全施設に関する設計施工,調査研究等を目的として設立された任意団体である東京信号工事協会(以下「東信協」という。)の会員又は準会員であった。
 警視庁は,
(a)  集中制御式交通信号機(周辺機器を含む。以下同じ。)に係る別表1記載の工事(別表1記載の工事が併せて発注されるもの及び別表1記載の工事とそれ以外の交通信号機に係る工事が併せて発注されるものを含む。以下「集中制御式交通信号機新設等工事」という。)
(b)  プログラム多段式交通信号機(周辺機器を含む。以下同じ。)に係る新設工事(同工事とプログラム多段式交通信号機に係る改良工事が併せて発注されるものを含む。以下同じ。),プログラム多段式制御機更新工事並びに改良工事のうち夜間半感応化工事及び多現示化工事(以下「プログラム多段式交通信号機新設等工事」という。)
(c)  集中制御式交通信号機及びプログラム多段式交通信号機に係る交通弱者感応化工事及び視覚障害者用工事(これらの工事が併せて発注されるもの及びこれらの工事に歩行者用灯器増灯工事が併せて発注されるものを含む。以下「交通弱者感応化等工事」という。)
のほとんどすべて及び
(d)  交通信号機に係る信号施設更新工事,テーパーポール更新工事,地下線化工事,代替柱新設工事,車両用灯器増灯工事,歩行者用灯器増灯工事及び信号施設移設工事(これらの工事が併せて発注されるものを含む。以下「信号施設更新等工事」という。)
の大部分を指名競争入札の方法により発注しており,指名競争入札に当たっては,東京都が陸上信号機設置工事の競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者であって,同庁の前記各工事に係る指名競争入札への参加を希望する者の中から各工事の指名競争入札の参加者を指名している。
(a)  警視庁は,
 集中制御式交通信号機新設等工事のうち,更新工事等に関する設計業務
ii  プログラム多段式交通信号機新設等工事のうち,プログラム多段式制御機更新工事に関する設計業務
iii  信号施設更新等工事のうち,信号施設更新工事の大部分並びにテーパーポール更新工事及び信号施設移設工事の一部に関する設計業務
を外部の事業者に委託している。
 各工事の関係人(交通弱者感応化等工事を除く。)は,警視庁又はその委託先が東信協に委託した前記設計業務について,東信協から委託を受けており,当該設計業務(以下「委託設計業務」という。)について,話合いにより(前記b(a)については,おおむね10か所から数10か所の工事場所ごとに,前記b(b)についてはおおむね10か所の工事場所ごとに)委託設計業務を行う者を決定していた。
(b)
 警視庁は,集中制御式交通信号機新設等工事のうち,交通管制機構施設工事及び改良工事の一部について,必要の都度,同工事の関係人のうちいずれかの者又は東信協に設計業務の依頼を行うことがあり,同工事の関係人は,同庁又は東信協から依頼があった場合には,話合いにより当該設計業務への協力(以下「設計協力」という。)を行う者を決定していた。
ii  警視庁は,信号施設更新等工事のうち,テーパーポール更新工事,地下線化工事,代替柱新設工事及び信号施設移設工事について,必要の都度,同工事の関係人のうち,工事場所の近隣に所在する者に対して,直接又は東信協を通じて,設計業務の依頼を行うことがあり,依頼を受けた者は設計協力を行っていた。
(イ)  警視庁が発注する集中制御式交通信号機新設等工事,プログラム多段式交通信号機新設等工事,交通弱者感応化等工事及び信号施設更新等工事(以下「交通信号機工事」という。)については,かねてから,指名競争入札の参加者として指名を受けた者の間で,受注に関する話合いが行われてきたところ,各工事の関係人はそれぞれ,遅くとも平成11年4月1日以降(別表2記載の事業者にあっては,それぞれの「期日」欄に記載された年月日ころ以降),警視庁が指名競争入札の方法により発注する交通信号機工事(以下「警視庁発注の特定交通信号機工事」という。)について,受注機会の均等化(受注機会の確保)及び受注価格の低落防止を図るため
 警視庁から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,別表3―1記載の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する 
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に(プログラム多段式交通信号機新設等工事については,同合意に基づき,別表3―2記載の方法により),受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(ウ)  各工事の関係人は,それぞれ,前記(イ)により,警視庁発注の特定交通信号機工事のほとんどすべてを受注していた。
(エ)  平成14年2月28日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,各工事の関係人は,それぞれ,同日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
 各工事の関係人に対し,それぞれ,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成11年4月1日以降(別表2記載の事業者にあっては,それぞれの「期日」欄に記載された年月日ころ以降)行っていた,警視庁発注の特定交通信号機工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を警視庁に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,該当する警視庁発注の特定交通信号機工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,警視庁が競争入札により発注する特定交通信号機工事について,受注予定者を決定しないこと。

別表1 集中制御式交通信号機新設等工事 

別表2 合意へ中途参加した事業者 

別表3―1 


別表3―2