第3 警告

 平成15年度において警告を行ったものの概要は,第5表のとおりである。

第5表   平成15年度警告事件一覧表


第4 その他の事件処理等の公表

 平成15年度において,公表案件のうち,注意喚起を行ったものの概要は,第6表のとおりである。

第6表   平成15年度のその他の事件処理等の公表

第5 課徴金

 課徴金制度は,カルテルによる経済的利得を国が徴収し,違反行為者がそれをそのまま保持し得ないようにすることによって,社会的公正を確保すると同時に,違反行為の抑止を図り,カルテル禁止規定の実効を確保するため,行政上の措置として設けられているものである。
 課徴金の対象となる行為は,事業者又は事業者団体の行うカルテルのうち,商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的に商品若しくは役務の供給量を制限することによりその対価に影響のあるものであり,これらの行為があった場合に,事業者又は事業者団体の構成事業者に対し課徴金の納付を命じることとされている(第7条の2第1項,第8条の3)。
 平成15年度においては,507件,総額43億2508万円の課徴金の納付を命じた(第7表)。
 なお,平成15年度に課徴金の納付を命じた507件のうち,53件について審判開始請求があり,これらについてはいずれも審判開始決定を行ったことから合計7億4108万円の課徴金納付命令(平成15年(納)第262号,第264号,第266号,第268号,第270号ないし第272号,第274号,第282号,第283号,第285号,第287号,第291号,第307号,第346号,第353号,第394号,第396,第399号ないし第403号,第405号ないし第407号,第409号ないし第412号,第417号,第422号,第427号,第431号,第438号,第467号,第470号,第473号,第475号ないし第478号,第481号,第486号,第487号,第490号,第491号,第499号,第502号,第517号,第523号,平成16年(納)第137号及び第141号)が審判手続に移行した。この結果,平成15年度の課徴金額は,課徴金の納付を命ずる審決14件を含め,468件38億6996万円となった(第8表)。

課徴金額等の推移

(注)  課徴金の納付を命ずる審決を含み、審判開始決定により審判手続に移行したものを含まない。

第7表   平成15年度課徴金納付命令一覧(課徴金の納付を命ずる審決を除く。)




(注)  上記のほか,課徴金の納付を命ずる審決により,14事業者に対し2億8596万円の課徴金の納付を命じている(第3章審判及び訴訟,第4課徴金納付命令審決参照)。

第8表   課徴金制度の運用状況


(注) 1  課徴金の納付を命ずる審決を含み,審判手続に移行したものを含まない。
2  事件の関係人の一部のみを対象として納付を命じる場合(一部の関係人について審判が行われたため関係人によって課徴金の納付を命じた時期が異なった場合)には,最初の課徴金納付命令が行われた年度に事件数を計上している。
3  平成15年9月12日,協業組合カンセイに係る審決取消請求事件について,審決認定(平成10年3月11日,課徴金額1934万円)の課徴金額のうち967万円を超える部分を取り消す判決が出された。

第6 監査

 当委員会は,審決執行後,当該関係人の動向等を調査することにより,審決の履行状況を監査するとともに違反行為の再発防止に努めている。
 平成15年度における監査事件数は5件であり,行為類型別にみると,私的独占事案が1件,入札談合事案が3件,価格カルテル事案が1件(いずれも審決事案)となっており,これら5件とも本年度中に監査を終了した。

第7 告発

 私的独占,カルテルなどの重大な独占禁止法違反行為については,勧告等の法的措置のほか罰則が設けられているところ,これらについては当委員会による告発を待って論ずることとされている(第96条,第73条第1項)
 当委員会は,平成2年6月20日,「独占禁止法違反行為に対する刑事告発に関する公正取引委員会の方針」を公表して,今後積極的に刑事処罰を求めて告発を行う方針を明らかにしたところである。
 平成15年度においては,平成15年7月2日,東京都発注の水道メーターの受注に係る取引分野における競争を実質的に制限していた行為について,愛知時計電機株式会社等4社及びこれら4社の同水道メーターの受注業務に従事していた者等5名が独占禁止法に違反する犯罪を行ったものと思料して,検事総長に告発した(東京高等検察庁は同年7月23日に起訴)。その概要は以下のとおりである。

1 被告発人
(1)  愛知時計電機株式会社,株式会社金門製作所,リコーエレメックス株式会社,東洋計器株式会社
(2)  愛知時計電機株式会社,株式会社金門製作所,リコーエレメックス株式会社,東洋計器株式会社の東京都発注に係る水道メーターの受注業務に従事していた者4名及び平成14年3月31日まで水道メーターの販売事業を営んでいた株式会社高畑工業の同受注業務に従事していた者1名(計5名)
(注)  株式会社高畑工業は,平成14年4月1日,高畑精工株式会社に吸収合併され解散しているため告発の対象となっていない。

2 告発の根拠
(1) 事実
 被告発会社4社及び前記株式会社高畑工業の東京都発注に係る水道メーターの受注業務に従事していた被告発人5名は,同水道メーターの受注業務に従事する他の水道メーターの製造業者等14社の従業員らとともに,それぞれの所属する会社の業務に関し,東京都が一般競争入札の方法により発注する水道メーターのうち,口径13ミリ,同20ミリ及び同25ミリのものについて,受注予定者を決定するとともに,受注予定者が受注できるような価格で入札を行う旨合意した上,同合意に従って,平成13年7月19日に東京都が発注する前記水道メーターについて,受注予定者を決定し,もって,被告発会社等及び前記14社が共同して,その事業活動を相互に拘束し,遂行することにより,公共の利益に反して,前記水道メーターの受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。
(2) 罰条
 独占禁止法第89条第1項第1号,第95条第1項第1号(平成14年法律第47号による改正前),第3条,刑法第60条