第4章 規制改革・競争政策に関する調査・提言等

第1 概説

1 規制改革の必要性
 我が国では,社会的・経済的な理由により,参入,設備,数量,価格等に係る事業活動が政府により規制されていたり,独占禁止法の適用が除外されていたりする産業分野がみられる。
 確かに,このような政府規制は,戦後における我が国経済の発展過程において一定の役割を果たしてきた。しかし,現在ではこのような規制の必要性は薄れている。なぜなら,社会的・経済的な情勢の変化に伴い,規制が企業の経営効率化を阻害し,企業家精神の発現を妨げ,競争制限的問題を生じさせているケースが増えているからである。
 また,民間需要主導の持続的な経済成長を実現するためには,規制改革を通じて,経済の構造改革を進めていくことが喫緊の課題である。構造改革により,国際的に開かれ,自己責任原則と市場原理に基づいた,民間活力が最大限に発揮される経済社会システムが構築されることが期待されている。
 政府においても,規制改革を通じた経済の活性化は最重要の課題と位置付け,これまで「規制緩和推進計画について」(平成7年3月閣議決定,平成8年3月改定,平成9年3月再改定),「規制緩和推進3か年計画」(平成10年3月閣議決定,平成11年3月改定,平成12年3月再改定),「規制改革推進3か年計画」(平成13年3月閣議決定,平成14年3月改定,平成15年3月再改定)等に基づき計画的に規制改革等を推進してきたところであり,平成16年3月19日には,新たな規制改革に関する計画として,「規制改革・民間開放推進3か年計画」が閣議決定されたところである。公正取引委員会は,こうした規制改革を推進するためのプログラムの策定に当たって積極的に関与するとともに,個別の政府規制制度についても必要に応じて改善のための提言を行うなど,積極的に規制改革に取り組んでいる。
 また,適用除外分野においては,市場メカニズムを通じた良質,廉価な商品・サービスの供給に向けた経営努力が十分に行われず,消費者利益が損なわれるおそれがあるため,独占禁止法の適用除外制度は,自由経済体制の下ではあくまでも例外的な制度として,必要最小限にとどめる必要がある。
2 規制改革・民間開放推進3か年計画
 平成16年度を初年度とする「規制改革・民間開放推進3か年計画」においては,(1)経済活性化による持続的な経済成長の達成,(2)透明性が高く公正で信頼できる経済社会の実現,(3)多様な選択肢の確保された国民生活の実現,(4)国際的に開かれた経済社会の実現等を図り,生活者・消費者本位の経済社会システムの構築と経済の活性化を同時に実現する観点から,行政の各般の分野について,民間開放その他の規制の在り方の改革の積極的かつ抜本的な推進を図り,経済社会の構造改革を一層加速することを目的とするとともに,規制改革の推進に当たっては,これと密接不可分のものとして,市場機能をより発揮するための競争政策の積極的展開を図ることとされた。また,規制改革と競争政策は一体であることから,規制改革・民間開放推進会議と公正取引委員会は,引き続き密接な協力体制を維持するとされている。
 また,重点事項として,独占禁止法のエンフォースメントの見直し・強化等,公正取引委員会における審査機能・体制の見直し・強化が挙げられ,競争政策分野における措置事項では,独占禁止法のエンフォースメント(ルールの実効性を確保するための手段)の見直し・強化については,独占禁止法の措置体系等の見直し等,公正取引委員会における審査機能・休制の見直し・強化については,(1)独占禁止法違反事件に関する審査機能・体制の見直し・強化,(2)企業結合に関する審査機能・体制の見直し・強化が具体的事項として挙げられている。

第2 公共調達と競争政策に関する研究会報告書

「公共調達と競争政策に関する研究会」の開催経緯
 公共調達の分野においては,近年,入札談合に対する社会的批判の高まりを背景として,「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」が平成13年4月に施行され,国や地方公共団体等の行う公共工事の入札・契約について,透明性の確保・公正な競争の促進等の観点からの取組が進んでいるほか,公共調達において発注官庁の職員が入札談合に関与している事例が発生していることから,発注機関の職員の関与を防止するため,平成15年1月には「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律」が施行された。
 こうした状況を踏まえ,公正取引委員会は,平成15年6月以降,公共調達においても民間における調達と同様に,「(一定のコストに対して)最も価値の高い調達」が行われることが必要であるとの基本的考え方に基づき,「公共調達と競争政策に関する研究会」を開催し,公共調達における一層競争的な環境の実現と,入札談合の効果的な防止を図るため,公共調達の入札・契約方法等に関する様々な課題を抽出し,その改善のための方策について検討を行い,同年11月,同研究会の検討結果が報告書として取りまとめられたことから,これを公表した。
 公正取引委員会では,本報告書の提言内容の実現に向け,政府の行政効率化関係省庁連絡会議の場を活用するなどして働きかけを行っている。
2 研究会報告書の概要
(1)   基本的な視点―競争性の確保の必要性
 国・地方公共団体等が費用の安く,質の高いサービスを国民に提供するためには,公共調達において,いかにして「(一定のコストに対して)最も価値の高いものを調達するか」という基本理念に基づき,安くて質の高い物品やサービスを調達することが必要であり,その実現のためには可能な限り競争性を確保していくことが重要である。
 入札談合は悪質な独占禁止法違反行為であるばかりでなく,競争入札の実質を失わしめることを通じて予算の適正な執行等を阻害する行為であり,その排除・防止を図っていくことが必要である。
(2)   競争入札における競争性の徹底
 一般競争入札の対象範囲の拡大と適切な参加資格の設定
 競争に付すべき案件については,一般競争入札の採用を推進すべきである。
 一般競争入札の問題点として,不良・不適格業者の排除が困難との指摘があるが、一般競争入札といえども,入札への参加に必要な資格を定める必要があることは指名競争入札の場合と異なるものではなく,競争参加資格を適切に設定し,また,監督,検査体制を充実することにより対処すべきである。
 発注者サイドにおいても,入札参加業者の経営力や技術力を確保していくための体制整備を図っていくことが必要である。特に,小規模な市町村等については,業務執行体制の整備のため,国・地方公共団体等がデータベースを構築し,適切なデータを提供するなどの補完・支援のための措置を講じていくことが必要である。
 指名競争入札については,対象範囲を限定するとともに,公募型指名競争方式を活用し,入札意欲のある事業者間で活発な競争が行われるようにすることが必要である。
 中小企業の受注機会拡大・地域振興のための発注方法と競争性の確保
 中小企業の健全な成長・育成を図っていく上で競争性の確保は重要であり,発注者において,受注の「機会」の確保にとどまらず,「結果」の確保まで配慮した運用が行われる場合には,中小企業の競争的な体質を弱め,中小企業の健全な成長・育成を阻害しかねないものである。
 競争入札を行うに当たり,事業者の競争参加資格として地域要件(入札参加資格を地元業者に限定)を設定することについては,競争性を確保していく観点から,地方公共団体に対して,過度に競争性を低下させるような運用にならないよう求めていくことが必要である。
 また,地域要件の具体的な在り方についての基本的な考え方を国として明確にして各地方公共団体に周知していくことが必要である。
 特定の建設工事について結成される共同企業体については,事業者が自主的に他の事業者と共同企業体を組織すること自体は問題を生じるものではないが,発注者サイドにおいて,共同企業体の結成を発注の条件として事業者に義務付けることは適当ではないと考えられ,こうした義務付けは廃止していくことが適当である。
ウ 品質の確保
 一般競争入札の推進等に伴ういわゆるダンピング受注や公共工事の品質低下のおそれに関しては,発注者において,低入札価格調査制度や最低制限価格制度を適切に活用することが重要である。
 最低制限価格制度については,発注者の審査体制の整備を図りつつ,低入札価格調査制度への移行を進めていくことが必要である。
 公正取引委員会は,独占禁止法上の不当廉売に該当する事案に接した場合には,厳正に対処することが必要である。
(3)   「最も価値の高い調達」の追求
ア 契約者選定過程の多様化
 公共調達における契約者選定においては,「(一定のコストに対して)最も価値の高い調達」を追求する観点から,案件に応じた契約者選定基準を用いることが必要である。
 発注者において仕様書・設計書の内容が適切に設定でき,また,品質の確保に関する問題が生じるおそれの少ない案件の競争入札においては,引き続き,価格だけを落札基準とする方式が適当である。
 高度な技術力を要する案件,環境の維持についての対策を考慮する必要のある案件等,技術力や品質といった要素が重要な案件の競争入札においては,総合評価落札方式を活用し,価格及び技術・品質等を考慮して落札者を選定することが適当である。
 更に,事業者の発意による技術提案の活用が適当な案件等については,複数の事業者に提案を行わせ,個別の交渉を通じて契約者を選定する「競争的交渉方式」を導入し,入札方式と並ぶ契約者選定方式として位置付けることを検討することが必要である。
イ 債務負担行為の活用
 複数年度にわたることが見込まれる事業でライフサイクルコストを考慮した調達を行うことや,事業の円滑な実施を図る上で複数年度にわたる契約の締結や事業を実施することが合理的な場合には,債務負担行為を積極的に活用し,複数年度契約により実施することが適当であり,国及び地方公共団体においては,債務負担行為を活用することが適当な事業についてガイドライン等の形で明確化することが望まれる。
(4)   入札談合に対する取組
 各発注者は,入札談合の監視のため,発注担当部局から独立した専門家による監視機関を設置し,入札情報の分析を行う体制を整備するとともに,公正取引委員会との連携・協力を一層強化することが必要である。
 各発注者においては,事業者の入札談合を招くことのないよう,発注体制の整備等,適切な発注のための取組を行っていくことが必要である。
 また,公正取引委員会が入札談合等の調査を通じて発注機関の職員の関与行為に接した場合には,当委員会及び各発注機関は,入札談合等関与行為防止法に基づいて厳正に対処することが必要である。
 独占禁止法違反行為に対する発注者の指名停止のタイミングについては,一部の発注者において,審決等により公正取引委員会の最終的な判断が示される前の段階で指名停止措置が講じられている事例がみられるが,事業者に過度な負担が課されないように適切な運用が必要である。なお,各地方公共団体による指名停止の措置状況をみると,指名停止期間等について相当程度のばらつきが認められることから,整合的な運用を図っていくことが必要である。
 損害賠償請求についても,各発注者において適切に活用していくことが望まれる。

第3 公益事業分野における規制改革に関する調査・提言等

ブロードバンドサービス等の競争実態に関する調査報告書
(1)   ブロードバンドサービス等の競争実態に関する調査の実施
 公正取引委員会では,ADSL等のブロードバンドサービスをめぐる急速な競争状況の変化がみられる中,今後の電気通信事業分野における競争政策の的確な運営に役立てるため,ブロードバンドサービスとその付加的サービスであるIP電話の競争実態に関して,事業者に対するアンケート及びヒアリング,ブロードバンドサービスのユーザーに対するアンケート等を中心とした調査を行い,平成16年4月に「ブロードバンドサービス等の競争実態に関する調査報告書」を取りまとめた。
 同報告書の概要は,以下のとおりである。
 ADSL(既存の電話線用メタル回線を使用して加入者に高速なデータ伝送を提供するもの)分野における競争状況
(ア)  競争実態
 事業者アンケートでは,平成12年9月頃からADSLサービスの提供を開始した事業者が急激に増加しており,事業者の活発な参入が見られる。また,事業者からの参入阻害要因に係る大きな意見もない。
 ADSLの加入者ベースでみたシェアは,ソフトバンクBB株式会社(以下「ソフトバンクBB」という。),東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)(NTT東日本及びNTT西日本を以下「NTT東西」という。)がそれぞれ約36%で拮抗している。
 料金競争,通信速度をめぐる競争,付加的サービスをめぐる競争は活発であるが,それは主にインターネット未利用者やナローバンド利用者に向けられたものである。
 ADSL利用者の多くは,パソコンやモデムの再設定,メールアドレス変更の周知等の手間が障害となって,事業者の乗換えは考えていない。
(イ)  競争政策上の考え方
 現段階では,競争が活発に行われているが,NTT東西,ソフトバンクBBによる寡占化の傾向にあると考えられるため,市場の状況について引き続き監視が必要であり,競争を制限する行為に対しては,独占禁止法による厳正な対応が重要である。
 FTTH(光ファイバケーブルを直接加入者宅内に引き込み,加入者に高速なデータ転送を提供するもの)分野における競争状況
(ア)  競争実態
 FTTHの加入者べースでみたシェアは,NTT東西が約73%であり,NTT東西の光ファイバについては,
(1)  コロケーション等接続の容易さや世帯カバー率の高さ等からも利便性が高い
(2)  集合住宅向けFTTHの提供に関して,接続料金の水準は,必ずしも高くないという事業者の声が多い。
 電力会社の光ファイバについては,
(1)  都市の一部でしか芯線貸しサービスを提供していないため,NTT東西の光ファイバと比較して使い勝手が良くない
(2)  変電所にコロケーションするための通信回線を新たに調達する必要があり,利用しにくいという事業者の声が多い。
 FTTH利用者は,他のブロードバンドサービスの料金が低下しても,他の事業者のサービスへ移動するつもりはないとの声が大勢である。
(イ)  競争政策上の考え方
 現段階では,NTT東西によるFTTH利用者の事実上の囲い込みが生じる可能性があるため,NTT東西の光ファイバ設備に対する開放義務について必ずしも見直しの必要性は認められず,今後開放義務の是非について検討する際には,慎重な対応が必要である。
 電力会社の光ファイバ設備については,NTT東西の設備ほど,FTTH事業者にとっては事業を営む上での依存度が高いとはいえず,現段階では,開放義務をかける必要性は高くない。
 将来的に電力会社の光ファイバ設備がNTT東西のものと同程度の利便性を有するものとなってきた場合には,競争条件のイコールフッティングを確保する観点から,接続に関するNTT東西への非対称規制の是非についても検討していくことが必要である。
 CATVインターネット分野における競争状況
(ア)  競争実態
 ADSLやFTTHの他のブロードバンドサービスからの競争圧力はあるものの,同一地域に一つのCATVインターネット事業者しか存在していない場合がほとんどであり,同業者間での競争は活発とはみられない。
(イ)  競争政策上の考え方
 事実上の地域独占となっていることを踏まえ,例えば,それが事業者間の地域分割協定等の競争制限行為に基づくような場合には,独占禁止法による対応が必要である。
 FWA(通信事業者のネットワークと加入者宅の間を電波で結ぶことにより加入者に高速なデータ伝送を提供するもの)・公衆無線LAN分野における競争状況
(ア)  競争実態
 FWA,公衆無線LANは,現段階では,他のブロードバンドサービスの補完的サービスとしての位置付けであり,新規参入はそれほど活発ではなく,同業者間の競争も活発とは考えられない。
 FWAや公衆無線LANのサービスを提供する際に,5GHz帯の周波数帯域が不足しており,こうしたサービスの面的な事業展開を行う際の障害ととなっているとの事業者の意見が多い。
(イ)  競争政策上の考え方
 ブロードバンドサービスの一層の活性化を図るためにも,FWAや公衆無線LANが更に利用されることが期待され,そのためにも,この分野における電波利用上の制約をできる限り減らしていくことが重要であり,周波数割当ての抜本的な見直しについての検討が必要である。
 IP電話の競争状況
(ア)  競争実態
 ユーザーアンケートによると,IP電話の利用者は,ブロードバンド利用者の約20%であり,IP電話事業者数は着実に増加しているもののソフトバンクBBのIP電話がシェア約78%と圧倒的な地位を占めている。
 ソフトバンクBBのIP電話利用者の多くが,利用者数が多いことを理由に,同社のIP電話を選択しており,ソフトバンクBBのIP電話にネットワーク外部性が働いている可能性がある。他方,市場シェアが2位以下の事業者が手を組めばソフトバンクBBに対抗可能であると考えているIP電話事業者が多い。
 IP電話利用者の多くが,固定電話の解約を考えており,IP電話と固定電話との間には強い代替性が存在する可能性がある。
(イ)  競争政策上の考え方
 NTT東西が個人向けIP電話に参入する可能性もあり,ソフトバンクBBのIP電話について,現段階で直ちに開放義務等の規制を課すような政策的対応は好ましくないと考えられる。
 今後,公正取引委員会としては,IP電話について,固定電話との競争の状況を含めて実態の把握に努めつつ,必要に応じて政策提言を行っていく必要がある。
(2)   今後の対応
 ブロードバンドサービスに関しては,競争環境の変化が速く,かつ激しい分野であることから,公正取引委員会としては,今後とも必要に応じてその実態を把握し,所要の政策提言を行っていくほか,この分野において公正かつ自由な競争を制限する行為があれば,独占禁止法等により厳正かつ迅速に対処していくこととしている。
公益事業分野における独占禁止法の適用(ガイドライン等の作成)
(1)   「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」の一部改定について(平成16年6月公表)
 趣旨及び経緯
 公正取引委員会は,平成13年11月,総務省と共同して,電気通信事業分野における公正かつ自由な競争をより一層促進していく観点から,独占禁止法及び電気通信事業法それぞれに関する基本的考え方及び問題行為等を記した「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を作成し,平成14年12月には,法運用事例を踏まえた追加等を内容とする改定を行った。
 今般,電気通信事業法の改正が行われ,平成16年4月に施行されたことから,同年6月、本指針について電気通信事業法の改正等に伴う記述の修正及び法運用事例を踏まえた追加等を内容とする本指針の一部改定を総務省と共同して行った。
 改定の概要
 これまでの法運用事例を踏まえ,独占禁止法上間題となる行為として,電気通信事業者が「端末設備の販売業者に対して,販売業者が店頭,広告等において表示する価格を拘束すること」を追加するとともに,平成16年4月の「電気通信事業法」及び「公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」(総務省作成)の改正に伴う整合性確保のための修正等を行った。
 今後の対応
 公正取引委員会としては,今後とも、電気通信事業分野において公正かつ自由な競争を確保するため,本指針に基づいて,独占禁止法違反行為を厳正・迅速に対処していくとともに,その未然防止に努めていくこととしている。
 また,今後の競争環境の変化や公正取引委員会の違反事件処理の経験等を踏まえ,独占禁止法上の考え方を明らかにする観点から,本指針を適宜機動的に見直すこととしている。
(2)   RPS制度開始に伴う一般廃棄物発電の余剰電力取引について(平成15年8月公表)
 公正取引委員会は,「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」
に基づく制度(以下「RPS制度」という。)(注)が平成15年4月から開始されたことに伴い,新エネルギー等を変換して得られる電気(以下「新エネルギー等電気」という。)に係る取引について,一般廃棄物発電の余剰電力取引を対象として調査を行い,その実態の把握を行った。そして,この調査結果を踏まえ,独占禁止法違反行為の未然防止の観点から,平成15年8月,今後の一般廃棄物発電に係る新エネルギー等電気の取文引について独占禁止法上の考え方を示した。
 (注)  RPS制度(Renewables Portfolio Standard):電気事業者層に対して,毎年,その販売電力量に応じた一定割合以上の新エネルギー等電気の利用を義務付け,新エネルギー等の更なる普及を図るもの。

 一般廃棄物発電の余剰電力取引に関する実態調査の概要
 平成15年4月から開始されたRPS制度では,新エネルギー等の普及を図るため,電気事業者に対して新エネルギー等電気の利用を義務付けているところ,市場原理をより活用した普及を促進する観点から,新エネルギー等電気について電気そのものを購入することなく「新エネルギー等電気相当量(以下「新エネ相当量」という。)」のみを購入して新エネルギー等電気の利用義務を履行する方法が認められており,これにより新エネルギー等電気の発電事業者は,電気と「新エネ相当量」を分離して別々に販売することが可能となっている。
 本制度の導入により,今後,新エネルギー等電気の取引の活性化が予想されるところ,公正取引委員会は,その実態を把握するため,新エネルギー等電気において相当の発電比率を占めることが予想される一般廃棄物発電事業(注)を対象に,余剰電力の販売形態(電気及び「新エネ相当量」の販売方法)及び契約に至る交渉経緯について,一般廃棄物発電事業を営む市町村等と電力会社との取引状況を中心に調査を実施した。
 (注)  一般廃棄物発電事業は,市町村等の清掃工場において,一般廃棄物の焼却時に生じる電気を利用して発電を行う事業であり,その余剰電力のほとんどすべては各地区の電力会社へ販売されている。

 一般廃棄物発電の余剰電力取引に係る独占禁止法上の考え方
 調査の結果,電力会社と市町村等との交渉過程では,一部意見が相違したとする例もみられたが,一般廃棄物発電事業者である各市町村等は,現段階では電気事業者の義務量も小規模であること等から,「新エネ相当量」の取引について実質的な交渉を行ったものはほとんど認められなかった。
 しかしながら,RPS制度が平成22年度に向けて電気事業者の義務量を高める設計になっており,「新エネ相当量」の取引に対する期待は今後更に高まることが予想される。また,調査結果を踏まえると,電力会社が今後の契約交渉過程において独占禁止法上間題となりかねない行為をとることもあり得ると考えられる。このため,独占禁止法違反行為の未然防止の観点から,今後の一般廃棄物発電に係る新エネルギー等電気に関する取引について独占禁止法上の考え方を示している。
(ア)  基本的考え方
 電力の卸取引については,電力会社間取引を除き,いまだ全国的な取引が行われていないこと,電力の小売分野における自由化が進められているといっても新規参入者である特定規模電気事業者(以下「PPS」という。)のシェアはわずか(特定規模需要において0.87%(平成15年1月時点))にすぎず,一般廃棄物発電事業者側からみると余剰電力の販売先として,その管轄内の電力会社に大半は依存している状況にあると認められる。
 このような状況において,電力会社が余剰電力購入に係る独占力を利用して,一般廃棄物発電事業者に対して,新エネルギー等電気の取引条件について不利益な条件の受入れを強要した場合,独占禁止法上問題となるおそれがある。
 また,仮に,電力会社が一般廃棄物発電事業者の「新エネ相当量」を不当に確保し,PPSの事業活動に悪影響を及ぼすこととなれば独占禁止法上問題となるおそれもある。
(イ)  独占禁止法上問題となるおそれのある行為
 基本的考え方を踏まえ,独占禁止法違反行為の未然防止の観点から,現時点で問題となるおそれのある行為を示すと以下のとおり。
 電力会社が,一般廃棄物発電事業者に対して,「新エネ相当量」を含んだ一括のメニューのみを提示し,他のメニューでの取引を拒否する等により,一般廃棄物発電事業者に当該メニューでの取引を余儀なくさせる場合(取引強制等)
 電力会社が,一般廃棄物発電事業者に適用する「新エネ相当量」を分離したメニューにおいて,通常の自家発電設備からの購入単価を正当な理由なく下回る単価を設定する場合等,通常の自家発電設備からの購入における条件と比較し不当に一般廃棄物発電事業者に不利益な条件を設定する場合(取引条件等の差別取扱い等)
 電力会社が,PPSから電力会社に取引先を変更しようとする一般廃棄物発電事業者に対して,不当に低い購入単価を適用する(又は示唆する)場合(差別対価等)
 電力会社が,一般廃棄物発電事業者に対して,長期契約(例えば,RPS制度の実施期間全体に及ぶ契約)のみを提示し,長期にわたる取引を余儀なくさせる場合(拘束条件付取引等)
 公正取引委員会の今後の対応
 公正取引委員会としては,引き続きRPS制度下における新エネルギー等電気の取引の実態を把握し,独占禁止法上問題となる行為が行われた場合には,厳正に対処していくこととしている。
(3)   「高速バスの共同運行に係る独占禁止法上の考え方」について(平成16年2月)
 趣旨及び経緯
 公正取引委員会は,平成9年,道路運送法に基づく適用除外カルテルの範囲が縮減された際に,その当時の制度及び実態に基づいて,道路運送法第19条第1項の協定の認可を受けずに行うことのできる乗合バスの共同運行についての独占禁止法上の考え方を示している。
 その後,平成14年2月の改正道路運送法の施行により需給調整規制が廃.止されたことにより,高速バスにおいては一定の新規参入が生じる等の競争環境の変化が見受けられること,また,そうした中において平成15年5月に東北地区において高速バスを運行する乗合バス事業者による新規参入者の排除につながるおそれのある行為が行われたこと等を踏まえ,平成9年の考え方の高速バスにおける共同運行に係る部分について,原則として独占禁止法上問題のない場合を明確化するため,平成16年2月に「高速バスの共同運行に係る独占禁止法上の考え方」を示した。
 考え方の概要
 一般に,一般旅客自動車運送事業者による,運賃・料金,運行回数又は運行系統を制限する協定及び路線分割,市場分割を行う協定は,原則として問題となるものの,高速バスの運行については,着地が事業者の営業区域から遠隔地にあり,単独では運行しにくい場合が多いという特性があり,こうした特性に応じた必要な範囲を超えない形で行われる次の2つの協定については,路線分割,市場分割を行う協定を除き,原則として独占禁止法上問題とはならないとしている。
(1)  事業者が単独では参入しにくい場合において,新規路線を開設するために行われる共同経営に関する協定
(2)  (1)の目的に基づく協定を既に行っている事業者が単独では当該協定に係る路線を維持することが因難な場合に行われている当該協定
 ただし,原則として独占禁止法上問題ないと考えられる協定であっても,それに参加する事業者が共同して競合路線を運行する他の事業者を排除する,新規参入を阻害する,協定からの脱退を不当に制限する等の行為は独占禁止法上問題となるとしている。
 今後の対応
 公正取引委員会は,規制緩和の趣旨に沿って,高速バス路線における新規参入が円滑に行われ,高速バス事業における公正かつ自由な競争の促進に資するよう,高速バスの共同運行に関して新規参入阻害行為等の独占禁止法上の問題が生じる場合には厳正に対処することとしている。
 また,高速バスの共同運行に係るバス事業者等からの相談に対しては,独占禁止法違反行為の未然防止の観点から積極的に対応することとしている。

第4 知的財産権分野における公正な取引ルールの確立

 知的財産権分野においては,政府としての取組の強化が求められているところであるが,公正取引委員会としても,国民の生活に重大な影響を与える分野の一つとして重点的に取組を行っているところである。
 審査事件としては,業務用カラオケ機器販売等業者による取引妨害事件及び映画配給会社による拘束条件付取引事件を処理し,それぞれ知的財産権の正当な行使とは認められないケースについて勧告を行ったところである。
 また,情報成果物の委託取引については,「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」(平成10年3月公表)の中で,知的財産権等の取扱いにおける優越的地位の濫用についての考え方を示しているところであるが,知的財産権の譲渡,二次利用などに係る問題について独占禁止法上の考え方のより一層の明確化を図る観点から同指針を一部改定した(平成16年3月公表)。
 なお,情報成果物の作成に係る下請取引等を新たに適用対象とする下請法の改正が平成15年に行われ,平成16年4月1日から施行されているところ,下請法の施行に先立ち平成15年11月に公表した下請法に関する運用基準の中で,情報成果物等の作成に係る下請取引において下請事業者の知的財産権が発生する場合に,親事業者が,委託した情報成果物等に加えて,無償で,作成の目的たる使用の範囲を超えて当該知的財産権を親事業者に譲渡・許諾させることは,下請法上問題になるとの考え方を明らかにしている。

第5 独占禁止法適用除外制度

1 独占禁止法適用除外制度の概要
 独占禁止法は,市場における公正かつ自由な競争を促進することにより,一般消費者の利益を確保するとともに国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とし,これを達成するために,私的独占,不当な取引制限,不公正な取引方法等を禁止している。他方,他の政策目的を達成する観点から,特定の分野における一定の行為に独占禁止法の禁止規定等の適用を除外するという適用除外制度が設けられている。
 適用除外制度の根拠規定は,独占禁止法自体に定められているもの及び独占禁止法以外の個別の法律に定められているものに分けることができる。
(1)   独占禁止法に基づく適用除外制度
 独占禁止法は,無体財産権の行使行為(第21条),一定の組合の行為(第22条)及び再販売価格維持契約(第23条)を,それぞれ同法の規定の適用除外としている。
(2)   個別法に基づく適用除外制度
 独占禁止法以外の個別の法律において,特定の事業者又は事業者団体の行為について独占禁止法の適用除外を定めているものとしては,平成15年度末現在,保険業法等14の法律がある。
2 適用除外制度のこれまでの見直しについて
 適用除外制度の多くは,昭和20年代から30年代にかけて,産業の育成・強化,国際競争力強化のための企業経営の安定,合理化等を達成するため,各産業分野において創設されてきたが,個々の事業者において効率化への努力が十分に行われず,事業活動における創意工夫の発揮が阻害されるおそれがあるなどの問題があることから,近年,累次の閣議決定等においてその見直しが決定されてきている。
 個別法に基づく適用除外制度については,「規制緩和推進計画の改定について」(平成8年3月閣議決定)を受け,平成9年2月21日,20法律35制度について廃止等の措置を採るための「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案」が第140回国会に提出され、同年6月13日可決・成立し、同年7月20日に施行された。その他の適用除外制度についても,「規制緩和推進3か年計画」(平成10年3月31日閣議決定)等に基づき検討が行われ,平成11年2月16日,不況カルテル制度及び合理化カルテル制度の廃止,独占禁止法の適用除外等に関する法律の廃止等を内容とする「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案」が第145回国会に提出され,同年6月15日に可決・成立し,同年7月23日に施行された。
 さらに,「規制緩和推進3か年計画(改定)」(平成11年3月30日閣議決定)において,独占禁止法第21条(自然独占に固有の行為に関する適用除外制度)について引き続き検討することとされ,同条については規定を削除するとの結論を得たことから,同条の削除等を内容とする「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」が平成12年3月21日に第147回国会に提出され,同年5月12日に可決・成立し,同年6月19日施行された。
 これらの措置により,平成7年度末において30法律89制度存在した適用除外制度は,平成15年度末現在,15法律21制度(再販売価格維持契約制度を含む。)まで縮減された。公正取引委員会としては,これまでの見直しの経緯を踏まえ,これら制度の今後の運用状況を十分注視していくこととしている。
3 著作物再販制度の取扱いについて
 商品の供給者がその商品の取引先である事業者に対して転売する価格を指示し,これを遵守させることは,原則として,不公正な取引方法(再販売価格の拘束)に該当し,独占禁止法第19条違反に問われるものであるが,同法第23条の規定に基づき,著作物を対象とするものについては,例外的に同法の適用を除外されている(以下「著作物再販制度」という。)。
 著作物再販制度については,平成10年3月に,競争政策の観点からは廃止の方向で検討されるべきものであるが,本来的な対応とはいえないものの文化の振興・普及と関係する面もあるとの指摘があることから,著作物再販制度を廃止した場合の影響も含め引き続き検討し,一定期間経過後に制度自体の存廃について結論を得る旨の見解を公表した。
 これに基づき,著作物再販制度を廃止した場合の影響等について関係業界と対話を行うとともに,国民各層から意見を求めるなどして検討を進めてきたところ,平成13年3月,次のとおり結論を得るに至ったところであり,現行の再販制度の下で関係業界における運用の弾力化の取組等,著作物の流通についての意見交換を行うため,公正取引委員会,関係事業者,消費者,学識経験者等を構成員とする著作物再販協議会を設け,平成13年12月に第1回会合,平成14年6月に第2回会合,平成15年6月に第3回会合を開催した。
(1)  著作物再販制度は,独占禁止法上原則禁止されている再販売価格維持行為に対する適用除外制度であり,競争政策の観点からは同制度を廃止し,著作物の流通において競争が促進されるべきであると考える。
 しかしながら,国民各層から寄せられた意見をみると,著作物再販制度を廃止すべきとする意見がある反面,文化・公共面での影響が生じるおそれがあるとし,同制度の廃止に反対する意見も多く,なお同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況にある。
 したがって,現段階において独占禁止法の改正に向けた措置を講じて著作物再販制度を廃止することは行わず,当面同制度を存置することが相当であると考える。
(2)  著作物再販制度の下においても,可能な限り運用の弾力化等の取組が進められることによって,消費者利益の向上が図られるよう,関係業界に対し,非再販商品の発行・流通の拡大,各種割引制度の導入等による価格設定の多様化等の方策を一層推進することを提案し,その実施を要請する。また,これらの方策が実効を挙げているか否かを検証し,より効果的な方途を検討するなど,著作物の流通についての意見交換をする場として,公正取引委員会,関係事業者,消費者,学識経験者等を構成員とする協議会を設けることとする。公正取引委員会としては,今後とも著作物再販制度の廃止について国民的合意が得られるよう努力を傾注するとともに,当面存置される同制度が硬直的に運用されて消費者利益が害されることがないよう著作物の取引実態の調査・検証に努めることとする。
(3)  また,著作物再販制度の対象となる著作物の範囲については,従来から公正取引委員会が解釈・運用してきた6品目(書籍・雑誌,新聞及びレコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)に限ることとする。
4 適用除外カルテルの動向
(1)   概況
 適用除外カルテルの概要
 価格,数量,販路等のカルテルは,公正かつ自由な競争を妨げるものとして,独占禁止法上禁止されているが,その一方で,他の政策目的を達成する等の観点から,個々の適用除外制度ごとに設けられた一定の要件・手続の下で,特定のカルテルが例外的に許容される場合がある。
 このような適用除外カルテル制度が認められるのは,当該事業の特殊性のため(保険業法に基づく保険カルテル),地域住民の生活に必要な旅客輸送(いわゆる生活路線)を確保するため(道路運送法等に基づく運輸カルテル),国際的な協定にかかわるものであって諸外国においても適用除外が認められているため(航空法等に基づく国際運輸カルテル)等,様々な理由による。
 個別法に基づく適用除外カルテルについては,一般に,公正取引委員会の同意を得,又は公正取引委員会へ協議若しくは通知を行って主務大臣が認可を行うこととなっている。
 また,適用除外カルテルの認可に当たっては,一般に,当該適用除外カルテル制度の目的を達成するために必要であること等の積極的要件のほか,当該カルテルが弊害をもたらしたりすることのないよう,カルテルの目的を達成するために必要な限度を超えないこと,不当に差別的でないこと等の消極的要件を充足することがそれぞれの法律により必要とされている。
 さらに,このような適用除外カルテルについては,不公正な取引方法に該当する行為が用いられた場合等には独占禁止法の適用除外とはならないとする,いわゆるただし書規定が設けられている。
 適用除外カルテルの動向
 公正取引委員会が認可し,又は公正取引委員会の同意を得,又は公正取引委員会に協議若しくは通知を行って主務大臣が認可等を行ったカルテルの件数は,昭和40年度末の1,079件(中小企業団体の組織に関する法律に基づくカルテルのように,同一業種について都道府県等の地区別に結成されている組合ごとにカルテルが締結されている場合等に,同一業種についてのカルテルを1件として算定すると,件数は415件)をピークに減少傾向にあり,また,適用除外カルテル制度そのものが大幅に縮減されたこともあり,平成15年度末現在,23件となっている。
(2)   個別法に基づく適用除外カルテル
 概要
 平成15年度において,個別法に基づき主務大臣から公正取引委員会に対し同意を求め,又は協議若しくは通知のあったカルテルの処理状況は第1表のとおりであり,このうち現在実施されている個別法に基づくカルテルの動向は,次のとおりである。

第1表   平成15年度における適用除外のカルテルの処理状況




 保険業法に基づくカルテル
 保険業法に基づき損害保険会社が,
(1)  航空保険事業,原子力保険事業,自動車損害賠償保障法に基づく自動車損害賠償責任保険事業若しくは地震保険契約に関する法律に基づく地震保険事業についての共同行為
又は
(2)  (1)以外の保険で共同再保険を必要とするものについての一定の共同行為を行う場合には,金融庁長官の認可を受ける必要があり,金融庁長官はその認可に際し公正取引委員会の同意を得ることとされている。
 平成15年度において,金融庁長官から同意を求められたものは1件であった(変更認可に係るもの)。
 また,平成15年度末における同法に基づく共同行為は8件である。
 損害保険料率算出団体に関する法律に基づくカルテル
 損害保険料率算出団体が自動車損害賠償責任保険及び地震保険について基準料率を算出した場合には,金融庁長官に届け出なければならないこととされており,金融庁長官は届出を受理したときは公正取引委員会に通知しなければならないこととされている。
 平成15年度において,金融庁長官から通知を受けたものは1件であった。
 また,平成15年度末における同法に基づくカルテルは2件である。
 道路運送法に基づくカルテル
 一般乗合旅客自動車運送事業者が,輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる路線において地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため,又は旅客の利便を増進する適.切な運行時刻を設定するため,同一路線において事業を経営する他の一般乗合旅客自動車運送事業者と共同経営に関する協定を締結,変更しようとする場合には,国土交通大臣の認可を受けなければならないとされており,国土交通大臣は認可する際には公正取引委員会に協議することとされている。
 平成15年度において,国土交通大臣から協議を受けたものは1件であった。
 また,平成15年度末における同法に基づくカルテルは3件である。
 内航海運組合法に基づくカルテル
 内航海運組合法に基づき内航海運組合が調整事業を行う場合には,調整規程又は団体協約を設定し,国土交通大臣の認可を受ける必要があり,国土交通大臣は認可をする際には公正取引委員会に協議することとされている。
 平成15年度において,国土交通大臣から協議を受けたものはなかった。
 また,平成15年度末における同法に基づくカルテルは1件である。
 海上運送法に基づくカルテル
(ア)  内航海運カルテル
 本邦の各港間の航路に関しては,地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため,旅客の利便を増進する適切な運航日程・運航時刻を設定するため,又は貨物の運送の利用者の利便を増進する適切な運航日程を設定するため,定期航路事業者が行う共同経営に関する協定の締結・変更については,国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされており,国土交通大臣は認可をする際には公正取引委員会に協議することとされている。
 平成15年度において,国土交通大臣から協議を受けたものは4件であった。
 また,平成15年度末における同法に基づくカルテルは9件である。
(イ)  外航海運カルテル
 本邦の港と本邦以外の地域の港との間の航路に関しては,船舶運航事業者が他の船舶運航事業者とする運賃及び料金その他の運送条件,航路,配船並びに積取りに関する事項を内容とする協定,契約又は共同行為については,その締結・変更についてあらかじめ国土交通大臣に届け出なければならないこととされており,国土交通大臣は届出を受理したときは公正取引委員会に通知しなければならないこととされている。
 平成15年度において,国土交通大臣から通知を受けたものは634件であった。
 航空法に基づくカルテル
(ア)  国内航空カルテル
 航空輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる本邦内の各地間の路線において地域住民の生活に必要な旅客運送を確保するため,当該路線において二以上の航空輸送事業者が事業を経営している場合に本邦航空事業者が他の航空運送事業者と行う共同経営に関する協定の締結・変更については,国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされており,国土交通大臣は認可をする際には公正取引委員会に協議することとされている。
 平成15年度において,国土交通大臣から協議を受けたものはなかった。
 また,平成15年度末における同法に基づくカルテルはない。
(イ)  国際航空カルテル
 本邦内の地点と本邦外の地点との間の路線又は本邦外の各地間の路線において公衆の利便を増進するため,本邦航空運送事業者が他の航空運送事業者と行う連絡運輸に関する契約,運賃協定その他の運輸に関する協定の締結・変更については,国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされており,国土交通大臣は認可をする際には公正取引委員会に通知することとされている。
 平成15年度において,国土交通大臣から通知を受けたものは234件であった。