第4 警告

 平成19年度において警告を行ったものの概要は,第14表のとおりである。
第14表 平成19年度警告事件一覧表
第14表 平成19年度警告事件一覧表
第14表 平成19年度警告事件一覧表
第14表 平成19年度警告事件一覧表

第5 課徴金

 課徴金は,カルテル・入札談合等の違反行為防止という行政目的を達成するために行政庁が違反事業者等に対して課す金銭的不利益である。
 課徴金の対象となる行為は,旧法においては,事業者又は事業者団体の行うカルテルのうち,商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的に商品若しくは役務の供給量を制限することによりその対価に影響のあるものであったが,平成18年1月4日に施行された改正独占禁止法においては,事業者又は事業者団体の行うカルテルのうち,商品若しくは役務の対価に係るもの又は商品若しくは役務について供給量,購入量,市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの,及びいわゆる支配型私的独占で被支配事業者が供給する商品若しくは役務について,その対価に係るもの又は供給量,市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの(第7条の2第1項及び第2項,第8条の3)となった。
 平成19年度においては,165件,総額149億2416万円の課徴金の納付を命じた(第15表参照)。
 なお,平成19年度に課徴金の納付を命じた165件のうち,13件について旧法に基づく審判開始請求があり,これらについてはいずれも審判開始決定を行ったことから合計46億5771万円の課徴金納付命令(平成19年(納)第162号ないし第165号,第167号,第170号ないし第174号及び平成20年(納)第1号ないし第3号)が審判手続に移行し,失効した。一方で,課徴金の納付を命ずる審決10件が出され,この結果,平成19年度において確定した課徴金納付命令の件数は162件,これにより確定した課徴金の額は112億9686万円となった(第16表参照)。

第3図 課徴金額等の推移
第3図 課徴金額等の推移
(注)旧法に基づく課徴金の納付を命ずる審決を含み,旧法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を除く。

第15表 平成19年度課徴金納付命令一覧(課徴金の納付を命ずる審決を除く。)
第15表 平成19年度課徴金納付命令一覧(課徴金の納付を命ずる審決を除く。)
第15表 平成19年度課徴金納付命令一覧(課徴金の納付を命ずる審決を除く。)
第15表 平成19年度課徴金納付命令一覧(課徴金の納付を命ずる審決を除く。)
(注)前記のほか,旧法に基づく課徴金の納付を命ずる審決により,10事業者に対し10億3041万円の課徴金の納付を命じている(第3章第4 課徴金の納付を命ずる審決参照)。

第16表 課徴金制度の運用状況(注1)
第16表 課徴金制度の運用状況(注1)
(注) 

1 旧法に基づく課徴金の納付を命ずる審決を含み,旧法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を除く。

2 事件の関係人の一部のみを対象として納付を命じる場合(一部の関係人について審判が行われたため関係人によって課徴金の納付を命じた時期が異なった場合)には,最初の課徴金納付命令が行われた年度に事件数を計上している。

3 平成15年9月12日,協業組合カンセイに係る審決取消請求事件について,審決認定(平成10年3月11日,課徴金額1934万円)の課徴金額のうち967万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

4 平成16年2月20日,土屋企業(株)に係る審決取消請求事件について,審決認定(平成15年6月13日,課徴金586万円)の課徴金額のうち302万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

第6 告発

 私的独占,カルテルなどの重大な独占禁止法違反行為については,排除措置命令等の法的措置のほか罰則が設けられているところ,これらについては公正取引委員会による告発を待って論ずることとされている(第96条,第74条第1項及び第2項)。
 公正取引委員会は,平成17年10月,独占禁止法改正法の趣旨を踏まえ,「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」(注)を公表し,独占禁止法違反行為に対する抑止力強化の観点から,積極的に刑事処罰を求めて告発を行っていくこと等を明らかにしている。
 平成19年度においては,独立行政法人緑資源機構(以下「緑資源機構」という。)が指名競争入札等の方法により発注する緑資源幹線林道事業に係る地質調査・調査測量設計業務の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した行為について,平成19年5月24日及び同年6月13日,地質調査・調査測量設計業務を営む4法人及びこれら4法人の受注業務に従事していた者5名並びに緑資源機構元理事1名及び同機構元課長1名を,独占禁止法に違反する犯罪を行ったものと思料して,それぞれ検事総長に告発した。
(注)平成2年6月に公表した「独占禁止法違反に対する刑事告発に関する方針」を改定したものである。

1 独立行政法人緑資源機構が発注する緑資源幹線林道事業に係る地質調査・調査測量設計業務の入札談合事件に係る告発
(1)被告発人

ア 財団法人林業土木コンサルタンツ,株式会社フォレステック,財団法人森公弘済会,株式会社片平エンジニアリングの4法人
イ 財団法人林業土木コンサルタンツ,株式会社フォレステック,財団法人森公弘済会,株式会社片平エンジニアリングの緑資源幹線林道事業に係る地質調査・調査測量設計業務の受注業務に従事していた者5名
ウ 緑資源機構元理事1名及び同機構元課長1名

(2)告発の根拠

ア 事実
 被告発法人4法人は,地質調査・調査測量設計業務を営む他の事業者とともに,緑資源機構が平成17年度及び平成18年度において指名競争入札等の方法により発注する緑資源幹線林道事業に係る地質調査・調査測量設計業務について,緑資源機構の意向に従って受注予定業者を決定するとともに受注予定業者が受注できるような価格で入札を行う旨を合意した上,同合意に従って受注予定業者を決定し,もって,被告発法人等が共同して,その事業活動を相互に拘束し,遂行することにより,公共の利益に反して,前記地質調査・調査測量設計業務の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。
 また,前記(1)イ記載の被告発人5名及び前記(1)ウ記載の被告発人2名は,それぞれの所属する被告発法人等の業務に関し,同業務の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。
イ 罰条
 第89条第1項第1号,第95条第1項第1号,第3条及び刑法第60条