第1部 総 論

第1 概 説

 公正取引委員会は,平成19年度において,次のような施策に重点を置いて競争政策の運営に積極的に取り組んだ。

1 迅速かつ実効性のある法運用
(1)改正独占禁止法の円滑な運用

 独占禁止法違反行為に対する措置を強化するため,(1)課徴金制度の見直し,(2)課徴金減免制度の導入,(3)犯則調査権限の導入,(4)審判手続の見直し等を内容とする独占禁止法改正法が平成17年4月に成立し,平成18年1月から施行されている。
 改正独占禁止法の運用は,次のとおり,円滑に行われており,期待された効果も着実に現われつつある。
ア 課徴金制度の運用
 平成19年度においては,15事件について,独占禁止法改正法により引き上げられた算定率による課徴金の納付が命じられた。
イ 課徴金減免制度の円滑な運用
 平成19年度においては,課徴金減免制度により,74件の報告等が行われた(独占禁止法改正法施行(平成18年1月)以降の件数は,179件)。課徴金減免制度に基づく情報提供を活用して法的措置が採られた事件として,我が国に所在するマリンホース需要者発注の同製品に係る入札談合事件等がある。
ウ 犯則調査権限の適切な行使
 公正取引委員会は,犯則調査権限の導入に当たって,犯則事件に係る審査のみを行う犯則審査部を新たに設置するなど,行政調査部門と犯則調査部門の間に厳格なファイアーウォールを整備した上で,犯則調査権限を適切に行使しているところである。
 平成19年度においては,独立行政法人緑資源機構発注の林道調査測量設計業務に係る入札談合事件について犯則調査を実施した結果,独占禁止法に違反する犯罪があったと思料して,検事総長に告発を行った。
エ 審査手続等の適正な運用
独占禁止法改正法により,勧告制度が廃止され,排除措置命令を行うこととなった。排除措置命令を行うに当たっては,名あて人となるべき者に対し,予定される排除措置命令の内容等を通知し,申出があったときは,公正取引委員会が認定した事実の基礎となった証拠について説明する等の事前手続を経ることとされた。また,独占禁止法改正法施行前は,違反事件に係る審判手続が開始された場合,当該事件に係る審判手続が終了するまでは課徴金納付命令を行うことができなかったが,独占禁止法改正法により,課徴金納付命令を排除措置命令と同時に行うことができるようになった。
 なお,排除措置命令及び課徴金納付命令の事前手続において,命令の名あて人となるべき者等から申出があった場合には,公正取引委員会の認定した事実又は課徴金の計算の基礎及びその課徴金に係る違反行為を基礎付けるために必要な証拠について説明している。平成19年度中に法的措置を採った事件においては,申出のあった延べ145事業者に対して説明を実施した。これら審査手続の適正な運用により,独占禁止法改正法施行前に比べ,審判手続が開始される割合は著しく減少しているところである(平成15年4月から平成17年12月までの間に行われた勧告及び課徴金納付命令について審判手続が開始された割合は約20.6%であったが,平成18年1月から平成20年3月までの間に改正独占禁止法に基づいて行われた排除措置命令及び課徴金納付命令について審判手続が開始された割合は約1.6%に減少した。)。

(2)独占禁止法違反行為の積極的排除

 平成19年度においては,迅速かつ実効性のある法運用を行うという基本方針の下,特に,価格カルテル・入札談合,中小事業者に不当な不利益を与える優越的地位の濫用などの不公正な取引方法に対し厳正かつ積極的に対応した。
 平成19年度においては,排除措置命令等24件の法的措置を採っており,主な法的措置事件は,次のとおりである。
<平成19年度における主な法的措置事件>
 また,公正取引委員会は,国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案等について,積極的に刑事処分を求めて告発を行うこととしているところ,平成19年度においては,独立行政法人緑資源機構発注の林道調査測量設計業務に係る入札談合事件において,4法人及び7名を,それぞれ検事総長に告発した。

(3)審判手続の適正な運用

 独占禁止法改正法施行前の独占禁止法においては,公正取引委員会による勧告に事業者等が応諾しない等の場合には,公正取引委員会が行う審判開始決定により,審判手続が開始された。これに対し,独占禁止法改正法施行後は,排除措置命令等を受けた事業者等からの請求により審判手続が開始されることとなった。
 平成19年度中における審判件数は112件であり,引き続き適正手続に配意しつつ,慎重かつ効率的な処理に努めた。平成19年度においては,35件(審判審決3件,同意審決21件,課徴金の納付を命ずる審決10件,課徴金納付命令に係る審決1件)について審決を行った。

(4)企業結合規制の的確な運用等

 独占禁止法は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の合併,株式保有等を禁止している。事業活動のグローバル化等の経済環境の急速な変化に伴い,大企業の合併等大型の企業結合事案が増加傾向にある状況において,公正取引委員会は,我が国市場における競争的な市場構造が確保されるよう,企業結合規制の的確な運用を行っている。
ア 企業結合規制の的確な運用
 平成19年度においては,次のような企業結合事案について,的確に処理するとともに,その内容を公表するなどにより,企業結合審査の透明性・予見可能性の一層の向上を図った。
<平成19年度における主な企業結合事案>
イ 企業結合審査の事後的検証調査(平成19年6月公表)
 平成19年度においては,企業結合審査の一層の精緻化に資する観点から,過去に企業結合審査を行った事案について,企業結合後の市場における競争の状況等について分析を行うとともに,審査時点における競争促進要因の認定や問題解消措置の有効性等について検証を行った。

2 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律及び不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案の提出

 平成17年の独占禁止法改正法の附則第13条の規定に鑑み,内閣官房長官の下で「独占禁止法基本問題懇談会」(座長:塩野宏東京大学名誉教授)が,平成17年7月から2年間にわたって開催された。同懇談会は,平成19年6月に報告書を取りまとめ,内閣官房長官に提出した。
 公正取引委員会は,同報告書における独占禁止法見直しに関する提言を踏まえつつ,具体的な法改正の方向性について検討するとともに,公正取引委員会として,我が国経済における公正かつ自由な競争の促進を図る観点から必要と考えられる事項についても検討し,平成19年10月16日,独占禁止法の改正等の基本的考え方について取りまとめた。これを受けて,課徴金の対象範囲の拡大等を内容とする独占禁止法等改正法案が平成20年3月11日,第169回通常国会に提出された。
 同法律案は,同年6月20日,衆議院において閉会中審査(継続審査)とされた。

3 経済のグローバル化への対応

 近年,企業活動のグローバル化の進展に伴い,複数国の競争法に抵触する事案,一国による競争法の執行活動が他国の利益に影響を及ぼし得る事案等が増加するなど,執行活動の国際化及び競争当局間の協力・連携の強化の必要性が高まっている。
 このような状況を踏まえ,公正取引委員会は,次のような取組を行った。

(1)ICN(国際競争ネットワーク)第7回年次総会の主催

 ICNは,競争法執行の手続面及び実体面の収れんを促進することを目的として平成13年10月に発足した各国競争当局を中心としたネットワークであり,公正取引委員会は,平成20年4月,京都においてICN第7回年次総会を主催した。同総会には,世界各国・地域の競争当局のトップレベル及びスタッフレベルの職員のほか,民間の弁護士等,総勢約500名が参加し,平成19年5月に開催された前回総会以降の各作業部会における成果の報告が行われ,「カルテル事案における和解」,「企業結合審査に関して推奨される方法(Recommended Practices)」等について承認された。また,公正取引委員会は,主催当局が企画運営し,主催当局の関心事項について議論する特別プログラムとして,「優越的地位の濫用」に関するパネルを開催した。

(2)二国間・多国間関係,技術支援等

 公正取引委員会は,二国間独占禁止協力協定等を通じ,海外競争当局との協力関係の強化に努めている。また,公正取引委員会は,経済連携協定の重要な要素の一つとして,競争政策を積極的に位置付ける方向で,関係省庁等との連携を図りつつ協定締結交渉に参加するとともに,OECD(経済協力開発機構),ICN,APEC(アジア太平洋経済協力),UNCTAD(国連貿易開発会議),ICPEN(消費者保護及び執行のための国際ネットワーク)等といった多国間における検討にも積極的に参加しているほか,東アジア競争法・政策カンファレンス及び東アジア競争政策トップ会合の開催において主導的な役割を果たしている。
 さらに,開発途上国や移行経済国においては,市場経済における競争法・競争政策の重要性が認識されるに従って,既存の競争法制を強化する動きや,新たに競争法制を導入する動きが活発になっていることから,公正取引委員会は,これら諸国の競争当局等に対し,研修の実施等による技術支援を行っている。
このほか,公正取引委員会の国際的なプレゼンスを向上させ,我が国の競争政策の状況を広く海外に周知するため,英文パンフレットの配布,英文ウェブサイトの充実及び海外の弁護士会が主催するセミナー等への積極的な講師派遣を実施している。
 平成19年度における主な国際的な取組は次のとおりである。
<平成19年度における主な国際的な取組>

4 競争環境の積極的創造に向けた調査・提言
(1)公益事業分野等における規制改革に関する調査等

 公正取引委員会では,公益事業分野等において,公正な競争を確保するため,独占禁止法上問題となる参入阻害行為等を明らかにしたガイドラインの策定のほか,規制改革に関連して調査・提言を行っている。
 平成19年度においては,次のようなガイドラインの策定,調査等を行った。
<公益事業分野等における規制改革に関する調査等>

(2)「建設業におけるコンプライアンスの整備状況−独占禁止法を中心として−」の公表(平成19年5月)

 公正取引委員会は,(1)従来から官製談合事件を含めた入札談合事件が頻発していること,(2)独占禁止法改正法の施行を契機とした業界団体からのコンプライアンス徹底の通知の発出など独占禁止法のコンプライアンスについての関心が高まっていること,(3)公共工事に関して,公共工事の品質確保の促進に関する法律の施行など入札制度改革が急速に進展していることなどを踏まえ,中小企業を含めた建設業者1,700社を対象としたアンケート調査を実施し,報告書「建設業におけるコンプライアンスの整備状況−独占禁止法を中心として−」を取りまとめ,公表した。

5 ルールある競争社会の推進に向けた取組
(1)下請法違反行為の積極的排除

 平成19年2月に政府の成長戦略の一環として取りまとめられた「成長力底上げ戦略」等において下請取引の一層の適正化が重要であると繰り返し位置付けられており,公正取引委員会は,中小企業の自主的な事業活動が阻害されることのないよう,下請法の厳正かつ迅速な運用により,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護に努めている。
 平成19年度においては,次の事件を含む13件の事件において勧告(うち8件は,平成16年4月から規制対象とされた役務委託等に係る事件)を行ったほか,必要に応じ警告の措置を採るなど,役務委託等を含め下請取引の公正化に積極的に取り組んでいる。
<平成19年度における主な勧告事件>

(2)市場参加者としての消費者に対する適切な情報提供の推進

ア 景品表示法違反行為の積極的排除
 公正取引委員会は,消費者向けの商品・サービスの種類や販売方法が多様化する中で,消費者の適正な商品選択が妨げられることのないよう,景品表示法を厳正・迅速に運用することにより,不当表示の排除に努めている。
 平成19年度においては,次の事件を含む56件の事件において排除命令を行ったほか,必要に応じ警告の措置を採るなど積極的に事件処理に取り組んだ。
<平成19年度における主な勧告事件>
イ 消費者取引の適正化
 規制改革の進展に伴い,消費者への適切な情報提供を推進し,消費者の適正な商品選択を確保していくことが重要な課題となっている。このため,公正取引委員会では,景品表示法を厳正に運用し,不当表示等の排除に努めるとともに,消費者の関心の高い商品・サービスにおける表示について実態調査を行い,その結果を踏まえて当該分野においてみられる表示について景品表示法上の考え方を明らかにする等により,消費者取引の適正化に努めている。
 消費者行政をめぐる政府全体の動きとしては,平成20年6月13日,消費者行政推進会議において報告書が取りまとめられ,同月27日,消費者行政推進基本計画が閣議決定された。当該決定において景品表示法は「所要の見直しを行った上で,消費者庁に移管する」とされている。なお,景品表示法に消費者団体訴訟制度を導入すること等を内容とする消費者契約法等の一部を改正する法律案が,平成20年3月,第169回通常国会に提出され,同年4月15日に衆議院本会議で,同月25日に参議院本会議でそれぞれ可決され,成立した。同法律は,同年5月2日に公布され,平成21年4月1日から施行される予定である。

(3)不当廉売,優越的地位の濫用等不公正取引に対する取組

ア 不当廉売に対する取組
 公正取引委員会は,小売業における不当廉売について,迅速に処理を行うとともに,大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案で周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題のみられる事案については,法的措置を採るなど厳正に対処している。
 平成19年度においては,石油製品小売業者による普通揮発油の不当廉売について,2件の排除措置命令及び1件の警告を行った。また,酒類,石油製品,家庭用電気製品等の小売業者に対し,不当廉売につながるおそれがあるとして1,679件(酒類926件,石油製品306件,家電427件,その他20件)の注意を行った。
イ 優越的地位の濫用に対する取組
 公正取引委員会は,従来から,独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する優越的地位の濫用が行われないよう監視を行うとともに,独占禁止法に違反する行為については厳正に対処することとしている。
 平成19年度においては,荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた取組として,「年度末に向けた中小企業対策について」(平成20年2月20日関係閣僚による会合申合せ)に基づき,荷主による「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(以下「物流特殊指定」という。)違反行為及び物流分野における下請取引における不当行為に対する調査を専門的に行う「物流調査タスクフォース」を設置するとともに,物流特殊指定違反の疑いのある情報の提供を求めて特別の調査を行った。

第2 業務の大要

業務別にみた平成19年度の業務の大要は,次のとおりである。

1 独占禁止法制等の動き
(1)独占禁止法等の改正

 平成19年度においては,課徴金の対象範囲の拡大等を内容とする独占禁止法等改正法案が平成20年3月11日,第169回通常国会に提出された。
同法律案は,同年6月20日,衆議院において閉会中審査(継続審査)とされた。
 

(2)独占禁止法と他の経済法令等の調整

 平成19年度においては,消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案及び経済産業省関係特定保守製品に関する省令案,電波法の一部を改正する法律案等の経済法令等について,関係行政機関が立案するに当たり,所要の調整を行った。
 

2 独占禁止法違反被疑事件の審査及び処理

 独占禁止法違反被疑事件として平成19年度に審査を行った事件は160件であり,そのうち同年度内に審査を完了したものは142件であった。また,平成19年度中に24件の法的措置を延べ193事業者に対して採った(第1図参照)。
 平成19年度の法的措置件数24件を行為類型別にみると,価格カルテル6件,入札談合14件,不公正な取引方法3件,事業者団体による構成事業者の活動の不当な制限1件となっている(第1図参照)。
 なお,平成19年度において,独占禁止法改正法により導入された課徴金減免制度に基づき,事業者により自らの違反行為に係る事実の報告等が行われた件数は,74件であった。
第1図 法的措置件数と対象事業者等の数の推移
第1図 法的措置件数と対象事業者等の数の推移
 平成19年度の法的措置以外の事件としては,後記の不当廉売についての事件を除き,警告10件,注意88件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切った事件20件であった。
 不当廉売事案については,2件の排除措置命令を行うとともに,6件の警告,違反につながるおそれのある行為に対して1,679件の注意を行うなど,適切かつ迅速な法運用に努めた。
 平成19年度の課徴金については,価格カルテル及び入札談合について,総計162件,総額112億9686万円の課徴金額が確定した(第2図参照)。
第2図 課徴金額等の推移
第2図 課徴金額等の推移
(注) 旧法に基づく課徴金の納付を命ずる審決を含み,旧法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を除く。
 平成19年度における審判件数は,前年度から引き継いだもの93件,平成19年度中に審判手続を開始したもの19件の合計112件(独占禁止法違反に係るものが20件,課徴金納付命令に係るものが85件,景品表示法違反に係るものが7件)であった(第3図参照)。これらのうち,平成19年度中に,35件について審決を行い,3件について審判手続打切決定を行った。35件の審決の内訳は,旧法に基づく審決としては,審判審決3件,同意審決21件及び課徴金の納付を命ずる審決10件であり,現行法に基づく審決としては,課徴金納付命令に係る審決1件である。この結果,平成19年度末における審判件数(平成20年度に引き継ぐもの)は96件となっている(なお,審判手続打切決定2件及び同意審決20件については,係属中の審判事件の一部の被審人に対するものであり,残る被審人については審判手続係属中であるため,係属件数に影響しない。)。
第3図 審判件数の推移とその内訳
第3図 審判件数の推移とその内訳

3 規制改革・競争政策に関する調査・提言
(1)独占禁止法適用除外制度の見直し

 公正取引委員会は,航空法に基づく国際航空における航空会社間の運輸協定に関する独占禁止法の適用除外制度の在り方について,慎重に検討し,平成19年12月,国土交通省に対して,速やかに同制度の抜本的な見直しを行うことを求め,その旨を公表した。
 

(2)企業コンプライアンス向上のための施策の推進

 公正取引委員会は,(1)従来から官製談合事件を含めた入札談合事件が頻発していること,(2)独占禁止法改正法の施行を契機とした業界団体からのコンプライアンス徹底の通知の発出など独占禁止法のコンプライアンスについての関心が高まっていること,(3)公共工事の品質確保の促進に関する法律の施行など入札制度改革が急速に進展していることなどを踏まえ,中小企業を含めた建設業者1,700社を対象としたアンケート調査を実施し,平成19年5月,報告書「建設業におけるコンプライアンスの整備状況−独占禁止法を中心として−」を取りまとめ,公表した。

4 法運用の明確化と独占禁止法違反行為の未然防止

 公正取引委員会は,独占禁止法違反行為の未然防止を図るため,事業者及び事業者団体が自ら実施しようと考えている具体的な事業活動について独占禁止法上問題がないかどうか個別に相談してきた場合には,これに応じて回答をしてきている。
 平成19年度においては,事業者の活動に関して1,897件の相談を,事業者団体の活動に関して433件の相談を受け付けた。

5 事業活動に関する調査

 公正取引委員会は,独占禁止法の規定に違反する事件の処理のほか,必要に応じ事業活動の実態に関する調査を行うことにより違反行為の未然防止に努めている。
 平成19年度においては,教科書の流通実態に関する調査を行い,調査結果を公表し,競争政策上の観点からの提言を行った。

6 競争政策に関する理論的・実証的な基盤の整備

 競争政策研究センターにおいては,6研究テーマに取り組むとともに,国際シンポジウムを開催(一橋大学21世紀COE/RESプログラム,(株)日本経済新聞社及び(財)公正取引協会との共催)したほか,ワークショップを11回,公開セミナーを2回開催するなど,精力的に活動を行った。

7 企業結合規制に関する業務

 独占禁止法第9条から第16条までの規定に基づく企業結合に関する業務については,銀行又は保険会社の議決権保有について5件の認可を行い,持株会社等について93件の報告,持株会社等の設立について2件の届出,会社の合併・分割・事業譲受け等について232件の届出,事業会社の株式所有について1,052件の報告をそれぞれ受理し,必要な審査を行った(第4図及び第5図参照)。
第4図 合併届出,分割届出及び事業譲受け等届出受理件数
第4図 合併届出,分割届出及び事業譲受け等届出受理件数

第5図 株式所有報告書の提出件数
第5図 株式所有報告書の提出件数

8 事業者団体に関する業務

 独占禁止法第8条第2項から第4項までの規定に基づく事業者団体の届出件数は,成立届110件,変更届1,157件,解散届70件であった。

9 下請法に関する業務

 下請法に関する業務としては,下請取引の公正化及び下請事業者の利益保護を図るため,親事業者30,268社及びこれらと取引している下請事業者168,108名を対象に書面調査を行った。
 書面調査等の結果,同法に基づき勧告を行ったものは13件(うち8件は,平成16年4月から規制対象とされた役務委託等に係る事件)(第6図参照),警告を行ったものは2,740件であった。
 また,下請代金の支払遅延事件においては,親事業者68社により総額7244万円の遅延利息が下請事業者3,525名に支払われ,また,下請代金の減額事件においては,親事業者46社により総額10億8804万円が下請事業者3,736名に返還された。
第6図 下請法の事件処理状況
第6図 下請法の事件処理状況
(注) 勧告を行った事件の中には,製造委託及び役務提供委託の両方において違反行為が認められたものがあるが,本図においては,当該事件の違反行為を主として行った委託取引に区分して,件数を計上している。

10 景品表示法に関する業務

 景品表示法に関する業務としては,同法に基づき排除命令を行ったものは表示関係56件(うち35件は,平成15年改正で導入された景品表示法第4条第2項(不実証広告規制)を適用した事件)(第7図参照),警告を行ったものは表示関係19件,注意を行ったものは景品関係38件,表示関係482件であった。
第7図 景品表示法の事件処理状況
第7図 景品表示法の事件処理状況
 都道府県における景品表示法に関する業務の処理状況は,同法に基づく指示を行ったものが28件(すべて表示関係),注意を行ったものが680件(景品関係20件,表示関係660件)であった。
 また,事業者又は事業者団体は,公正取引委員会の認定を受けて,景品類又は表示に関する事項に係る業界のルールとして公正競争規約を自主的に設定することができる。公正取引委員会は,平成19年度において,2件の公正競争規約を新たに認定し,公正競争規約の変更について38件の認定を行った。

11 国際関係業務

 国際関係業務については,公正取引委員会は,平成20年4月に,京都市においてICN(国際競争ネットワーク)第7回年次総会を主催した。また,各国共通の競争政策上の課題について,米国,EU及び韓国の競争当局との間で,それぞれ二国間の意見交換を行ったほか,OECD(経済協力開発機構),ICN,APEC(アジア太平洋経済協力),UNCTAD(国連貿易開発会議),ICPEN(消費者保護及び執行のための国際ネットワーク),東アジア競争政策トップ会合及び東アジア競争法・政策カンファレンス等の国際会議に積極的に参加した。

12 広報等に関する業務等

 広報業務については,各種パンフレット並びに広報用ビデオ及びDVDの作成・配布,ウェブサイトの全面改定,メールマガジンの発行等を行った。
 また,競争政策に対するより一層の理解を求めること等を目的として,全国9都市において独占禁止政策協力委員会議を開催したほか,全国8都市において各地の有識者と公正取引委員会委員との意見交換等を行った。
 さらに,大学が実施する公開講座等に講師を派遣するほか,中学校からの要請を受けて講師を派遣して経済活動における競争の役割等について授業を行うなど,学校教育等を通じた競争政策の普及に努めた

13 その他の業務

 公正取引委員会は,行政機関が行う政策の評価に関する法律に基づき政策評価を実施している。平成19年度には,「「不公正な取引方法」の一部に対する課徴金制度の導入に伴う実体規定の法定化」等3件の事前評価及び「独占禁止法違反行為に対する措置(平成18年度)」等13件の事後評価を実施・公表した。