第2部 各論

第5章 競争環境の整備

第1 公益事業分野等における規制改革に関する調査・提言等

1 「国際航空貨物の輸出入に係る競争実態について」

公正取引委員会は、成田国際空港、関西国際空港及び中部国際空港の完全民営化の検討や、平成22年10月の東京国際空港の国際化など、国際航空貨物輸送を巡る環境が大きく変わろうとする中、国際拠点空港等(成田国際空港、関西国際空港、中部国際空港及び東京国際空港)における国際航空貨物の輸出入に焦点を当て、空港内の保税上屋(注1)及び通関業(注2)を中心に、これらに係る規制及び民間商慣行について、関係事業者に対するヒアリング及びアンケート調査を実施し、競争政策上の観点から検討を行った。この過程において平成20年12月以降に開催した政府規制等と競争政策に関する研究会の議論を十分考慮した上で、平成21年4月17日、報告書「国際航空貨物の輸出入に係る競争実態について―保税上屋及び通関業を中心として―」を作成・公表した。同報告書の概要は、以下のとおりである。

(注1)空港内における航空機への外国貨物の搭載、取卸し、運搬、一時蔵置等は、保税上屋において行われる。保税上屋は、その役割の違いや取り扱う貨物の特徴に着目して、主に航空上屋、フォワーダー上屋及びインテグレーター上屋に分類される。

(注2)荷主からの依頼を受けて、輸出入申告、関税の納付等の手続の代理・代行に係る事務(通関業務)を業として行うことを通関業という。

(1) 航空上屋の利用におけるイコールフッティングの確保

外国貨物の航空機への搭載、取卸し等を行うのに必要な航空上屋(注3)の利用(注4)は、航空会社が国際航空貨物輸送を行う上で不可欠であり、航空上屋を保有していない航空会社は、国際航空貨物輸送を行うに当たって、他の航空会社等が保有する航空上屋を利用することになる。空港内のスペースの問題、航空会社の経営上の判断等から航空上屋を保有していない航空会社が多く、航空上屋を保有する航空会社と航空上屋を保有していない航空会社との間で、不当に差別的な取扱い等が行われることのないように航空上屋の利用においてイコールフッティングを確保する必要がある。

なお、例えば、上屋事業者が航空上屋を保有していない航空会社に対し、不当に、航空上屋の利用の拒否・制限、利用の条件についての差別的な取扱い等を行うことは、不公正な取引方法(取引拒絶、差別対価、差別取扱い又は取引妨害)に該当するおそれがある。

(注3)航空上屋は、輸出上屋と輸入上屋に分類される。輸出貨物に係るULD(Unit Load Device)の組立て、計量等が行われる上屋を輸出上屋といい、輸入貨物に係るULDの解体、保管、貨物の引渡し等が行われる上屋を輸入上屋という。

(注4)「航空上屋の利用」とは、上屋事業者が航空上屋で提供するグランドハンドリング業務(ULDの組立て、航空機への貨物の搭載、航空機からの貨物の取卸し、ULDの解体等)を航空会社が利用することをいう。

(2) 上屋の割当てにおけるイコールフッティングの確保

ア 透明性及び公平性の確保

空港管理者は、公的規制の下で、独占的に空港の設置及び管理が認められ、空港の機能を確保するために必要な施設である上屋の設置及び管理を行っていることを踏まえると、単に自らの経営判断のみにより上屋の割当てを行うのではなく、公正な競争条件の確保という観点から、透明な客観的基準に基づいて、公平に上屋の割当てを行うことが求められる。また、航空上屋の割当てに当たっては、航空会社とは独立した関係にある会社にも航空会社と同等の割当ての機会を付与することが望ましい。

イ 上屋の割当ての見直し及び上屋の再配置

上屋事業を行うのに最適な滑走路に面した航空上屋等、他の場所にあるものよりも需要が高い上屋については、一度割り当てられた後、それが事実上固定化されてしまうと、より効率的な事業者が新規に割当てを受ける機会を失うおそれがある。そのため、空港管理者は新規参入の動向等も踏まえて、必要に応じて、上屋の割当ての見直し及び上屋の再配置について検討し、貨物取扱量等も勘案して、上屋の割当ての見直し及び上屋の再配置を行うことが望まれる。上屋の割当ての見直し及び上屋の再配置に要するコストを考慮すると、例えば、上屋の賃貸単位を建物ベースではなく、面積ベース(建物のスパン単位等)で設けることにより、貨物取扱量等に応じて、上屋の賃貸単位数を変更できるようにすることも考えられる。

(3) 空港管理者が上屋事業に関係がある場合のイコールフッティングの確保

ア 空港管理者が上屋事業を行う場合

空港管理者が、自ら又は他の事業者と共同して上屋事業を営む場合には、空港管理者の上屋事業部門と他の上屋事業者との間でイコールフッティングの確保に留意することが必要である。そのため、空港管理者の国際貨物ターミナル管理部門に対する上屋の賃料相当分のコスト負担について、空港管理者の上屋事業部門と他の上屋事業者との間でイコールフッティングが確保されるよう、空港管理者の国際貨物ターミナル管理部門と上屋事業部門との間で区分経理を設け、空港管理者の上屋事業部門が上屋の賃料相当分を会計上のコストとして計上することが望ましい。また、空港管理者の国際貨物ターミナル管理部門が他の上屋事業者の経営情報を把握可能な場合には、空港管理者の上屋事業部門が競争上優位な地位に立つために、こうした情報を活用することがないよう、空港管理者の国際貨物ターミナル管理部門と上屋事業部門との間にファイアウォールを設けることが望まれる。

なお、例えば、空港管理者の国際貨物ターミナル管理部門が、上屋事業で自社の上屋事業部門と競合する他の上屋事業者に対して、上屋事業に係る委託作業料の額を不当に拘束する条件を付けて上屋を割り当てることは、不公正な取引方法(拘束条件付取引)に該当するおそれがある。

イ 上屋事業者等が空港管理者の株式を保有する場合

「規制改革推進のための3か年計画」(平成19年6月22日閣議決定)において、平成19年以降の検討事項として、成田国際空港、関西国際空港及び中部国際空港の完全民営化が掲げられており、完全民営化が実現した場合又は政府の株式出資比率が大幅に低下した場合には、空港管理者の株式を特定の事業者(例えば、航空会社等の上屋事業者や新たに上屋の保有を希望する航空会社等)が取得することが生じ得る。

例えば、空港管理者が、株式所有関係を理由として、①株主や株主の子会社等の利害関係者以外の者に対して、不当に上屋の割当てを行わないこと、②上屋の割当ての際に、株主や株主の子会社等の利害関係者以外の者に対して、賃料等の利用の条件について、不当に差別的な取扱い等を行うことは、不公正な取引方法(取引拒絶、差別対価又は差別取扱い)に該当するおそれがある。

(4) 通関業における規制

ア 通関業の許可及び営業所の新設許可に係る需給調整条項

通関業の許可及び営業所の新設許可に係る需給調整条項については、現在、通関業への参入の実質的な障害とならないよう運用上の配慮がなされているが、次期通関業法改正時に廃止することが望まれる。

イ 通関業に係る営業区域の制限

通関業者の営業区域には制限が設けられており、通関業者は、税関の管轄区域ごとに通関業の許可を受けなければならない。

「他の税関の管轄区域内において適正に通関業を営む通関業者から、新たに通関業務を行おうとする管轄区域内の税関に通関業の新規許可の申請がなされた場合」には、簡易な手続で許可を受けることが認められている(通関業法基本通達〔昭和47年蔵関第105号〕5-6)。また、通関業への新規参入については、従来は、税関の管轄区域ごとに需給調整が行われていたため、営業区域を制限することに一定の意義があったと考えられるが、現在、需給調整条項が通関業への参入の実質的な障害とならないようにされている。

これらを勘案すると、ある税関の管轄区域内において適正に通関業を営む通関業者が、他の税関の管轄区域内で通関業を営もうとする場合には、営業区域ごとに通関業を許可制とする実益が乏しくなっていると考えられ、例えば、許可制を事前届出制等とすることにより、通関業者が効率的かつ機動的な営業を行えるようにしていくことが望まれる。

なお、営業所の新設許可についても同様に考えられる。

ウ 料金規制

公正取引委員会が通関業に係る料金の上限規制を必要と考える通関業者を対象に行った上限規制のメリットについてのアンケート調査結果(複数回答可)によれば、「顧客からの料金の問い合わせや苦情に対し、料金設定の理由を説明できること」(約67.4%)、「自社が料金を設定する際の目安となること」(約42.4%)、「顧客ごとに価格交渉しなくてよいこと」(約37.8%)等が、上限規制のメリットとして挙げられている(平成20年4月1日現在)ことを踏まえると、通関業に係る料金の上限規制は、通関業者に料金設定の際の基準や目安となる価格を示すものとして機能しており、利用者の利益を害しているおそれがある。

また、一般的に料金の上限規制の目的は、利用者利益の保護であると考えられるため、需給調整が行われた時代には、料金の上限規制が一定の役割を果たしていたものと評価できるが、現在、通関業法基本通達5-3により、需給調整条項が通関業への参入の実質的な障害とならないようにされているところである。

これらを勘案すると、通関業に係る料金の上限規制を維持する実益が乏しくなっていると考えられる。

2 「地球温暖化対策における経済的手法を用いた施策に係る競争政策上の課題について~国内排出量取引制度における論点~(中間報告)」の公表

近年、環境関連の規制において、市場メカニズムを活用した経済的手法が用いられる場合がある。同手法による環境規制である国内排出量取引制度は、地球温暖化対策の施策の1つとして、諸外国において既に導入されており、我が国においても導入に向けた議論の進展が予想される。同制度については、その内容により事業者間の競争に影響を与えると考えられることから、公正取引委員会は、導入が想定される同制度の内容及びそれに関する民間商取引について、競争政策上の観点から論点等の検討を行った。また、平成21年9月以降、政府規制等と競争政策に関する研究会を開催して、検討結果を報告し、競争政策上の論点等について会員の意見を伺い、同研究会の了承を得て、検討結果を取りまとめ、平成22年3月31日、中間報告書「地球温暖化対策における経済的手法を用いた施策に係る競争政策上の課題について~国内排出量取引制度における論点~」を公表した。

報告書では、地球温暖化対策に関する事実関係を記載した上で、今後の国内排出量取引制度の設計に当たっては、事業者間の競争への影響を踏まえた議論を期待し、導入が想定される排出量規制に関する競争政策上の論点ごとに、競争への影響等を取りまとめた。また、事業者等による独占禁止法違反行為の未然防止と事業者等の適切な活動の展開に資するため、排出量規制に伴う事業者等の行為のうち、独占禁止法上問題となり得る行為について明らかにした。主な内容は次のとおりである。

(1) 排出量規制に係る競争政策上の論点

ア 排出枠の割当方式が競争に与える影響

排出量取引制度の前提となる排出枠の割当方式には、事業者等に無償で割り当てる方式と有償で割り当てる方式がある。前者には、グランドファザリング方式及びベンチマーク方式があり、後者には、オークション方式がある。排出枠の割当方式に関して、択一的あるいはそれぞれの方式の組合せによって、どの割当方式を採用するかについては、環境政策をはじめとした各種政策目的を踏まえて検討されるものである。他方、各割当方式が事業者間の競争に与える影響は、それぞれ異なると考えられることから、排出枠の割当方式の選択は、競争政策上も重要な検討課題であると考えられる。このため、割当方式の選択に当たっては、以下のような競争に与える影響等にも十分留意し、制度設計が行われることが適当である。

(ア) 無償割当方式の両方式に共通する競争への影響

a 新規参入事業者

無償割当方式では、過去の排出実績又は生産量等の活動量を基に事業者への割当量を決定するため、それらのデータを有しない新規参入事業者の取扱いが問題となる。既存事業者が過去の排出実績等に基づき無償で排出枠の割当てを受けられる一方、それらのデータを有しない新規参入事業者は排出枠を購入しなければならないこととなると、新規参入事業者は既存事業者との競争において不利になることから、当該事業への参入を妨げられるおそれがある。したがって、無償割当てを導入する場合には、新規参入事業者と既存事業者との競争条件を同等にする観点から一定の配慮が必要であると考えられる。

b 国による事業者団体への排出枠の割当て

排出枠の割当てに当たっては、国が特定の事業者団体に対して排出枠を割り当て、その後当該事業者団体が所属する各事業者に対して一定の排出枠を割り当てる方法も考えられる。事業者団体への排出枠の割当てについては、事業者団体が、個々の構成事業者の排出量、ひいては生産量を決定することなどによって、当該事業者の事業活動を制約することにつながるおそれがあり、当該事業者間の競争をゆがめるおそれが大きいと考えられる。

c 割当手続における透明性の確保

排出枠の割当ては、事業者の事業活動に影響を与えるおそれがあるものであるため、公正な競争条件の確保という観点から、割当基準や使用されるデータ等を可能な限り公表することにより、割当プロセス及び結果について外部から検証できるようにし、手続の透明性を確保することが重要である。

(イ) 各割当方式による競争への影響

a グランドファザリング方式

本方式による排出枠の割当てでは、排出実績を算定するためのベースとなる基準年(基準期間)を設定する必要があり、その期間の設定次第では、例えば、制度の導入時や次の制度期間へ移行する際に、排出量の削減が可能である事業者が排出枠を確保するため、あえて削減しないという行為を誘発することなどが考えられる。

b ベンチマーク方式

本方式による排出枠の割当てに当たっては、ベンチマークを業種ごとに一律に設定するべきなのか、それとも、個々の事業者等の実情を反映させるために、同じ業種でも生産技術等が異なれば、異なるベンチマークを設定するのかという問題がある。その際、ベンチマークを生産技術ごとに設定する場合には、より生産効率の良い生産技術へ移行しようとするインセンティブが働きにくくなることなどが考えられる。

c 有償割当て(オークション方式)を行う場合

オークションの規模について、業界単位で分割するなど参加者を限定するような制度設計とした場合には、新規参入事業者等の特定の事業者を排除するための排出枠の買占め及び排出枠の取引価格の操作による競争への悪影響が考えられる。

イ 費用緩和措置
○ 外部クレジットの使用及びその制限

排出量削減義務の達成のため、京都メカニズム等による外部クレジットの使用を認めることが考えられる。外部クレジットの使用は、事業者自らによる削減努力のインセンティブを減殺するため、その使用に制限を設けている例もあるが、排出枠の取引が十分に活性化されていない状況下において、外部クレジットの使用を過度に制限する場合には、例えば、事業者が急な増産時に必要となる排出枠又は外部クレジットを入手することができなくなることから、生産量の増加を制限せざるを得なくなることも考えられ、競争に悪影響を与えるおそれがある。

ウ 排出枠及び外部クレジットの取引
○ 排出枠及び外部クレジットに係る価格制限

排出枠及び外部クレジットに係る上限価格制限等が設けられる場合、排出枠等の取引自体において市場メカニズムが十分に働かなくなるおそれがある。

なお、排出枠及び外部クレジットに係る上限価格が事業者自らの削減費用よりも低く設定される場合には、事業者は排出枠及び外部クレジットの購入により排出量の削減義務を達成することができるため、排出削減や技術開発のインセンティブを減殺させ、排出削減関連の技術市場又は同技術の開発市場における競争に影響を与えるおそれが考えられる。

(2) 排出量規制に伴う事業者等の行為のうち独占禁止法上問題となり得る行為

ア 事業者等による共同行為
(ア) 排出量削減の実施に伴う共同行為

現在、事業者団体が、地球温暖化対策に関して、自主行動計画を策定して排出量の削減に係る取組を行っている例がみられ、このような自主行動計画に基づき、個々の事業者による取組だけではなく、業界単位での共同事業等が行われている。

排出量規制の導入により、国が個々の事業者又は事業所に一定の排出枠を義務付けたり、一定の排出量削減義務を課すこととなった場合、事業者が共同して、又は事業者団体が、これらの義務を目安として各事業者の商品・役務の供給量を決定することは、供給量に係るカルテルとして独占禁止法上問題となり得る。また、事業者が共同して、又は事業者団体が、国による規制が無いにもかかわらず、排出枠に係る義務の達成方法を制限する場合にも、独占禁止法上問題となり得る。

(イ) 排出量の削減に関する共同研究開発

共同研究開発の成果である技術について、第三者への実施許諾を制限すること自体は、原則として問題とはならないが、例えば、ある業種において、共同研究開発された技術が大きな排出削減効果をもたらす革新的な技術であり、その技術を用いて排出削減をしなければ他の事業者が事業活動を行うことが困難となる場合に、費用等合理的な条件による申入れにもかかわらずその技術の実施許諾を拒絶する行為は、例外的に、不公正な取引方法(共同の取引拒絶等)、私的独占等の独占禁止法上の問題となることがある。

イ 取引先等に対する行為
○ 融資事業等に関する行為

今後の排出量規制においても、排出枠又は外部クレジットの販売を行う主体として金融機関が参加することも考えられ、このような場合、金融機関が、事業者に対して融資を行うに当たり、自己又は自己の子会社から排出枠又は外部クレジットを購入することを要請し、融資を受ける事業者に対してこれに従うことを事実上余儀なくさせることは、不公正な取引方法(抱き合わせ販売等)として独占禁止法上問題となり得る。また、特に価格が低下した排出枠又は外部クレジットについて、融資関係等の継続的な取引関係を背景として優越的な地位にある金融機関等が、融資先事業者に対して、不当にこれらの購入を強制することは、不公正な取引方法(優越的地位の濫用)として独占禁止法上問題となり得る。

第2 独占禁止法適用除外

1 独占禁止法適用除外の概要

独占禁止法は、市場における公正かつ自由な競争を促進することにより、一般消費者の利益を確保するとともに国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とし、これを達成するために、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法等を禁止している。他方、他の政策目的を達成する観点から、特定の分野における一定の行為に独占禁止法の禁止規定等の適用を除外するという適用除外が設けられている。

適用除外は、その根拠規定が独占禁止法自体に定められているものと独占禁止法以外の個別の法律に定められているものとに分けることができる。

(1) 独占禁止法に基づく適用除外

独占禁止法は、無体財産権の行使行為(同法第21条)、一定の組合の行為(同法第22条)及び再販売価格維持契約(同法第23条)を、それぞれ同法の規定の適用除外としている。

(2) 個別法に基づく適用除外

独占禁止法以外の個別の法律において、特定の事業者又は事業者団体の行為について独占禁止法の適用除外を定めているものとしては、平成21年度末現在、保険業法等14の法律がある。

2 適用除外の見直し

適用除外の多くは、昭和20年代から昭和30年代にかけて、産業の育成・強化、国際競争力強化のための企業経営の安定、合理化等を達成するため、各産業分野において創設されてきたが、個々の事業者において効率化への努力が十分に行われず、事業活動における創意工夫の発揮が阻害されるおそれがあるなどの問題があることから、近年、その見直しが行われてきた。

平成9年7月20日、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律」(平成9年法律第96号)が施行され、個別法に基づく適用除外のうち20法律35制度について廃止等の措置が採られた。次いで、平成11年7月23日、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律」(平成11年法律第80号)が施行され、不況カルテル制度及び合理化カルテル制度の廃止、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律の廃止等の措置が採られた。さらに、平成12年6月19日、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」(平成12年法律第76号)が施行され、自然独占に固有の行為に関する適用除外の規定が削除された。

これらの措置により、平成7年度末において30法律89制度存在した適用除外は、平成21年度末現在、15法律21制度まで縮減された。

3 協同組合の届出状況

独占禁止法第22条は、「小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること」(同条第1号)等同条各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為について、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合を除き、同法を適用しない旨を定めている(一定の組合の行為に対する独占禁止法適用除外制度)。

中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号。以下「中協法」という。)に基づいて設立された事業協同組合及び信用協同組合(以下「協同組合」という。)は、その組合員たる事業者が、①資本の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については5000万円、卸売業を主たる事業とする事業者については1億円)を超えない法人たる事業者又は②常時使用する従業員の数が300人(小売業を主たる事業とする事業者については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業者については100人)を超えない事業者に該当するものである場合、独占禁止法の適用に際しては、同法第22条第1号の要件を備える組合とみなされる(中協法第7条第1項)。

一方、協同組合が上記①又は②以外の事業者を組合員に含む場合には、公正取引委員会は、その協同組合が独占禁止法第22条各号の要件を備えているかどうかを判断する権限を有しており(中協法第7条第2項)、これらの協同組合に対し、当該組合員が加入している旨を当委員会に届け出る義務を課している(中協法第7条第3項)。

この中協法第7条第3項の規定に基づく届出件数は、平成21年度において、154件であった(附属資料3-9表参照)。

なお、独占禁止法第8条は、事業者団体に対して、その成立したとき、届出に係る事項に変更が生じたとき及び解散したときは、それぞれその旨を公正取引委員会に届け出る義務を課していた(同条第2項から第4項まで)が、平成21年独占禁止法改正法により、事業者団体の届出義務は廃止された(平成21年7月10日施行)。平成21年度においては、独占禁止法第8条第2項から第4項までの規定に基づく事業者団体からの届出件数は、成立が38件、変更が934件、解散が36件の合計1,008件であった。

協同組合・事業者団体届出件数の推移

4 著作物再販適用除外の取扱いについて

商品の供給者がその商品の取引先である事業者に対して再販売する価格を指示し、これを遵守させることは、原則として、独占禁止法第2条第9項第4号(再販売価格の拘束)に該当し、独占禁止法第19条に違反するものであるが、同法第23条第4項の規定に基づき、著作物を対象とするものについては、例外的に同法の適用が除外されている。

公正取引委員会は、著作物についてのこのような適用除外の取扱いについて、国民各層から意見を求めるなどして検討を進め、平成13年3月、結論を得るに至った(第1表)。

公正取引委員会は、著作物再版適用除外制度が消費者利益を不当に害することがないよう、著作物の流通・取引慣行の実態を調査し、関係業界における弊害是正の取組の進ちょくを検証するとともに、その結果を公表してきている。また、関係業界における運用の弾力化の取組等、著作物の流通についての意見交換を行うため、公正取引委員会、関係事業者、消費者、学識経験者等を構成員とする著作物再販協議会を設け、平成13年12月以降これまでに8回の会合を開催してきている。

第1表 著作物再販制度の取扱いについて(概要)(平成13年3月23日)

5 適用除外カルテルの動向

(1) 概況

ア 適用除外カルテルの概要

価格、数量、販路等のカルテルは、公正かつ自由な競争を妨げるものとして、独占禁止法上禁止されているが、その一方で、他の政策目的を達成する等の観点から、個々の適用除外ごとに設けられた一定の要件・手続の下で、特定のカルテルが例外的に許容される場合がある。このような適用除外カルテルが認められるのは、当該事業の特殊性のため(保険業法に基づく保険カルテル)、地域住民の生活に必要な旅客輸送(いわゆる生活路線)を確保するため(道路運送法等に基づく運輸カルテル)等、様々な理由による。

個別法に基づく適用除外カルテルについては、一般に、公正取引委員会の同意を得、又は当委員会へ協議若しくは通知を行って、主務大臣が認可を行うこととなっている。

また、適用除外カルテルの認可に当たっては、一般に、当該適用除外カルテルの目的を達成するために必要であること等の積極的要件のほか、当該カルテルが弊害をもたらしたりすることのないよう、カルテルの目的を達成するために必要な限度を超えないこと、不当に差別的でないこと等の消極的要件を充足することがそれぞれの法律により必要とされている。

さらに、このような適用除外カルテルについては、不公正な取引方法に該当する行為が用いられた場合等には独占禁止法の適用除外とはならないとする、いわゆるただし書規定が設けられている。

イ 適用除外カルテルの動向

公正取引委員会が認可し、又は当委員会の同意を得、若しくは当委員会に協議若しくは通知を行って主務大臣が認可等を行ったカルテルの件数は、昭和40年度末の1,079件(中小企業団体の組織に関する法律に基づくカルテルのように、同一業種について都道府県等の地区別に結成されている組合ごとにカルテルが締結されている場合等に、同一業種についてのカルテルを1件として算定すると、件数は415件)をピークに減少傾向にあり、また、適用除外制度そのものが大幅に縮減されたこともあり、平成21年度末現在、28件となっている。

(2) 個別法に基づく適用除外カルテル

ア 概要

平成21年度において、個別法に基づき主務大臣から公正取引委員会に対し同意を求められ、又は協議若しくは通知のあった適用除外カルテルの処理状況は第2表のとおりであり、このうち現在実施されている個別法に基づく適用除外カルテルの動向は、次のとおりである。

第2表 平成21年度における適用除外カルテルの処理状況

イ 保険業法に基づくカルテル

保険業法に基づき損害保険会社は

① 航空保険事業、原子力保険事業、自動車損害賠償保障法に基づく自動車損害賠償責任保険事業若しくは地震保険契約に関する法律に基づく地震保険事業についての共同行為

又は

② ①以外の保険で共同再保険を必要とするものについての一定の共同行為

を行う場合には、金融庁長官の認可を受けなければならない。金融庁長官は、認可をする際には、公正取引委員会の同意を得ることとされている。

平成21年度において、金融庁長官から同意を求められたものは4件であった(変更認可に係るもの)。また、平成21年度末における同法に基づく共同行為は9件である。

ウ 損害保険料率算出団体に関する法律に基づくカルテル

損害保険料率算出団体は、自動車損害賠償責任保険及び地震保険について基準料率を算出した場合には、金融庁長官に届け出なければならない。金融庁長官は、届出を受理したときは、公正取引委員会に通知することとされている。

平成21年度において、金融庁長官から通知を受けたものは0件であった。また、平成21年度末における同法に基づくカルテルは2件である。

エ 著作権法に基づく商業用レコードの二次使用料等に関する取決め

著作隣接権者(実演家又はレコード製作者)が有する商業用レコードの二次使用料等の請求権については、毎年、その請求額を文化庁長官が指定する団体(指定団体)と放送事業者等又はその団体間において協議して定めることとされており、指定団体は当該協議において定められた額を文化庁長官に届け出なければならない。文化庁長官は、届出を受理したときは、公正取引委員会に通知することとされている。

平成21年度において、文化庁長官から通知を受けたものは8件であった。

オ 道路運送法に基づくカルテル

輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる路線において地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため、又は旅客の利便を増進する適切な運行時刻を設定するため、一般乗合旅客自動車運送事業者は、同一路線において事業を経営する他の一般乗合旅客自動車運送事業者と、共同経営に関する協定を締結することができる。この協定の締結、変更に当たっては、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をする際には、公正取引委員会に協議することとされている。

平成21年度において、国土交通大臣から協議を受けたものは1件であった(変更認可に係るもの)。また、平成21年度末における同法に基づくカルテルは3件である。

カ 航空法に基づくカルテル
(ア) 国内航空カルテル

航空輸送需要の減少により事業の継続が困難と見込まれる本邦内の各地間の路線において地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため、当該路線において2以上の航空運送事業者が事業を経営している場合に、本邦航空運送事業者は、他の航空運送事業者と、共同経営に関する協定を締結することができる。この協定の締結・変更に当たっては、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をする際には、公正取引委員会に協議することとされている。

平成21年度において、国土交通大臣から協議を受けたものはなかった。また、平成21年度末における同法に基づくカルテルはない。

(イ) 国際航空カルテル

本邦内の地点と本邦外の地点との間の路線又は本邦外の各地間の路線において公衆の利便を増進するため、本邦航空運送事業者は、他の航空運送事業者と、連絡運輸に関する契約、運賃協定その他の運輸に関する協定を締結することができる。この協定の締結・変更に当たっては、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をしたときは、公正取引委員会に通知することとされている。

平成21年度において、国土交通大臣から通知を受けたものは309件であった。

キ 海上運送法に基づくカルテル
(ア) 内航海運カルテルル

本邦の各港間の航路に関して、定期航路事業者は、地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するため、旅客の利便を増進する適切な運航日程・運航時刻を設定するため、又は貨物の運送の利用者の利便を増進する適切な運航日程を設定するため、共同経営に関する協定を締結することができる。この協定の締結・変更に当たっては、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をする際には、公正取引委員会に協議することとされている。

平成21年度において、国土交通大臣から協議を受けたものは4件であった(変更認可に係るもの)。また、平成21年度末における同法に基づくカルテルは5件である。

(イ) 外航海運カルテル

本邦の港と本邦以外の地域の港との間の航路に関して、船舶運航事業者は、他の船舶運航事業者と、運賃及び料金その他の運送条件、航路、配船並びに積取りに関する事項を内容とする協定を締結することができる。この協定の締結・変更に当たっては、あらかじめ国土交通大臣に届け出なければならない。国土交通大臣は、届出を受理したときは、公正取引委員会に通知することとされている。

平成21年度において、国土交通大臣から通知を受けたものは455件であった。

ク 内航海運組合法に基づくカルテル

内航海運組合法に基づき内航海運組合が調整事業を行う場合には、調整規程又は団体協約を設定し、国土交通大臣の認可を受けなければならない。国土交通大臣は、認可をする際には、公正取引委員会に協議することとされている。

平成21年度において、国土交通大臣から協議を受けたものは1件であった(変更認可に係るもの)。また、平成21年度末における同法に基づくカルテルは1件である。

第3 違反行為の未然防止

公正取引委員会は、事業者及び事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な活動に役立てるため、事業者及び事業者団体の活動の中でどのような行為が実際に独占禁止法違反となるのかを具体的に示した「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月)、「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」(平成5年4月)、「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成6年7月)、「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成7年10月)、「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成19年4月)、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(平成19年9月)、「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」(平成21年10月)等を策定・公表している。

また、個々の具体的な活動について事業者等からの相談に応じるとともに、独占禁止法違反行為の未然防止に役立てるため、事業者等から寄せられた相談のうち、他の事業者等の参考になると思われるものを相談事例集として取りまとめ、公表している(平成20年度に寄せられた相談について、平成21年6月に公表した。)。

第4 独占的状態調査

独占禁止法第8条の4は、独占的状態に対する措置について定めている。公正取引委員会は、同法第2条第7項に規定する独占的状態の定義規定のうち、事業分野に関する考え方についてガイドラインを公表しており、その別表には、独占的状態の国内総供給価額要件及び事業分野占拠率要件(国内総供給価額が1000億円超で、かつ、上位1社の事業分野占拠率が50%超又は上位2社の事業分野占拠率の合計が75%超)に該当すると認められる事業分野並びに今後の経済事情の変化によってはこれらの要件に該当することとなると認められる事業分野が掲げられている(第3表)。

別表に掲載された事業分野については、生産・出荷集中度の調査結果等に応じ逐次改定してきている(直近の改定による最新のものは、平成20年9月26日に公表し、同日から適用)。その中でも特に集中度の高い業種については、生産、販売、価格、製造原価、技術革新等の動向、分野別利益率等について、独占禁止法第2条第7項第2号(新規参入の困難性)及び第3号(価格の下方硬直性、過大な利益率又は販売管理費の支出)の各要件に即し、企業の動向の監視に努めている。

第3表 別表掲載事業分野(27事業分野)

(注1)本表は、公正取引委員会が行った調査に基づき、独占的状態の国内総供給価額要件及び事業分野占拠率要件に該当すると認められる事業分野並びに今後の経済事情の変化によってはこれらの要件に該当することとなると認められる事業分野(平成18年の国内総供給価額が950億円を超え、かつ、上位1社の事業分野占拠率が45%を超え又は上位2社の事業分野占拠率の合計が70%を超えると認められるもの)を掲げたものである。

(注2)本表の商品順は工業統計表に、役務順は日本標準産業分類による。

第5 ガソリンにおけるバイオマス由来燃料の利用に関する調査・提言

1 調査の趣旨等

(1) 調査の趣旨

改定京都議定書目標達成計画(平成20年3月28日閣議決定)は、「輸送用燃料を含むバイオ燃料の普及を促進する」としているところ、ガソリンにおけるバイオマス由来燃料の利用については、バイオエタノールを直接ガソリンと混合する方式(以下「直接混合方式」という。)及びバイオエタノールからETBEを製造し、これをガソリンと混合する方式(以下「ETBE方式」という。)の2つの混合方式が存在する。現在、直接混合方式による製品としては、E3が製造・販売されている。

直接混合方式については、環境省等の委託を受けた大阪府や、環境省、経済産業省等の支援を受けた宮古島において実証事業が行われている。ETBE方式については、経済産業省による補助を受けた石油連盟を主体として実証事業が行われた(平成20年度末まで)。

公正取引委員会は、これら2つの混合方式が市場における競争を通じて評価・選択される環境を整備する観点から、独占禁止法上の考え方を整理するとともに、2つの混合方式のイコールフッティングを確保するために必要とされる措置について検討してきたところ、これらについて考え方を取りまとめ、平成21年7月、これを公表した。その概要は後記2から4までのとおりである。

(2) 調査の対象・方法

関連事業者及び関連省庁に対してヒアリング等による調査を行った。

2 実態

公正取引委員会が行った調査の結果、石油連盟は、直接混合方式について問題点があるとの見解を繰り返し表明していること、各石油元売会社は、直接混合方式向けに原料ガソリンを供給することに消極的であること、各石油元売会社の系列のサービスステーション(以下「SS」という。)においては、直接混合方式による製品の販売が行われていないことが認められた。これにより、市場に流通する直接混合方式による製品の量が限られており、消費者による選択が十分に行われない状況にあると認められる。

前記の状況の背景には、エタノールを直接ガソリンと混合すると蒸気圧が上昇するため、現行の蒸気圧に係るJIS規格を満たそうとする場合には、標準的な仕様のレギュラーガソリンを直接混合方式に用いることができないこと、また石油連盟及び各石油元売会社が、E10導入等の環境省が示す高い目標が実現困難なものであると考えていることが挙げられる。

3 独占禁止法上の考え方

石油連盟が各石油元売会社に対して直接混合方式による製品の製造又は販売に協力しないようにさせること及び各石油元売会社が共同して直接混合方式による製品の製造又は販売に協力しないことを決定することは、独占禁止法に違反する行為である。また、石油連盟が2つの混合方式の一方についてだけ、否定的な見解を表明し続けることは、石油連盟の会員である各石油元売会社の間に、一方の混合方式を採用しないとする共通の認識を醸成するおそれがある。石油連盟は、このことを十分認識し、留意する必要がある。

石油元売会社が、その系列特約店等に対して、自社系列のSSにおける直接混合方式による製品の取扱いを一律に禁止することは、①それが仮に各元売会社が個別に判断した結果であったとしても、前記2の状況の下では、ほとんどすべての石油元売会社が同様の判断をする可能性が極めて高いこと、②我が国のガソリン販売市場においては、ガソリン販売事業者に占める各石油元売会社の系列特約店等の割合が高く、新たなSS等の販売網を構築することは事実上困難であること等を踏まえれば、直接混合方式による製品の製造・販売をする事業者が販路を確保することを困難にするおそれが高い。このような石油元売会社の行為は、不当に、その取引の相手方に対して、競争者と取引しない条件を付して取引するものであって、競争者の取引の機会を減少させるおそれがある行為であり、不公正な取引方法第11項(排他条件付取引)等に該当し、独占禁止法上問題となるおそれがある。

なお、石油元売会社が、その系列特約店等に対して、他社製品を当該石油元売会社の商標を付さないで販売することを禁止する行為は、独占禁止法第21条(知的財産権の行使行為に対する適用除外)の問題ではない。少なくとも、系列特約店等が、現在各地で行われている直接混合方式の実証事業に協力するため、系列SSにおいて、一部の給油機を直接混合方式の製品専用のものとして、当該給油機を地下タンクとともに分け、当該給油機から給油する商品がサインポールの石油元売会社の製品でないことを明確に認識できるように表示してこれを販売するのであれば、その販売を禁止する行為を商標権を理由に独占禁止法に違反しないとすることはできない。

4 関係省庁において必要な対応

前記2の各実態は、行政庁による規制やこれまでに行政庁が示してきた見解に関連するものであるが、これらは、石油元売会社による前記3に該当し得る行為を誘因しかねないという懸念がある。2つの混合方式を事業者が自由に選択できる環境を整備するためにも、①環境省及び経済産業省は、バイオマス由来燃料の普及について連携協力して必要な情報提供を行うこと、②環境省は、蒸気圧に係る基準について必要な見直しの可否について検討すること、③経済産業省は、2つの混合方式について、事業者が自由な選択を行うことができる旨を石油連盟及び石油元売会社に周知することが必要である。