第1部 総論

第1 概説

公正取引委員会は,平成25年度において,次のような施策に重点を置いて競争政策の運営に積極的に取り組んだ。

1 独占禁止法改正等

(1) 独占禁止法の改正

平成22年3月12日,公正取引委員会が行う審判制度の廃止等を主な内容とする,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案が第174回通常国会に提出された。同法律案は,同通常国会から第180回通常国会までの各国会において閉会中審査とされ,平成24年11月16日,第181回臨時国会において審査未了により廃案となった。

平成25年5月24日,技術的修正が行われたほかは前記法律案と同じ内容の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案が第183回通常国会に提出された。同法律案は,同通常国会及び第184回臨時国会で衆議院において閉会中審査とされた後,第185回臨時国会で,同年11月21日に衆議院において,同年12月7日に参議院において,それぞれ可決されて成立した(平成25年法律第100号)。この法律は,一部の規定を除き,公布の日(平成25年12月13日)から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされている。

(2) 消費税転嫁対策特別措置法の制定等

ア 平成25年3月22日,消費税の転嫁を阻害する行為の是正,価格の表示並びに消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置を主な内容とする,消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案が第183回通常国会に提出された。同法律案は,同年6月5日に可決・成立し,同月12日に公布された(平成25年法律第41号。一部の規定を除き,同年10月1日から施行)。

イ 消費税転嫁対策特別措置法の施行に伴い,消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法施行令,消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法第2条第1項第1号の大規模小売事業者を定める規則,消費税の転嫁の方法及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為の届出に関する規則等の制定等を行った。

ウ 消費税転嫁対策特別措置法の施行に伴い,同法の執行の統一を図るとともに,法運用の透明性を確保し,違反行為の未然防止に資するため,「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法,独占禁止法及び下請法上の考え方」を策定し,平成25年9月10日に公表した。

2 厳正・的確な法運用

(1) 独占禁止法違反行為の積極的排除

ア 迅速かつ実効性のある法運用を行うという基本方針の下,平成25年度においては,特に,入札談合(官公需),受注調整(民需)及び価格カルテル並びに中小事業者に不当に不利益を与える優越的地位の濫用などの不公正な取引方法に対し,引き続き厳正かつ積極的に対応した。

なお,平成25年度における法的措置事件は,次のとおりである(詳細は第2部第2章第2を参照)。

イ 公正取引委員会は,国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案等については,積極的に刑事処分を求めて告発を行うこととしている。平成25年度においては,独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という。)が発注する北陸新幹線融雪・消雪基地機械設備工事の入札談合事件において,入札参加業者8社及び個人8名を検事総長に告発した(平成26年3月4日)。

ウ 国・地方公共団体等の職員が入札談合に関与する,いわゆる官製談合については,入札談合等関与行為防止法に発注官庁において入札談合等関与行為を排除するための行政上の措置等が規定されているところ,平成25年度においては,鉄道・運輸機構が発注する北陸新幹線融雪・消雪基地機械設備工事の入札談合事件において,鉄道・運輸機構の職員が入札談合等関与行為を行っていた事実が認められたため,公正取引委員会は,同法の規定に基づき,鉄道・運輸機構理事長に対して改善措置要求を行った(平成26年3月19日)。

エ 公正取引委員会は,独占禁止法違反行為についての調査の過程において,競争政策上必要な措置を講じるべきと判断した事項について,発注者及び関係官庁等に申入れや要請を行っている。平成25年度においては,事業者団体である日本スターチ・糖化工業会,発注者である東京電力㈱,関西電力㈱及び鉄道・運輸機構並びに関係官庁である国土交通省に対して申入れや要請を行った。

(2) 公正な取引慣行の推進

ア 優越的地位の濫用に対する取組

(ア) 公正取引委員会は,以前から,独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する優越的地位の濫用が行われないよう監視を行うとともに,独占禁止法に違反する行為については厳正に対処している。

(イ) 公正取引委員会は,独占禁止法上問題となる個別の違反行為に対し,厳正に対処しているほか,中小事業者の取引の公正化を図る必要が高い分野について,実態調査等を実施し,普及・啓発に努めている。平成25年度においては,「外食事業者と納入業者との取引に関する実態調査報告書」(平成25年5月27日公表。詳細は第2部第8章第35を参照)及び「物流センターを利用して行われる取引に関する実態調査報告書」(平成25年8月8日公表。詳細は第2部第8章第36を参照)を公表したほか,荷主と物流事業者との取引に関する書面調査を実施した。

(ウ) 公正取引委員会は,過去に優越的地位の濫用規制に対する違反がみられた業種,各種の実態調査で問題がみられた業種等の事業者に対して一層の法令遵守を促すことを目的として,業種ごとの実態に即した分かりやすい具体例を用いて説明を行う業種別講習会を実施している。平成25年度においては,業種別講習会を合計40回実施した。

(エ) 公正取引委員会は,下請事業者を始めとする中小事業者からの求めに応じ,当委員会事務総局の職員が出向いて,下請法等の内容を分かりやすく説明するとともに相談受付等を行う「中小事業者のための移動相談会」を実施している。平成25年度においては,「中小事業者のための移動相談会」を全国16か所で実施したほか,事業者団体が開催する研修会等に職員を講師として派遣した。

イ 不当廉売に対する取組

公正取引委員会は,小売業における不当廉売について,迅速に処理を行うとともに,大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって,周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題がみられた事案については,法的措置を採るなど厳正に対処している。

ウ 下請法違反行為の積極的排除等

(ア) 公正取引委員会は,下請事業者からの自発的な情報提供が期待しにくいという下請取引の実態に鑑み,中小企業庁の協力を得て,親事業者及びこれらと取引している下請事業者を対象として定期的に書面調査を実施するなど違反行為の発見に努めている。

(イ) 公正取引委員会は,昨今の厳しい経済情勢の下で,中小事業者の自主的な事業活動が阻害されることのないよう,下請法の迅速かつ効果的な運用により,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護に努めている。

なお,平成25年度における主な勧告事件は,次のとおりである(詳細は第2部第9章第26を参照)。

(ウ) 公正取引委員会は,親事業者の自発的な改善措置が下請事業者が受けた不利益の早期回復に資することに鑑み,当委員会が調査に着手する前に,違反行為を自発的に申し出,かつ,自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については,親事業者の法令遵守を促す観点から,下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとして取り扱うこととし,この旨を公表している(平成20年12月17日公表)。平成25年度においては,前記のような親事業者からの違反行為の自発的な申出は12件あり,これらについては,前記の取扱いがなされた。

(エ) 公正取引委員会は,下請代金の支払遅延,下請代金の減額,買いたたき等の行為が行われることのないよう,平成25年11月22日,約18万9千名の親事業者及び関係事業者団体に対し,下請法の遵守の徹底等について,公正取引委員会委員長及び経済産業大臣連名の文書をもって要請を行った。

エ 消費税転嫁対策に関する取組

(ア) 公正取引委員会は,様々な情報収集活動によって把握した消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)に関する情報を踏まえ,立入検査等の調査を積極的に実施している。これらの調査の結果,転嫁拒否行為が認められた事業者に対しては,転嫁拒否行為に係る不利益の回復などの必要な改善指導を迅速に行っている。

(イ) 公正取引委員会は,転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置するとともに,平成26年4月1日の消費税率の引上げ時に集中する相談に対応するため,休日専用ダイヤルを設けるなど相談対応の強化を図った。また,事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,全国各地で移動相談会を実施することとし,平成25年度においては,移動相談会を75回実施した。

(ウ) 公正取引委員会は,転嫁拒否行為を受けた事業者にとって,自らその事実を申し出にくい場合もあると考えられることから,転嫁拒否行為を受けた事業者からの情報提供を受動的に待つだけではなく,中小企業庁と合同で書面調査を実施し,転嫁拒否行為に関する情報収集を積極的に行った。また,様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,納入業者等及び事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。

(エ) 公正取引委員会は,消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為の届出を受け付けたほか,事業者又は事業者団体からの届出書の記載方法等に関する相談を受け付けた。

(オ) 公正取引委員会は,消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,当委員会主催の説明会を実施しており,平成25年度においては,全国31か所において合計40回の説明会を実施したほか,商工会議所,商工会及び事業者団体が開催する説明会等に公正取引委員会事務総局の職員を講師として派遣した。

(カ) 公正取引委員会は,転嫁拒否行為が行われることのないよう,平成25年11月15日,約20万名の事業者に対し,消費税転嫁対策特別措置法の遵守の徹底について,公正取引委員会委員長及び経済産業大臣の連名の文書をもって要請し,平成26年1月17日,関係事業者団体に対し,消費税転嫁対策特別措置法の遵守の徹底について,公正取引委員会委員長及び経済産業大臣の連名(建設業の事業者団体は国土交通大臣との三者連名)の文書をもって要請するなどした。

(3) 企業結合審査の充実

ア 企業結合規制の的確な運用

独占禁止法は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の株式取得・所有,合併等を禁止している。公正取引委員会は,我が国における競争的な市場構造が確保されるよう,企業結合規制の的確な運用に努めており,平成25年度においては,次のような企業結合事案について,的確に処理するとともに,その内容を公表した(詳細は第2部第7章第6を参照)。

イ 「独占禁止法第11条の規定による銀行又は保険会社の議決権の保有等の認可についての考え方」等の一部改定

公正取引委員会は,「日本再生加速プログラム」(平成24年11月30日閣議決定)及び「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月11日閣議決定)を踏まえ,独占禁止法第11条の規制趣旨に照らして金融機関の取得・保有可能な議決権の割合の上限について適用除外・例外規定の在り方を含め検討を行った結果,「独占禁止法第11条の規定による銀行又は保険会社の議決権の保有等の認可についての考え方」及び「債務の株式化に係る独占禁止法第11条の規定による認可についての考え方」を平成26年3月31日に一部改定して公表し,同年4月1日から施行した。

3 競争環境の整備に向けた調査等

(1) 保育分野に対する調査・提言

我が国の少子化の要因の一つとして,仕事と子育ての両立の難しさが挙げられている。特に都市部では,保育の需要に対して子供を預かる保育施設が不足しており,待機児童の発生が大きな問題となっている。また,「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)では,保育分野は,「制度の設計次第で巨大な新市場として成長の原動力になり得る分野」,「良質で低コストのサービス(中略)を国民に効率的に提供できる大きな余地が残された分野」とされている。このように,保育分野は,需要の充足が求められているだけではなく,我が国の成長分野となることが期待されている分野である。

このため,公正取引委員会では,平成25年度において,事業者の公正かつ自由な競争を促進し,もって消費者の利益を確保することを目的とする競争政策の観点から,保育分野の現状について調査・検討を行った。

その後,平成26年6月25日,競争政策上の考え方や提言を取りまとめた「保育分野に関する調査報告書」を公表した(詳細は第2部第5章第1を参照)。同調査報告書では,①多様な事業者の参入促進,②補助制度・税制におけるイコールフッティングの確保,③情報公開・第三者評価の充実,④付加的なサービスの拡大について提言を行った。

(2) 競争評価に関する取組

平成19年10月以後,各府省が規制の新設又は改廃を行おうとする際,原則として,規制の事前評価の実施が義務付けられ,その際,規制による競争状況への影響分析(以下「競争評価」という。)を行うこととされており,平成22年4月から試行的に実施されている。競争評価については,各府省は,規制等に関して,競争状況への影響・分析に関するチェックリスト(以下「競争評価チェックリスト」という。)の記入を行い,評価書と共に総務省に提出し,総務省は競争評価チェックリストを公正取引委員会へ送付することとされている。平成25年度においては,総務省から143件の競争評価チェックリストを受領し,内容を精査した。

(3) 入札談合の防止への取組

入札談合の防止を徹底するためには,発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から,公正取引委員会は,地方公共団体等の調達担当者等に対する独占禁止法や入札談合等関与行為防止法の研修会を開催するとともに,国,地方公共団体等が実施する調達担当者等に対する同様の研修会への講師の派遣及び資料の提供等の協力を行っている。平成25年度においては,研修会を全国で24回開催するとともに,国,地方公共団体及び特定法人に対して288件の講師の派遣を行った。

(4) 独占禁止法コンプライアンスの向上に向けた取組

独占禁止法コンプライアンスの向上に関連した企業の取組を促していく観点から,公正取引委員会では,企業における独占禁止法に関するコンプライアンス活動の状況を調査し,改善のための方策等と併せて,報告書の取りまとめ・公表を行うとともに,その周知に努めている。平成25年度においては,地方有識者との懇談会や企業法務を専門とする弁護士等に対する講演会等の機会を利用して周知を行った。

(5) ガソリンの取引に関する調査

公正取引委員会は,石油元売会社とガソリン販売業者等における企業間取引等に関する実態を把握するために調査を実施し,平成25年7月23日,「ガソリンの取引に関する調査について」として取りまとめ,公表した(詳細は平成24年度年次報告第2部第6章第8を参照)。

4 競争政策の運営基盤の強化

(1) 経済のグローバル化への対応

近年,複数の国・地域の競争法に抵触する事案,複数の国・地域の競争当局が同時に審査を行う必要のある事案等が増加するなど,競争当局間の協力・連携の強化の必要性が高まっている。このような状況を踏まえ,公正取引委員会は,二国間独占禁止協力協定,経済連携協定等に基づき,関係国の競争当局と連携して執行活動を行うなど,外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。

また,公正取引委員会は,国際競争ネットワーク(ICN),経済協力開発機構(OECD),アジア太平洋経済協力(APEC),国連貿易開発会議(UNCTAD)等といった多国間会議にも積極的に参加している。特にICNでは,第11回年次総会(平成24年4月)において,企業結合審査に係る国際協力枠組みが立ち上げられたが,これは,企業結合審査におけるICN加盟当局間の効率的かつ効果的な執行協力の促進を目的として,公正取引委員会委員長が提唱し,当委員会が運用を行っているものである。当委員会は,東アジア競争政策トップ会合及び東アジア競争法・政策カンファレンスにおいても,主導的な役割を果たしている。

さらに,発展途上国において,既存の競争法制を強化する動きや新たに競争法制を導入する動きが活発になっていることを受け,公正取引委員会は,これら諸国の競争当局等に対し,当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等による技術支援活動を行っている。

このほか,我が国の競争政策の状況を広く海外に周知することにより公正取引委員会の国際的なプレゼンスを向上させるため,英文ウェブサイトに掲載する報道発表資料の一層の充実,海外の弁護士会等が主催するセミナー等へのスピーカーの派遣等を行っている。

なお,平成25年度における主な国際的な取組は,次のとおりである。

(2) 競争政策の普及啓発に関する広報・広聴活動

競争政策に関する意見・要望等を聴取して施策の実施の参考とし,併せて競争政策への理解の促進に資するため,独占禁止政策協力委員から個別に意見聴取を行った。

また,経済社会の変化に即応して競争政策を有効かつ適切に推進するため,公正取引委員会が広く有識者と意見を交換し,併せて競争政策の一層の理解を求めることを目的として,独占禁止懇話会を開催しており,平成25年度においては,3回開催した。

さらに,全国8都市において,公正取引委員会委員と各地の有識者との懇談会を,また,全国各地区において,地方事務所長等の当委員会事務総局の職員と各地区の有識者との懇談会を,それぞれ開催した。

前記以外の活動として,本局及び地方事務所等の所在地以外の都市における独占禁止法等の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため,「一日公正取引委員会」を開催するとともに,一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動を紹介する「消費者セミナー」を開催した。

加えて,中学校,高等学校及び大学(短期大学等を含む。)からの要請を受けて職員を講師として派遣し,経済活動における競争の役割等について授業を行う独占禁止法教室(出前授業)の開催など,学校教育等を通じた競争政策の普及啓発に努めた。

なお,平成25年度における主な取組は,次のとおりである。

第2 業務の大要

平成25年度の業務の大要は,次のとおりである。

1 独占禁止法違反被疑事件の審査及び処理

(1) 独占禁止法違反被疑事件として平成25年度に審査を行った事件は150件である。そのうち同年度内に審査を完了したものは140件であった。

(2) 平成25年度においては,18件の法的措置を採った。これを行為類型別にみると,価格カルテルが8件,入札談合(官公需)が2件,受注調整(民需)が7件,不公正な取引方法が1件となっている(第1図参照)。また,総額302億4283万円の課徴金の納付を命じた(第2図参照)。

なお,平成25年度においては,課徴金減免制度に基づき事業者が自らの違反行為に係る事実の報告等を行った件数は50件であった。

(3) このほか,違反するおそれのある行為に対する警告1件,違反につながるおそれのある行為に対する注意114件(不当廉売事案について迅速処理による注意を行った1,366件を除く。)を行うなど,適切かつ迅速な法運用に努めた。

第1図 法的措置件数等の推移

第2図 課徴金額等の推移

(注) 平成17年独占禁止法改正法(独占禁止法の一部を改正する法律〔平成17年法律第35号〕をいう。以下同じ。)による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決を含み,同法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を除く。

(4) 平成25年度における審判件数は,前年度から繰り越されたもの157件,平成25年度中に審判手続を開始したもの25件の合計182件(排除措置命令に係るものが83件,課徴金納付命令に係るものが99件)であった(第3図参照)。これらのうち,平成25年度中に15件について審決を行った。15件の審決の内訳は,平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審決が7件(課徴金の納付を命ずる審決5件,課徴金の納付を命じない審決2件),平成17年独占禁止法改正法による改正後の独占禁止法に基づく審決が8件(排除措置命令に係る審決3件,課徴金納付命令に係る審決5件)である。このほか,2件(排除措置命令に係るものが1件,課徴金納付命令に係るものが1件)の審判請求取下げが行われた。この結果,平成25年度末における審判件数(平成26年度に繰り越すもの)は165件となった。

第3図 審判件数の推移

(注) 審判件数は,行政処分に対する審判請求ごとに付される事件番号の数である。

(注) 「排除措置命令審判事件」には,平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく審判事件(課微金納付命令に係るものを除く。)を含む。

2 法運用の明確化と独占禁止法違反行為の未然防止

公正取引委員会は,独占禁止法違反行為の未然防止を図るため,事業者及び事業者団体が自ら実施しようと考えている具体的な事業活動について独占禁止法上問題がないかどうか個別に相談してきた場合には,これに応じて回答をしている。平成25年度においては,事業者の活動に関して1,274件の相談を,事業者団体の活動に関して243件の相談を受け付けた。

3 競争政策に関する理論的・実証的な基盤の整備

競争政策研究センターは,平成15年6月の発足以降,独占禁止法等の執行や競争政策の企画・立案・評価を行う上での理論的・実証的な基礎を強化するための活動を展開している。平成25年度においては,5つの研究テーマに取り組んだほか,国際シンポジウムを開催(㈱日本経済新聞社との共催)するとともに,公開セミナーを3回,ワークショップを7回開催した。

4 企業結合規制に関する業務

独占禁止法第9条から第16条までの規定に基づく企業結合規制に関する業務については,銀行又は保険会社の議決権保有について15件の認可を行い,持株会社等について100件の報告,会社の株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業譲受け等について264件の届出をそれぞれ受理し,必要な審査を行った。

5 不公正な取引方法への取組

(1) 優越的地位の濫用に対する取組

公正取引委員会では,優越的地位の濫用行為に係る審査を効率的かつ効果的に行い,必要な是正措置を講じていくことを目的とした「優越的地位濫用事件タスクフォース」を設置し,審査を行っているところ,平成25年度においては,過去最高の58件の注意を行った。

(2) 不当廉売に対する取組

平成25年度においては,酒類,石油製品,家庭用電気製品等の小売業において,不当廉売につながるおそれがあるとして1,366件(酒類847件,石油製品452件,家庭用電気製品29件,その他38件)の事案に対して注意を行った。

6 下請法に関する業務

下請取引の公正化及び下請事業者の利益保護を図るため,親事業者38,974名及びこれらと取引している下請事業者214,044名を対象に書面調査を行った。書面調査等の結果,下請法に基づき勧告を行ったものは10件(製造委託等8件,役務委託等2件)(第4図参照),指導を行ったものは4,949件であった。

第4図 下請法の事件処理件数の推移

(注) 勧告を行った事件の中には,製造委託等及び役務委託等との双方において違反行為が認められたものがあるが,本図においては,当該事件の違反行為が主として行われた取引に区分して,件数を計上している。

(注) 「製造委託等」とは,製造委託及び修理委託をいい,「役務委託等」とは,情報成果物作成委託及び役務提供委託をいう。以下同じ。

平成25年度においては,下請事業者が被った不利益について,親事業者244名から,下請事業者5,604名に対し,下請代金の減額分の返還等,総額6億7087万円相当の原状回復が行われた(第5図参照)。

このうち,①下請代金の減額事件においては,親事業者127名から総額5億4558万円の減額分が下請事業者3,777名に返還され,②下請代金の支払遅延事件においては,親事業者110名から総額1億1107万円の遅延利息が下請事業者1,765名に支払われ,③不当な経済上の利益の提供要請事件においては,親事業者6名から総額1399万円の利益提供分が下請事業者60名に返還され,④返品事件においては,親事業者1名により総額21万円相当の商品が下請事業者2名から引き取られた。

(注) 前記の額は1万円未満を切り捨てているため,第5図に記載の総額と前記の額の合計とは一致しない。

第5図 原状回復の状況

7 消費税転嫁対策特別措置法に関する業務

公正取引委員会は,転嫁拒否行為に関する情報収集を積極的に行うため,平成25年度においては,中小企業庁と合わせて15万件の書面調査を実施した。書面調査等の結果,消費税転嫁対策特別措置法に基づき指導を行ったものは724件であった。

また,平成25年度においては,消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為152件,消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為136件の合計288件の届出を受け付けたほか,1,235件の相談に対応した。

8 その他の業務

公正取引委員会は,行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)に基づき政策評価を実施している。平成25年度においては,「企業結合の迅速かつ的確な審査」,「独占禁止法違反行為に対する厳正な対処」等8件の事後評価を実施し,政策評価書を公表した。