第2部 各論

第2章 違反被疑事件の審査及び処理

第1 違反被疑事件の審査及び処理の状況

1 排除措置命令等

独占禁止法は,事業者が私的独占又は不当な取引制限をすること,不公正な取引方法を用いること等を禁止している。公正取引委員会は,一般から提供された情報,自ら探知した事実,違反行為をした事業者からの課徴金減免申請等を検討し,これらの禁止規定に違反する事実があると思料するときは,独占禁止法違反被疑事件として必要な審査を行っている。

平成26年度においては,審査事件のうち必要なものについては独占禁止法の規定に基づく権限を行使して審査を行い(第47条),違反する事実があると認められたときは,排除措置命令の名宛人となるべき者に対し,予定される排除措置命令の内容等を通知し(平成25年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法第49条第5項),意見を述べ,及び証拠を提出する機会の付与を行い(同法第49条第3項),提出された意見や証拠を踏まえて,排除措置命令を行っている。

また,排除措置命令を行うに足る証拠が得られなかった場合であっても,違反の疑いがあるときは,関係事業者等に対して警告を行い,是正措置を採るよう指導している(注)。

さらに,違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られなかったが,違反につながるおそれのある行為がみられた場合には,未然防止を図る観点から注意を行っている。

なお,法的措置又は警告をしたときは,その旨公表している。また,注意及び打切りについては,競争政策上公表することが望ましいと考えられる事案であり,かつ,関係事業者から公表する旨の了解を得た場合又は違反被疑対象となった事業者が公表を望む場合は,公表している。

平成26年度における審査件数(不当廉売事案で迅速処理したもの〔第1-2表〕を除く。)は,前年度からの繰越しとなっていたもの10件及び年度内に新規に着手したもの118件の合計128件であり,このうち年度内に処理した件数は117件であった。117件の内訳は,排除措置命令が10件,警告が1件,注意が102件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切ったものが4件となっている(第1-1表参照)。

(注) 公正取引委員会は,警告を行う場合にも,公正取引委員会の審査に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第5号)に基づき,事前手続を経ることとしている。

第1-1表 審査事件処理状況の推移(不当廉売事案で迅速処理(注1)を行ったものを除く。)

(注1) 申告のあった不当廉売事案に対し可能な限り迅速に処理する(原則2か月以内)という方針に基づいて行う処理をいう。

(注2) ( )内の数字は,平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金納付命令に係る審判開始決定を行った関係人数である。

(注3) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決に係る金額を含み,同法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令に係る金額を除く。

(注4) 平成17年独占禁止法改正法による改正後の独占禁止法に基づく課徴金納付命令については当初命令額を記載している。

第1-2表 不当廉売事案における注意件数(迅速処理によるもの)の推移

第1図 法的措置件数と対象事業者等の数の推移

平成26年度における処理件数を行為類型別にみると,私的独占2件,価格カルテル26件,入札談合(官公需)1件,受注調整(民需)2件,不公正な取引方法83件,その他3件となっている(第2表参照)。法的措置は10件であり,この内訳は,私的独占1件,価格カルテル5件,受注調整(民需)2件,不公正な取引方法2件となっている(第2表及び第3表参照)。

第2表 平成26年度審査事件(行為類型別)一覧表

(注1) 複数の行為類型に係る事件は,主たる行為に即して分類している。

(注2) 価格カルテルとその他のカルテルが関係している事件は,価格カルテルに分類している。

(注3) 「その他」とは,事業者団体による構成事業者の機能活動の制限等である。

第3表 法的措置件数(行為類型別)の推移

(注1) 複数の行為類型に係る事件は,主たる行為に即して分類している。

(注2) 価格カルテルとその他のカルテルが関係している事件は,価格カルテルに分類している。

2 課徴金納付命令等

(1) 課徴金納付命令の概要

独占禁止法は,カルテル・入札談合等の未然防止という行政目的を達成するために,行政庁たる公正取引委員会が違反事業者等に対して金銭的不利益である課徴金の納付を命ずることを規定している(第7条の2第1項,第2項及び第4項,第8条の3,第20条の2,第20条の3,第20条の4,第20条の5並びに第20条の6)。

課徴金の対象となる行為は,①事業者又は事業者団体の行うカルテルのうち,商品若しくは役務の対価に係るもの又は商品若しくは役務について供給量若しくは購入量,市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの,②いわゆる支配型私的独占で被支配事業者が供給する商品若しくは役務について,その対価に係るもの又は供給量,市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの,③いわゆる排除型私的独占のうち供給に係るもの,④独占禁止法で定められた不公正な取引方法である,共同の取引拒絶,差別対価,不当廉売及び再販売価格の拘束のうち,一定の要件を満たしたもの並びに優越的地位の濫用のうち継続して行われたものである。

平成26年度においては,延べ128名に対し総額171億4303万円の課徴金納付命令を行った(第4表参照)。このうち,違反を繰り返した場合の割増算定率が適用された事業者は1事件における1名であった。また,早期に違反行為をやめた場合の軽減算定率が適用された事業者は1事件における3名であった。

(2) 課徴金減免制度の運用状況

平成26年度における課徴金減免制度に基づく事業者からの報告等の件数は61件であった(課徴金減免制度導入〔平成18年1月〕以降の件数は836件)。

なお,平成26年度においては,4事件10名の課徴金減免申請事業者について,当該事業者からの申出により,これらの事業者の名称,免除の事実又は減額の率等を公表した(注)。

(注) 公正取引委員会は,課徴金減免制度の適用を受けた事業者から公表の申出がある場合には,課徴金納付命令を行った際等に,当委員会のウェブサイト(http://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/kouhyou/index.html)に,当該事業者の名称,所在地,代表者名及び免除の事実又は減額の率等を公表することとしている。

第2図 課徴金額等の推移

(注1) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決に係る金額を含み,同法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令に係る金額を除く。

(注2) 平成17年独占禁止法改正法による改正後の独占禁止法に基づく課徴金納付命令については,当初命令額を記載している。

3 申告

平成26年度においては,独占禁止法の規定に違反する事実があると思われ,公正取引委員会に報告(申告)された件数は6,886件であった(第3図参照)。この報告が書面で具体的な事実を摘示して行われた場合には,措置結果を通知することとされており(第45条第3項),平成26年度においては,5,849件の通知を行った。

また,公正取引委員会は,独占禁止法違反被疑行為の端緒情報をより広く収集するため,平成14年4月からインターネットを利用した申告が可能となる電子申告システムを当委員会のウェブサイト上に設置しているところ,平成26年度においては,同システムを利用した申告が826件あった。

第3図 申告件数の推移

4 事業者団体等への要請・申入れ等

公正取引委員会は,独占禁止法違反行為についての調査の過程において,競争政策上必要な措置を講じるべきと判断した事項について,事業者団体等に要請や申入れを行っている。平成26年度においては,以下のとおり,要請や申入れを行った。

(1) 東日本段ボール工業組合に対する申入れ(平成26年6月19日)(事件詳細については後記第22(1)参照)

(2) 山形県農業協同組合中央会及び全国農業協同組合連合会の山形県本部に対する要請(平成26年9月11日)(事件詳細については後記第3第6表参照)

(3) 福井市農業協同組合及び福井県経済農業協同組合連合会に対する申入れ(平成27年1月16日)(事件詳細については後記第21参照)

(4) ホクレン農業協同組合連合会に対する申入れ(平成27年1月20日)(事件詳細については後記第22(3)参照)

(5) 全国農業協同組合連合会に対する申入れ(平成27年3月26日)(事件詳細については後記第22(4)参照)

第4表 平成26年度法的措置一覧表

(注) 課徴金納付命令対象事業者数の合計(延べ数)である。

第5表 課徴金制度の運用状況(注1)

(注1) 平成17年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法に基づく課徴金の納付を命ずる審決を含み,同法に基づく審判手続の開始により失効した課徴金納付命令を除く。

(注2) 平成15年9月12日,協業組合カンセイに係る審決取消請求事件について,審決認定(平成10年3月11日,課徴金額1934万円)の課徴金額のうち967万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

(注3) 平成16年2月20日,土屋企業㈱に係る審決取消請求事件について,審決認定(平成15年6月13日,課徴金額586万円)の課徴金額のうち302万円を超える部分を取り消す判決が出された(同判決は確定した。)。

(注4) エア・ウォーター㈱に係る審決取消請求事件について,審決を取り消す旨の判決が出され,同判決が確定したことを受け,平成26年10月14日,課徴金納付命令(平成23年5月26日,課徴金額36億3911万円)のうち,7億2782万円を超えて納付を命じた部分を取り消す旨の審決を行った。

第2 法的措置

平成26年度においては,10件について法的措置を採った。平成26年度に法的措置を採った10件の違反法条をみると,独占禁止法第3条前段(私的独占の禁止)違反1件,同法第3条後段(不当な取引制限の禁止)違反7件及び同法第19条(不公正な取引方法の禁止)違反2件となっている。

法的措置を採った前記10件の概要は次のとおりである。

1 独占禁止法第3条前段違反事件

福井県経済農業協同組合連合会に対する件(平成27年(措)第2号)

(1) 関係人

(注1) 以下,「福井県経済農業協同組合連合会」のことを「福井県経済連」と省略する。

(2) 違反行為の概要

ア 福井県経済連は,平成23年9月頃以降,特定共乾施設工事(注2)について,施主代行者(注3)として,工事の円滑な施工,管理料の確実な収受等を図るため,次の(ア)ないし(ウ)の方法等により,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を指定するとともに,受注予定者が受注できるように,入札参加者に入札すべき価格を指示し,当該価格で入札させていた。

(ア) 当該施設の既設業者(注4)を受注予定者と決定する。

(イ) 受注予定者に対し,「ネット価格」と称する受注希望価格を確認し,当該価格を踏まえて,受注予定者の入札すべき価格を決定し,受注予定者に当該価格で入札するように指示する。

(ウ) 受注予定者の入札すべき価格を踏まえて,他の入札参加者の1回目及び2回目の入札すべき価格を決定し,他の入札参加者に当該価格で入札するように指示する。

イ 福井県経済連は,前記アの行為によって,入札参加者の事業活動を支配することにより,公共の利益に反して,特定共乾施設工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注2) 「特定共乾施設工事」とは,福井県に所在する農業協同組合が施主として,同県が実施する「おいしい福井米生産体制整備事業」(平成24年3月31日以前にあっては「おいしい福井米づくり事業」)と称する補助事業により発注した穀物の乾燥・調製・貯蔵施設(注5)の製造請負工事等(注6)(当該工事と同時に発注された前記補助事業によらない製造請負工事及び建設工事を含む。)をいう。なお,福井県に所在する農業協同組合は,全て福井県経済連の会員である。

(注3) 「施主代行者」とは,施主代行業務(注7)を提供する者をいう。

(注4) 「既設業者」とは,福井県内において現在稼働している穀物の乾燥・調製・貯蔵施設のそれぞれにおいて,当該施設の建設等又は保守点検等の実績を有する者をいう。

(注5) 「穀物の乾燥・調製・貯蔵施設」とは,穀物を乾燥,調製若しくは貯蔵する設備のいずれか又は複数を有する施設をいう。

(注6) 「製造請負工事等」とは,施工業者が,一定の性能等を有する機械,設備,装備等の工場製作,現場での組立て,据付け,調整等を一括して請け負って完成させる製造請負工事並びに当該工事及び建設工事が併せて発注される工事をいう。

(注7) 「施主代行業務」とは,施主が,施行管理能力を有する者に委託する,基本設計の作成,実施設計書の作成又は検討,工事の施行(当該工事の施工業者決定のための入札等参加者の選定についての助言,入札等の執行の補助等の業務を含む。),施工管理等の業務をいう。

(3) 排除措置命令の概要

ア 福井県経済連は,次の事項を,経営管理委員会において決議しなければならない。

(ア) 前記(2)アの行為を行っていないことを確認すること。

(イ) 今後,穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等について,前記(2)アの行為と同様の行為を行わないこと。

イ 福井県経済連は,前記アに基づいて採った措置を,会員の農業協同組合(以下第21において「農協」という。)及び特定共乾施設工事の入札参加者等に通知し,かつ,自らの職員に周知徹底しなければならない。

ウ 福井県経済連は,今後,穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等について,前記(2)アの行為と同様の行為を行ってはならない。

エ 福井県経済連は,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

(ア) 穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等の入札等に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び自らの職員に対する周知徹底

(イ) 穀物の乾燥・調製・貯蔵施設の製造請負工事等の入札等に関する独占禁止法の遵守についての,自らの職員に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

(4) 福井市農業協同組合に対する申入れについて

本件審査の過程において,福井市農業協同組合(以下「JA福井市」という。)は,自らが施主となり,福井県が実施する「おいしい福井米生産体制整備事業」と称する補助事業等により発注した特定共乾施設工事のうち11件の工事について,原則として,指名競争入札の方法により契約を行わなければならないにもかかわらず,入札等の方法によらずに当該11件に係る施設の既設業者に発注し,福井県経済連からの協力を得て,適正な入札を実施したかのように体裁を整えていた事実が認められた。

当該事実は,競争入札の制度の趣旨に反するものであり,公正かつ自由な競争を妨げるものであることから,公正取引委員会は,JA福井市に対し,今後,同様の行為を再び行わないよう,工事発注等に係る適正な入札の実施を徹底することを申し入れた。

(5) 福井県経済連に対する申入れについて

本件審査の過程において,次の事実が認められた。

ア 福井県に所在する農協は,同県が実施する「おいしい福井米づくり事業」と称する補助事業により発注した食味分析計(注8)の調達に係る全ての入札について,原則として,指名競争入札の方法により契約を行わなければならないにもかかわらず,入札等の方法によらずに福井県経済連に発注し,適正な入札を実施したかのように体裁を整えていた。

イ 福井県経済連は,前記アについて,一部の入札参加予定者に対し,入札書に記載すべき価格等を指示して,入札関係書類を提出させるなど,適正な入札を実施したかのように体裁を整える行為に関与していた。

これらの事実は,競争入札の制度の趣旨に反するものであり,公正かつ自由な競争を妨げるものであることから,公正取引委員会は,福井県経済連に対し,今後,前記イと同様の行為を再び行わないよう申し入れた。

(注8) 「食味分析計」とは,米の主成分である蛋白質,水分,アミロース等の成分の含有率を測定する機器をいう。

(6) 福井県に対する通知について

公正取引委員会は,前記(4)及び(5)に関連して,次の事実について,福井県に対し通知を行った。

ア JA福井市等は,それぞれ施主となり,前記(4)の補助事業等により発注した特定共乾施設工事のうち15件の工事について,原則として,指名競争入札の方法により契約を行わなければならないにもかかわらず,入札等の方法によらずに当該15件に係る施設の既設業者に発注し,適正な入札を実施したかのように体裁を整えていた。

イ 福井県に所在する農協は,前記(5)の補助事業により発注した食味分析計の調達に係る全ての入札について,原則として,指名競争入札の方法により契約を行わなければならないにもかかわらず,入札等の方法によらずに福井県経済連に発注し,適正な入札を実施したかのように体裁を整えていた。

ウ なお,福井県経済連は,前記ア及びイについて,既設業者等に対し,入札書に記載すべき価格等を指示して,入札関係書類を提出させるなど,適正な入札を実施したかのように体裁を整える行為に関与していた。

2 独占禁止法第3条後段違反事件

(1) 東日本地区(注1)に交渉担当部署を有する需要者向け段ボールシート又は段ボールケースの製造業者及び大口需要者向け段ボールケースの製造業者に対する件(平成26年(措)第11号・第12号・第13号)

(注1) 「東日本地区」とは,北海道,青森県,岩手県,宮城県,秋田県,山形県,福島県,茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,新潟県,山梨県,長野県及び静岡県をいう。以下同じ。

ア 関係人
(ア) 特定段ボールシート(注2)に係る違反事業者

(注2) 「特定段ボールシート」とは,購入価格等の取引条件の交渉担当部署が東日本地区に所在する需要者に販売される外装用段ボール(日本工業規格「Z 1516:2003」。以下同じ。)のうち,当該需要者の東日本地区に所在する交渉担当部署との間で取り決めた取引条件に基づき当該需要者に販売されるものをいう。

(注3) 「違反事業者」欄記載の「●」は,その事業者が平成23年10月17日に開催された東日本段ボール工業組合(以下「東段工」という。)の理事会の下部組織である三木会の会合の場において違反行為を行った者であることを,「○」は,その事業者が平成23年10月17日以降に開催された東段工の支部会等の場において違反行為に参加した者であることを示している。

(注4) 「排除措置命令」欄記載の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを,同欄記載の「─」は,その事業者が排除措置命令の対象とならない者であることを示している。

(注5) 「※1」を付した事業者は,平成24年10月1日,「※3」を付した事業者を吸収合併し,同日,商号を王子チヨダコンテナー㈱から現商号に変更している。

(注6) 「※2」を付した事業者は,平成25年4月1日,「※4」を付した事業者ほか3社を吸収合併し,同日,商号を中部大王製紙パッケージ㈱から現商号に変更している。

(イ) 特定段ボールケース(注7)に係る違反事業者

(注7) 「特定段ボールケース」とは,購入価格等の取引条件の交渉担当部署が東日本地区に所在する需要者に販売される外装用段ボールで作った箱のうち,当該需要者の東日本地区に所在する交渉担当部署との間で取り決めた取引条件に基づき当該需要者に販売されるものをいう。

(注8) 「違反事業者」欄記載の「●」は,その事業者が平成23年10月17日に開催された三木会の会合の場において違反行為を行った者であることを,「○」は,その事業者が平成23年10月17日以降に開催された東段工の支部会等の場において違反行為に参加した者であることを,「◎」は,その事業者が遅くとも三木会の会合が開催された平成23年11月17日までに違反行為に参加した者であることを示している。

(注9) 「排除措置命令」欄記載の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを,同欄記載の「─」は,その事業者が排除措置命令の対象とならない者であることを示している。

(注10) 「※1」を付した事業者は,平成24年10月1日,「※3」を付した事業者を吸収合併し,同日,商号を王子チヨダコンテナー㈱から現商号に変更している。

(注11) 「※2」を付した事業者は,平成25年4月1日,「※4」を付した事業者ほか3社を吸収合併し,同日,商号を中部大王製紙パッケージ㈱から現商号に変更している。

(ウ) 特定ユーザー向け段ボールケース(注12)に係る違反事業者

(注12) 「特定ユーザー向け段ボールケース」とは,交渉窓口の事業者との間で取り決められた販売価格等の取引条件に基づき,特定の大口需要者に販売される外装用段ボールで作った箱をいう。

(注13) 「排除措置命令」欄記載の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象となる者であることを,同欄記載の「─」は,その事業者が排除措置命令の対象とならない者であることを示している。

(注14) 「※」を付した事業者は,平成24年10月1日,商号を王子チヨダコンテナー㈱から現商号に変更している。

(注15) 以下,違反事業者の事業者名については,「㈱」の記載を省略する。

イ 違反行為の概要
(ア) 特定段ボールシート

a 前記ア(ア)の表の「違反事業者」欄に「●」を付した11社は,平成23年10月17日に開催された,東段工の理事会の下部組織である三木会の会合の場を利用して,各社同様の引上げ方針を表明するなどして,特定段ボールシートの販売価格を現行価格から1平方メートル当たり7円ないし8円以上引き上げる旨合意した。

b 前記ア(ア)の表の「違反事業者」欄に「○」を付した46社は,平成23年10月17日以降に開催された東段工の支部会等の場において,自ら又は営業部門における各業務を委託している子会社を通じて,三木会の会合に出席した東段工の支部長等から又は本部役員会社(注16)の支部の管轄地区における営業責任者等から,前記aの合意と同内容の引上げ方針を伝達され,同方針に沿って特定段ボールシートの販売価格を引き上げる旨を表明するなどし,それぞれ,前記aの合意に参加した。

c 前記ア(ア)の表記載の57社は,前記aの合意により,公共の利益に反して,特定段ボールシートの販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注16) 「本部役員会社」とは,レンゴー,セッツカートン,王子コンテナー,トーモク,ダイナパック,日本トーカンパッケージ,大和紙器,森紙業,福野段ボール工業及び大王製紙パッケージの10社をいう。

(イ) 特定段ボールケース

a 前記ア(イ)の表の「違反事業者」欄に「●」を付した12社は,平成23年10月17日に開催された三木会の会合の場を利用して,各社同様の引上げ方針を表明するなどして,特定段ボールケースの販売価格を現行価格から12パーセントないし13パーセント以上引き上げる旨合意した。

b 前記ア(イ)の表の「違反事業者」欄に「○」を付した50社は,平成23年10月17日以降に開催された東段工の支部会等の場において,自ら又は営業部門における各業務を委託している子会社を通じて,三木会の会合に出席した東段工の支部長等から又は本部役員会社の支部の管轄地区における営業責任者等から,前記aの合意と同内容の引上げ方針を伝達され,同方針に沿って特定段ボールケースの販売価格を引き上げる旨を表明するなどし,それぞれ,前記aの合意に参加した。

c 前記ア(イ)の表の「違反事業者」欄に「◎」を付した1社は,遅くとも三木会の会合が開催された平成23年11月17日までに,前記aの合意に参加した。

d 前記ア(イ)の表記載の63社は,前記aの合意により,公共の利益に反して,特定段ボールケースの販売分野における競争を実質的に制限していた。

(ウ) 特定ユーザー向け段ボールケース

a 前記ア(ウ)の表記載の5社は,平成23年10月17日に開催された各社の営業本部長級の者らによる会合である5社会において,

(a) 特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格又は加工賃を,共同して引き上げていくこと

(b) 特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格又は加工賃の引上げの実施方法については,交渉窓口会社ごとに開催する会合等において話し合うこと

とし,平成23年10月31日に開催された5社会において,話合いを行う対象とする交渉窓口会社を確定したことにより,遅くとも,同日までに特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格又は加工賃を引き上げる旨合意した。

b 5社は,前記aの合意により,公共の利益に反して,特定ユーザー向け段ボールケースの取引分野における競争を実質的に制限していた。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 前記イの違反行為ごとに,次の措置を講じることを命じた。

a 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会等において決議しなければならない。

(a) 前記イの各合意が消滅していることを確認すること。

(b) 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定段ボールシート若しくは特定段ボールケースの販売価格又は特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格若しくは加工賃を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決めること。

(c) 今後,相互に,又は他の事業者と,特定段ボールシート若しくは特定段ボールケースの販売価格又は特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格若しくは加工賃の改定に関して情報交換を行わないこと。

b 名宛人は,それぞれ,前記aに基づいて採った措置について,

(a) 自社を除く名宛人に対する通知(前記イ(ウ)に係る名宛人については,自社を除く違反事業者に対する通知)

(b) 自社の特定段ボールシート,特定段ボールケース又は特定ユーザー向け段ボールケースの需要者及び取引先である商社等に対する通知

(c) 自社の従業員に対する周知徹底

をしなければならない。

c 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定段ボールシート若しくは特定段ボールケースの販売価格又は特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格若しくは加工賃を決定してはならない。

d 名宛人は,今後,それぞれ,相互に,又は他の事業者と,特定段ボールシート若しくは特定段ボールケースの販売価格又は特定ユーザー向け段ボールケースの販売価格若しくは加工賃の改定に関して情報交換を行ってはならない。

(イ) 前記イ(ウ)に係る名宛人に対しては,前記(ア)に加え,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じることを命じた(注17)。

a 自社の従業員に対する,自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の周知徹底

b 特定ユーザー向け段ボールケースの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての,特定ユーザー向け段ボールケースの営業担当者に対する定期的な研修並びに法務担当者及び第三者による定期的な監査

c 独占禁止法違反行為に関与した役員及び従業員に対する処分に関する規程の作成又は改定

d 独占禁止法違反行為に係る通報又は調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成又は改定

(注17) 名宛人のうち,トーモク及び日本トーカンパッケージについては,a,b及びdの事項を行うために必要な措置を講ずることを命じた。

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は,平成26年9月22日までに,それぞれ前記ア(ア)の表ないし前記ア(ウ)の表の「課徴金額」欄記載の額(総額132億9313万円)を支払わなければならない。

オ 東段工に対する申入れについて

公正取引委員会は,東段工に対し,次の事実等を踏まえ,今後,東段工の会合の場で,前記イ(ア)及び(イ)に記載の違反行為と同様の行為が行われないよう,再発防止のための措置を講じるよう申し入れた。

(ア) 前記イ(ア)及び(イ)の合意,並びに,特定段ボールシート及び特定段ボールケースの販売価格の引上げの交渉状況に関する情報交換は,東段工の会合の場を利用して行われていた。

(イ) 三木会の会合に出席していた東段工事務局は,同会合の場において,特定段ボールシート及び特定段ボールケースの価格に関する情報交換が行われていたことを承知していたにもかかわらず,これらの行為を取りやめさせるための措置を何ら講じなかった。

(2)鋼球(注1)の製造業者に対する件(平成26年(措)第14号)

(注1) 「鋼球」とは,鋼材を原材料とする玉(遊技球を除く。)をいう。

ア 関係人

(注2) 表中の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象であることを示している。

(注3) 表中の「-」は,その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならないことを示している。

(注4) 以下,違反事業者の事業者名については,「㈱」の記載を省略する。

イ 違反行為の概要

(ア) ツバキ・ナカシマ及び天辻鋼球製作所の2社(以下第22(2)において「2社」という。)は,遅くとも平成22年10月7日以降,鋼球の販売価格の低落を防止し自社の利益の確保を図るため,共同して販売価格を引き上げ又は維持する旨の合意の下に

a 鋼材の仕入価格の変動状況について情報交換を行い,鋼球の販売価格の改定方針を決定した上,需要者等に提示する現行の鋼球の販売価格からの改定率等を決定する

b 主要な需要者等からのコストダウン要請の状況について情報交換を行い,当該需要者等に提示する現行の鋼球の販売価格からの改定率等を決定する

などしていた。

(イ) 2社は,前記(ア)の合意により,公共の利益に反して,我が国における鋼球の販売分野における競争を実質的に制限していた。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) ツバキ・ナカシマは,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。

a 前記イ(ア)の合意が消滅していることを確認すること。

b 今後,他の事業者と共同して,鋼球の販売価格を決定せず,自主的に決めること。

c 今後,他の事業者と,鋼球の原材料である鋼材の仕入価格の変動状況又は鋼球の販売価格に関する情報交換を行わないこと。

(イ) ツバキ・ナカシマは,前記(ア)に基づいて採った措置を,天辻鋼球製作所に通知するとともに,自社の鋼球の需要者及び自社の鋼球の取引先である販売代理店等に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) ツバキ・ナカシマは,今後,他の事業者と共同して,鋼球の販売価格を決定してはならない。

(エ) ツバキ・ナカシマは,今後,他の事業者と,鋼球の原材料である鋼材の仕入価格の変動状況又は鋼球の販売価格に関する情報交換を行ってはならない。

(オ) ツバキ・ナカシマは,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び自社の従業員に対する周知徹底

b 鋼球の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての,鋼球の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

ツバキ・ナカシマは,平成26年12月10日までに,13億2471万円を支払わなければならない。

(3) 北海道に所在する農業協同組合等(注1)が発注する低温空調設備工事(注2)の工事業者に対する件(平成27年(措)第3号)

(注1) 「北海道に所在する農業協同組合等」(以下第22(3)において「農協等」という。)とは,北海道に所在する農業協同組合又は農業協同組合連合会(ホクレン農業協同組合連合会〔以下「ホクレン」という。〕を除く。)をいう。

(注2) 「低温空調設備工事」とは,農産物を貯蔵又は予冷する施設において,農産物の品質を維持することを目的として,当該施設内の温度又は湿度を調節するために設置される,冷凍機又は冷却器を用いた空調設備の建設工事(当該空調設備に附帯する工事を含む。)をいう。

ア 関係人

(注3) 表中の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象であることを示している。

(注4) 表中の「-」は,その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象とならないことを示している。

(注5) 以下,違反事業者の事業者名については,「㈱」の記載を省略する。

イ 違反行為の概要

ナラサキ産業及び北海道日立(以下第22(3)において「2社」という。)並びに三菱電機冷熱プラントの3社は,遅くとも平成21年4月8日以降,共同して,農協等発注の特定低温空調設備工事(注6)について,受注価格の低落防止等を図るため

(ア)a 受注予定者を決定する

b 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する

旨の合意の下に

(イ)a 受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1社のときは,その者を受注予定者とする

b 受注希望者が複数社のときは,施主である農協等が過去に発注した低温空調設備工事の受注実績,ホクレンの担当者が当該農協等の希望等を踏まえて示した意向等を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する

c 受注予定者が提示する入札価格又は見積価格(以下「入札価格等」という。)は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者が定めた入札価格等以上の入札価格等を提示する

などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,農協等発注の特定低温空調設備工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注6) 「農協等発注の特定低温空調設備工事」とは,農協等が,一般競争入札,一般競争見積,指名競争入札,指名競争見積又は見積り合わせ(以下「競争入札等」という。)の方法により発注する低温空調設備工事をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 2社は,それぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。

a 前記イの行為を取りやめていることを確認すること。

b 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,農協等発注の特定低温空調設備工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行うこと。

(イ) 2社は,それぞれ,前記(ア)に基づいて採った措置を,相互に通知するとともに,農協等及びホクレンに通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 2社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,農協等発注の特定低温空調設備工事について,受注予定者を決定してはならない。

(エ) 2社は,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の自社の従業員に対する周知徹底(北海道日立にあっては当該行動指針の作成及び自社の従業員に対する周知徹底)

b 農協等発注の特定低温空調設備工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての,当該工事の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

2社は,平成27年4月21日までに,それぞれ前記アの表の「課徴金額」欄記載の額(総額1655万円)を支払わなければならない。

オ ホクレンに対する申入れ等について
(ア) 本件審査の過程において認められた事実

a ホクレンは,農協等発注の特定低温空調設備工事の大部分について,農協等から施主代行業務(注7)を受託していた。

b 農協等が発注する低温空調設備工事のうち一部の工事については,農林水産省又は北海道から,交付金が交付されていた。

c ホクレンの担当者は,ホクレンが施主代行業務を受託した農協等発注の特定低温空調設備工事の競争入札等において,特定の工事業者に対し,当該農協等の希望等を踏まえ,受注予定者についての意向を示すことがあった。また,ホクレンの担当者は,農協等発注の特定低温空調設備工事の競争入札等の実施に当たり,特定の工事業者に対し,当該工事の契約締結の目安となる予算額を教示することもあった。

(注7) 「施主代行業務」とは,施主が,施行管理能力を有する者に委託する,基本設計の作成,実施設計書の作成又は検討,工事の施行(入札等の実務,工事の施工業者の選定の補助等の業務を含む。),施工管理等の業務をいう。

(イ) 申入れの概要

前記(ア)cの行為は,前記イの違反行為を誘発し,助長していたものと認められることから,公正取引委員会は,公正かつ自由な競争を確保するため,ホクレンに対し,前記(ア)cと同様の行為が再び行われることがないよう適切な措置を講ずることを申し入れた。

(ウ) 候補選考について

ホクレンは,農協等から施主代行業務を受託した者として,交付金の交付決定後に入札を行った場合には農協等が設定した期日までに工事を完了させることが困難と見込まれるものについて,農協等に対し,交付金の交付決定前に低温空調設備工事が施工される施設の建築設計の協力業者を選定する名目の候補選考と称する競争入札等により,当該工事の受注者を選定し,その場合には,改めて競争入札等を実施せずにこれを実施した体裁を整えることを提案するとともに,その実務を担当していた。

このため,公正取引委員会は,ホクレンに対し,入札手続の透明性を確保するための措置を講ずるべきである旨を伝えた。

(4) 農業協同組合等(注1)が発注する穀物の乾燥・調製・貯蔵施設(注2)及び精米施設(注3)の製造請負工事等(注4)の施工業者に対する件(平成27年(措)第5号)

(注1) 「農業協同組合等」(以下第22(4)において「農協等」という。)とは,農業協同組合,地方公共団体,農事組合法人,営利法人,任意組合及び全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)をいう。

(注2) 「穀物の乾燥・調製・貯蔵施設」とは,穀物を乾燥,調製若しくは貯蔵する設備のいずれか又は複数を有する施設をいう。

(注3) 「精米施設」とは,玄米の糠(ぬか)層を除去して白米に加工する施設をいう。

(注4) 「製造請負工事等」とは,施工業者が,一定の性能等を有する機械,設備,装備等の工場製作,現場での組立て,据付け,調整等を一括して請け負って完成させる製造請負工事並びに当該工事及び建設工事が併せて発注される工事をいう。

ア 関係人

(注5) 表中の「○」は,その事業者が排除措置命令の対象であることを示している。

(注6) 表中の「-」は,その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象ではないことを示している。

(注7) 表中の「※」を付した事業者は,平成24年9月1日付けで,クボタアグリサービス㈱に対し,農協等が,北海道の区域を除く全国において,競争入札等の方法により発注する穀物の乾燥・調製・貯蔵施設及び精米施設の製造請負工事等の施工を含む農業用施設に関する事業を譲渡し,同日以降,同事業を営んでいない。

(注8) 以下,違反事業者の事業者名については,「㈱」の記載を省略する。

イ 違反行為の概要

前記アの表記載の8社(以下「8社」という。)は,遅くとも平成22年6月30日以降(クボタアグリサービスにあっては平成24年8月1日以降),特定農業施設工事(注9)について,受注価格の低落防止等を図るため

(ア)a 受注予定者を決定する

b 受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力する

旨の合意の下に

(イ)a 受注希望者が1社のときは,その者を受注予定者とする

b 受注希望者が複数社のときは,当該工事それぞれについて,対象となる穀物の乾燥・調製・貯蔵施設及び精米施設の建設等又は保守点検等の実績,施主である農協等への営業活動の実績等を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する

c 受注予定者が提示する入札価格等は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者が連絡した入札価格等以上の入札価格等を提示する

などにより,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,特定農業施設工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。

(注9) 「特定農業施設工事」とは,農協等が,北海道の区域を除く全国において,競争入札等の方法により発注する穀物の乾燥・調製・貯蔵施設及び精米施設の製造請負工事等から福井県経済連が施主代行業務(注10)を提供する工事を除いたものをいう。

(注10) 「施主代行業務」とは,施主が,施行管理能力を有する者に委託する,基本設計の作成,実施設計書の作成又は検討,工事の施行(当該工事の施工業者決定のための入札等参加業者の選定についての助言,入札等の執行の補助等の業務を含む。),施工管理等の業務をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 8社のうち,名宛人は,それぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。

a 前記イの行為を取りやめていることを確認すること。

b 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,農協等が,北海道の区域を除く全国において,競争入札等の方法により発注する穀物の乾燥・調製・貯蔵施設及び精米施設の製造請負工事等について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行うこと。

(イ) 名宛人は,それぞれ,前記(ア)に基づいて採った措置を,自社を除く名宛人に通知するとともに,前記(ア)b記載の工事の施主である農協等に周知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,前記(ア)b記載の工事について,受注予定者を決定してはならない。

(エ) 名宛人は,それぞれ,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 自社の工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定及び自社の従業員に対する周知徹底(サタケ及びクボタアグリサービスにあっては当該行動指針の自社の従業員に対する周知徹底)

b 前記(ア)b記載の工事の受注に関する独占禁止法の遵守についての,当該工事の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は,平成27年6月29日までに,それぞれ別表の「課徴金額」欄記載の額(総額11億7589万円)を支払わなければならない。

オ 全農に対する申入れについて
(ア) 本件審査の過程において認められた事実

a 全農の県本部の担当者は,全農が県本部において施主代行業務を受託した特定農業施設工事の競争入札等の実施に当たり

(a) 施主である農協等の希望等を踏まえ,競争入札等の前に特定の施工業者に対し,受注者に関する意向を示すことがあった。

(b) 競争入札等の前に特定の施工業者に対し,非公表情報である予定価格等に関する情報を教示することがあった。

b 全農が県本部において施主代行業務を受託した穀物の乾燥・調製・貯蔵施設及び精米施設の製造請負工事等のうち,補助金等の助成対象となるものについては,受注者を選定するに当たり,原則として,競争入札等を実施しなければならないところ,全農の県本部の担当者は,競争入札等を実施したかのように体裁を整えるため,施工業者に対し,入札書等に記載すべき入札価格等を指示して,競争入札等の関係書類を提出させるなどの行為を行うことがあった。

(イ) 申入れの概要

前記(ア)aの行為は,前記イの違反行為を誘発し,又は助長していたものと認められる。また,前記(ア)bの行為は,競争入札等の制度の趣旨に反するものであり,公正かつ自由な競争を妨げるものである。

よって,公正取引委員会は,公正かつ自由な競争を確保するため,全農に対し,前記(ア)と同様の行為が再び行われることのないよう適切な措置を講ずることを申し入れた。

3 独占禁止法第8条違反事件

網走管内コンクリート製品協同組合に対する件(平成27年(措)第1号)

(1) 違反行為者(課徴金納付命令の対象事業者及び課徴金額は,別表のとおり)

(注1) 以下,「網走管内コンクリート製品協同組合」のことを「網走協組」と省略する。

(別表)

(2) 網走協組に対する独占禁止法の適用について

網走協組は,中小企業等協同組合法に基づいて設立された事業協同組合であるものの,後記(3)アの決定は,網走協組の実施する販売について定めたものではなく,組合員及び賛助会員(以下「組合員等」という。)の需要者に対する特定コンクリート二次製品(注2)の販売について取引の相手方及び対価を制限することを定めたものであって,網走協組の当該行為は,独占禁止法第22条に規定する「組合の行為」に該当せず,独占禁止法の適用を受けるものである。

(注2) 「特定コンクリート二次製品」とは,オホーツク地区(北海道オホーツク総合振興局の所管区域である北海道北見市,同網走市,同紋別市,同網走郡大空町,同郡美幌町及び同郡津別町,同斜里郡斜里町,同郡清里町及び同郡小清水町,同常呂郡訓子府町,同郡置戸町及び同郡佐呂間町並びに同紋別郡遠軽町,同郡湧別町,同郡滝上町,同郡興部町,同郡雄武町及び同郡西興部村をいう。以下同じ。)において販売されるコンクリート二次製品(工場又は工事現場内の製造設備において,生コンクリートを型枠に流し込み,あらかじめ,成型,硬化させて製品化したものであって,道路,農業用排水路等向けのものをいう。以下同じ。)のうち,バンカーサイロ,橋桁,ボックスカルバート(道路土工-カルバート工指針,月刊建設物価及び月刊積算資料に記載されていない規格のものに限る。),護岸用コンクリート及び組合員又は賛助会員の各社独自の製品を除くものをいう。

(3) 違反行為の概要

ア 網走協組は

(ア) 平成24年6月5日に開催した臨時総会において,オホーツク地区におけるコンクリート二次製品の市況回復を図るため,共同受注事業と称して,あらかじめ,需要者ごとに見積価格を提示し契約すべき者(以下「契約予定者」という。)として組合員のうち1社を割り当て,その販売価格に係る設計価格(注3)からの値引き率を10パーセント以内とすることを決定し,その実施に当たっては,対象とする品目及び需要者ごとに契約予定者として割り当てる組合員を事前に運営委員会において決定することとした。

(イ) 前記(ア)を踏まえ,平成24年6月8日に開催した運営委員会において,前記(ア)の品目について,コンクリート二次製品から一部の組合員のみが製造販売しているものなどを除いて,特定コンクリート二次製品とすることを決定した。また,同月27日に開催した運営委員会において,需要者ごとに契約予定者として割り当てる組合員を記載した一覧表を定め,同年7月1日から前記(ア)の決定を実施することを決定した。

(ウ) オホーツク地区においてコンクリート二次製品の製造販売を行っている非組合員3社(以下「3社」という。)に対し,前記(ア)及び(イ)の決定を組合員とともに実施するよう協力を求め,これに3社が応じたことから,平成24年10月5日に開催した理事会において,3社を組合員に準じる者として賛助会員とすることを決定した。

イ 網走協組は,組合員等を構成事業者とする事業者団体であり,独占禁止法第2条第2項に規定する事業者団体に該当するところ,特定コンクリート二次製品について,前記アの決定により,特定コンクリート二次製品の販売分野における競争を実質的に制限していた。

(注3) 「設計価格」とは,国土交通省北海道開発局,北海道等が予定価格の積算に用いるものとして公表しているコンクリート二次製品の単価をいう。

(4) 課徴金納付命令の概要

課徴金納付命令の対象事業者は,平成27年4月15日までに,それぞれ前記(1)の別表の「課徴金額」欄記載の額(総額5859万円)を支払わなければならない。

4 独占禁止法第19条違反事件

(1) ダイレックス㈱に対する件(平成26年(措)第10号)

(注1) 平成21年独占禁止法改正法の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法の第14項。

ア 関係人

(注2) 以下,「ダイレックス㈱」のことを「ダイレックス」と省略する。

イ 違反行為の概要

ダイレックスは,遅くとも平成21年6月28日以降,自社と継続的な取引関係にある納入業者(注3)のうち取引上の地位が自社に対して劣っている者(以下「特定納入業者」という。)に対して,正常な商慣習に照らして不当に,次の行為を行っていた。

(ア) 新規開店又は改装開店(注4)に際し,特定納入業者である78名に対し,これらを実施する店舗において,当該特定納入業者が納入する商品以外の商品を含む当該店舗の商品の移動,ダイレックスの仕入担当者(注5)が定めた棚割り(当該商品を陳列する場所及び方法をいう。)に基づく当該商品の陳列等の作業を開店前に行わせるため,あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,かつ,派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく,当該特定納入業者の従業員等を派遣させていた。

(イ)a 閉店(改装開店を実施するための閉店を含む。)の際に実施するセール(以下「閉店セール」という。)に際し,特定納入業者のうち66名に対し,閉店セールの「協賛金」等の名目で,あらかじめ算出根拠,使途等について明確に説明することなく,当該特定納入業者が販売促進効果を得ることができないにもかかわらず,当該特定納入業者が納入した商品であって,ダイレックスが定めた割引率で販売した商品の割引額に相当する額の一部又は全部の金銭を提供させていた。

b 平成23年5月4日に発生したダイレックス朝倉店の火災に際し,当該火災により滅失又は毀損した商品(以下「火災滅失毀損商品」という。)を納入した特定納入業者のうち48社に対し,火災滅失毀損商品を販売できないことによるダイレックスの損失を補塡するため,火災滅失毀損商品の納入価格に相当する額の一部又は全部の金銭を提供させていた。

(注3) 「納入業者」とは,ダイレックスが自ら販売する商品を,ダイレックスに直接販売して納入する事業者をいう。

(注4) 「新規開店」とは,ダイレックスが,新たに店舗を設置(既存の店舗を閉鎖して同所で建て替えること及び同所以外の場所に店舗を移転することを含む。)して,当該店舗の営業を開始することをいい,「改装開店」とは,ダイレックスが,自社の既存の店舗について,一時的に営業を取りやめて,売場の移動,売場面積の拡縮,設備の改修その他の改装を実施した上で,当該店舗の営業を再開することをいう。

(注5) 「仕入担当者」とは,ダイレックスの店舗で販売する商品及びその販売方針を決定し,納入業者との間で商品の取引条件等を交渉する業務を行うダイレックスの商品部に所属する従業員をいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) ダイレックスは,前記イの行為を取りやめていることを確認すること及び今後当該行為と同様の行為を行わないことを,取締役会において決議しなければならない。

(イ) ダイレックスは,前記(ア)に基づいて採った措置を,納入業者に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) ダイレックスは,今後,前記イの行為と同様の行為を行ってはならない。

(エ) ダイレックスは,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。

a 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の改定

b 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての,役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査

エ 課徴金納付命令の概要

ダイレックスは,平成26年9月8日までに,12億7416万円を支払わなければならない。

(2) 岡山県北生コンクリート協同組合に対する件(平成27年(措)第4号)

ア 関係人

(注1) 以下,「生コンクリート」のことを「生コン」と省略する。

(注2) 岡山県津山市,美作市,赤磐市(旧赤磐郡吉井町に限る。),苫田郡,久米郡,勝田郡及び英田郡の区域を指す。

(注3) 以下,「岡山県北生コンクリート協同組合」のことを「岡山県北生コン協組」と省略する。

イ 違反行為の概要

岡山県北生コン協組は,取引先が生コンを非組合員(注4)から購入した場合には当該取引先との以後の取引条件を現金による定価販売(注5)とする旨を決定し,取引先に対してその旨を告知することにより,取引先に非組合員から生コンを購入しないようにさせている。

(注4) 岡山県北生コン協組が生コンの共同販売事業を行う地域(組合の地区から赤磐市及び久米郡旧旭町を除いた地域)に生コン製造工場を有する非組合員をいう。

(注5) 岡山県北生コン協組は,生コンの共同販売事業に用いる価格表の掲載価格から2,000円の値引きをした額で販売することを通常としているところ,「定価販売」とは,当該掲載価格から値引きをせずに販売することをいう。

ウ 排除措置命令の概要

(ア) 岡山県北生コン協組は,次の事項を理事会において決議しなければならない。

a 前記イの決定を破棄するとともに,取引先に対する告知を撤回すること。

b 今後,取引先が生コンを非組合員から購入した場合には当該取引先との以後の取引条件を現金による定価販売とすることにより取引先に非組合員から生コンを購入しないようにさせている行為と同様の行為を行わないこと。

(イ) 岡山県北生コン協組は,前記(ア)に基づいて採った措置を組合員及び取引先に通知しなければならない。

(ウ) 岡山県北生コン協組は,今後,取引先が生コンを非組合員から購入した場合には当該取引先との以後の取引条件を現金による定価販売とすることにより取引先に非組合員から生コンを購入しないようにさせている行為と同様の行為を行ってはならない。

第3 警告

平成26年度において警告を行ったものの概要は,次のとおりである。

第6表 平成26年度警告事件一覧表

第4 告発

私的独占,カルテルなどの重大な独占禁止法違反行為については,排除措置命令等の行政上の措置のほか罰則が設けられているところ,これらについては公正取引委員会による告発を待って論ずることとされている(独占禁止法第96条及び第74条第1項)。

公正取引委員会は,平成17年10月,平成17年独占禁止法改正法の趣旨を踏まえ,「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」を公表し,独占禁止法違反行為に対する抑止力強化の観点から,積極的に刑事処罰を求めて告発を行っていくこと等を明らかにしている。

平成26年度においては,検事総長に告発した事件はなかった。