第2部 各論

第4章 訴訟

第1 審決取消請求訴訟

1 概説

平成27年度当初において係属中の審決取消請求訴訟は7件であったところ,平成27年度中に新たに5件の審決取消請求訴訟が提起された。

これら平成27年度の係属事件12件のうち,最高裁判所が上告棄却及び上告不受理決定をしたことにより終了したものが3件,最高裁判所が上告不受理決定をしたことにより終了したものが1件,最高裁判所が上告受理決定をした上で,請求を認容した原判決を維持し,原審被告(公正取引委員会)の上告を棄却したことにより終了したものが1件,東京高等裁判所が請求を棄却し上訴期間の経過をもって確定したものが1件あった。また,平成27年度中に東京高等裁判所が請求を棄却する判決を言い渡した後,原審原告が上告及び上告受理申立てを行ったものが1件あった。

この結果,平成27年度末時点において係属中の審決取消請求訴訟は6件となった。

第1表 平成27年度係属事件一覧

2 東京高等裁判所における判決

(1) ㈱生田組による審決取消請求事件(平成26年(行ケ)第28号)(前記表一連番号6)

ア 主な争点及び判決の概要

平成20―21年度春野改良工事(以下「本件工事」という。)は,独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該・・・役務」に該当するものとして,課徴金の算定の対象となるか否か

原告は,本件工事について,原告代表者が,世話人である入交建設㈱社長に対して電話をかけ(以下「本件電話連絡」という。),同人から,本件工事の入札に㈱竹内建設が参加することを聞いた時点で,入交建設㈱の社長に対し,本件工事について談合調整をしないことを申し入れ,本件工事は受注調整をしないいわゆる「フリー物件」とすることが確認されたなどとして,排除措置命令が認定した合意(以下「本件基本合意」という。)に基づく受注調整が行われた事実を認定する実質的証拠はないと主張した。

これに対し,東京高等裁判所は,次のとおり判示した。

(ア) 原告代表者が,世話人である入交建設㈱社長及びミタニ建設工業㈱社主に対し,本件工事の受注を希望する旨を連絡したこと並びに世話人3社が本件工事の受注予定者を原告とすることを決定し,原告にその旨を伝えたことを合理的に認めることができる。

(イ) 原告代表者は,本件電話連絡の際,原告代表者が入交建設㈱社長に対し「一切触らんとってくれ。」と一切の受注調整をしないよう申し入れたのに対し,入交建設㈱社長は「分かった。」と言ってそれを了承した旨供述する。

しかし,原告が㈱竹内建設だけでなく一切の受注調整を殊更拒む理由は見出し難いし,世話人の立場からみても進められている受注調整をこの段階で覆すほどの理由があったとはいえないことからすると,原告代表者からの申入れを受けた入交建設㈱社長が,他の世話人らと協議することもなく,本件工事について一切の受注調整を行わないことを決定し,原告代表者に対して確約するということは考え難いことである。

また,入交建設㈱社長は,参考人審尋において,本件電話連絡の際,本件工事について,原告代表者から,㈱竹内建設との間では調整をしないよう申入れを受けた旨を一貫して供述していることが認められる。

そうすると,本件電話連絡において,原告代表者が入交建設㈱社長に対し,㈱竹内建設との間では受注調整を行わないよう求めたとの本件審決の認定は,証拠に基づく合理的な認定というべきである。

なお,原告が本件工事の予定価格を聞いていないこと並びに他の入札参加者の名称及び評価点を知らないことは,本件工事において受注調整が行われたとの認定を妨げるものではない。

(ウ) 原告は,入札に参加した四国開発㈱は,本件工事については大きな利潤を見込めないため受注を敬遠したのであって,受注調整に協力するために予定価格を超える金額で入札したわけではないと主張する。

しかし,世話人3社から本件工事の入札価格に関する連絡が来ないため,四国開発㈱常務がミタニ建設工業㈱常務に電話をかけて,具体的な入札金額を告げたところ,ミタニ建設工業㈱常務は,その金額が本件工事の予定価格を超えていたことから,その金額で入札することでよい旨を四国開発㈱常務に告げたことが合理的に認められ,そうすると,四国開発㈱は本件基本合意に沿って受注予定者に協力する意図で入札したものであると認められる。

(エ) 原告は,世話人3社の誰からも入札に参加したクロシオ建設㈱に対する働きかけがされておらず,同社は独自の判断で入札価格を決めたものであり,本件工事の受注調整に協力していないと主張する。

しかし,クロシオ建設㈱代表取締役作成の事実経過報告書には,本件工事についてクロシオ建設㈱は落札意欲がなく,入札実績作りのために応募したことなどの記載があり,また,入交建設㈱社長の供述調書には,クロシオ建設㈱は評価点が低いためどんな低い価格で入札しても受注は不可能であるから,連絡しなかったとしても何ら問題はなく,無駄なことはしなかったのだろう旨を述べる記載があり,ミタニ建設工業㈱常務の参考人審尋において,同人は,クロシオ建設㈱がいくらで入札しても同社が落札することはないから連絡しなかった旨を供述している。

そうすると,世話人3社の誰からもクロシオ建設㈱に連絡をしていない事実は,クロシオ建設㈱が本件工事の受注調整に協力するために入札した旨の認定を妨げるものではなく,むしろ,上記クロシオ建設㈱代表取締役の供述調書によれば,本件基本合意に基づく受注調整に協力する意思があったと合理的に認められる。

イ 訴訟手続の経過

本件判決は,上訴期間の経過をもって確定した。

(2) サムスン・エスディーアイ(マレーシア)・ビーイーアールエイチエーディーによる審決取消請求事件(平成27年(行ケ)第37号)(前記表一連番号9)

ア 主な争点及び判決の概要
(ア) 本件に独占禁止法3条後段を適用することができるか否か

a 我が国の独占禁止法を適用することができるか否か

原告は,いわゆる域外適用について,国家の領域内に相応の効果又は影響が生じた場合に当該法域の競争法が適用できるという考え方(効果主義)が広く承認されているところ,本件審決は,我が国の領域外において行われたブラウン管の購入に対する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の関与について述べるだけで,我が国の領域内における効果については何ら認定しておらず,その基礎となる証拠も示していないから,独占禁止法を適用できることの実質的証拠を欠き,その取消しを免れないと主張した。

これに対し,東京高等裁判所は,以下のとおり判示した。

本件ブラウン管(我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の東南アジア地域に所在する現地製造子会社等が購入するテレビ用ブラウン管)の購入に関する実質的な契約交渉は,我が国に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が,サムスン・エスディーアイ・カンパニー・リミテッド(以下「サムスンSDI」という。)ほか4社との間で行っていたものであり,だからこそ,本件合意は,サムスンSDIほか4社が我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との交渉の際に提示すべき本件ブラウン管の現地製造子会社等向け販売価格の最低目標価格等を設定するものであった。

そうすると,本件合意は,正に本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件について実質的決定をする我が国ブラウン管テレビ製造販売業者を対象にするものであり,本件合意に基づいて,我が国に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者との間で行われる交渉等における自由競争を制限するという実行行為が行われたのであるから,これに対して我が国の独占禁止法を適用することができることは明らかである。

また,原告の主張するいわゆる効果主義の考え方は,もともと国外における行為について例外的な域外適用を認めるためのものであるところ,本件においては,本件合意に基づく交渉等における自由競争制限という実行行為が,我が国に所在する我が国ブラウン管テレビ製造販売業者を対象にして行われているのであるから,そもそもいわゆる効果主義に基づく検討が必要となる余地はなく,我が国の独占禁止法を適用できることは明らかである。

b 我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が「需要者」に当たるか否か

原告は,独占禁止法第2条第4項第1号の規定に照らすと,「需要者」が商品又は役務の供給を受ける者を意味することは疑いがないところ,商品の供給を受けていない我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が「需要者」に該当する余地はないと主張した。

これに対し,東京高等裁判所は,以下のとおり判示した。

我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は,自社グループが行うブラウン管テレビに係る事情を統括しており,本件ブラウン管に係る購入交渉等を行い,本件ブラウン管の購入先及び本件ブラウン管の購入価格,購入数量等の重要な取引条件を決定した上で,現地製造子会社等に対して上記決定に沿った購入を指示して,本件ブラウン管を購入させていたことが認められることから,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は「需要者」に当たるというべきである。

また,複数の国等の競争法の重複適用があり得ることを理由として,我が国の主権が及ばないという原告の主張は採用することができない。

c 我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の所在地

原告は,商品や役務が供給される場所を需要者の所在地と考えるべきであり,需要者と認定された者の本店所在地又は購買部門の所在地をもって,需要者の所在地の基準とするのは妥当ではないと主張した。

これに対し,東京高等裁判所は,以下のとおり判示した。

我が国ブラウン管テレビ製造販売業者は,いずれも我が国に本店を置き,我が国の法律に準拠して設立された法人であり,東南アジア地域で生産されるブラウン管テレビに係る事業の統括部門を我が国内に置き,同統括部門の担当者が我が国内外において交渉等を行い,本件ブラウン管の重要な取引条件等を決定した上,現地製造子会社等に指示して本件ブラウン管を購入させていたものであると認められることから,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者のブラウン管テレビに係る事業活動や本件ブラウン管の調達業務に係る活動の本拠地は我が国に存したものと認めるのが相当である。

d 本件合意により「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」こととなったか否か

原告は,競争の実質的制限は,商品が供給された東南アジアにおいてのみ生じているのであるから,競争の実質的制限は我が国の領域内で生じていないと主張した。

これに対し,東京高等裁判所は,以下のとおり判示した。

本件合意により共同行為が対象としている取引は,本件ブラウン管の販売に関する取引であって,それにより影響を受ける範囲も同取引であるから,本件ブラウン管の販売分野が「一定の取引分野」である。

そして,本件合意の内容に照らすと,それによって本件ブラウン管の価格交渉の自由や価格決定の自由が侵害されたのは,我が国に所在して我が国の内外で交渉等を行っていた我が国ブラウン管テレビ製造販売業者であるというべきである。そうすると,本件合意により,本件ブラウン管の価格をある程度自由に左右することができる状態がもたらされ,本件ブラウン管の取引に係る市場が有する競争機能が損なわれた場所は,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者の所在地である我が国というべきである。

また,原告は,一定の取引分野という概念は,不当な取引制限と企業結合審査での双方で用いられており,双方で認定される一定の取引分野は原則として同一のものになるはずであるとして,本件の一定の取引分野の地理的範囲は東南アジア地域となると主張するが,両者に性質上の違いがあることは明らかであるから,原告の上記主張は前提を欠く。

(イ) 本件ブラウン管の売上額は独占禁止法第7条の2第1項の「当該商品の売上額」に該当し,課徴金の計算の基礎となるか否か

原告は,本件ブラウン管は,東南アジア地域で供給され,代金の支払も同地域で行われており,日本国内において具体的な競争制限効果が生じていないから,「当該商品」に該当しないと主張した。

これに対し,東京高等裁判所は,以下のとおり判示した。

独占禁止法第7条の2第1項にいう「当該商品」とは,違反行為である相互拘束の対象である商品,すなわち,違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為である相互拘束を受けたものをいうと解される。これを本件についてみると,本件ブラウン管が本件違反行為の対象商品の範ちゅうに属する商品であって,違反行為である相互拘束を受けたものであることは明らかであり,本件ブラウン管は「当該商品」に当たるから,独占禁止法施行令第5条に基づき算定された本件ブラウン管の売上額が課徴金の計算の基礎となる。

イ 訴訟手続の経過

本件は,原告による上告及び上告受理申立てにつき,平成27年度末現在,最高裁判所に係属中である。

3 最高裁判所における決定等

(1) 真成開発㈱ほか1名による審決取消請求上告受理事件(平成26年(行ヒ)第316号)(前記表一連番号3)の決定の概要

最高裁判所は,本件は,民事訴訟法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして,上告不受理の決定を行った。

(2) 愛知電線㈱による審決取消請求上告事件及び審決取消請求上告受理事件(平成26年(行ツ)第160号,平成26年(行ヒ)第157号)(前記表一連番号4)の決定の概要

最高裁判所は,本件上告理由は,民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する事由に該当せず,また,本件は同法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして,上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

(3) ㈱イーライセンスによる審決取消等請求上告事件及び審決取消等請求上告受理事件(平成26年(行ツ)第67号,平成26年(行ヒ)第74号,平成26年(行ヒ)第75号)(前記表一連番号1)

ア 決定の概要
(ア) 平成26年(行ツ)第67号及び平成26年(行ヒ)第74号(参加人(一社)日本音楽著作権協会が上訴したもの)

最高裁判所は,本件上告理由は,民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する事由に該当しないとして,上告棄却の決定をし,また,申立参加人が本件上告受理の申立てをした時には,既に申立人(被告)が上告受理の申立てをしていたことが明らかであるから,申立参加人(参加人)の本件上告受理の申立ては,二重上告受理の申立てであり,不適法であるとして,上告不受理の決定を行った。

(イ) 平成26年(行ヒ)第75号(被告公正取引委員会が上訴したもの)

最高裁判所は,上告受理申立て理由の一部を排除した上,民事訴訟法第318条第1項の事件に当たるとして,本件を上告審として受理する旨の決定を行った(受理後の判決は後記イのとおり)。

イ 判決の概要(平成26年(行ヒ)第75号)

(ア) 参加人がほとんど全ての放送事業者との間で包括徴収による利用許諾契約を締結しこれに基づく放送使用料の徴収をする行為(以下「本件行為」という。)が独占禁止法第2条第5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当するか否かは,本件行為につき,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,放送事業者による管理楽曲の放送利用に係る利用許諾に関する市場(以下「本件市場」という。)への他の管理事業者の参入を著しく困難にするなどの効果を有するものといえるか否かによって決すべきものである。そして,本件行為が上記の効果を有するものといえるか否かについては,本件市場を含む音楽著作権管理事業に係る市場の状況,参加人及び他の管理事業者の上記市場における地位及び競争条件の差異,放送利用における音楽著作物の特性,本件行為の態様や継続期間等の諸要素を総合的に考慮して判断されるべきものと解される。

(イ) 原審が確定した事実関係等によれば,参加人は,管理委託及び利用許諾の各市場において事実上の独占状態にあり,音楽著作権管理事業の許可制から登録制への移行後も,参加人が大部分の音楽著作権につき管理の委託を受けている状況は継続していた。これに加え,放送事業者にとって,大部分の音楽著作権につき管理の委託を受けている参加人との間で包括許諾による利用許諾契約を締結することなく他の管理事業者との間でのみ利用許諾契約を締結することはおよそ想定し難い状況にあった。

また,放送事業者による放送番組に利用する楽曲の選択においては,当該放送番組の目的や内容等の諸条件との関係で特定の楽曲の利用が必要とされる例外的な場合を除き,楽曲は放送利用において基本的に代替的な性格を有するものといえる。

さらに,放送事業者において,他の管理事業者の管理楽曲を有料で利用する場合には,包括徴収による利用許諾契約に基づき参加人に対して支払う放送使用料とは別に追加の放送使用料の負担が生ずることとなり,利用した楽曲全体につき支払うべき放送使用料の総額が増加することとなる。

そうすると,放送事業者としては,経済合理性の観点から放送使用料の追加負担が生じない参加人の管理楽曲を選択することとなるものということができ,これにより放送事業者による他の管理事業者の管理楽曲の利用は抑制されるものということができる。そして,参加人は,ほとんど全ての放送事業者との間で包括徴収による利用許諾契約を締結しているのであるから,本件行為により他の管理事業者の管理楽曲の利用が抑制される範囲はほとんど全ての放送事業者に及ぶこととなり,その継続期間も,著作権等管理事業法の施行から排除措置命令がされるまで7年余に及んでいる。このように本件行為が他の管理事業者の管理楽曲の利用を抑制するものであることは,相当数の放送事業者において被上告人の管理楽曲の利用を回避し又は回避しようとする行動が見られ,被上告人が放送事業者から徴収した放送使用料の金額も僅少なものにとどまっていることなどからもうかがわれるものということができる。

(ウ) 以上によれば,参加人の本件行為は,放送事業者による他の管理事業者の管理楽曲の利用を抑制するものであり,その抑制の範囲がほとんど全ての放送事業者に及び,その継続期間も相当の長期間にわたるものであることなどに照らせば,他の管理事業者の本件市場への参入を著しく困難にする効果を有するものというべきである。

なお,参加人の本件行為は,別異に解すべき特段の事情のない限り,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものと解するのが相当である。したがって,本件審決の取消し後の審判においては,独占禁止法第2条第5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」することという要件の該当性につき上記特段の事情の有無を検討の上,上記要件の該当性が認められる場合には,本件行為が同項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものに該当するか否かなど,同項の他の要件の該当性が審理の対象になるものと解される。

(4) 藤正建設㈱による審決取消請求上告事件及び審決取消請求上告受理事件(平成26年(行ツ)第130号,平成26年(行ヒ)第126号)(前記表一連番号5)の決定の概要

最高裁判所は,本件上告理由は,民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する事由に該当せず,また,本件は同法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして,上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

(5) 日新製鋼㈱による審決取消請求上告事件及び審決取消請求上告受理事件(平成26年(行ツ)第253号,平成26年(行ヒ)第265号)(前記表一連番号2)の決定の概要

最高裁判所は,本件上告理由は,民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する事由に該当せず,また,本件は同法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして,上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

第2 その他の公正取引委員会関係訴訟

1 概要

平成27年度当初において係属中のその他の公正取引委員会関係訴訟(審決取消請求訴訟以外の訴訟で公正取引委員会が処分行政庁又は所管行政庁であるものをいう。以下同じ。)は2件であったところ,同年度中に新たに提起された事件はなかった。これら平成27年度の係属事件2件のうち,最高裁判所が上告棄却及び上告不受理の決定をしたことにより終了したものが1件あった。この結果,平成27年度末時点において係属中の訴訟は1件となった。

2 平成27年度に係属していたその他の公正取引委員会関係訴訟

(1) 平成21年(判)第17号審判事件記録に係る閲覧謄写許可処分取消請求事件

ア 事件の表示

最高裁判所平成25年(行ツ)第496号,平成25年(行ヒ)第538号

事件記録閲覧謄写許可処分取消請求事件

上告人兼申立人(一審原告,原審控訴人) (一社)日本音楽著作権協会

被上告人兼相手方(一審被告,原審被控訴人) 国(処分行政庁 公正取引委員会)

(一審の事件番号 東京地方裁判所 平成23年(行ウ)第322号)

(原審の事件番号 東京高等裁判所 平成25年(行コ)第80号)

提訴年月日 平成23年5月20日

一審判決年月日 平成25年1月31日(請求棄却,東京地方裁判所)

控訴年月日 平成25年2月13日(一審原告)

原判決年月日 平成25年9月12日(控訴棄却,東京高等裁判所)

上訴年月日 平成25年9月25日(上告及び上告受理申立て,一審原告・原審控訴人)

決定年月日 平成27年4月28日(上告棄却及び上告不受理)

イ 事案の概要

本件は,平成21年(判)第17号(一社)日本音楽著作権協会に対する審判事件(以下「本件審判事件」という。)に係る利害関係人が平成25年独占禁止法改正法による改正前の独占禁止法第70条の15に基づいて行った本件審判事件の事件記録の閲覧謄写申請に対し,処分行政庁が当該事件記録のうち一部を除いて閲覧謄写を許可する旨の処分をしたところ,一審原告が,その処分の一部分の取消しを求めたものである。

ウ 決定の概要

最高裁判所は,本件上告理由は,民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する事由に該当せず,また,本件は同法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして,上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

(2) 損害賠償等請求事件

ア 事件の表示

損害賠償等請求事件

原告 X

被告 国

提訴年月日 平成26年7月22日

イ 事案の概要

本件は,防衛省航空自衛隊が発注する什器類の製造業者らによる入札談合に関し,原告が,防衛省の調査報告書等により名誉を棄損されたとして慰謝料の支払及び防衛省のホームページへの謝罪文の掲載を求めるとともに,防衛省による違法な損害賠償請求により損害を被ったとして損害賠償を求めるものである。

ウ 訴訟手続の経過

本件は,平成27年度末現在,東京地方裁判所に係属中である。

第3 独占禁止法第24条に基づく差止請求訴訟

平成27年度当初において係属中の独占禁止法第24条に基づく差止請求訴訟は5件であったところ,同年度中に3件の訴えが提起された。これら平成27年度の係属事件8件のうち,和解で終了したものが1件,最高裁判所が上告棄却及び上告不受理の決定をしたことにより終了したものが1件,東京地方裁判所の訴え却下及び請求棄却判決に対して独占禁止法第24条部分については上訴が行われなかったものが1件あった。また,原告が東京地方裁判所に対し,訴えの取下げを行ったものが1件あった。この結果,平成27年度末時点において係属中の訴訟は4件となった。

第2表 平成27年度に係属していた独占禁止法第24条に基づく差止請求訴訟

第4 独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟

平成27年度当初において係属中の独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟は,2件であったところ,同年度中に1件の訴えが提起された。これら平成27年度の係属事件3件のうち,最高裁判所が上告棄却及び上告不受理の決定をしたことにより終了したものが1件あった。この結果,平成27年度末時点において係属中の訴訟は2件となった(注)。

(注)独占禁止法第5条に基づく損害賠償請求訴訟の件数は,公正取引委員会がその存在を把握したものについて記載したものである。

1 ㈱セブン-イレブン・ジャパンによる優越的地位の濫用事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成21年(ワ)第6号 損害賠償請求事件

(2) 事案の概要

公正取引委員会は,㈱セブン-イレブン・ジャパンが,独占禁止法第19条(平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の一般指定第14項〔優越的地位の濫用〕第4号に該当)の規定に違反する行為を行っているとして,平成21年6月22日,㈱セブン-イレブン・ジャパンに対し当該行為の排除等を命ずる排除措置命令を行った。当該命令確定後,原告は,㈱セブン-イレブン・ジャパンに対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

平成26年12月19日,東京高等裁判所が請求を一部認容する判決を下したため,㈱セブン-イレブン・ジャパンは平成26年12月26日,上告及び上告受理申立てを行ったが,平成27年9月4日,最高裁判所が上告棄却及び上告不受理決定を行い,原判決が確定した。

(注)東京高等裁判所から独占禁止法第84条第1項の規定に基づき同法違反によって生じた損害額についての求意見がなされ,公正取引委員会が意見を提出したもの。以下,第4の各事件で同じ。

2 郵便番号自動読取区分機類の入札談合事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成25年(ワ)第8号 損害賠償請求事件

(2) 事案の概要

公正取引委員会は,郵政省が発注する郵便番号自動読取区分機類の入札談合について,平成15年6月27日,㈱東芝ほか1名に対し,当該行為の排除等を命ずる審判審決を行った。当該審決確定後,原告は,当該審決が認定した入札談合により郵政省が被った損害賠償請求権を承継したとして,㈱東芝ほか1名に対し,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については,平成28年4月19日までに和解が成立して終了した。

3 岡山県北生コンクリート協同組合による取引妨害事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成27年(ワ)第1号 損害賠償請求事件

(2) 事案の概要

公正取引委員会は,岡山県北生コンクリート協同組合が,独占禁止法第19条(一般指定第14項〔競争者に対する取引妨害〕に該当)の規定に違反する行為を行っているとして,平成27年2月27日,岡山県北生コンクリート協同組合に対し,当該行為の排除等を命ずる排除措置命令を行った。当該命令確定後,原告は,岡山県北生コンクリート協同組合に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については,東京高等裁判所から公正取引委員会に対し,平成27年8月12日,独占禁止法第84条第1項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,平成27年10月16日,当委員会は意見書を提出した。

本件については,平成27年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。