2014年1月

EU

欧州委員会,企業結合簡易審査手続の改正等を公表

2013年12月5日 欧州委員会 公表

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【概要】

 欧州委員会は,EU企業結合規則に基づく審査手続を簡素化する一連の施策を導入した。これにより,問題が生じるおそれのない事案に係る簡易審査手続の対象が拡大され,企業結合審査全体に占める割合が60~70%となる(現在よりも10%の増加)。また,簡易審査手続の対象となるかにかかわらず,全ての事案において,届出の際に求められる情報の量は削減される。これにより,届出の準備作業及びその関連コストの点で,事業者及びその代理人に多大な利益がもたらされることが期待される。一連の施策は,2014年1月1日から適用される。
 欧州委員会のアルムニア副委員長(競争政策担当)は,「今回の企業結合審査簡素化の施策は,我々が関係者からの意見に耳を傾けていることを示している。今回は,企業結合審査手続に係るこれまでで最も包括的な改革であり,当該手続を相当簡素化し,当事会社の事務負担とコストの削減をもたらすものである。」と述べている。
1 簡易審査手続に関する委員会告示の改正
 欧州委員会は,通常競争上の懸念が生じるおそれの少ない企業結合について,簡易審査手続により審査している。事業者は簡易届出様式を使用することができ,他方,欧州委員会は市場調査を行うことなく容認することができる。今般,欧州委員会は,これまでの経験を踏まえ,以下のとおり簡易審査手続の対象を拡大した。
・ 2社による水平的企業結合事案については,当事会社の合算市場シェアでみて,現行の「15%以下」に代えて「20%以下」の事案に対し,簡易審査手続を適用する。
・ 垂直的企業結合事案(例えば,自動車メーカーと自動車部品メーカーの合併事案)については,当事会社の合算市場シェアでみて,現行の「25%以下」に代えて「30%以下」の事案に対し,簡易審査手続を適用する。
・ 今回の改正で導入された新たな基準の下では,当事会社2社の合算シェアが20~50%であれば,シェアの増分が少ない事案については,簡易審査手続が適用される。
2 企業結合施行規則の改正
 当該施行規則の改正によって,届出に際し提出が求められる情報の削減とともに,企業結合を行う当事会社が,届出の際に一定の情報を提供する義務を免除するよう欧州委員会に要請することが容易になる。また,欧州委員会から欧州加盟国当局への事案の付託,又はその逆を要望する当事会社が提出を求められる情報の量も著しく減らされる。
 今回の改正は,当事会社と欧州委員会との間における届出前相談の簡素化をもたらすことも期待されており,この相談に要する時間が更に減ることとなる。また,今回の改正によって,非常に単純な事案については,当事会社は届出前相談を全く行わずに直ちに届出を行うことを選択する可能性もある。
3 確約申出の標準ひな形の改訂
 企業結合を行う当事会社は,当該企業結合事案によって生じる競争上の懸念を解決するために確約を提示することができる。これについて欧州委員会は,[1]資産売却に関する確約の申出及び[2]確約の履行を監視する管財人(trustee)への権限付与に係る標準ひな形を改訂した。これらの標準ひな形の利用は任意であるものの,これらを利用することにより,当事会社は,競争上の懸念に効果的に対処する確約を容易に策定することができる。今般,審査手続簡易化と併せて,2008年に採択された問題解消措置に関する告示に適合するよう改訂されたものである。今回の改訂では,2003年に標準ひな形を初めて公表して以来の欧州委員会における経験も反映されている。

欧州委員会,LIBOR等に関連する金利デリバティブ商品に係るカルテルを行っていたとして,欧米の6金融機関に対し総額17億ユーロの制裁金を賦課

2013年12月4日 欧州委員会 公表

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【概要】

 欧州委員会は,欧米の8つの国際金融機関(Barclays,Deutsche Bank,RBS,Societe Generale,UBS,Citigroup,JPMorgan及びRP Martin)が,欧州経済領域において金利デリバティブ商品に係るカルテルを行っていたとして,総額17億1246万8000ユーロの制裁金を賦課した(Barclays及びUBSは,2006年リニエンシー告示に基づき,制裁金の支払が全額免除された。)。このうちの4金融機関(Barclays,Deutsche Bank,RBS及びSociete Generale)は,2005年9月から2008年5月まで,ユーロ建ての金利デリバティブ商品に係るカルテルを,6金融機関(UBS, RBS,Deutsche Bank,Citigroup,JPMorgan及びRP Martin)は,2007年から2010年まで,違反期間が短いもので1か月,長いもので10か月間,円建ての金利デリバティブ商品に関して,一又は複数の相対でのカルテルを行っていた。これら2件のカルテルに係る欧州委員会決定は,カルテルに関する「和解」手続(settlement)を経て採択されており,和解に合意したことを理由に各社の制裁金は10%減額された。
 欧州委員会のアルムニア副委員長(競争政策担当)は,「ロンドン銀行間取引金利(以下「LIBOR」という。)及び欧州銀行間取引金利(以下「EURIBOR」という。)に係るスキャンダルが衝撃的なのは,世界各国の金融規制当局の調査対象となっている指標に係る不正操作だけでなく,競争関係にあるべき銀行間での共謀も行われていた点である。本日の決定は,欧州委員会が金融市場におけるカルテルと戦い,制裁金を課す決意があるという明確なメッセージを送るものである。一部の者の利益ではなく,実体経済全体に資するよう金融市場が適切に機能するためには,健全な競争と透明性が極めて重要である。」と述べている。
 金利デリバティブ商品(金利先渡契約,スワップ,先物,オプション等)は,銀行や企業が金利の変動リスクを管理するために利用する金融商品であり,世界中で取引され,世界経済において重要な役割を果たしている。金利デリバティブ商品は,日本円を含む様々な通貨建てのLIBOR,ユーロ建てのEURIBORなどの指標金利の水準から,その価額が算出されている。LIBOR,EURIBOR等の指標は,パネルの構成員となっている多数の銀行から毎日申告される金利の平均値を反映するものであり,ある特定の通貨建てで銀行間貸出を行う際のコストを反映するとともに,様々な金融派生商品の基礎となるものである。LIBOR ,EURIBOR等の指標金利の水準は,銀行が相手先から受け取るキャッシュフローや金利デリバティブ契約に基づいて相手先に支払うキャッシュフローに影響を与えるものである。
 ユーロ建ての金利デリバティブ商品に係るカルテルでは,金利デリバティブ商品の価格設定要素を歪曲することを意図し,各銀行のトレーダーは,自らの取引上及び価格設定上の戦略だけではなく,EURIBORに反映される申告金利について話合いを行っていた。一方,円建ての金利デリバティブ商品に係るカルテルでは,各銀行のトレーダーは,円建てのLIBORに反映される申告金利について話し合うとともに,取引ポジション又は今後の円建てのLIBOR(一部,ユーロ建て東京銀行間取引金利(TIBOR)を含む。)に反映される申告金利に係る営業上機微な情報を交換していた。

欧州委員会,インド競争委員会との間で協力に関するMOUに署名

2013年11月21日 欧州委員会 公表

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【概要】

 欧州委員会のアルムニア副委員長(競争政策担当)とインド競争委員会のアショク・チャウラ委員長は,本日,ニューデリーにおいて,欧州委員会競争当局とインド競争委員会との間の協力強化に関するMOU(Memorandum of Understanding)に署名した。
 本MOUは,競争法の執行において,欧州委員会競争当局とインド競争委員会との間で更に協力を強化するための枠組みを創設する。新たな枠組みの下で,両当局は,競争法制について議論し,法制,執行,多国間での競争法上の取組及びアドボカシーに関する非秘密情報を共有し,競争法制及びその執行に関する技術協力を行う。
 また,本MOUは,一方の当局が,他方の当局の域内で反競争的行為が行われていると考える場合,当該他方の当局に対し執行活動を要請できることを規定するとともに,一方の当局の執行活動が他方の当局の執行活動に影響を及ぼす場合,衝突を避ける仕組みも規定している。
本MOUは,EUとインドとの間で競争問題における協力を強化するという積極的な姿勢を示すものである。

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