2014年9月

EU

欧州委員会,フードサプライチェーンにおける不公正な取引慣行に対処することを加盟国に求める報告書(communication)を採択

2014年7月15日 欧州委員会 公表

外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。原文

【概要】

 欧州委員会は,小規模の食品製造業者及び小売業者について,時には彼らよりはるかに強大な取引相手による不公正な取引慣行(UTPs)から,よりよく保護する方法を探すようEU加盟国に促す報告書(communication)を採択した旨公表した。
 消費者に食品が届くまでに,サプライチェーンに属する多数の様々な市場参加者(製造業者,加工業者,小売業者等)が,品質及び価値を向上させている。市場集中度の上昇などが原因で,サプライチェーンに属する市場参加者の関係においては,実に様々なレベルの交渉力が存在する。取引関係における交渉力の格差はよく生じるものであり,正当なものであるが,不公正な取引慣行につながる場合がある。
 不公正な取引慣行には,以下のものが含まれる。
・ 重要な取引条件を書面化することを回避又は拒否すること。
・ 製品又はサービスの費用又は価格を遡及的かつ一方的に変更すること。
・ 取引相手に不当又は過度なリスクを負担させること。
・ 不当な利益を得るために納品又は受入の予定を意図的に妨害すること。
・ 事前通知なしに又は客観的に見て合理的な理由なしに不当に短い期間の事前通知により,取引関係を一方的に終了させること。
 フードサプライチェーンは,日常生活及び消費者の厚生にとって極めて重要なだけではなく,経済全体にとっても重要であり,4700万人以上の人々がEU域内のフードサプライチェーン(多くは中小事業者)に雇用されており,EU粗付加価値の7%を占める。EUにおける食品関連の小売業の市場規模は,1兆500億ユーロと推計されている。フードサプライチェーンは,国際的な側面で重要であり,特にEU単一市場において重要である。EU加盟国間の国際取引は,EUの食品生産の約20%を占める。EU加盟国の農産物の年間輸出総額の少なくとも70%が他のEU加盟国向けであると推計されている。
 不公正な取引慣行に関する今回の報告書は,多数の利害関係者が不公正な取引慣行に対処するEU全体の枠組みを促進することを提案している。今回の報告書は,EUレベルの規制措置を提案するものではなく,EU加盟国が,自国の状況を考慮して,不公正な取引慣行に対処する適切な手段を講じることを確保することを促すものである。
 今回の報告書の提案は,以下の3つの要素から構成されている。
 第一に,自主的な行動規範は,公正かつ持続可能な取引関係の重要な基礎であるため,今回の報告書は,フードサプライチェーンに属する事業者に,2013年9月に設立された既存のサプライチェーン・イニシアティブ及び国内のプラットフォームに参加することを促している。
 また,本報告書は,同イニシアティブの管理者に,同イニシアティブの主な受益者である中 小事業者の参加を最大限増やすことを求めている。
 次に,既に不公正な取引慣行に国内レベルで異なった対策を講じているEU加盟国がある一方で,不公正な取引慣行に対して,いまだ何ら特段の対策を講じていないEU加盟国もある。EU全体で,特に国境を越えた不公正な取引慣行に効果的に対処するためには,不公正な取引慣行に対処するルールについて共通の理解を持つことが有効である。今回の報告書は,サプライチェーン・イニシアティブの基本的な考え方がそのような共通理解の基礎となり得ることを示している。
 最後に,取引関係において立場の弱い当事者が,強い取引相手に経済的に依存している場合,当該取引関係を損なったり失ったりすることを恐れて,訴訟や任意の紛争解決制度によって不公正な取引慣行から自らを守ることを回避することが多々ありうる。今回の報告書は,不公正な取引慣行に対する確固とした抑止手段を確立するため,EU全体に適用される最低限度の執行基準を提案している。

欧州委員会,マリンハーベストによるモーポルの買収について,EU企業結合規則に基づく事前承認を得なかったとして,同社に対し2000万ユーロの制裁金を賦課

2014年7月23日 欧州委員会 公表

外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。原文

【概要】

 欧州委員会は,ノルウェーのサーモン養殖・加工業者であるMarine Harvest ASA(以下「マリンハーベスト」という。)によるノルウェーの競争事業者であるMorpol ASA(以下「モーポル」という。)の買収について,EU企業結合規則に基づく事前の承認を得なかったとして,マリンハーベストに対し2000万ユーロの制裁金を課した旨公表した。欧州委員会は,マリンハーベストは届出義務があることに気付くべきであったこと,同委員会の承認を得るまで企業結合を待つべきであったことを結論付けた。
 EU企業結合規則の下では,共同体規模(典型的には当事会社の売上高が基準値を満たしている場合)の企業結合については,事前に欧州委員会に届け出て,承認を得なければならない。このいわゆる待機義務(standstill obligation)は,EU企業結合規制の土台となるものであり,待機義務により,欧州委員会は当該企業結合により競争上の懸念が生じるか否かを判断すること等が可能となる。
 マリンハーベストは,2012年12月18日,モーポルの株式の48.5%を取得することにより,モーポルに対する事実上の単独支配権を獲得した。欧州委員会は,審査の結果,残りの株式所有が広く分散していたこと及び過去の株主総会への出席率から,マリンハーベストは当該企業結合により株主総会における安定的な多数を得ていた旨認定した。
 マリンハーベストは,欧州委員会へ正式に届け出る8か月前,かつ欧州委員会が承認する9か月以上前に,当該企業結合を実施しており,当該行為はEU企業結合規則第4条第1項及び第7条第1項に違反する。
 今回の決定は,EU企業結合規制の重大な違反である待機義務違反にのみ関係するものであり,2013年9月に行われた当該企業結合の条件付き承認に影響を与えるものではない。なぜなら,本件違反行為は,当時の欧州委員会の市場分析を変更するものではないからである。

欧州委員会,ブルガリアの電力卸売市場における支配的地位濫用の疑いで,ブルガリア・エネルギー・ホールディングに対し,異議告知書を送付

2014年8月12日 欧州委員会 公表

外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。原文

【概要】

 欧州委員会は,Bulgarian Energy Holding(以下「BEH」という。)に対し,自由化されたブルガリア電力卸売市場における,BEHと事業者との間での電力供給契約による再販売の地域制限は,EU競争法に違反するおそれがあるという予備的評価を通知した。当該行為は,BEHから購入した電力の再販売先について購入者の選択の自由を制限するものである。
 欧州委員会は,ブルガリアにおける既存の国有の垂直統合型エネルギー事業者であるBEHが,自由化されたブルガリア電力卸売市場において,BEHが供給する電力の再販売先を制限することは競争を阻害するおそれがあると懸念している。BEHと事業者との間で締結された電力供給契約の多くに,BEHから仕入れた電力をブルガリア国内のみで販売できるとの条件又は輸出のみ可能との条件が規定されていた旨を,異議告知書は明記している。また,当該契約は,かかる地域制限を遵守していない顧客をBEHが監視し,制裁を行う管理・制裁条項を含んでいる。
 欧州委員会は,BEHによる当該地域制限は,欧州連合の機能に関する条約(TFEU)第102条で禁じられている市場支配的地位の濫用に当たる旨暫定的に認定した。当該行為は,認定どおりであれば,単一市場における電力の配分をゆがめ,電力市場の流動性及び効率性に悪影響を及ぼし,ブルガリアと他のEU加盟国間の取引における人為的な障壁を高くするものである。

ページトップへ