2016年12月

EU

欧州委員会,企業結合規制に関し,(1)特定の分野の届出基準に係る売上高閾値の変更,(2)問題のない案件についての手続の簡素化,(3)加盟国に対する欧州委員会の移送制度について,パブリックコメントに付したことを公表

2016日10月7日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会は,企業結合規制の特定の手続及び管轄面に関する意見募集を開始した。この手続によって,市民,経済界,団体,公共機関及びその他の利害関係者などからの意見が集まることが期待される。意見募集手続は欧州法の一貫した見直しを促進するために欧州委員会が行う業務であり,その結果として,欧州の政策は,雇用及び成長への恩恵という目的を最も効率的に達成することができる。
 今般は[1]欧州企業結合規則における売上高閾値の有効性,[2]競争への懸念が生じない事案の取扱い,[3]加盟国及び欧州委員会間の移送制度について焦点を当てている。

[1]届出基準の閾値   
 欧州企業結合規則の下では,企業結合計画が欧州規模である(少なくとも二つの企業の売上高が届出基準の閾値に該当する)場合は,当該企業結合は欧州委員会によって審査されることになっている。
 昨今,欧州企業結合規則における売上高のみを基礎とする届出閾値の有効性について疑問が生じてきている。特に,デジタルサービスや医薬品などの分野の一定の取引を捉えるため,別の基準によって現行の閾値を補完すべきとの提案がなされてきている。
現行の欧州企業結合規則では,未だ売上高は大きくないものの,潜在的な市場価値は高い企業を買収する場合,それを反映して買収価格は高くなる可能性はあるが,届け出る必要は無い。こうした事例は特にデジタルサービス分野で生じ得る。同じような問題は医薬品分野でも生じ得る。既存の医薬品メーカーが,開発中の医薬品のために市場価値が高いバイオテク企業を買収する場合も,上市には至っておらず,売上高は大きくない。
 それゆえ,現行の欧州企業結合規則が,欧州の単一市場又はその実質的な部分における競争に影響を与える可能性のあるクロスボーダー取引のうち特定のものをカバーできない点は,同規則の執行に隙間が生じている可能性があるか意見を求める。

[2]競争への懸念が生じない事案の取扱い
 現在,一般的には競争上の懸念を生じない一定の範疇の事案については,簡易審査により処理されている。2013年,欧州委員会は,こうした事案については,欧州企業結合規則を修正しない範囲で可能な限り手続を簡素化する目的で,一連の手続を改正した。(そして)2014年の企業結合に関する白書において,欧州委員会は更に手続を簡素化するために,欧州企業結合規則を改正することを提案した。
 今回は,問題の生じない範疇の事案についての取扱いについて,同白書に記載されている以上に簡素にする余地があるかをみるための意見を求める。

[3]移送制度
 欧州委員会は,欧州企業結合規則の一定の手続面及び技術面に加えて事案の移送制度の機能に関する意見も募集する。移送制度は特定の事案に関する加盟国と欧州委員会の間での所掌の再配分を可能とし,最も適した競争当局が企業結合の評価を行うことを確保する。

 意見募集の結果は,欧州企業結合規制が手続面及び管轄面で適切なものか評価するために活用される。この評価を踏まえ,欧州委員会は企業結合規制を改定するかどうかを決定する。意見募集は2017年1月13日までとする。

欧州委員会,ブリュッセル航空とTAPポルトガル航空に対して,両社が結ぶブリュッセル‐リスボン間のコードシェア協定に関して異議告知書を送付

2016年10月27日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会は,ブリュッセル航空とTAPポルトガル航空に対して,両社がブリュッセル‐リスボン間の旅客便に関して締結しているコードシェア協定が,EU反トラスト法に違反するとして両社に対して異議告知書を通知した。
 競争政策を担当するVestager委員は,「航空会社間のコードシェア協定は,より広い地域をカバーでき,乗継ぎを円滑にできるようにすることで,乗客に利益をもたらすことができる。しかし,本件の場合,両社はコードシェア協定を利用して,ブリュッセル‐リスボン間のフライトにおける競争を制限し,乗客の利益を損なっていたかもしれないと懸念している。」と語った。
 本日の欧州委員会により通知された異議告知書は,ブリュッセル航空とTAPポルトガル航空が2009年に締結したコードシェア協定に関するものであり,欧州委員会は,当該契約が結ばれてから最初の3年間を問題としている。
 本協定において,上記の航空会社2社は,ブリュッセル‐リスボン便のほぼ全てのクラス(ビジネス,エコノミー)の座席を無制限に販売する権利を相互に与えていた。また,協定が結ばれる前には,当該ルートにおいて競合するフライト便を運行していたのは,事実上,上記2社のみであった。

欧州委員会の懸念事項
 現段階で,欧州委員会は上記の航空会社2社が,以下の行為によりブリュッセル‐リスボン間のフライトルートで反競争的戦略を行っていたとの懸念を持っている。
 第一に,当該路線の最大搭乗客数の削減と価格政策の調整について議論している。
 第二に,両社とも当該路線の自社便の座席を無制限に販売する権利を(それまで競争関係にあった)相手方に付与している。
 第三に,実際に最大搭乗客数を削減し,当該航路の運賃体系に加え個々の料金を完全に調整することで,両社の協定を実施している。
 欧州委員会としては,これらの一連の行為は反競争的合意を禁止するEU規則(TFEU101条)に違反するとの暫定的な見解を有している。両社は,上記の一連の行為により,ブリュッセル‐リスボン便において価格と最大搭乗客数で競争することをやめ,消費者向け価格を引き上げ,選択の幅を狭めたとの暫定的結論に至った。
 なお,異議告知書の送付は,調査結果を予断するものではない。

コードシェア協定
 コードシェア協定は,あるフライトを運営する航空会社が,他の航空会社に対して,あたかも当該他の航空会社が自らフライトを運営しているかのように,自社のフライトの販売とその搭乗券を発券することを認めるものであり,航空業界では一般的に行われている。

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