ドイツ

ドイツ連邦カルテル庁,ドイツポスト社が大口顧客の手数料において支配的地位を濫用していた旨決定

2015年7月7日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文

【概要】

 ドイツ連邦カルテル庁は,Deutsche Post AG(以下「ドイツポスト社」という。)に対する支配的地位の濫用に係る審査手続を終了し,ドイツポスト社が郵便サービスの提供において支配的地位を濫用し,競争事業者を妨害したと認定した。
 ドイツポスト社は,郵便市場が自由化されたにも関わらず,80%を優に上回る市場シェアを有し,免許制郵便サービスの市場において支配的地位を維持している。同社は,郵便サービスの独占的提供事業者として,競争事業者がサービスの一部の提供に関連して,同社のネットワークに接続できるようにすることを義務付けられている。仮に,競争事業者がこの権利の行使を望んだ場合,競争事業者は,顧客宛ての書簡を集め,顧客に発送する準備(すなわち無料配達印,番号付け及び事前仕分け)を行い,それらをドイツポスト社の郵送センターの一つに送り,ドイツポスト社がそれらを配送する。ドイツポスト社はこのサービスに手数料を課している。
 ドイツ連邦カルテル庁は,ドイツポスト社が大量に郵便を発送する顧客4社との郵便料金について,競争事業者が同社の配送ネットワークを利用する際に支払わなければならない料金を下回る水準で契約していたことを確認した。その合意は,いわゆる「目標料金契約(target price agreements)」という形式で行われた。ドイツポスト社は,これらの料金を提示することで,いわゆるマージンスクイーズを行っていた。このマージンスクイーズによって,ドイツポスト社は競争事業者を妨害し,当該競争事業者は,当該大口顧客に対してもはや競争的な契約の提示を行うことができなくなった。
 このような低い郵送料金は,ドイツポスト社に対する「品質データ」の送付や広告サービス(「ドイツポスト社による配送」又はドイツポスト社のロゴの封筒への押印)を理由として料金を割引したというだけでなく,元の価格からの値引きの結果でもある。目標料金契約の仕組みは,合意した目標料金に到達するために必要な範囲内でのみこのような値引きが認められたことを示している。目標料金は,競争業者がドイツポスト社に支払う委託サービス手数料を著しく下回っている場合もあった。
 顧客がほぼ全ての郵便サービスについてドイツポスト社を利用しているかどうかで,低い郵送料金を適用されるかがある程度決まってくるという事実も,支配的地位の濫用禁止規定に違反するものであり,ドイツポスト社の競争事業者は,このような忠誠リベートによっても妨害されていた。
 ドイツ連邦カルテル庁の審査手続の過程で,ドイツポスト社は当該濫用行為を中止した。ドイツポスト社は,審査手続の中で,上記違反行為は許容され得るという意見を出していたことを踏まえ,当該行為の今後の再発を防止するためには宣言的決定(declaratory decision)が必要であると判断された。

南アフリカ

南アフリカ競争委員会,日本郵船等の海運業者が,南アフリカ発着の自動車海運市場において,価格調整,市場分割及び入札談合を行っていた旨公表

2015年6月30日 南アフリカ競争委員会 公表
原文

【概要】

 南アフリカ競争委員会は,日本の海運会社である日本郵船株式会社(以下「日本郵船」という。)との間で,南アフリカ発着の自動車海運市場において競争法4条1項b号1~3に違反していたことについて和解に達した。
 この和解は,南アフリカ競争委員会が海運業者らの共謀行為に対する調査を行ったことによるものである。すなわち,申立てによると,株式会社商船三井,川崎汽船株式会社,コンパニア・スド・アメリカーナ・デ・バポレス社(Compania Sud Americana de Vapores),ホーグ・オートライナーズ社(Hoegh Autoliners Holdings AS),ワレニウス・ウィルヘルムセン・ロジスティクス社(Wallenius Wilhelmsen Logistics),ユーコー・カーキャリアーズ社(Eukor Car Carriers)及び日本郵船は,海上輸送サービスの提供に関し,価格調整,市場分割及び談合を行っていた。海上輸送サービスとは,南アフリカ発着の海上便で自動車,設備及び機械を輸送するものである。
 南アフリカ競争委員会は,日本郵船がBMW社,トヨタ自動車株式会社,日産自動車株式会社及び本田技術工業株式会社を含む複数の自動車製造業者により実施される自動車の海上輸送に係る14件の入札において,競争事業者と談合していたと認定した。日本郵船はこの談合があったことを認め,1億400万ランドの行政制裁金を支払う旨同意した。

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