ドイツ

ドイツ連邦カルテル庁,付随的著作権の導入をめぐるグーグル社の行為について,正式審査を開始しない旨決定

2015年9月9日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文

【概要】

 ドイツ連邦カルテル庁は,著作権管理団体VGメディアとグーグル社が争っている中で,出版社の付随的著作権(ancillary copyright)導入に関するグーグル社の行為について,グーグル社に対し正式審査を開始しない旨決定した。
 ドイツ連邦カルテル庁は,VGメディアからの申告を受け,2013年8月1日に導入された出版社の付随的著作権に対するグーグル社の行為について審査してきた。付随的著作権の導入により,出版社側は,検索エンジン及び類似サービス提供業者に対して,論文又はその他の著作物の利用について,個々の単語や断片的な短い文章以外は禁止することが認められた。2014年の夏,VGメディアはグーグル社に対して民事訴訟を提起した。その結果,出版社が自社の成果物の無償利用に合意しない場合には,グーグル社は,当該訴訟においてVGメディアが扱う出版社のウェブサイトに関する検索結果については,今後,短縮した形でのみ表示する旨公表した。
 ドイツ連邦カルテル庁は,以上の点がグーグル社の行為を正当化する客観的理由になると認めて,VGメディアを差別的に取り扱っている疑いに係るグーグル社に対する正式審査を開始しないことを決定した。

カナダ

カナダ競争局,企業結合の事前届出制度に関するガイドラインを公表

2015年9月15日 カナダ競争局 公表
原文1
原文2

【概要】

 カナダ競争局は,企業結合の事前届出制度に関する最終的なガイドラインNo16「商品」の定義を公表した。このガイドラインは,カナダ競争法第111(a)項に規定されている「商品」という文言の解釈を明らかにすることを意図したものであり,これまでカナダ競争局が公表してきた企業結合の事前届出制度に関するガイドラインと共に,当事者及び代理人弁護士が届出義務のある取引について競争法の規定を解釈・適用する際に役立つものである。
 カナダ競争法第111(a)項は,「通常の業務における不動産又は商品の取得は,当該資産を取得しようとする者が,これにより事業者の実質的全資産あるいは経営部門を取得することにならなければ」競争法上の届出義務の適用はない旨規定しているが,カナダ競争法には「商品」の定義が規定されていないため,無形物がこれに含まれるのか明らかではなかった。
 カナダ競争局は,カナダ競争法第111(a)項の立法趣旨から考えて商品の中には,借入金,貸付金及び売掛金といった無形物が含まれると解する。したがって,借入金,貸付金及び売掛金の取得については,それにより事業者の実質的全資産あるいは経営部門を取得することにならなければ競争法上の届出義務が免除される。

イギリス

英国競争・市場庁,銀行の小口ユーザー向け金融商品市場に関する調査報告書の暫定版を公表

2015年10月22日 英国競争・市場庁 公表
原文

【概要】

 英国競争・市場庁は,160億ポンドに上る当座預金口座及び事業者向け預金口座の分野における市場調査報告書の暫定版を公表した。
 本調査において,個人の当座預金口座及び中小企業向けの口座の市場における競争上の問題,すなわち,顧客が他の銀行に乗り換える例が少ないのは銀行に十分な競争圧力がかかっておらず,新たな金融商品や新たな銀行が短期間で顧客を獲得することはないことが分かった。中小企業向けの口座の場合については,特有の問題があり,中小企業の多くが個人の当座預金口座を持っている銀行と同じ銀行に事業上の当座預金口座を開設しており,事業上の融資についてもその銀行のままとしている。さらに,57%の顧客は個人の当座預金口座を10年以上同じ銀行に開設したままであり,37%は20年以上となっている。
 当座借越手数料が煩雑であること並びに商品役務の中身に関する情報及び比較手段が限られているため,顧客自身が支払状況を確認し,他の銀行の金融商品と比較することが困難になっている。銀行の顧客は,新しい銀行に口座を移すことは難しく,時間がかかって危険であると恐れている。この点,当座預金口座変更サービス(CASS)というものがあり,簡単な手続で適切に機能するようになっているが,認知度や信頼度がまだ低く,2014年においてはわずか3%の顧客しか個人の当座預金口座を変更しておらず,また,16%の顧客しか口座の変更を検討していない。
 当座借越口座を利用している顧客は,その他の顧客と比較してさらに当座預金口座を変更することが少ないが,特に頻繁に当座借越口座を利用している顧客については,口座を変更することで年間260ポンドの節約ができ,当座預金口座を利用している顧客であっても,平均で年間70ポンドの節約をすることができることが分かった。また,今回の調査では,市場が十分に機能していれば,高価で平均以下の内容の口座から,より安価でより内容の充実した口座の方に,顧客がより速やかに移動していただろうということも判明した。
 また,英国競争・市場庁は,今回の調査において,有益な進歩の存在も確認した。すなわち,個人向け当座預金口座及び中小企業向けの口座の市場への新規参入者の存在,便利な革新的金融商品,オンラインやモバイルバンキングによるデジタル技術の革新,Midata(消費者が民間企業の持つ自分の個人データに自由にアクセスできるようにするもの)や当座預金口座変更サービスのような新しい技術の存在であり,新たな口座を探すことや変更することの潜在的可能性を高めるものである。しかし,このような有益な進歩が認められるにもかかわらず,預金口座を変更する顧客はほとんどいないため,銀行は顧客に向けより良い商品,より安価な商品を提供して競争していこうというインセンティブを十分に持ち合わせておらず,小規模で優良な銀行が市場参入の足掛かりを見出すことは難しい。
 英国競争・市場庁は,今回,改善策を公表したが,この新たな改善策が効果的であるかを見極めるため,当該改善策について今後とも慎重に検証していく。

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