英国

英国競争・市場庁,任意自動車保険のプロバイダ(保険会社及び保険ブローカー)に対して,無事故割戻補償に関する命令を実施するよう督促状を発出

2016年9月2日 英国競争・市場庁 公表
原文

【概要】

 本件督促は,英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)による命令が1か月前に発効したことを受けて行われたものである。
 当該命令により,任意自動車保険(以下「PMI」という。)を扱う全ての保険業者(ブローカー及び保険会社。以下「PMI保険業者」という。)は,顧客に対して無事故割戻補償(以下「NCB補償」という。)に係る費用と便益に関する情報,例えばクレイムが起こされた場合には割戻しはどうなるかなどを提供することが義務付けられた。
現在,PMI保険業者は,CMAに対して,顧客に提供する情報の内容及びこれらの情報の提供が上記の命令に従ったものであることを確認する文書を提出する必要がある。そして,この要件はCMA がPMI市場に関して実施した調査に基づくものである。
 なお,同調査(PMI市場調査)の結果について CMAは2014年9月に最終報告書を公表している。
 CMAは,PMI保険業者らに対して,命令を遵守することは法的必要条件であり,いまだに必要な情報を顧客に提供せず,また,上記の文書を提出していない者は,できる限り速やかに実施しなければならない旨を注意喚起しているところである。ちなみに,これまでに命令を実施した者の中には,大手保険会社10社のうちの9社と大手ブローカー5社が含まれる。
 未提出のPMI保険業者の中で最大手のコープ保険は,新規,更新ともに一部の会社顧客に対しては,いまだに,命令で求められる情報の一部を開示するにとどまっている旨を報告してきている。しかし,同社は命令の実施に向けて取り組んでおり,その間に影響を受ける顧客には,現時点で,申込書面及び資料に記載された保険料のうちNCB補償に関する部分を示すことができないことを明らかにするとしている。CMAは命令の迅速な実施が確保されるべく,引き続きPMI保険業者を監視していく。その際,CMAは,関連する保険協会(英国保険協会と英国保険ブローカー協会)及び金融行動庁と協力していく。
 是正措置・事業・財務分析担当のAdam Land上級課長は以下のように述べている。
「PMI市場の調査の結果,NCB補償の中には,消費者にとって価格と便益が不明瞭なものが多いことが明らかになった。本要請によって,サービスと対価を比較することが容易になれば,ドライバーは,より良い価値を得ることが保証される。PMI保険業者の多くが遅滞無く命令を実施したことは喜ばしいが,コープのような大手保険会社が対応できていないことが残念である。ただし,PMI保険を提供する全ての保険業者は,これら重要な命令を実施するために1年以上の猶予期間が与えられていることから,コープだけでなく同様の状況にある他の小規模な保険業者も必要な情報を遅滞なく顧客に提供するよう努めることを期待している。」

オーストラリア

オーストラリア政府が競争法の改正法案を公表し,豪州競争・消費者委員会は改正法案にかかるガイドラインの骨格を公表し意見募集を開始

2016年9月5日 豪州競争・消費者委員会 公表
原文
ガイドラインの骨子1
ガイドラインの骨子2

【概要】

 9月5日,オーストラリア政府は,Haper委員会から提出された競争政策検証レポートで示された法改正等の提案を受け,2010年競争・消費者法の改正案に関する草案を公表した。
豪州競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,草案で提案されている改正点についての理解を助けるために,改正案に含まれる以下の2つの重要な提案について,ACCCとしてどのように対応することを考えているか,その枠組みについて公表し意見募集を開始した。
・ 市場支配的地位を有する事業者が反競争的行為を行っていたか否かを決定するに当たってSLC(競争の実質的制限)テストを導入するための市場支配的地位の濫用の条項(競争・消費者法第46条)の改正
・ 競争を実質的に制限する協調行為の禁止の創設
改正案が成立した場合,ACCCはこれらの条項に違反すると思われる行為に対するACCCの分析方法を説明するため,今回の枠組みを基にガイドラインを公表する。ただし,特定の行為が各条項に該当するかの最終的な判断は裁判所が行うことになる。
 ACCCのRod Sims委員長は「我々はガイドラインに対する,関係者からのコメントや意見を歓迎する。特に,今回の枠組みを踏まえ,マーケットパワーの濫用に係る新たな規定と,競争制限的協調行為を禁止する規定がどのように適用され,ACCCがどのように運用するかについて,消費者,事業者その他の利害関係者から問題点や論点のフィードバックがあることを望む。」と述べている。

豪州競争・消費者委員会,パスタ専門店のフランチャイズ・パスタカップの現在のフランチャイザーであるMorild社及び同社前社長を,フランチャイズ行動規約違反で連邦裁判所に提訴(同規約違反行為に対する初めての訴訟提起)

2016年9月22日 豪州競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】

 豪州競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,パスタカップフランチャイズチェーンの現在のフランチャイザーであるMorild社及び同社の前取締役(Mr. Bemstein)を,フランチャイズ契約行動規約(注:政府が,フランチャイズ契約を締結する者に対して課した義務的行動規約で,ACCCは同規約に違反すると認められる事業者等について,連邦裁判所に制裁金の賦課を求める民事訴訟を提起することができる。)に違反したとして,連邦裁判所に提訴した。
 前取締役のBemsteinは,2008年にパスタカップフランチャイズを共同で設立し,その後経営が破綻した2つの旧フランチャイザーの取締役として同システムを運営してきていた。
 上記規約によれば,フランチャイザーは,同社のフランチャイズシステムに入ろうとする者に対して,同社の役員全員のフランチャイズ事業に関係する経験を開示することが義務付けられている。しかし,ACCCは,Morild社に対して,Bemsteinが取締役としてシステムを運営していた旧フランチャイザー2社が破綻した事実を開示するべきであったのに,していなかったと主張し,併せてBemsteinに対しては,当該非開示に故意に関与したと主張している。
 ACCCのSchaper副委員長は「本訴訟は,フランチャイズ契約行動規約に違反するフランチャイザーに対して,ACCCが裁判所に制裁金の賦課を求めた最初の事件である。我々は,同規約が改正され,重大な違反行為に対して,裁判所が制裁金の賦課を命ずることが認められたことを歓迎している。このような措置が認められたことが,今後,違反行為に対する強力な抑止力となると期待している。」と述べている。
 ACCCは,(裁判所に対して)確認判決,違反行為の差止,制裁金の賦課,事実認定及び訴訟費用を求めている。

背景
 2015年1月1日,改正フランチャイズ行動規範が発効し,同改正規範は,重大な違反に対する制裁金の賦課及び違反公示制度を導入している。

ページトップへ