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日本・モンゴル経済連携協定 実施取極

日本・モンゴル経済連携協定 実施取極

(正本とは形式面で異なります。)

第三章 競争

第三・一条 目的

この章は、基本協定第十一・二条に規定する協力の実施に関する詳細及び手続を定めることを目的とする。

第三・二条 定義

この章の規定の適用上、
(a) 「競争当局」とは、
(i) 日本国については、公正取引委員会又はその後継機関をいう。
(ii) モンゴル国については、公正競争・消費者保護庁又はその後継機関をいう。
(b) 「競争法」とは、
(i) 日本国については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)(以下この章において「独占禁止法」という。)並びにその実施について定める命令及び規則並びにそれらの改正をいう。
(ii) モンゴル国については、二千十年六月十日の競争に関するモンゴル国の法律及びその実施について定める規則並びにそれらの改正をいう。
(c) 「執行活動」とは、締約国政府が自国の競争法の適用に関連して行う審査若しくは捜査又は手続をいい、次のものを含まない。
(i) 事業活動の監視又は通常の届出、報告若しくは申請の審査
(ii) 経済概況又は特定の産業分野における概況の調査を目的とする調査研究活動

第三・三条 通報

1 一方の締約国政府の競争当局は、自国の法令に適合する限りにおいて、他方の締約国政府の競争当局に対し、当該他方の締約国政府の重要な利益に影響を及ぼす可能性があると認める自国政府の執行活動について通報する。
2 一方の締約国政府の執行活動であって、他方の締約国政府の重要な利益に影響を及ぼす可能性があるものには、次の執行活動を含む。
(a) 当該他方の締約国政府の執行活動に関連する執行活動
(b) 当該他方の締約国の国民又は当該他方の締約国の関係法令に基づいて設立され、若しくは組織された企業に対して行う執行活動
(c) 企業結合(次の(i)又は(ii)に規定するものが、当該他方の締約国の関係法令に基づいて設立され、又は組織された企業である場合に限る。)に関する執行活動
(i) 当事者の一又は二以上
(ii) 当事者の一又は二以上を支配する企業
(d) 企業結合以外の反競争的行為であって、実質的に当該他方の締約国において行われるものに関する執行活動
(e) 当該一方の締約国政府の競争当局により、当該他方の締約国政府が要求し、奨励し、又は承認したと認められる行為に関係する執行活動
(f) 排除に係る措置であって、当該他方の締約国における行為を要求し、又は禁止するものを含む執行活動
3 1の規定に基づく通報は、一方の締約国政府の執行活動が他方の締約国政府の重要な利益に影響を及ぼす可能性があることを当該一方の締約国政府の競争当局が了知した場合には、当該一方の締約国の法令に反しないこと及び当該競争当局が実施している審査若しくは捜査に影響を及ぼさないことを条件として、できる限り速やかに行う。
4 この条の規定に基づく通報は、通報を受けた競争当局が自国政府の重要な利益への影響について当初の評価を行うことができるよう、十分詳細な内容を伴うものでなければならない。

第三・四条 執行活動における協力

一方の締約国政府の競争当局は、自国の法令及び自国政府の重要な利益に適合する限りにおいて、かつ、自己の合理的に利用可能な資源の範囲内で、他方の締約国政府の競争当局に対しその執行活動について支援を提供する。

第三・五条 情報の交換

前条に規定する協力のために、一方の締約国政府の競争当局は、自国の法令及び自国政府の重要な利益に適合する限りにおいて、次のことを行う。
(a) 他方の締約国における競争に対しても悪影響を及ぼす可能性があると認める反競争的行為に関係する自己の執行活動について、当該他方の締約国政府の競争当局に通報すること。
(b) 他方の締約国政府の競争当局に対し、反競争的行為に関する重要な情報(自己が保有し、かつ、その注意の対象となっているものに限る。)であって、当該他方の締約国政府の競争当局の執行活動に関連し、又はその執行活動を正当化する可能性があると認めるものを提供すること。
(c) 要請があった場合には、この章の規定に従い、他方の締約国政府の競争当局に対し、自己が保有する情報であって、当該他方の締約国政府の競争当局の執行活動に関連するものを提供すること。

第三・六条 執行活動の調整

1 両締約国政府の競争当局(以下この章において「両競争当局」という。)が相互に関連する事案に関して執行活動を行う場合には、次のとおりとする。
(a) 両競争当局は、それぞれの執行活動の調整について検討する。
(b) 一方の締約国政府の競争当局は、他方の締約国政府の競争当局の要請があった場合において、自国政府の重要な利益に適合するときは、自己の執行活動に関連して秘密の情報を提供した者に対し、当該情報を当該他方の締約国政府の競争当局と共有することに同意するか否かを照会することを検討する。
2 両競争当局は、特定の執行活動の調整を行うべきか否かを検討するに当たり、特に次の要素を考慮すべきである。
(a) 当該執行活動の目的を達成する上で両競争当局が有する能力に対して当該調整が及ぼす効果
(b) 当該執行活動に必要な情報を入手する上で両競争当局が有する相対的な能力
(c) いずれかの締約国政府の競争当局が、関連する反競争的行為に対して効果的な排除に係る措置を確保することができる程度
(d) 両締約国政府及び当該執行活動の対象者にとっての費用の削減可能性
(e) 排除に係る措置の調整が両締約国政府及び当該執行活動の対象者にもたらす潜在的な利益
3 一方の締約国政府の競争当局は、他方の締約国政府の競争当局に適切な通報を行うことを条件として、執行活動の調整をいつでも限定し、又は終了し、及び自己の執行活動を独自に行うことができる。

第三・七条 一方の締約国における反競争的行為であって他方の締約国政府の利益に悪影響を及ぼすものに関する協力

1 一方の締約国政府の競争当局は、他方の締約国において行われた反競争的行為が自国政府の重要な利益に悪影響を及ぼすと信ずる場合には、当該反競争的行為に関する自己の執行活動から生ずる紛争を回避することの重要性及び当該他方の締約国政府の競争当局が当該反競争的行為に関してより効果的な執行活動を行うことができる可能性があることに留意して、当該他方の締約国政府の競争当局に対し、適切な執行活動を開始するよう要請することができる。
2 1の規定に基づく要請には、反競争的行為の性質及び当該要請を行う競争当局が属する締約国政府の重要な利益に当該反競争的行為が及ぼす影響について、できる限り具体的な説明を付するものとし、また、当該要請を行う競争当局が提供することができる追加的な情報その他協力についての申出を含める。
3 1の規定に基づく要請を受けた競争当局は、当該要請において特定される反競争的行為に関し、執行活動を開始するか否か、又は現に行われている執行活動を拡大するか否かを慎重に検討する。当該要請を受けた競争当局は、当該要請を行った競争当局に対し、実行可能な限り速やかに自己の決定を通報する。執行活動を開始する場合には、当該要請を受けた競争当局は、当該要請を行った競争当局に対し、当該執行活動の最終的な結果を通報し、かつ、暫定的な進展のうち重要なものを可能な範囲で通報する。
4 この条のいかなる規定も、1の規定に基づく要請において特定された反競争的行為について執行活動を行うか否かに関し、当該要請を受けた競争当局が自国の競争法及び執行政策の下で有する裁量を制限するものではなく、また、当該要請を行った競争当局が当該要請を取り下げることを妨げるものでもない。

第三・八条 執行活動に関する紛争の回避

1 一方の締約国政府は、自己の執行活動のあらゆる局面(執行活動の開始及び範囲に関する決定並びに各事案における罰則又は排除に係る措置の性質に関する決定を含む。)において、他方の締約国政府の重要な利益に慎重な考慮を払う。
2 いずれか一方の締約国政府が、他方の締約国政府による特定の執行活動が自己の重要な利益に影響を及ぼす可能性があることを当該他方の締約国政府に通報した場合には、当該他方の締約国政府は、自国の法令に適合する限りにおいて、当該執行活動の重要な進展について適時に通報するよう努める。
3 一方の締約国政府の執行活動が他方の締約国政府の重要な利益に悪影響が及ぼす可能性があると当該一方の締約国政府が認める場合には、両締約国政府は、利害の競合を適切に調整しようとするに当たり、次の要素その他関連し得る要素を考慮すべきである。
(a) 執行活動を行う側の締約国における行動又は取引が、他方の締約国における行動又は取引に比して有している反競争的行為についての相対的な重要性
(b) 反競争的行為がそれぞれの締約国政府の重要な利益に及ぼす相対的な影響
(c) 反競争的行為に関与している者が、執行活動を行う側の締約国における消費者、供給者又は競争者に影響を及ぼす意図を有することに関する証拠の存否
(d) 反競争的行為が各締約国の市場における競争を実質的に減殺する程度
(e) 一方の締約国政府の執行活動と他方の締約国の法令又は当該他方の締約国政府の政策若しくは重要な利益との間の抵触又は一貫性の程度
(f) 私人(自然人であるか法人であるかを問わない。)が両締約国政府による相反する要求の下に置かれることとなるか否か。
(g) 関連する資産及び取引の当事者の所在地
(h) 締約国政府の執行活動が、反競争的行為に対する効果的な制裁その他の排除に係る措置を確保することができる程度
(i) 同一の私人(自然人であるか法人であるかを問わない。)に関する他方の締約国政府の執行活動が影響を受ける程度

第三・九条 技術協力

1 両締約国政府は、両競争当局が競争政策を強化し、及び自国の競争法を実施するための技術協力活動において協力することが共通の利益であることに合意する。
2 1に規定する技術協力活動の形態は、次のとおりとする。
(a) 研修のため両競争当局の職員を交流させること。
(b) 競争政策の強化及び競争法の実施に関する研修課程であって、一方又は双方の競争当局が組織し、又は後援するものにおいて、両競争当局の職員が講師又はコンサルタントとして参加すること。
(c) 両競争当局が合意するその他の形態

第三・十条 透明性

一方の締約国政府の競争当局は、次のことを行う。
(a) 自国の競争法の改正及び反競争的行為を規制する自国の新たな法令の制定について他方の締約国政府の競争当局に速やかに通報すること。
(b) 適当な場合には、自国の競争法に関連して発出し、及び公表した指針又は政策声明の写しを他方の締約国政府の競争当局に提供すること。
(c) 適当な場合には、当該一方の締約国政府の競争当局の年次報告その他の公表資料であって、公衆が一般に利用可能であるものの写しを他方の締約国政府の競争当局に提供すること。

第三・十一条 協議

両競争当局は、いずれかの競争当局の要請があった場合には、この章の規定に関連して生ずることがあるいかなる事項についても、相互に協議する。

第三・十二条 情報の秘密性

1(a) この章の規定に従って一方の締約国政府から他方の締約国政府に提供される情報(公に利用可能な情報を除く。)については、当該一方の締約国政府が別段の承認を与えた場合を除くほか、当該他方の締約国政府は、自国の競争法の効果的な執行のためにのみ使用するものとし、かつ、第三者に伝達してはならない。 
(b) この章の規定に従って一方の締約国政府の競争当局から他方の締約国政府の競争当局に提供される情報(公に利用可能な情報を除く。)については、当該一方の締約国政府の競争当局が別段の承認を与えた場合を除くほか、当該他方の締約国政府の競争当局は、自国の競争法の効果的な執行のためにのみ使用するものとし、かつ、第三者又は他の当局に伝達してはならない。
2 1(b)の規定にかかわらず、この章の規定に従って情報(公に利用可能な情報を除く。)を受領する一方の締約国政府の競争当局は、他方の締約国政府の競争当局が別段の通報を行う場合を除くほか、当該情報を競争法の執行のために当該一方の締約国政府の関連する法執行当局に伝達することができる。当該法執行当局は、次条に規定する条件に従って当該情報を使用することができる。
3 一方の締約国政府は、自国の法令に従い、他方の締約国政府がこの章の規定に従って秘密のものとして提供するあらゆる情報の秘密性を保持する。ただし、当該他方の締約国政府が当該情報の開示に同意する場合は、この限りでない。
4 一方の締約国政府は、秘密性又は情報の使用目的の制限に関し、自己が要請する保証を他方の締約国政府から得ることができない場合には、当該他方の締約国政府に提供する情報を限定することができる。
5 この章の他の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国政府も、自国の法令によって禁止されている場合又は自己の重要な利益と両立しないと認める場合には、他方の締約国政府に情報を提供することを要しない。特に、
(a) 日本国政府は、独占禁止法第三十九条の規定の適用を受ける「事業者の秘密」(第三・六条1(b)の規定に従って行われる照会の結果として関係事業者の同意を得て提供されるものを除く。)をモンゴル国政府に提供することを要しない。
(b) モンゴル国政府は、千九百九十五年五月十六日の組織の秘密に関する法律第三条の規定の適用を受ける「組織の秘密」を日本国政府に提供することを要しない。
6 この条の規定は、情報を受領した締約国政府が、自国の法令に従って義務付けられている限度において、当該情報の使用又は開示を行うことを妨げない。当該情報を受領した締約国政府は、可能な限り、当該情報を提供した締約国政府に対し当該使用又は開示について事前に通報する。

第三・十三条 刑事手続のための情報の使用

1 この章の規定に従って一方の締約国政府から他方の締約国政府に提供される情報(公に利用可能な情報を除く。) については、当該他方の締約国の裁判所又は裁判官が行う刑事手続において使用してはならない。
2 この章の規定に従って一方の締約国政府から他方の締約国政府に提供される情報(公に利用可能な情報を除く。)を当該他方の締約国の裁判所又は裁判官が行う刑事手続において提示することが必要とされる場合には、当該他方の締約国政府は、当該情報に対する要請を外交上の経路又は当該一方の締約国の法令に従って設けられたその他の経路を通じて当該一方の締約国政府に提出する。

第三・十四条 連絡

この章に別段の定めがある場合を除くほか、この章の規定に基づく連絡については、両競争当局間で直接行うことができる。ただし、第三・三条の規定に基づく通報及び第三・七条1の規定に基づく要請については、外交上の経路を通じ、書面により確認する。その確認については、関係する連絡が両競争当局間において行われた後、実行可能な限り速やかに行う。

第三・十五条 雑則

1 この章の規定を実施するための詳細な取決めは、両競争当局間で行うことができる。
2 この章のいかなる規定も、他の二国間又は多数国間の協定又は取決めに従って両締約国政府が相互に支援を求め、又は提供することを妨げるものではない。
3 この章のいかなる規定も、管轄権に関連するあらゆる問題に関するいずれの締約国政府の政策又は法的立場をも害するものと解してはならない。
4 この章のいかなる規定も、他の国際協定若しくは国際的な取決め又は自国の法律に基づくいずれの締約国政府の権利及び義務にも影響を及ぼすものと解してはならない。

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