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日本・メキシコ経済連携協定 実施取極

(正本とは形式面で異なります。)

経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第百三十二条に基づく日本国政府とメキシコ合衆国政府との間の実施取極

前文

 日本国政府及びメキシコ合衆国政府(以下「両締約国政府」という。)は、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定(以下「基本協定」という。)第百三十二条の規定に従って、次のとおり協定した。

第一条 目的及び定義

1 この取極は、両締約国政府の競争当局間の協力関係の進展を通じて、各締約国の競争法の効果的な執行に寄与するとともに、これらの競争法の適用に関連するすべての事項にわたり両締約国政府間の紛争が生ずる可能性を回避し、又は軽減することを目的とする。

2 この取極の適用上、
(a) 「反競争的行為」とは、いずれか一方の締約国の競争法の下で罰則又は排除に係る措置の対象とされる行動又は取引をいう。

(b) 「競争当局」とは、
(i) 日本国については、公正取引委員会をいう。

(ii) メキシコ合衆国については、連邦競争委員会をいう。

(c) 「競争法」とは、
(i) 日本国については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)(以下「独占禁止法」という。)並びにその実施について定める命令及び規則並びにそれらの改正をいう。

(ii) メキシコ合衆国については、千九百九十二年十二月二十四日の連邦経済競争法(以下「連邦経済競争法」という。)及び千九百九十八年三月四日の連邦経済競争法に関る規則並びにそれらの改正をいう。

(d) 「執行活動」とは、締約国政府が自国の競争法の適用に関連して行うあらゆる審査若しくは捜査又は手続であって、次のいずれにも該当しないものをいう。
(i) 事業活動の監視又は通常の届出、報告若しくは申請の審査

(ii) 経済概況又は特定の産業分野における概況の調査を目的とする調査研究活動

第二条 通報

1 各締約国政府の競争当局は、他方の締約国政府の重要な利益に影響を及ぼすことがあると認める自国政府の執行活動について、当該他方の締約国政府の競争当局に通報する。

2 他方の締約国政府の重要な利益に影響を及ぼすことがある執行活動は、次のものを含む。

(a) 当該他方の締約国政府の競争当局の執行活動に関連する執行活動

(b) 当該他方の締約国の国民又は当該他方の締約国の領域における関係法令に基づいて設立され若しくは組織された会社に対して行う執行活動

(c) 企業結合であって、次の(i)又は(ii)が当該他方の締約国の領域における関係法令に基づいて設立され又は組織された会社である場合に関する執行活動

(i) 当事者の一又は二以上

(ii) 当事者の一又は二以上を支配する会社

(d) 企業結合以外の反競争的行為であって、実質的に当該他方の締約国の領域において行われるものに関する執行活動

(e) 当該他方の締約国政府が要求し、奨励し、又は承認したものと一方の締約国政府の競争当局が認める行為に関する執行活動

(f) 当該他方の締約国の領域における行為を要求し又は禁止する排除に係る措置を含む執行活動

3 企業結合に関して1の規定による通報が必要となる場合には、この通報は、次の時点までに行われる。
(a) 日本国の競争当局については、競争当局が、企業結合計画に関する文書、報告その他の情報の提出を独占禁止法に従って求める時

(b) メキシコ合衆国の競争当局については、企業結合の届出がなされた後であって、かつ、連邦競争委員会の最終的な決定に先立ちできる限り早い時

4 企業結合以外の事項に関して1の規定による通報が必要となる場合には、この通報は、次の時点までに行われる。

(a) 日本国の競争当局については、次の措置をとるに先立ちできる限り早い時

(i) 刑事告発

(ii) 緊急停止命令の申立て

(iii) 勧告又は審判開始決定の発出

(iv) 課徴金納付命令の発出(納付者に対して事前の勧告が発出されていない場合に限
る。)

(b) メキシコ合衆国の競争当局については、連邦経済競争法第三十三条の規定に従い、個人又は会社に対し連邦経済競争法に違反している疑いがある旨の書面を発出する以前の時点、及び決定又は和解を採択するに先立ちできる限り早い時

5 この条の規定による通報は、通報を受けた競争当局がその締約国政府の重要な利益への影響について当初の評価を行うことができるよう、十分詳細な内容を伴うものでなければならない。

第三条 執行活動における協力

1 各締約国政府の競争当局は、自国の法令及び自国政府の重要な利益に適合する限りにおいて、かつ、自己の合理的に利用可能な資源の範囲内で、他方の締約国政府の競争当局に対し、その執行活動について支援を提供する。

2 各締約国政府の競争当局は、自国の法令及び自国政府の重要な利益に適合する限りにおいて、次のことを行う。

(a) 他方の締約国の領域における競争に対しても悪影響を及ぼす可能性があると認める反競争的行為に係る自己の執行活動につき、他方の締約国政府の競争当局に通報すること。

(b) 反競争的行為に関する重要な情報(自己が保有し、かつ、その注意の対象となっているものに限る。)であって、他方の締約国政府の競争当局の執行活動に関連し又はそ執
行活動を正当化する可能性があると認めるものを、当該他方の締約国政府の競争当局に提供すること。

(c) 要請に応じ、かつ、この取極の規定に従い、自己の保有する情報であって他方の締約国政府の競争当局の執行活動に関連するものを、当該他方の締約国政府の競争当局に提供すること。

第四条 執行活動の調整

1 両締約国政府の競争当局は、相互に関連する事案に関して執行活動を行う場合には、それぞれの執行活動の調整について検討する。

2 両締約国政府の競争当局は、特定の執行活動の調整を行うべきか否かを検討するに当たり、特に次の要素を考慮するものとする。

(a) 当該執行活動の目的を達成する上で両締約国政府の競争当局が有する能力に対して当該調整が及ぼす効果

(b) 当該執行活動に必要な情報を入手する上で両締約国政府の競争当局が有する相対的な能力

(c) いずれか一方の締約国政府の競争当局が、関係の反競争的行為に対して効果的な排除に係る措置を確保することのできる程度

(d) 両締約国政府及び当該執行活動の対象者にとっての費用の削減可能性

(e) 排除に係る措置の調整が両締約国政府及び当該執行活動の対象者にもたらす潜在的な利益

3 執行活動の調整に際しては、各締約国政府の競争当局は、他方の締約国政府の競争当局による執行活動の目的を慎重に考慮して自己の執行活動を行うよう努める。

4 相互に関連する事案に関して両締約国政府の競争当局が執行活動を行う場合には、各締約国政府の競争当局は、他方の締約国政府の競争当局の要請により、かつ、自国政府の重要な利益に適合する限りにおいて、当該執行活動に関連して秘密の情報を提供した者に対し、当該他方の締約国政府の競争当局が当該情報を共有することに同意するか否かを照会することについて検討する。

5 各締約国政府の競争当局は、他方の締約国政府の競争当局に適切な通報を行うことを条件として、執行活動の調整をいつでも限定し又は終了し、執行活動を独自に行うことができる。

第五条 一方の締約国の領域における反競争的行為であって他方の締約国政府の利益に悪影響を及ぼすものに関する協力

1 締約国政府の競争当局は、他方の締約国の領域において行われた反競争的行為が自国政府の重要な利益に悪影響を及ぼすと信ずる場合には、管轄権に関する紛争を回避することの重要性及び他方の締約国政府の競争当局が当該反競争的行為に関してより効果的な執行活動を行うことができる可能性があることに留意して、当該他方の締約国政府の競争当局に対して適切な執行活動を開始するよう要請することができる。

2 1の規定に基づく要請には、反競争的行為の性質及び当該反競争的行為が当該要請を行う競争当局の側の締約国政府の重要な利益に及ぼす影響についてできる限り具体的な説明を付し、当該要請を行う競争当局として可能な追加的情報の提供その他の協力の申出を含める。

3 要請を受けた競争当局は、当該要請において特定される反競争的行為に関し、執行活動を開始するか否か、又は現に行われている執行活動を拡大するか否かを慎重に検討する。当該要請を受けた競争当局は、当該要請を行った競争当局に対し、できる限り速やかに自己の決定を通報する。執行活動を開始する場合には、当該要請を受けた競争当局は、当該要請を行った競争当局に対し、当該執行活動の最終的な結果を通報し、かつ、暫定的な進展のうち重要なものを可能な範囲で通報する。

第六条 執行活動に関する紛争の回避

1 各締約国政府の競争当局は、執行活動のあらゆる局面(執行活動の開始及び範囲に関する決定並びに各事案における罰則又は排除に係る措置の性質に関する決定を含む。)において、他方の締約国政府の重要な利益に慎重な考慮を払う。

2 いずれか一方の締約国政府が、他方の締約国政府による特定の執行活動が自国政府の重要な利益に影響を及ぼすことがあることを当該他方の締約国政府に通報したときは、当該他方の締約国政府は、当該執行活動の重要な進展について適時に通報するよう努める。

3 いずれか一方の締約国政府の執行活動が他方の締約国政府の重要な利益に悪影響を及ぼすおそれがあるといずれかの締約国政府が認める場合には、両締約国政府は、利害の競合を適切に調整するに当たり、次の要素その他状況に応じ関連する要素を考慮するものとする。

(a) 関係する反競争的行為に対し、執行活動を行う側の締約国の領域における行動又は取引及び他方の締約国の領域における行動又は取引が有する相対的な重要性

(b) 当該反競争的行為が各締約国政府の重要な利益に及ぼす相対的な影響

(c) 当該反競争的行為に関与している者が、執行活動を行う側の締約国の領域における消費者、供給者又は競争相手を害する意図を有することに関する証拠の存否

(d) 当該反競争的行為が各締約国の市場における競争を実質的に減殺する程度

(e) 一方の締約国政府による執行活動と他方の締約国の法令又は他方の締約国政府の政策若しくは重要な利益とが抵触し又は競合する程度

(f) 私人(自然人であるか法人であるかを問わない。)が両締約国政府による相反する要求の下に置かれることとなるか否か。

(g) 関連する資産及び取引の当事者の所在地

(h) 締約国政府の当該執行活動により、当該反競争的行為に対する効果的な罰則又は排除に係る措置が確保される程度

(i) 同一の私人(自然人であるか法人であるかを問わない。)に関する他方の締約国政府の執行活動が影響を受ける程度

第七条 技術協力

1 両締約国政府は、競争法の執行及び競争政策に関連する技術協力活動において協力することが両締約国政府の競争当局の共通の利益であることに合意する。

2 この協力活動には、両締約国政府の競争当局の合理的に利用可能な資源の範囲内で行われる次の活動を含めることができる。

(a) 研修を目的とした競争当局の職員の交流

(b) 各締約国政府の競争当局が組織し又は後援する競争法及び競争政策に関する研修課程における講師又はコンサルタントとしての他方の締約国政府の競争当局の職員の参加

(c) 両締約国政府の競争当局が合意するその他の形態の技術協力

第八条 透明性

 両締約国政府の競争当局は、次のことを行う。

(a) 自国の競争法の改正及び反競争的行為を規制する新たな法令の制定について他方の締約国政府の競争当局に速やかに通報すること。

(b) 適当な場合には、自国の競争法に関連して発出し及び公表したガイドライン又は政策
声明の写しを他方の締約国政府の競争当局に提供すること。

(c) 適当な場合には、締約国政府の競争当局の年次報告又はその他の公表資料であって一般に利用可能なものの写しを他方の締約国政府の競争当局に提供すること。

第九条 協議

1 両締約国政府の競争当局は、いずれか一方の締約国政府の競争当局の要請があった場合には、この取極に関連して生ずることのあるいかなる問題についても、相互に協議する。そのような協議の要請においては、当該要請の理由及び手続上の期間の制限又はその他の制約により当該協議が迅速に行われる必要があるか否かを明記する。

2 両締約国政府の競争当局は、いずれか一方の締約国政府の競争当局の要請に応じて随時会合する。この2の規定に従って行われる会合においては、特に、次のことを行うことができる。

(a) 各締約国の競争法に関連する執行努力及び重点事項の現状に関する情報を交換すること。

(b) 共通の関心を有する経済分野に関する情報を交換すること。

(c) 各締約国政府の競争当局が検討している政策変更に関して討議すること。

(d) その他各締約国の競争法の適用に係る事項であって両締約国政府の競争当局が相互に関心を有するものに関して討議すること。

第十条 情報の秘密性

1 一方の締約国政府又は競争当局がこの取極に従って受領した情報(公開情報を除く。)は、

(a) 当該情報を提供した締約国政府又は競争当局が別段の承認を行った場合を除くほか、当該情報を受領した締約国政府又は競争当局により、第一条1に定める目的のためにのみ使用される。

(b) 当該情報を提供した競争当局が別段の承認を行った場合を除くほか、当該情報を受領した競争当局により、第三者又は他の当局に伝達されてはならない。

(c) 当該情報を提供した締約国政府が別段の承認を行った場合を除くほか、当該情報を受領した締約国政府により、第三者に伝達されてはならない。

(d) 当該情報を受領した締約国の裁判所又は裁判官の行う刑事手続において使用されてはならない。

2 この取極に基づき一方の締約国政府から他方の締約国政府に提供された情報(公開情報を除く。)を、当該他方の締約国の裁判所又は裁判官が行う刑事手続において提示することが必要とされる場合には、当該他方の締約国政府は、当該情報に対する要請を外交上の経路又は当該一方の締約国の法律に従って定められたその他の経路を通じて当該一方の締約国政府に提出する。

3 1(b)の規定にかかわらず、この取極に従って情報を受領した競争当局は、情報を提供した競争当局が別段の通報を行う場合を除くほか、当該情報を競争法の執行のために自国政府の関連する法執行当局に伝達することができる。

4 各締約国政府は、自国の法令に従い、この取極に従って他方の締約国政府から秘密として提供されたあらゆる情報の秘密を保持する。

5 各締約国政府は、秘密の保持又は情報の使用目的の制限に関して自己の要請する保証を他方の締約国政府から得ることができない場合には、当該他方の締約国政府に提供する情報を限定することができる。

6 この取極の他のいかなる規定にもかかわらず、いずれの締約国政府も、自国の法令によって禁止されている場合又は自己の重要な利益と両立しない場合には、他方の締約国政府に情報を提供することを要しない。特に、日本国政府は、第四条4の規定に従って、かつ、関係事業者の同意を得て提供される情報を除くほか、独占禁止法第三十九条の規定の適用を受ける「事業者の秘密」をこの取極の下でメキシコ合衆国政府に提供することを要しない。

第十一条 連絡

 この取極に別段の定めがある場合を除くほか、この取極に基づく連絡は、両締約国政府の競争当局間において直接行うことができる。ただし、第二条の規定による通報及び第五条1の規定に基づく要請は、外交上の経路を通じ、書面により確認されなければならない。その確認は、該当する連絡が両締約国政府の競争当局間において行われた後、できる限り速やかに行う。

第十二条 雑則

1 この取極を実施するための詳細な取決めは、両締約国政府の競争当局間で行うことができる。

2 この取極のいかなる規定も、両締約国政府の間で有効な他の二国間又は多数国間の協定又は取極に従って両締約国政府が相互に支援を求め、又は与えることを妨げるものではない。

3 この取極のいかなる規定も、管轄権に関連するあらゆる問題に関する各締約国政府の政策又は法的立場を害するものと解してはならない。

4 この取極のいかなる規定も、他の国際的な協定若しくは取極又は各締約国の法律に基づく各締約国政府の権利及び義務に影響を及ぼすものと解してはならない。

第十三条 最終規定

1 この取極は、両締約国政府により、基本協定及び各締約国において効力を有する法令に従って、かつ、それぞれの競争当局の利用可能な資源の範囲内で実施される。

2 この取極中の条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この取極の解釈に影響を及ぼすものではない。

3 この取極は、基本協定の効力発生の日に効力を生じ、基本協定が有効である限り効力を有する。両締約国政府は、いずれかの締約国政府の要請に基づき、この取極の改正について相互に協議する。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの取極に署名した。

 二千四年九月十七日にメキシコ市で、ひとしく正文である日本語、スペイン語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国政府のために

メキシコ合衆国政府のために
ビセンテ・フォックス・ケサーダ

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