このページの先頭ですサイトメニューここから
このページの本文へ移動
公正取引委員会
  • サイトマップ
  • 音声読み上げ・文字拡大
  • ENGLISH
  • 公正取引委員会について
  • 報道発表・広報活動
  • 相談・手続窓口
  • 独占禁止法
  • 下請法
  • CPRC(競争政策研究センター)
サイトメニューここまで

本文ここから

オーストラリア(Australia)

(2012年9月現在)

1 根拠法

 オーストラリアの連邦競争法は,2010年競争・消費者法(Competition and Consumer Act2010。2011年1月施行。)であり,全体の構成は以下のとおりである(以下「法」と引用する。)。
 競争制限行為に関する禁止規定等は,第4章(制限的取引慣行)に定められている。

2 執行機関

(1)オーストラリア競争・消費者委員会(組織図について,別紙参照)

 (Australian Competition and Consumer Commission;ACCC)
 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,1995年11月6日,取引慣行委員会(1974年創設)と価格監視委員会(1983年創設)の統合により発足した独立した行政組織である。
 ACCCの主な任務は次のとおりである。
(1) 法違反行為に関する審査及び連邦裁判所への民事提訴並びに違反事業者からの違反行為中止の確約(後記4(7)参照)の取得に係る決定
(2) 企業結合審査
(3) 公共の利益をもたらす一定の制限的取引慣行等に関する認可及び届出に係る決定
(4) 電力事業,ガス事業等への第三者アクセス促進に係る法執行
(5) 特定の商品又は役務の価格設定の監視
 競争政策及び消費者政策は財務省(the Treasury)の所管であり,ACCCは,財務省の所轄に属する機関とされている。
 財務大臣は,法に基づくACCCの権限の行使等に関連して指示を行うことができ,ACCCはその指示に従わなければならない。この指示は文書で行わなければならず,かつ,指示後に公報に掲載しなければならない。ただし,法第3A章,第4章(制限的取引慣行),第7章(認可・届出手続),第7A章,第10章,第11B章,第11C章及び個別案件に係る第11章第3節については,財務大臣はACCCに指示を行うことができない(法第29条)。

ア 委員会(Commission)の構成

 ACCCは,委員長1名及び常勤委員数名(以下「常勤メンバー」という。)から構成される(法第7条)。常勤メンバーの任命に先立ち,財務大臣は,(1)常勤メンバー候補者の産業,商業,経済,法律,行政若しくは消費者保護に関する知識又は経験が,任命に値するものであることを確認し,(2)当該候補者が中小企業問題に関する知識又は経験を有しているか否かを考慮し,(3)競争法を有する州・準州・特別地域の少なくとも一つにおいて過半数が当該候補者の任命を支持していることを確認しなければならない(法第7条)。また,常勤メンバーから副委員長が2名以内,連邦総督により任命されるが,少なくとも1名は,中小企業関係に関する知識又は経験を有するものでなければならない(法第10条)。
 また,常勤メンバーのほか,特定の案件及び小委員会(後記ウ参照)において,常勤委員とみなされ,これと同様の権限を行使できる準委員(associate members)がいる。
 常勤メンバーは連邦総督が,準委員は財務大臣が任命する。いずれも任期は最大5年であり,再任も可能である(法第7条,8条,8A条)。
 委員会の定足数は3人(委員長又は副委員長を含む)であり,過半数により決定することができる(法第18条)が,通常はコンセンサス方式を採っている。
 委員会は全ての公式な決定を行うことができるが,これを助けるため,5つの小委員会が委員会の下に設置されている。

イ 事務総局

 ACCCの下に,事務総局及び8の地方事務所が置かれている。

ウ 小委員会(Committee)

 現在,Adjudication(適用除外の認可及び届出関係),Communication,Enforcement,Mergers及びRegulated Access &Price Monitoringの5小委員会が設置されており,これらの小委員会には,委員及び事務総局幹部がメンバーとして指定されている。
 なお,小委員会の定足数は2名とされている(法第19条)。
 ただし,民事訴追(法的措置を請求)をする場合,企業結合の提案を承認又は拒絶する場合,反競争行為の適用除外を認可する場合は,小委員会の議論の後,委員会(Commission)で,又は小委員会の議論に他の委員も参加して(Full-commission)決定されている。

(2)財務大臣

 競争政策及び価格監視政策といった政策立案,改正法案作成などについては,財務省が担当する。ACCCは財務省に対して助言をするのみで,法案作成作業などは行わない。

(3)オーストラリア競争審判所(Australian Competition Tribunal)

 オーストラリア競争審判所は,ACCCが行った,(1)適用除外の認可及び届出に係る決定(事後の取消しを含む。),(2)法定手続にのっとって行われた企業結合審査に関する決定,(3)第三者アクセスに関する決定に対する当事者(又は第三者)からの不服申立てを受理し,また,直接審理申請のあった企業結合の認可の申請を受理し,審理する独立した準司法的機関である。競争審判所の決定に不服のある者は,連邦裁判所に不服申立てを行うことができる。
 審判所の首席審理官(Presidential Member)は連邦裁判所の判事の中から,審理官(Member)は産業,商業,経済,法律若しくは行政の知識又は経験を有するものの中から,連邦総督が任命する(法第31条)。審理官の人数には法令上の制約はない。任期は7年以内(法第32条)である。
 審判所の審判体(Division)は3名の審理官で構成され,審判長は首席審理官が務めている。また,審理及び最終決定は裁判所と同様の手続で行われる。しかし,法令に関する質問については審判長(首席審理官)の意見により決定し,それ以外の質問については審判官(首席審理官及び審理官)の過半数で決定する。

(4)連邦裁判所(Federal Court)

 連邦裁判所は,違反事件に関するACCCによる提訴及び競争審判所の決定に対する不服申立てについて管轄する(Federalcourt[判事1名],Full Federal court[判事3名],High court[判事7名]の三審制)。私訴も,制限的取引慣行については原則として連邦裁判所が管轄する。

3 規制の概要

(1)カルテル行為(刑事:法第44ZZRF条及びZZRG,民事:法44ZZRJ条及びZZRK条)

 競争業者間で,カルテル条項(cartel provision)を含む契約,取決め又は了解(以下「取決め等」という。)を行うこと(法第44ZZRF条及び法第44ZZRJ条)及びカルテル条項に効果を与えること(法第44ZZRG条及び法第44ZZRK条)は,それぞれ禁止されている。カルテル条項とは,価格カルテル,数量カルテル,市場分割又は入札談合に関連するものをいう(法第44ZZRD)。
 当該カルテル条項については,実質的な競争減殺(Substantial Lessening Competition)が要件とされておらず,原則違法(Illegal per se)とされている。

(2)取引制限的又は反競争的取決め等(法第45条)

 排除条項(競争業者間の取決め等であり,かつ,当該取決めの規定が,特定の者又は特定の層からの購入又は特定の者又は特定の層への販売について制限する目的を有しているもの(法第4D条)。)を有する取決め等又は競争を実質的に減殺する目的若しくは効果を有する取決め等(蓋然性のあるものを含む。)を行うこと及びこれらの取決め等に効果を与えることが,それぞれ禁止されている(法第45条(2))。
 具体的には,直接の共同取引拒絶(いわゆるPrimary boycott)や操業時間の共同制限カルテルなど,カルテル条項以外の取決め等の共同行為が対象となる。
 なお,共同して,ある事業者が他の事業者と取引することを妨害すること(いわゆるSecondary boycott)については,法第45D条で規定されている。ただし,競争を実質的に減殺する目的かつ効果を有することが求められる(法45D条(1)(b))。

(3)市場力の濫用(Misuse of market power)(法第46条)

ア 禁止行為

 法第46条(1)は,ある市場における実質的な力(substantial degree of power in a market)を有する法人が,その市場力(market power)を,当該市場又は他の市場において,次の目的で用いることを禁止している。
(1) 当該法人又は当該法人の関連法人の競争業者を市場から排除又は当該競争業者に実質的に損害を与えること。
(2) 市場参入の妨害
(3) 他の競争業者の競争的行為の阻止又は妨害

イ 市場力の有無

 ある法人が特定の市場において実質的な力を有するか否かは,事案ごとに個別に判断されることとなる。裁判所は,実質的な力の有無の認定に当たり,市場における当該法人の行為が,
(1) 当該市場における当該法人の競争業者(潜在的競争業者を含む。)の行為によって制約される範囲;又は
(2) 当該市場における当該法人の取引相手(供給者又は購入者)の行為によって制約される範囲
を考慮するものとするとされている(法第46条(3))。
 なお,次の場合であっても裁判所による実質的な力を有するとの認定を妨げるものではない(法第46条(3C))。
(1) 当該法人が,実質的に市場を支配(control)していない場合。
(2) 当該法人が,市場における他の競争業者,潜在的競争業者,又は当該法人との間で商品又は役務を取引する個人の行為から完全に自由ではない場合。

(4)略奪的価格設定(法第46条(1),第46条(1AAA),46条(1AA))

 商品又は役務を,関連費用を下回る価格で,持続的な期間,販売する場合には,たとえ市場において実質的な力を有する法人が,当該販売によって生じる損失を将来,埋め合わせることができないとしても,法第46条(1)違反となる。
 また,市場において実質的なシェアを有する法人が,次の目的をもって持続的な期間,商品又は役務を,関連費用を下回る価格で販売することを禁止している。(第46条(1AA))
(1) 当該法人又は当該法人の関連法人の競争業者を市場から排除し又は当該競争業者に実質的に損害を与えること。
(2) 他の者が市場に参入することを妨害すること。
(3) 市場において他の者が競争的行為を行うことを防止又は妨害すること。
 ある法人が特定の市場において実質的なシェアを有するか否かは,当該特定された市場の,特定の時点又は期間における,競争業者の数及び規模から判断されることとなる(法46条(1AB))。

(5)排他条件付取引(法第47条)

 法第47条(1)は,法人が取引において,排他条件付取引行為を行うことを禁止している。次の行為は排他条件付取引に該当する。

  •  自らの競争業者から直接又は間接に商品を購入しないこと等を条件として,取引の相手方に商品を供給すること(法第47条(2))又は当該条件に同意しないことを理由に供給を拒絶すること(法第47条(3))。
     これらの行為については,競争を実質的に減殺する目的又は効果(蓋然性のあるものも含む。)があれば違法となる。
  •  自らの競争業者に直接又は間接に商品を供給しないこと等を条件として,取引の相手方から商品を購入すること(法第47条(4))又は当該条件に同意しないことを理由に購入を拒絶すること(法第47条(5))。
     これらの行為については,競争を実質的に減殺する目的又は効果(蓋然性のあるものも含む。)があれば違法となる。
  •  特定の第三者から商品又は役務を購入すること等を条件として,取引の相手方に自己の商品を供給すること(法第47条(6))又は当該条件に同意しないことを理由に供給を拒絶すること(法第47条(7))
     これらの行為は,「third line forcing(第三者強制)」と呼ばれ,競争を実質的に減殺する目的又は効果の有無にかかわらず,行為が認められれば違反となる(原則違法)。

(6)再販売価格維持行為(法第48条,第96条~第100条)

 法第48条は,法人又は個人事業者が,再販売価格維持行為を行うことを禁止している。役務についても商品と同様に適用される(法第96A条)。次の行為は再販売価格維持行為に該当する。
(1) 最低再販売価格の維持を条件として商品を供給すること(法第96条(3)(a))。
(2) 最低再販売価格の維持を勧奨すること(法第97条)。
(3) 最低再販売価格維持契約を締結すること(法第96条(3)(c))。
(4) 最低再販売価格で販売することに同意しないこと又は最低再販売価格より低い価格で販売したことを理由に商品の供給を拒絶すること(法第96条(3)(d)(i),同(3)(d)(ii),同(3)(e)(i),同(3)(e)(ii))。
 なお,再販売業者が顧客誘引のために供給者から供給された商品についてコスト割れ販売(いわゆるloss leader selling)を行った場合は,季節ごとのセール,クリアランスセール又は供給者が同意しているときを除き(法第98条(3)),当該販売から1年以内であれば,供給を拒絶しても禁止規定は適用されない(法第98条(2))。
(5) 再販売業者が最低再販売価格として認識するような価格を提示すること。
 また,上記(1)~(5)における再販売価格には,実際に供給する価格のみならず,広告価格,表示価格及び提示価格も含まれる(法第96条(7))。

(7)企業結合(法第50条・第50A条)

ア 禁止対象

 法第50条(1)は,法人が,直接又は間接に,(1)他の法人の株式を取得し,又は(2)他の者の資産を取得する場合であって,当該取得が市場における競争を実質的に減殺する効果を有することとなる若しくはその蓋然性がある場合に,当該取得を禁止している。法第50条(2)は,自然人による当該取得を禁止している。
 法第50条(1)及び(2)の「競争の実質的減殺効果」の有無を評価する際には,次の事項が考慮されなければならない(法第50条(3))。
(1) 当該市場における実際の及び潜在的な輸入競争の程度
(2) 当該市場における参入障壁の高さ
(3) 当該市場における集中度
(4) 当該市場における対抗力の程度
(5) 取得者が,当該取得によって,価格又はマージンを著しく,かつ,持続的に引き上げる可能性
(6) 当該市場において代替商品又は役務が入手可能な程度
(7) 当該市場の動的な特徴-成長性,革新性,製品差別化等
(8) 当該取得が,活発かつ有力な競争業者を当該市場から退出させる可能性
(9) 当該市場における垂直統合の性質と程度

イ 外国における株式の支配的取得に対する規制(第50A条(1))

 競争審判所は,ある者が,オーストラリア国外で,法人の株式を支配的に取得し(第1の株式支配「First controlling interest」),かつ,一又は複数の(実際上はオーストラリアの)法人の株式を支配的に取得する(第2の株式支配「Second controll inginterest」)場合に,ACCC,財務大臣又はその他の者からの申請(原則当該取得後6か月以内:法第50A条(3))に基づき,
(1) 第2の株式支配が市場における競争を実質的に減殺する効果を有することとなる又はその蓋然性があること,かつ,
(2) 第2の株式支配がいかなる状況においても公共に利益をもたらすものとはならないこと又はその蓋然性があることから,当該取得が本条の目的に照らし否定されるべきであること
が認められる場合に,同内容の宣言をすることができる(第50A条(1))。
 競争審判所の宣言から6か月(延長可能)の間,当該法人は,宣言の対象となった市場において事業活動を行うことができない(同条(6))。
 なお,当該取得について,申請により,ACCCからの認可を受けることが可能である(後述(8)参照)。

ウ 企業結合の差止め

 第50条に違反すると思われる企業結合を阻止するための差止命令を申し立てることができるのはACCCのみである(法第80条(1A))。しかし,企業結合が行われた後は,何人も(ACCCを含む。)株式又は資産の譲渡を請求することができる(法第81条(1))。
 また,ACCCの請求により,裁判所は企業結合の無効宣告をすることができる(法第81条(1A))。ただし,いずれの請求権も企業結合が行われた時から3年で消滅する(法第81条(2))。
 さらに,企業結合により損失又は損害を被った者は,損害賠償を請求することができる(法第82条)。

エ 企業結合の許可(clearance)及び認可(authorization)

 オーストラリアにおいては,企業結合計画の事前届出義務は存在しない。ただし,任意に許可又は認可の申請を行うことができる。現在,任意の企業結合許可の申請について,非公式なものと公式なものの申請が存在している。

(ア) ACCCに対する非公式な企業結合許可の申請事実上,主流となっている手続で,実行済みの企業結合及び実行前の企業結合の両方が対象となる。手続は,コンフィデンシャル・レビューとパブリック・レビューの2段階で構成されている。
 なお,実行済みの企業結合についての相談の場合,コンフィデンシャル・レビューは省略される。

(a) コンフィデンシャル・レビュー
 非公開の企業結合の事前相談手続であり,限られた情報の中でACCCが相談内容について検討し,回答する。
 検討の結果,競争上の問題がなければ,「ACCCは当該企業結合に反対しない」旨の非公式な見解(informal view)を出すこととなるが,当該見解に法的拘束力はなく,当事会社が法的に保護されることはない。ただし,実際には,当該回答を得たにもかかわらず法的措置を執られることは極めてまれである(企業結合レビュープロセスガイドライン 3.3)。

(b) パブリック・レビュー
 実際に企業結合が行われた後に相談があった場合やオープンな事前相談があった場合などに,パブリック・レビューが行われる(2006年企業結合レビュープロセスガイドラインGL4.24)。
 ACCCは,インターネット上に情報を掲載し,必要に応じ利害関係者への公式な意見募集を実施する。検討の結果,ACCCが反対しない旨の決定をした場合には,当該内容を当事会社に伝えた上でインターネット上に公表する。問題がある場合には,問題点を公表し(Statement of issues),更なる意見募集を実施する。その上で最終的な決定を行い,結果を当事会社に伝え,インターネットで公表する(同GL4.66)。
 ACCCが当該企業結合に反対したとしても,法的拘束力はないので,企業結合計画を実行することは可能である。その場合,ACCCは当該企業結合の差止め等を求めて連邦裁判所に提訴することになる。

(イ) ACCCに対する公式な企業結合許可の申請(法第95AC条~法第95AS条)
 実行前の企業結合(法第50条違反の案件に限る。)に限り,ACCCに正式な許可を求めることができる(法第95AC条(1),95AN条(2),2008年公式企業結合レビュープロセスガイドライン3.7)。
 ACCCは,許可申請のあった日から40営業日以内に許可するか否かを決定しなければならず,当該期限内に決定が行われない場合,申請は却下されたものとして扱われる(法第95AO条(1))。ただし,当事会社の事前の同意がある場合及び事案が複雑である等特段の事情がある場合には,さらに20営業日の延長が可能である(法第95AO条(2)及び(3))。
 許可を得た企業結合には,法第50条違反を理由に法的措置が提起されることがない(免責を得る)反面,許可が拒否された場合には,当該企業結合計画の実施は,法第50条違反として提訴される。
 当該ACCCの決定(公式な決定)に不服がある場合,当事会社のみ,決定から14日以内に,競争審判所にレビューを求めることができる(法第111条(1),競争・消費者規則第74条)。これを受けて,競争審判所は,30営業日内(複雑等の事情がある場合には60日の追加延長が可能。)に,レビューを決定しなければならず,決定できない場合にはACCCの決定を支持したものとして扱われる(法第118条(1)~(3))。

(ウ) 競争審判所に対する企業結合の認可の申請(法第95AT条~95AZM条)
 実行前の企業結合であって(法第95AZH(3)),法第50条違反の案件に限り,競争審判所に対して,直接,企業結合の認可を求めることができる(法第95AU条)。競争審判所は,公共の利益に資すると認められる場合に限り,認可を与えることができる(法第95AZH(1))。
 認可を得た企業結合に対して,法第50条違反を理由に法的措置が提起されることはない(法第95AT条(2))。
 なお,競争審判所は,認可申請を受理した後,3営業日以内に,その写しをACCCに渡さなければならない(法第95AX条)。また,写しを受理したACCCは,申請書の写しと関係情報かその書類をインターネット上に公表し,かつ,競争審判所が定める期限での当該申請にかかる意見書の提出の募集をしなければならない(法第95AY条)。

オ 確約(undertaking)

 企業結合が競争上の懸念を生じさせる場合,当事会社は,法第87B条に基づく法的拘束力を有する確約(後述4(7)参照)をACCCに申し出ることにより,懸念を解消させることができる。

(8)一定の制限的取引行為の認可及び届出手続(法第7章)

ア ACCCによる認可(authorisation)手続(法第7章第1節)

 ACCCは,申請に基づき,法人が次の行為等を行うことを認可することができる(法第88条)。認可の決定は原則6か月以内に下すこととされている。
(1) カルテル条項(法第88条(1A))
(2) 排除条項又は反競争的取決め等(法第88条(1)(5)(6)(7)(7A))
(3) 排他条件付取引(法第88条(8)(8AA)(8AB))
(4) 再販売価格維持行為(法第88条(8A))
(5) 外国における株式の支配的取得(法第88条(9))
 また,ACCCは,認可された協定を取り消し,又は変更することができる。

イ 排他条件付取引及び共同取引に係る届出(notification)手続(法第7章第2節)

(ア) 排他条件付取引(Guide to exclusive dealing notification参照)
 「third line forcing」を除く排他条件付取引(=競争の実質的減殺効果又は目的が認められなければ違法とはならない。)については,ACCCに届け出ることにより,直ちに適用免除となる。ただし,後日,ACCCが,(1)当該取引が競争を実質的に減殺するものであり,かつ,(2)当該取引が公共に与える損害が当該取引によってもたらされる公共の利益を上回ると認定したときは,適用免除が取り消されることになる(法第93条(3))。
 また,「third line forcing」については,届出後,ACCCが適用免除を認めない旨の告知書案を発出することなく14日間の待機期間が満了すれば,適用免除となる。ただし,後日,ACCCが,当該行為が公共に与える損害が当該行為によってもたらされる公共の利益を上回ると認定したときは,適用免除が取り消されることになる(法第93条(3A))。

(イ) 共同取引(Guide to collective bargaining notification参照)
 対象行為はカルテル条項(法第44ZZRD条),取引制限的又は反競争的取決め等(法第45条(2)排除条項及び実質的な競争減殺の目的又は効果を有する取決め等)である(法第93AB条(1A),同条(1))。
 また,要件は概要次の3条件を満たすこととされている(同条(2)~(4))。

  •  取決め等の内容が,上記対象行為を含むものであること。
  •  一ないし複数の購入先又は販売先の対象を明らかにすること。
  •  対象となる取引の額が300万ドルを超えないこと。ただし,石油小売業(1500万ドル),新車小売業(2000万ドル),農業機械小売業(1000万ドル),第一次製品(農作物,動植物等,500万ドル)に係る取引額の基準は別途,2010年競争・消費者法規則第71A条ないし71D条にて定められている。

4 法執行手続

(1)民事・刑事手続の両方で利用可能な審査権限

ア 立入検査(自主的な同意に基づく検査)(法第154D条)

 ACCC,委員長又は副委員長が,合理的な理由により,ある場所に法違反に関連する証拠があると判断した場合,委員長から指名された検査官(ACCC職員)は,当該場所において立入検査を行うことができる。検査官は,書類及び電子機器を検査し,そこで見付かった証拠のコピーの作成又は留置を行うことができる。
 しかし,相手に検査を拒否する権利があることを伝え,かつ,自主的に相手が同意した場合に限られている(同条(3),(4))。

イ 令状に基づく捜索(法第154G条)

 検査官は,簡易裁判所判事(magistrate)が発行する令状に基づき,法違反に関連する証拠があると合理的な理由により判断される場所を捜索することができる。

ウ 情報提供要求(文書提出命令等)(法第155条)

 ACCC,委員長又は副委員長(the Commission, the Chairperson or a Deputy Chairperson)が,ある者が競争・消費者法違反又は違反のおそれがある行為に関連する情報の提出,文書の作成・提出,委員等の前に出頭した上で供述・文書作成をさせることが可能であると判断することに相当の理由がある場合,ACCCの委員は,当該者に対し,書面の通知により,次の内容を命じることができる。なお,法第155条には黙秘権,自己負罪秘匿特権は規定されていない(拒否したり,通知内容を遵守しなかった場合には刑事罰が課せられる。法第155条(5),(6A))。
(1) 通知により特定された期間内及び方法により,ACCCに情報を提供すること。
(2) ACCC又は通知により特定された者に文書を作成の上提出すること。
(3) 通知により特定された期日及び場所において,ACCCの委員等の前に出頭し,口頭(=供述)若しくは書面で証拠を提出し,又は文書を作成の上提出すること。

(2)刑事手続(刑法上の規定に基づく令状)のみで利用可能な審査権限

 カルテル審査等において,刑法上の規定に基づき裁判所が令状を発行した場合に,電話傍受を行うことができる(電気通信法)。

(3)ACCCによる民事訴追(法第6章)

 カルテル行為等の法第4章違反行為について,ACCCは,裁判所が次の命令を下すことを求めて民事訴追することができる。
(1) 違反行為の差止め(法第80条,80AC条),仮差止め(法第80条(2))
(2) 制裁金の賦課(法第76条及び第77条)カルテル条項の制裁金の法定上限額は,法人の場合,1000万ドル又はカルテルにより得た利益の3倍額(当該利益が確定できない場合は,法人全体の過去12か月間の売上高の10%)のうち,いずれか高い方であり,個人の場合,50万ドルである(法第76条(1A),(1B))。
(3) 株式又は資産の処分命令等(法第81条)法第50条違反(企業結合)の場合
(4) 個人の法人役員資格の剥奪命令(法第86E条)違反行為を行った個人が,当該法人経営に一定期間,関わることを禁止する(経営者の資格を剥奪する)命令
(5) その他の命令(法第87条)違反行為の被害者が被った損害の補償命令(すなわち代理訴訟。ただし文書による同意が必要。同条(1B)),付随的な命令(同条(2);契約の無効宣言(a),契約の変更命令(b),契約条項の履行の差止め(ba)等)

(4)ACCCによる刑事訴追(法第79条,法第44ZZRF条,法第44ZZRG条)

 ACCCは,カルテル行為を行った者を刑事訴追することができる(ACCCによる専属告発)。
 法人に対する罰金の法定上限額は,1000万ドル又はカルテルにより得た利益の3倍額(当該利益が確定できない場合は,法人全体の過去12か月間の売上高の10%)のうち,いずれか高い方であり,個人の場合,10年以下の禁錮若しくは罰金22万ドル以下又はこれらが併科される。

(5)刑事手続(罰金)と民事手続(制裁金)の関係

 刑事手続(罰金)と民事手続(制裁金)の関係は,次のとおりである。
(1) 同一の者に対して,刑事手続及び民事手続の両方を開始することが可能である。
(2) 刑事手続が開始された場合には,民事上の制裁金賦課手続は停止する(法第76B条(3))。
(3) 刑事事件で有罪が確定すると,重ねて民事上の制裁金が課されることはない(法第76B条(2))。
(4) 刑事手続において有罪にならなかった場合には,民事手続上で制裁金賦課の手続を再開することができる(法第76B条(3))。
(5) 民事手続で制裁金支払命令が下されている事案に対して,刑事手続を開始することができる(法第76B条(4))。
(6) 個人が民事手続で提出した証拠を,当該個人の同一行為に係る刑事手続における証拠には使えない(法第76B条(5))。

(6)リニエンシー制度

 法人及び個人のそれぞれに対する民事手続における免責の要件については,「カルテル行為に対するACCCの免責方針」に,また,刑事手続における免責については,「重大カルテル違反行為の訴追免除に関する連邦訴追方針(付属文書B)」にそれぞれ規定されている。

ア カルテル行為に対する免責方針

(ア) 法人に対する民事手続における免責の要件
 ACCCが民事訴追するために十分な証拠を有していない時点で,次の7要件を満たす法人には,ACCCの条件付免責が認められる。なお,法人が条件付免責を得た場合,当該法人の報告の一部として自らのカルテルへの関与を告白した当該法人の役員及び従業員も,法人と同様に条件付免責を得ることができる。
(1) 被疑カルテルの現在又は過去の当事者であること。
(2) 被疑カルテル行為が競争・消費者法違反に当たることを認めていること。
(3) 本方針の下で,カルテルの存在を明らかにした最初の法人であること。
(4) 他の法人に対しカルテルへの参加を強要したことがなく,かつ,カルテルの明白な首謀者ではないこと。
(5) 被疑カルテルへの関与を取り止めているか,又は,取り止める意思をACCCに示していること。
(6) 法人による報告及びACCCへの協力が,(個人の代表者の個別の告白ではなく)真に法人の行為であること。
(7) ACCCに対して,全ての情報を提供し,協力を行うことを確約すること。

(イ) 個人に対する民事手続における免責の要件
 ACCCが,民事訴追するために十分な証拠を有していない時点で,次の6要件を満たす個人には,ACCCの条件付き免責が認められる。
(1) 被疑カルテルに関与した(している)法人の現在又は過去の役員又は従業員であること。
(2)~(5)(上記,法人に対する要件(2)~(5)と同じ。)
(6)(上記法人に対する要件(7)と同じ。)

(ウ) 刑事手続における免責
 ACCCは,申請者が免責方針における免責条件を満たしていると判断する場合,連邦公訴局長官(以下「CDPP」という。)に対して,同申請者に免責を付与するよう勧告(recommendation)を行う。CDPPは,独立の裁量により判断を行うが,申請者がACCCの免責方針における条件を満たしている場合には,免責を与えることとしている(重大カルテル違反行為の訴追免除に関する連邦訴追方針の付属文書B3.4)。

イ 法執行に係る協力方針

 免責方針が適用されない者(「最初の申請者」以外の者)も,ACCCへの協力の度合いに応じて民事訴追免除,制裁金減免の措置が採られることとなる(「執行事案における協力方針」)。
 カルテル行為のような重大な事案については,原則としては基本制裁金額からの30%の減額であるが,協力の時期,度合いにより,最大50%の減額がなされることがある。当該減額の率については,申請順位のみでなく,実質的な協力度合いが考慮される。

(7)確約(法第87B条)

 ACCCは,事業者から提出された書面による確約(undertaking)の内容が十分なものである場合には,これを受理し,事業者に確約どおり実行させることによって事案を解決することもできる。事業者は,ACCCの同意が得られれば,いかなるときにも確約を撤回又は変更することができる。
 ACCCは,事業者が確約の内容に違反していると判断した場合には,裁判所に対し,確約違反を理由に提訴することができ,裁判所は,確約違反が認められる場合には,(1)確約内容の遵守命令,(2)確約違反によって得た額を超えない額を連邦に納付させる命令,(3)確約違反によって他の者に与えた損害を補償させる命令及び(4)その他裁判所が適当と認める命令を行うことができる。

5 損害賠償

 私人は,法第4章等違反行為について,(1)違反行為の差止め(企業結合を除く。)(法第80条),(2)資産又は株式処分命令(企業結合の場合)(法第81条),(3)損害賠償(法第82条)及び(4)その他の命令(法第87条)を求めることができる。
 (3)の損害賠償の訴訟提起期限は,違反行為の生起から6年以内とされている。

6 産業コード(法第4B章)

 産業行動規約(Industry Codes of Conduct)は,義務的又は自主的な行動規約として連邦大臣が定めることができる。義務的な行動規約は,産業全体の参加者を拘束し,自主的な行動規約は,当該規約に正式に加入する事業者のみを拘束する。
 事業者は定められた規約に違反してはならず(法第51AD条),当該規約の違反行為があれば,違反行為の被害者は,損害賠償(法第82条),補償命令(法第87条)及び差止め命令(法第80条)を裁判所に求めることができる。また,ACCCは,規約違反に関して警告公表告知(法第51ADA条)を行うことができ,さらに,審査手続に関与していない者(Non-party)のための損害賠償等(法第51ADB条)を裁判所に求めることができる。
 現在,義務的な行動規約として,フランチャイズ規約(Franchising Code),石油燃料規約(Oil Code)及び農産物規約(Horticulture Code)及び食料品小売産業規約(Retail grocery industry (Unit Pricing) Code)があるが,自主的な行動規約はない。

ACCC組織図

「OECD 諸国一覧」に戻る

「A」に戻る

「アジア大洋州諸国」に戻る

本文ここまで


以下フッターです。

公正取引委員会 Japan Fair Trade Commission

〒100-8987 東京都千代田区霞が関1-1-1 電話 03-3581-5471(代表)
  • ご利用案内
  • 関連リンク
  • 所在地
Copyright © 2013 Japan Fair Trade Commission. All Rights Reserved.
フッターここまでこのページのトップに戻る