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ブラジル(Brazil)

(2016年1月現在)

1 根拠法

 ブラジルの競争法(Lei de Defesa da Concorrencia)(以下「競争保護法」という。)は,1994年6月11日付法律第8884号が制定された後,全面改正を行い,2011年11月30日付法律第12529号が新たに制定された(この法律により1994年6月11日付法律第8884号は廃止)。競争保護法は,経済秩序に対する侵害を予防及び抑制することを目的としている(第1条)。

2 法の適用範囲

 競争保護法は,ブラジルが締結する協定及び条約を妨げることなく,行為の全部若しくは一部がブラジル国内で行われた場合,又はその効果が国内に及ぶ若しくは及び得る場合に適用される(第2条)。

3 執行機関

(1)経済擁護行政委員会及び財務省経済監視局

 ブラジルの競争当局は,経済擁護行政委員会(Conselho Administrativo de Defesa Economica, 以下「CADE」という。)及び財務省経済監視局である(第3条)。
 CADEは,組織的には法務省に属する委員会組織であり(第4条),経済擁護裁定評議会(以下「評議会」という。),総監督局及び経済調査局で構成されている(第5条)。評議会は,上院の承認を経て連邦共和国大統領が任命する委員長と6人の委員から構成される(第6条)。委員長及び委員の任期は4年であり,再選は禁止されている(第6条第1項)。
 総監督局は,競争政策の実務及び経済秩序違反の審査を行う(第13条)。経済調査局は,チーフ・エコノミストが運営し,評議会又は総監督局長からの要請に基づき,経済調査報告書及び意見書を作成する(第17条)。また,財務省経済監視局は,法律顧問的役割のみを担う(第19条)。

(2)CADEの権限 

 CADEは主に次のような権限を有する。
ア 経済秩序違反を認定し,法律に従った制裁的措置を課すこと(第9条)
イ 総監督局が認定した経済秩序違反に対して行政罰を課す行政手続を決定すること(第9条)
ウ 指定期間内に経済秩序違反を中止する措置を命じること(第9条)
エ 違反行為の中止に係る合意及び企業結合に係る合意の条件を承認すること(第9条)
オ 仮処分を検討し,決定すること(第84条)
カ リニエンシーを検討し,許可すること(第86条,第87条)
キ 企業結合の審査を行うこと(第88条)

4 規制の概要

(1)禁止事項

ア 競争保護法は,次の1号から4号のいずれかに該当する目的を有するか又は影響を及ぼすおそれのある全ての行為を経済秩序違反として一般的に禁止している(第36条)。
(ア)自由競争又は創業の自由を如何なる方法を問わず制限し抑制すること(第36条第1号)
(イ)商品又は役務の関連市場を支配すること(第36条第2号)
(ウ)利益を恣意的に増大すること(第36条第3号)
(エ)市場支配的地位を濫用すること(第36条第4号)

イ 競争の結果としての内部成長による独占行為は,第36条第2号(商品又は役務の関連市場を支配すること)に該当する違法行為とはされない。

ウ 市場支配的地位が生ずる場合とは,一事業者又は企業グループが市場の状況を一方的若しくは共同で変更できる場合又は一事業者又は企業グループが関連市場の20%を支配している場合である。なお,この百分率の割合は,CADEが各経済分野に応じて変更することができる。

エ 以上の各号に特に該当する行為として,19の違反行為が例示されている。主な例示は以下のとおりである。
(ア)商品又は役務の価格の決定,商品又は役務の関連市場の分割,入札談合といった合意を競争者と行うこと
(イ)市場への新規参入を制限又は妨害すること
(ウ)再販売価格を制限すること
(エ)差別対価を設定すること
(オ)不当廉売を行うこと
(カ)工業財産権,知的財産権及び技術の行使について,独占又は市場支配的地位の濫用を行うこと

(2)審査手続

ア 総監督局は,職権により又は利害関係人の申立に基づいて,経済秩序違反を審査するための審査官による予備的手続を開始する(第66条)。総監督局は,予備的手続終了後,10日以内に,正式審査を開始又は予備的手続の終了を決定し(第67条),正式審査の開始を決定した場合には,被審人に対して陳述書に関する通知を行う(第70条)。被審人は,決定が行われた日から30日以内に,抗弁を行い,証拠を提出し,証人を指名しなければならない。

イ 総監督局は,正式審査における審理を記録し,正式審査の終了又は経済秩序違反の認定を行うかについて意見付きの報告書を作成し,評議会へ送付する(第74条)。評議会によって経済秩序違反が認定された場合には,審決が出される。審決書において,違反事実及び違反行為を中止させるための措置,当該措置の開始及び完了期日,違反事実に対する制裁金,違反状態が継続する場合に課される日数に基づく制裁金,当該措置を履行しなかった場合の制裁金が記載される(第79条)。

ウ 審決が履行されない場合には,裁判所が司法措置を講じる者を指名する(第102条)。

(3)違反行為に対する措置

ア 経済秩序違反には制裁金が課される(第37条)。事業者に対しては,前事業年度の課税前の総売上高の0.1%~20%相当額の制裁金が課されるが,違反によって得た利益を特定できる場合には,それを下回ってはならない。違反行為に対して直接又は間接に責任を負う事業者の管理者については,事業者に課された制裁金の1%~20%相当額の制裁金が課される。その他の事業者又は個人のうち,総売上高の基準が採用できない者に対しては,5万レアルから20億レアルの制裁金が課される。なお,違反行為が反復して行われている場合には,制裁金は2倍額として課される。

イ さらに,違反行為の重大性及び公共の利益を考慮して,違反行為者の費用において経済秩序違反の確定審決を指定された日刊紙に公表すること,最低5年間の公共入札への参加禁止,経済秩序違反の効果を排除するための会社分割,資産の売却,営業の部分的停止等,その他必要な措置が命じられることもある(第38条)。

(4)仮処分

 CADEは,経済秩序違反による制裁を科すための審査手続のあらゆる段階において,違反行為者が直接的若しくは間接的に回復不可能若しくは回復困難な損害を市場に与えている可能性がある場合,又はそのおそれがある場合,仮処分を行うことができる(第84条)。

(5)確約制度

 CADEは,競争保護法の保護法益に該当する場合,行為の中止の確約(cease-and-desist commitment)を事業者から得ることができる(第85条)。確約の合意には,行為を中止するための義務,確約された義務に違反した場合の制裁金額等が規定されていなければならない(第85条第1項)。確約の合意が実施されている間,審査手続は停止される(第85条第9項)。確約が満たされなかった場合,CADEは,確約の合意に規定された制裁金を課し,審査手続の継続等を決定する(第85条第11項)。

(6)リニエンシー制度

 総監督局によってリニエンシー制度の適用が認められた場合,適用対象となる事業者及び個人は,制裁措置の免除又は3分の1から3分の2の制裁金の減額を受けることができる(第86条)。違反行為の首謀者である事業者及び個人も適用対象となる。リニエンシー制度の適用は,事業者については,「最初の申請者」に限定されているが,個人については,そのような限定はなされていない(第86条第1項第1号)。また,審査手続が行われている間にリニエンシーが適用されなかった場合でも,当該事件が審理に移行する前に別の違反行為に関するリニエンシーの申請を行った場合は,先の事件の制裁措置について3分の1の制裁金の減額を受けることができる(第86条第7項及び第8項)。

(7)企業結合

 企業結合は,競争保護法第88条各号に基づいて規制される。企業結合の当事会社の国内総売上高又は前年の国内総取引高が4億レアル以上であり,一方の当事会社の国内総売上高又は前年の国内総取引高が3000万レアル以上の場合は,事前に届け出なければならない(第88条第1号,第88条第2号)※。
 審査期間については,原則最長240日(第88条第2項)であるが,90日(評議会の決定)又は60日(取引関係者による請求)延長することが一回限りであるが可能である(第88条第9項)。
※ 企業結合の届出基準は,法律上は上記のとおりであるが,司法省及び財務省の合同決議によって変更されるため,最新の届出基準は当局のホームページ(http://www.cade.gov.br/)を確認されたい。

ア 届出
 競争保護法第88条の規定に該当する企業結合は,CADEに対し届け出るものとし,手続費用の支払証明及び企業結合審査手続を開始するために必要な書類を提出しなければならない(第53条)。CADEによる企業結合審査が終了し承認されるまでは企業結合を実施してはならず,当該規定に違反した場合は,6万レアル以上6000万レアル以下の制裁金(第88条第3項),申請に虚偽があった場合は,6万レアル以上600万レアル以下の制裁金が賦課される(第91条)。

イ 届出が必要な企業結合類型(第90条)
 ・新設・吸収合併
 ・会社支配権・事業の一部取得
 ・提携・コンソーシアム・合併契約の締結※
 ※ 行政機関が推進する入札やそれに付随する契約の場合は除く。

ウ 審査手続
 届出を受けた総監督局は,申請書類の受理書を発行する。届出書類に不備がある場合には,総監督局は一回に限り当事会社に対し修正を命じることができる。申請書類を受理した後,総監督局は,当事会社の名称,営業の種類及び関連市場を公示する(第53条第1項,第2項)。競争に与える影響が小さいと認定した場合は申請を承認し,そうでない場合は審査を行う(第54条第1号,第2号,第56条)。総監督局は,審査に時間を要する場合,評議会に対し,競争保護法第88条第2項に規定する審査期間(最長240日)の延長を申請することができる(第56条)。
 総監督局は,企業結合審査終了後,承認,禁止及び条件付きで承認のいずれかを行う。禁止及び条件付きで承認する場合には,評議会を通じて当事会社に対し反論書を提出する(第57条)。
 当事会社は,総監督局の反論書を受け取ってから30日以内に,評議会の委員長に対し,反論書に反対する理由を書面に明記し,根拠資料及び意見書を添付して提出することができる(第58条)。反論書を受け取ってから当該審査の担当委員を決定する(第58条)。担当委員は,論点及び実施すべき審査を明示した上で総監督局に対し,企業結合審査要請を行うことが認められており(第59条第1号,第2号),当該審査を監督する(第59条第2号)。
 企業結合審査終了後,評議会は,承認,禁止及び条件付きで承認のいずれかを行う。評議会は,条件付きで承認する場合,問題解消措置(資産売却,会社分割,会社支配権の譲渡,知的財産権の強制的な実施許諾等)を講ずることができる(第61条第1項,第2項)。当該企業結合は,審査終了後,再申請することも行政府によって再審査することも認められない(第61条第3項)。
 総監督局による承認(第54条)に対する異議申立てについて,利害関係者は,当該承認決定の公示日から15日以内に,評議会に対し異議申立てを行うことができる(第65条第1号)。担当委員は,異議申立ての受領日から5日以内に企業結合審査手続を開始する(第65条第1項)。担当委員は,論点及び実施すべき審査を明示した上で総監督局に対し審査要請を行うことが認められており,当該審査を監督する(第65条第1項,第5項)。

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