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米国(United States)

(2008年1月現在)

1 根拠法

(1) 根拠法

ア 米国の競争法は,以下の法律及びこれらの修正法から構成されている。
(1) シャーマン法(1890年制定)
(2) クレイトン法(1914年制定)
(3) 連邦取引委員会法(1914年制定)
 シャーマン法は,取引を制限するカルテル・独占行為を禁止し,その違反に対する差止め,刑事罰等を規定している。クレイトン法は,シャーマン法違反の予防 的規制を目的とし,競争を阻害する価格差別,不当な排他的条件付き取引の禁止,合併等企業結合の規制,3倍額損害賠償制度等について定めている。
 連邦取引委員会法は,不公正な競争方法を禁止し,連邦取引委員会の権限,手続等を規定している。
 なお,反トラスト3法と違反行為類型の関係については下表のとおりである。
イ このほか,ほとんどの州が,独自の反トラスト州法を制定している。

(2) 適用除外

 一部の産業法においては,反トラスト法の規定が適用されない旨規定されている。
 また,連邦政府並びに州政府の行為及びそれらが所有・管理する部門が行った行為は反トラスト法の適用を免除されている。

ア 農業・漁業

 農業に関しては,カッパー・ヴォルステッド法(Capper-Volstead Act)等により,農業生産者による組合の設立,協同組合販売商品の価格設定などについて,反トラスト法に違反することなく一個の事業会社としてその事業を遂行することが認められている。また,漁業に関しても漁業者共同マーケティング法(Fisherman's Collective Marketing Act)において漁業協同組合の一定の適用除外が認められている。

イ 保険業

 マッカラン・ファーガソン法(McCarran-Ferguson Act)により,州法によって規制される「保険事業」の一部である活動については,反トラスト法の適用除外とされている。ただし,合併等は「保険事業」には含まれない。

ウ 新聞業

 1970年新聞保護法により,経営困難な新聞を含む新聞の発行・流通の共同事業についての協定は,反トラスト法の適用除外とされている。

エ 道路,鉄道及び州際船舶運輸業

 州際及び国際商業に係る道路運送,鉄道運送及び船舶運送業者による合併等企業結合及び事業者間の協定の締結等については,従前,州際商業委員会により規制されていたが,州際商業委員会廃止法(Interstate Commerce Commission Termination Act of 1995)により当該委員会は廃止となり,代わりに同法に基づき陸上輸送委員会(Surface Transportation Board;STB)が1995年に新設された。
 STBが認可した企業結合及び協定については,反トラスト法は適用されない。

オ 海運業

 海上運送業者や港湾事業者による通過運賃,積荷の量等に関する協定の締結は,1984年海運業法(Shipping Act)に基づき連邦海運委員会(Federal Maritime Commission;FMC)への登録が義務づけられており,FMCに登録され,かつ拒否されなかった協定については,反トラスト法は適用されない。また,海上運送業者による協定に関しては反トラスト法による3倍額請求訴訟や差止請求訴訟はできないとされており,このような請求を行う場合はFMCに提訴しなければならない。

カ 労働組合

 各種の連邦法規により,組合活動によるストライキなどの活動の組織及びその統一的な遂行に関しては,反トラスト法は適用されない。

2 執行機関

(1) 司法省反トラスト局(外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます) (Antitrust Division, Department of Justice)

ア 司法省反トラスト局(以下「反トラスト局」という。)は,局長(Assistant Attorney General)及び5人の次長並びに7の地方事務所等から構成されており,反トラスト局長は,上院の承認を経て,大統領が任命する。また,司法省における反ト ラスト法の執行に関する権限は,事実上,反トラスト局長に集中している。
イ 反トラスト局は,シャーマン法又はクレイトン法違反の行為が存在すると認めるときは,自ら審査し,連邦地裁に提訴(刑事又は民事)することができる。
 なお,反トラスト局は違反事件の審査に際し,連邦捜査局(FΒI)及び地方検事局の職員を用いることができる。

(2) 連邦取引委員会(外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます) (Federal Trade Commission)

ア 連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は,委員長を含む5人の委員並びに事務総長,4人の局長クラス及び8の地方事務所等から構成されている。
イ FTCの委員は,上院の承認を経て,大統領が任命する。任期は7年であり,公務に関する不法行為等の場合以外にはその意に反して罷免されることはなく,職権行使の独立性が認められている。
ウ FTCは,クレイトン法又は連邦取引委員会法違反被疑行為が存在するときは,自ら審査を行い,審判手続を経て,又は相手方が同意するときは審判手続を経ることなく審決により排除措置を命じることができる。
エ FTCの審決に不服がある場合には,連邦控訴裁判所に審決取消訴訟を提起することができる。
オ  連邦取引委員会法第5条(a)は,いくつかの法改正により,不公正な競争方法(unfair methods of competition)のほか,不公正・欺瞞的な行為又は慣行(unfair or deceptive acts or practices)を禁止しており,後者によりFTCはいわゆる消費者保護行政も所管している。
カ FTCは,連邦取引委員会法第18条に基づいて産業規模の不公正又は欺瞞的取引慣行を防止するために取引規制規則(trade regulation rule)を制定することができる。例えば訪問販売におけるクーリング・オフに関する規則(FTC Rule,Cooling-off Period for Door-to-Door Sales, 16 C.F.R. Part 4 29),テレマーケティング販売規則(FTC Rule, for Telemarketing Sales, 16 C.F.R. Part 3 10.1-10.8)等のような消費者取引に関する数多くの規則を制定している。
 また,FTCは,多種にわたる特定の消費者保護法令も執行している(例:信用機会平等法(the Equal Credit Opportunity Act),貸付真実法(Truth-in-Lending Act),公正信用報告法(Fair Credit Reporting Act),タバコ表示法(Cigarette Labeling Act))。これらの法は,特別に定義された取引慣行を禁止し,違反行為を連邦取引委員会法第5条(a)中における「不公正若しくは欺瞞的」行為又は慣行として扱うことを明記している。
キ FTCは,また,経済実態や企業活動に関する調査を行う権限を有する(連邦取引委員会法第6条)。

(3) 州司法長官

 各州の司法長官(Attorney General)は,それぞれの州の反トラスト法を施行するだけでなく,シャーマン法違反により州民が被害を受けた場合には州の名において被告に対し管轄権を有する連邦地裁に対し3倍額損害賠償の請求訴訟を提起することができる(父権訴訟)(クレイトン法第4C条)。

 ◎ 以上の記述について,根拠法及び執行機関の関係を整理すると,下表のとおりである。

法律名 実態規定 執行行政機関 違反に対する手続 運用の実態
シャーマン法 第1条
(取引制限)
第2条
(独占化行為)
司法省 刑事訴追,
民事訴追(差止請求)
実際に刑事訴追が行われるのは,第1条違反行為中の,水平的な「当然違法」の行為(価格カルテル,入札談合,市場分割等)
クレイトン法 第2条
(価格差別等)
第3条
(排他条件付取引)
第7条
(企業結合)
第8条
(役員兼任)
司法省とFTCとの共管 民事訴追(差止請求),
行政的排除措置
企業結合については事前届出制。近年は第7条以外が適用されたケースはほとんどない。
FTC法 第5条前段
(不公正な競争方法)
第5条後段
(不公正又は欺瞞的な行為又は慣行)
FTC 民事訴追(差止請求),
行政的排除措置
 

3 規制の概要

(1) カルテル

ア 州間の又は外国との取引を制限するすべての契約,結合又は共謀は,禁止される。
イ いわゆる水平的カルテル(価格協定,市場分割協定,入札談合,共同ボイコットなど)は市場の競争に与える影響の大きさにかかわらず行為の外形から当然違法(per se illegal)とされる。
ウ 罰則は,法人の場合には1億ドル以下の罰金,個人の場合には100万ドル以下の罰金若しくは10年以下の禁錮刑又はその併科である(シャーマン法第1条) (2004年6月改正)。罰金額については,上記にかかわらず,違反行為により獲得した利益又は与えた損害額の2倍まで引き上げることができる。
エ シャーマン法第1条の規制は,いわゆる垂直的取引制限(再販売価格維持行為,その他非価格制限)にも適用される。非価格的な垂直的取引制限行為は,基本的 に合理の原則(rule of reason)に基づいて違法性が判断される。(再販売価格維持行為については(4)参照)
オ これらの行為については,上記刑事訴追のほか,司法省による民事訴訟(差止請求訴訟)が提起され,又はFTCにより排除措置が命じられるほか,被害者により,差止請求訴訟(クレイトン法第16条)及び3倍額損害賠償請求訴訟(クレイトン法第4条)が提起される。

(2) 独占行為

ア 州間の又は外国との取引を独占し,独占を企図し,又は独占する目的を持って他の者と結合・共謀することは禁止され,(1)のカルテルと同様の制裁を受ける(シャーマン法第2条。刑事罰,民事(差止請求)訴訟・審決による排除措置命令,私人による差止請求・3倍額損害賠償請求訴訟)。
イ 規制の対象は独占状態ではなく,独占を実現する行為,すなわち,一定の市場において,意図的に独占力(価格を支配し,競争を排除し得る力)を取得し,又は維持すること(具体的には略奪的価格設定,取引拒絶,排他的取引など)である。

(3) 企業結合

ア 競争を実質的に減殺し,又は独占を形成するおそれがある企業結合(合併,株式取得,資産取得を含む。)は禁止される(クレイトン法第7条)。
イ 1976年ハート・スコット・ロディノ法により改正されたクレイトン法第7A条及びこれに基づいて制定された届出規則に基づき,年間売上高又は総資産 を基準として,1億3640万ドル以上の企業が1360万ドル以上の企業と結合するとき(又はその逆の場合)であって,その結合の結果,結合される企業の株式若しくは資産のうち6820万ドル超の株式若しくは資産を所有することとなる場合又は同基準にかかわらず2億7280万ドルを超える合併等企業結合は,反トラスト局とFTCに対する事前の届出が義務付けられる(合併禁止期間は,届出後原則30日で,変更可能)。(基準額は,2012年1月24日に更 新。)
 なお,当事会社は,事前届出に係る手数料を支払う必要があり,当該手数料は,当事会社の取引規模に応じて,4万5000ドル,12万5000ドル,28万ドルの3段階に設定されている。
ウ 商業に従事するある2つの会社が,事業及び営業区域に関して互いに競争者であって,かつ,両社の資本金,積立金等の総計がそれぞれ2778万4000 ドル超(2012年1月24日更新)である場合には,何人も,当該2つの会社の取締役(director)又は役員(officer)を兼任してはならない。(クレイトン法第8条)。
 また,銀行の取締役又は職員は,他の銀行等の取締役又は職員を兼任してはならない(同前)。

(4) 再販売価格維持行為

 再販売価格維持行為は,従来,当然違法とされてきたが,最高裁判例(2007年Leegin事件判決)により,合理の原則により判断することとなった。
 シャーマン法第1条違反の構成要件は,メーカーとその他の者による再販売価格に関する共謀・協定を要する。メーカーの一方的行為(安売り業者への供給停止等)は,取引先選択の自由の範囲内であり,違法とされない。ただし,問題となるのは,安売り等を理由に契約解除されたことに対して,当該契約解除がメーカーと安売業者以外の販売業者との間の再販売価格維持協定を背景として実行されていたと主張された場合である。最高裁判例(1984年モンサント事件判決)は,販売業者からメーカーに対して安売り業者に関するクレームが寄せられていたというだけでは,共謀の立証が不十分であり,価格又は価格水準に関する合意が存在する旨の立証を要するとしている。

(5) 価格差別

 同種同等の商品を異なる購入者間で価格の面で差別することは,競争を減殺することとなり若しくは独占を形成するおそれがあり,又は競争を阻害等するおそれがある場合は,販売方法・数量の差によるコストの差に基づくものを除き,禁止される(クレイトン法第2条)。違反行為に対しては,反トラスト局による差止訴訟が提起され,又はFTCにより排除措置が命じられる。被害者による私訴も提起され得る。
 また,ロビンソン・パットマン法第3条により,売手が競争破壊又は競争者排除の意図をもってある地域において他の地域より低い価格又は不当に低い価格で販売することは禁止される。同条違反には罰則も定められている。

(6) 連邦取引委員会法第5条の規制

ア 連邦取引委員会法第5条(a)により規制される不公正な競争方法の意義,内容については別段 の規定は設けられていないが,これまでの判例によると,本条の目的は,シャーマン法・クレイトン法に違反する行為・慣行を不公正な競争方法として規制するだけでなく(したがって,少なくとも取引制限,独占行為,合併等企業結合の類型は,同時に連邦取引委員会法第5条の対象となる。),シャーマン法・クレイ トン法違反に該当する行為・慣行を萌芽又は初期のうちに規制(中止させる)ところにあると解されている。
イ また,同じく連邦取引委員会法第5条(a)の,「通商における若しくは影響を及ぼす不公正な若しくは欺瞞的行為又は慣行は,これを違法とする。」にいう「不公正な」行為とは,「消費者自身によっては合理的に回避できず,かつ,その行為又は慣行が消費者又は競争にもたらす利益を上回るような実質的損害を消費者に与え又は与えるおそれがある行為又は慣行」と定義されている(連邦取引委員会法第5条(n))。

4 法執行手続

(1) 反トラスト局の事件処理手続

ア 予備的審査

 端ちょ処理後,(1)法律上の問題の有無,(2)影響を受ける通商の程度,(3)事件を審査する局内の余力の有無,(4)反トラスト局内及びFTCで同一事件の審 査が行われていないか,他官庁や州政府に移管すべき事案ではないかを検討し,事件性があると判断された事案について,予備的審査を行う。
 予備審査においては,申告人等からの事情聴取,他省庁からの情報入手等を行う。
 予備審査の結果を検討し,事件として正式に審査するか否かが決定される。この段階で,民事事件として審査するか,刑事事件として審査するかも決定される。
 反トラスト局は「明白かつ意図的な違反」のみを刑事訴追する方針を有しており,刑事訴追されるのは通常「当然違法」の行為類型に当たるものである。

イ 刑事事件の処理手続

(ア) 刑事事件として審査することが決まると,担当検事は,地方事務所と会合を持ち,大陪審 (Grand Jury;刑事事件において起訴を相当とするに足るだけの証拠があるかどうかを審理する陪審:構成員の少ない陪審裁判(trial jury)に対比して16名以上23名以下の多人数で構成されるため大陪審という。)の設置の準備や令状の発出の準備を開始する。その後,地方事務所は, 事件を管轄する連邦地裁(関係人の営業地域を管轄する地裁)に対し,大陪審の設置を要請する。
(イ) 大陪審は,文書提出令状(Subpoena Duces Tecum)と証人喚問令状(Subpoena Ad Testificandum)の発出及び令状に基づく証言の聴取と提出文書の検討の権限が付与されており,事件を審理する。
(ウ) 担当検事は,大陪審審理が終了した段階で,集められた証拠を検討し,審査結果を報告書にまとめ,起訴を求めるべき個人と法人を選定する。反トラスト局として起訴を求めることが決まると,大陪審に対して起訴が勧告される。大陪審の評決は賛成多数によって行われるが,反トラスト局から起訴の勧告があれば,正式起訴(大陪審起訴:Indictment)が決定されるのが通例と言われる。
(エ) 大陪審審理中に,被告人が有罪を認め,裁判を受ける権利を放棄する旨申出があった場合は,担当検事は大陪審による正式起訴によらずに略式起訴(検察官起訴:information)を提起することができる。ほとんどの事件はこの略式起訴によって処理されている。
(オ) 反トラスト局は,審査に協力した個人又は企業について,一定の要件の下に刑事訴追を免除する方針(leniency policy)を有している。
(カ) 反トラスト局は,上記の大陪審捜査のほか,必要に応じて家宅捜索令状(search warrant)を用いたり,FBIなどの他の連邦機関との捜査協力を行っている。
(キ) 最初の公判においては,罪状認否が行われ,被疑者から(1)有罪の申立て(plea of guilty),(2)無罪の申立て(plea of not guilty),(3)不抗争の申立て(plea of nolo-contendere)のいずれかが行われる。不抗争の申立ては,有罪を認めるものではないので,その後の損害賠償請求事件等の裁判手続において不利な扱いを受けない。このため,被疑者は,この申立てを希望するが,反トラスト局側は,通常この申立てに反対する方針を有している。
(ク) 量刑に関しては,合衆国量刑委員会により定められた量刑ガイドライン(Sentencing Guidelines)に従って行われる(1984年量刑改善法)。

ウ 民事事件の処理手続

(ア) 予備的審査の結果,民事事件として審査することが決まると,担当検事は,参考人や関係人との面談,参考人や関係人からの任意の文書提出依頼又は民事審査請求(Civil Investigation Demand)の活用によって,審査情報を集める。
 CIDには,文書提出命令,証人喚問命令及び報告命令(Interrogatories)の3種類がある。
 報告命令とは,担当検事が作成した質問に対して回答させる方式のものである。 CIDには自力執行力はないので,期限までに履行しない者に対しては反トラスト局は,裁判所に対しCIDの執行を命じる判決を求めなければならない。
(イ) 反トラスト局は,民事事件としての提訴が決定すると,管轄連邦地裁に提訴する。
(ウ) 司法省の提起する民事訴訟の大半は,同意判決で解決されている。同意判決制度は,反トラスト局として違法行為を迅速に是正させる必要性と,被疑者として違法行為の存在は認めずに将来に向けて一定の措置を採ることを約束するに留まるのであれば争わないとする意向とでバランスを採ろうとする制度である。
 同意判決についての反トラスト局と被疑者との交渉は,被疑者からの同意判決案の申出があってから開始することとしている。また,近年では,反トラスト局は,被疑者との間で公共の利益に合致する内容の同意判決案を提出する旨の合意をしたときは提訴と同時に同意判決案を裁判所に提出している。
 同意判決の手続はタニー法により定められており,反トラスト局は同意判決案と同時にその競争上の影響に関する意見(competitive impact statement)を裁判所に提出し,かつ,同意判決案及び当該意見を官報に掲載するとともに,これらの要約等を新聞に掲載することなどが求められる。 これは裁判所での決定前に利害関係者にコメントを出す機会を与えるために行われる。コメント期間は通常60日間である。その後,裁判所は自らヒアリングを行うなどして,同意判決の受入れが公共の利益に合致しているか否かを判断して判決を下す。

(2) FTCの事件処理手続

ア 審査手続

 FTCは,特定事件について審査を開始するときには,職員の中から審査官を指定し,これに審査を行わせる。審査官は,連邦取引委員会法第9条に基づく調査権限(立入検査権及びサピーナによる命令権がある。)及び同法第20条に基づく民事審査請求(Civil Investigation Demand : CID)により,文書提出命令,証人喚問等を行う。
 なお,連邦取引委員会法第9条において,「この法律の目的達成のため,委員会又はその正当な権限を持つ単数又は複数の代理人は,審査目的のため,合理的時間にアクセスし,審査若しくは手続の対象とされている者,パートナーシッ プ又は会社の書証を閲覧し,その写しを取る権利を有し,…」と規定しているが,最高裁判決(1962年,International Nickel Co事件)では,FTCのaccess powerは,その審査に関連した文書についてのみ検査し,写しを取る権限をFTCに与えるものであって,当該企業又はその弁護士は検査の対象となる文書を選択することができるとしている。

イ 同意命令

 FTCは,違反事件の審査の結果,法的措置を採ることが相当であると判断したときは,まず,相手方に審判開始決定書及び排除措置命令を通告し,命令案の内容につき交渉し,合意に達したときには,一般からのコメント期間を経た上で同意命令(consent order)を発出する。
 また, 審判開始決定後であっても,同意命令の手続を行うことができる。審判開始決定後,被審人との間で同意された同意命令案が審判官を通じてFTCに付託される。この場合も,同案を官報に掲載し,一般からの意見を求めることとなる。FTCは,当該意見等を考慮して,再審査を行い同意命令を発出する。
 同意命令は,審判手続を経た命令ではないので,違反事実を法的に認定したものではなく,また,違法性を法的に確定するものでもない。

ウ 審判手続及び審決

 同意命令に至らないときには,FTCは,審判開始決定書を送付し,審判手続を開始する。審判手続では,審査官が原告側となり被審人が被告側となる対審構造を採り,行政法判事(各省庁等の職員としての身分を有するものの,所属省庁等による勤務評定の対象とはならず,給与についても別個の政府機関である人事管理局(Office of Personnel Management)によって決定されるなど,独立性と身分保障が認められている。)が審判官として審判を主宰し仮決定(initial decision)を作成する。この仮決定は,被審人が異議申立てを行わない場合,最終審決として確定する。
 仮決定に対する異議申立てを行った場合は,FTCは,仮決定を再検討して最終審決を行う。
 なお,仮決定及び審決は,事実認定,法的結論及び排除措置命令からなる。

エ 不服申立て

 被審人が審決に対して不服があるときは,連邦控訴裁判所に審決取消請求訴訟を提起できる。
 裁判所は,FTCの専門的機関としての判断を尊重することが求められており,FTCの認定事実が実質的証拠に基づいている場合には,その事実認定が裁判所を拘束する(実質的証拠の原則;連邦取引委員会法第5条(C))。

オ 予備的差止命令

FTCは,審決の確定前に裁判所に対して予備的差止命令(preliminary injunction)を求めることができる(連邦取引委員会法第13条。合併審査についても同じ。)。

(3) 合併審査手続

ア 届出受理
 届出は,FTC,反トラスト局の双方に対して行われる。届出前に,当事会社からFTC及び反トラスト局に市場画定,競争上の問題の有無等について相談が行われることがある。 届出が受理されると,両当局間で当該事案をどちらの当局が担当するか協議し決定する。
 なお,クレイトン法第7A条の施行規則の制定,用語の定義,届出義務の範囲に係る規則等の制定については,FTCが行う(同法第7A条(D)項)。
イ  担当当局が届出の正式受理から30日の待機期間に何らの措置も行わなければ,当該事案は,承認されたものとみなされる。担当当局が当該期間内に追加資料の請求(セカンドリクエスト)を行ったときは,待機期間が延長され,当事会社から当該追加資料が提出されてから30日間は,当該合併等を行うことができない。当該期間は,担当当局が再延長を連邦地裁に申請し,同裁判所がこれを認めたときは,延長される
 届出の正式受理からの待機期間及びセカンドリクエストが行われたときの待機期間について,一定の要件を満たす場合には,短縮が認められる。
ウ FTCが担当当局となり,反トラスト法に違反すると判断した場合は,連邦地裁に予備的差止を請求し,敗訴した場合は,ケースバイケースで審判開始決定を行うかどうか判断する。反トラスト局が担当当局となり,反トラスト法に違反すると判断した場合は,連邦地裁に提訴する。
エ FTCが担当当局となり,問題解消措置を前提とすれば反トラスト法に違反しないと判断したときは,同意命令を行う。
 反トラスト局が担当当局となり,問題解消措置を前提とすれば反トラスト法に違反しないと判断したときは,同意判決の手続を行う。

参考3 合併審査手続のフローチャート(PDF:9KB)

(4) 私訴

ア 3倍額損害賠償請求訴訟

 反トラスト法において禁止されている事項により事業又は財産に侵害を受けた者は,その受けた損害の3倍額及び妥当な弁護士費用を含む訴訟費用の賠償を求めることができる(クレイトン法第4条)。アメリカ合衆国政府の財産又は事業が侵害を受けた場合は,アメリカ合衆国政府が当事者となることができる(クレイトン法第4A条)。

イ 差止訴訟(クレイトン法第16条)

 シャーマン法やクレイトン法の違反行為によって損害を受けるおそれのある者は,当該行為の差止を求めることができる。(FTC法違反については認められていない。)

(5) 父権訴訟(クレイトン法第4C条)(2(3)のとおり。)

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