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英国(United Kingdom)

(2015年10月現在)

第1 根拠法

 イギリスの競争法は,次の法律から構成されている。
1 1973年公正取引法 ……… 新聞会社の合併の規制等
2 1980年競争法 …………… 物価委員会の廃止等
3 1998年競争法 …………… 反競争的協定及び支配的地位の濫用,競争委員会の設置等
4 2002年企業法 …………… 公正取引庁及び競争控訴審判所の設置,カルテル罪の新設,個人への刑事罰の導入等
5 2013年企業規制改革法 … 競争・市場庁の設置,公正取引庁及び競争委員会の廃止,1998年競争法及び2002年企業法の改正

(注1)1998年競争法が2000年3月に施行されたことに伴い,同日をもって,1976年再販売価格法,1976年制限的取引慣行法,1977年制限的取引慣行法,1976年制限的取引慣行裁判所法及び1980年競争法における反競争的行為に関する規定が廃止された。

(注2)2002年企業法が2003年6月に完全施行されたことに伴い,上記競争法の一部の条項が改正又は廃止された。2002年企業法は競争法を補完するものである。

(注3)2004年5月1日,加盟国競争当局によるEU機能条約第101条及び102条の適用が可能となった。

第2 執行機関

1 競争・市場庁(Competition & Markets Authority(CMA))

(1) 競争・市場庁は,2013年企業規制改革法により2013年10月1日に設立され,2014年4月1日,同法により公正取引庁及び競争委員会が廃止されたことに伴い,それら機関の機能及び権限の大部分を受け継いだ独立の非大臣庁である
競争・市場庁は,以下のような権限を有している。
ア 競争を制限する合併の調査
イ 競争・消費者問題の存在が疑われる市場の研究及び調査
ウ イギリス競争法あるいはEU競争法違反の疑いのある反競争的な合意及び市場支配的地位の濫用の調査
エ カルテル罪に関与した個人に対する刑事訴追
オ 消費者の選択を困難とする行動や市場の状況に対処する消費者保護法の執行
カ 規制当局との連携及び権限行使の働きかけ
キ 規制当局への付託及び要請の検討

(2) 競争・市場庁は,委員長(Chair),主席常任委員(Chief Executive),3名の常任委員(Executive Director),7名の非常任委員(Non-executive Director)から構成される合議体のBoard及び委員長(Chair),7名の副委員長(Deputy Chair),31名の委員から構成される合議体のPanelから構成されており,Boardの委員長とPanelの委員長はそれぞれBoardとPanelの職務を兼務する。Boardは,競争・市場庁全体の戦略的指針の策定等を行い,Boardの会合には,首席エコノミスト(Chief Economist)と法律顧問(General Counsel)が出席して助言を行う。Boardの下には,小委員会として幹部委員会(Executive Committee),事例・政策委員会(Case and Policy Committee),監査・リスク保障委員会(Audit and Risk Assurance Committee),報酬委員会(Remuneration Committee)が置かれ,さらに,幹部委員会の下に運営委員会(Operation Committee)が置かれている。Panelは,Boardの付託を受けPanelの委員が3名以上のグループに分かれて合併の第2次審査(Phase2)等を行う。
 Board及びPanelの委員長及び委員は,事業・イノベーション・技能省(Department for Business Innovation and Skills;BIS)の大臣によって任命され,Boardの委員長及び委員の任期は5年以内,Panelの委員長及び委員の任期は8年以内であり,再選が可能とされている。大臣による競争・市場庁の委員長及び各委員の罷免は,[1]無能力(incapacity),非違行為(misbehaviour),職務懈怠(failure to carry out his or her duties)を理由とする場合に限られている。
競争・市場庁には,常勤と非常勤を合わせて653名のスタッフが勤務しており,Board及びPanelの下には,執行局(Enforcement Directorate),市場・合併局(Market and Mergers Directorate),法人サービス局(Corporate Services Directorate)が置かれ,首席エコノミスト及び法律顧問の下にもそれぞれ部が置かれている。

(注4)公正取引庁の機能のうち消費者相談業務については,市民相談サービス(Citizens Advice)に引き継がれ,消費者の信用取引の調査については,金融監督機構(Financial Conduct Authority)に引き継がれた。

2 競争審判所(Competition Appeal Tribunal)

 競争審判所は,2002年企業法12条により創設された機関であり, 競争審判所においては,以下の事案を取り扱う。
(1) 1998年競争法に基づく競争・市場庁の決定及び電気通信,電力,ガス,水道,鉄道及び航空分野の規定当局による決定に関する不服申立て
(2) 1998年競争法に基づく損害その他の金銭賠償請求
(3) 国務大臣及び競争・市場庁による合併に関する決定の審査や2002年企業法に基づく決定の審査
(4) 情報通信庁(Office of Communication;OFCOM)及び国務大臣によりなされた決定に対する不服申立て

3 ビジネス・イノベーション・技能省(Department for Business, Innovation & Skills;BIS)

 ビジネス・イノベーション・技能省は,イノベーション・大学・技能省(Department for Innovation, Universities and Skills)とビジネス・企業・規制改革省(Department for Business, Enterprise & Regulatory Reform)が統合されて設立された大臣庁であり,英国事業の生産性を高め国際社会で競争することをサポートすること等を任務としている。ビジネス・イノベーション・技能省の大臣は,公的任命委員会実務規則(Commissioner for Public Appointments Code of Practice)に基づき競争・市場庁のBoard及びPanelの委員を任命する。

4 重大不正捜査局(Serious Fraud Office;SFO)

 2002年企業法に規定されるカルテル罪の捜査を競争・市場庁と協力して行い,競争・市場庁の同意を得て被疑者の訴追を行う。

5 規制当局

 競争・市場庁以外に,電気通信,電力・ガス,水道,鉄道及び航空の規制当局の長がそれぞれの分野において1998年競争法を適用する権限を有している(1998年競争法第54条)。

第3 規制の概要

 1998年競争法では,イギリス国内における取引に影響を与える反競争的協定(第1章)及び支配的地位の濫用(第2章)に対する規定が定められている。これらの規定は,EU機能条約第101条及び第102条の規定に倣ったものである。また,1973年公正取引法では,独占及び企業結合に関する規定が定められている。

1 反競争的協定

(1) 禁止

 1998年競争法では,反競争的協定について,EU機能条約第101条の規定に準じ,従来の登録・付託制度を原則禁止に改めた。また,同法は,違法性の判断基準を,従来の公共の利益の基準から,EU機能条約第101条の規定と同様に,競争に与える影響を主たる判断基準に改め,国内で実施され又は実施が意図され,国内の取引に影響を与えるおそれがある若しくは国内の競争を阻害,制限,歪曲する目的若しくは効果を持つ協定等を原則として禁止している(同法第2条第1項)。 同法はとりわけ以下の行為を禁止している。
ア 直接的又は間接的に,購入価格,販売価格又はその他の取引条件を決定すること
イ 生産,市場,技術開発若しくは投資を制限又は支配すること
ウ 市場又は供給源を分割すること
エ 同様の取引について差別的な条件を適用し,それによって取引相手を競争上不利な立場に置くこと 
オ 契約締結に際し,その性質上又は取引慣行上,当該契約とは関係のない付加的な義務を相手が受け入れることを条件とすること

(2) 適用免除

 上記の反競争的協定の規制は,企業結合,他の法律に基づき規制される行為,一定の自由業の規制等には適用されない(同法第3条第1項)。また,一定の要件を満たす場合には,一括適用免除(block exemption:同法第6条)又は個別適用免除(individual exemption:同法第4条)が認められるほか,EUで適用免除になっている行為については原則的に適用免除(parallel exemption:同法第10条)となる。
 一括適用免除又は個別適用免除が認められるのは,EU機能条約第101条3項と同様に,当該協定が,[1]生産若しくは流通の改善又は技術的若しくは経済的な進歩の促進に役立ち,かつ結果として生じた利益を消費者へ公平に分配し,[2]事業者に対して,目的達成のために不可欠な制限のみを課し,かつ対象商品の実質的な競争を排除する可能性を与えない場合に限られる(同法第9条)。

(3) 垂直的協定の取扱い

 1998年競争法第1章の反競争的協定には,水平的協定のみならず垂直的協定も含まれる。
 ただし,同法第50条の規定に基づき,国務大臣により,再販売価格維持協定以外の垂的協定を原則的に適用免除とする命令が出されている。
 イギリスでは書籍について定価本協定(NBA)が適用免除として認められていたが,1997年,制限的慣行裁判所が取消しの判決を行ったことにより書籍の再販制度は廃止されている。さらに,再販売価格維持が認められていた最後の品目である一般医薬品についても,2001年5月,制限的慣行裁判所により適用免除を廃止する命令が下されている。

2 支配的地位の濫用

 1998年競争法では,EU機能条約第102条の規定に準じ,支配的地位を有する事業者による単独又は共同の濫用行為が禁止される。濫用行為の例として次のような行為が挙げられている(同法第18条)。
(1) 直接的又は間接的に,不公正な購入価格,販売価格又はその他の取引条件を課すこと
(2) 生産,市場又は技術開発を制限して消費者利益を害すること
(3) 同様の取引について差別的な条件を適用し,それによって取引相手を競争上不利な立場に置くこと
(4) 契約締結に際し,その性質上又は取引慣行上,当該契約とは関係のない付加的な義務を相手が受け入れることを条件とすること

3 市場調査(market investigation)

 競争・市場庁は,2013年企業規制改革法により競争委員会が廃止されたことに伴いその権限を引き継ぎ,市場調査を行う権限を有する(2002年企業法第131条)。競争・市場庁による市場調査は,Panelの委員で構成されるグループにより行われ,PanelはBoardからは独立して決定を下す。競争・市場庁は,2013年企業規制改革法により期間が短縮されたことに伴い,原則として18か月以内に市場調査を終えなければならず,例外的な場合にのみ6か月の期間延長が認められる(同法第137条)。
 競争・市場庁による市場調査は,競争に悪影響を及ぼす市場の特性を検証するものであり,調査を実施した場合は報告書を作成の上公表しなければならず(同法第136条),競争に悪影響を及ぼす特性が認められた場合には,競争・市場庁自らが是正措置を講ずるだけでなく,他の規制当局に是正を勧告することもできる。
 なお,市場調査に関する競争・市場庁の決定に不服がある場合には,競争審判所に不服申立てをすることができる。

4 企業結合

(1) 根拠規定

 合併等の企業結合は,主に2002年企業法によって規制されている。

(注5)1973年公正取引法は,新聞の合併の規制に関する規定のみとなっている。

(2) 規制対象

 結合される(吸収等される)企業の売上高が7000万ポンド超の場合又は企業結合によって25%以上の市場シェアが生じる若しくは増大する場合に規制の対象となる(2002年企業法第23条)。

(3) 企業結合審査

ア 職権による審査(own-initiative investigation)
 競争・市場庁は,自らの職権(当事者への質問状〔enquiry letter〕の送付)又は第三者からの申告により,企業結合審査を行うことができる。
イ 届出による審査(notification)
 当事会社は競争・市場庁に対して所定の様式に従って企業結合の届出をすることができる。当事会社は,非公表の段階で企業結合計画の競争上の問題について競争・市場庁の企業結合担当から非公式なアドバイス(informal advice)を受けることができ,届出を決めた段階で当事会社は届出案について届出前相談(pre-notification discussion)をすることもできる。届出前相談については,公表・非公表は問われないが,仮定の話を相談することはできないこととされている。
 なお,正式な届出は公表前に提出することは許されず,届出の提出前に競争・市場庁に相談することが推奨されている。

(4) 審査手続

 英国においては,企業結合に関する届出の義務はないが,競争法上の問題があれば後日競争・市場庁により是正措置が取られることとなり,事業上のリスクとなることから,当事会社には企業結合に関し届出することが奨励されている。競争・市場庁における企業結合審査は,2段階に分けて行われており,第1次審査(Phase1)は,当事会社から届出を受けた時点,職権で審査を開始した場合は審査に着手するに足る十分な情報を得た時点(質問状に対する十分な回答を得た時点)から原則として40日以内に完了させなければならない。
 第1次審査において競争・市場庁は,必要な証拠を収集し(2002年企業法第109条),競争市場庁の要求に従わない場合には当事会社に制裁金を課す(同法第117条)。競争・市場庁は第1次審査において実質的な競争減殺(substantial lessening of competition)の現実的可能性(realistic prospect)が疑われると判断した場合,詳細な第2次審査(Phase2)を開始しなければならない。競争・市場庁は,第1段階の審査の決定理由を当事会社に示さなければならず(2002年企業法第34ZA条1項b号),当事会社が競争・市場庁が示す決定理由を受け5日以内に問題を解消する適切な確約を申し出て,これを競争・市場庁が承認した場合(2002年企業法73A条),事案の重要性,有益性等を勘案して審査の必要性が認められない場合(同法第22条2項)には,第2次審査を開始しないこととすることができる。
 第2次審査は,Panelメンバーにより構成された合議体(Inquiry Group)において通常24週間以内に審査され,そこで実質的な競争減殺となる蓋然性が高いとの判断が下された場合には,競争・市場庁は12週間以内(一定の場合には6週間延長することができる。)に是正措置を講じなければならない。
 なお,職権探知によるか届出によるかを問わず,競争・市場庁が企業結合審査をする場合には,当事会社は競争・市場庁に対して手数料を支払わなければならない。

(5) 是正措置

 第2次審査を経て競争・市場庁が実質的な競争減殺をなる蓋然性が高いと判断した場合には,当該企業結合が禁止されたり,禁止されない場合でも,獲得した事業の一部の売却を求めたりする。(同法第35条,第36条)。

(6) 競争・市場庁は,当事会社からの適切と思われる確約を承認することができる(同法第73条)。

第4 法執行手続

1 審査権限

(1) 1998年競争法違反の審査

 1998年競争法は,競争・市場庁に同法に違反する疑いのある行為を審査する権限を与えている。競争・市場庁は,1998年競争法第1章(反競争的協定)又は第2章(支配的地位の濫用)の違反行為を疑うに足る合理的な理由がある場合,審査を行うことができる(同法第25条)。同法には以下の権限が規定されている。
ア 文書及び情報の提出(同法第26条)
イ 令状なしの立入検査(同法第27条)
ウ 令状に基づく立入検査(同法第28条)
   
 なお,2013年企業規制改革法による1998年競争法改正の主な内容は以下のとおり。
    
ア 25A条及び26A条が新設され,競争・市場庁は,調査を開始する決定をした場合,関係人に対し被疑事実の要旨等が記載された告知書を交付しなければならず(同法25A条),事情聴取の際は事件関係人に対し告知書の写しを交付しなければならないこととされた(同法26A条)。
イ 40A条及び40B条を新設し,正当な理由なく競争・市場庁の調査に従わない個人に対して制裁金を課すこと(同法40A条),競争・市場庁は当該権限の行使に関して指針を示すこととされた(同法40B条)。

(2) 2002年競争法の調査

 競争・市場庁は,2002年企業法第188条(カルテル罪)の違反行為を疑うに足る合理的な理由がある場合,調査を行うことができる(同法第192条)。同法には以下の権限が規定されている。
ア 文書及び情報の提出(同法第193条)
イ 令状に基づく立入検査(同法第194条)
 ただし,1998年競争法に基づいて得られた供述を刑事手続で利用することは原則として禁止されている(2002年企業法第198条)。

 なお,2013年企業規制改革法による2002年企業法改正の主な内容は以下のとおり。

ア 刑事訴追を容易にするため2002年企業法188条のカルテル罪の構成要件から「不正に(dishonestly)」という要件を削除した。
イ 188A条,188B条及び190A条を新設し,カルテル罪が適用される合意に関する情報を事前に顧客や入札主催者に知らせた場合や当該合意が法律上の要請に基づくものである場合にはカルテル罪に問わないこととされた(同法188A条)。また,カルテル合意の時点で当該合意の性質を隠す意図がなかったこと等が被告人の抗弁となることとされ(同法188B条),競争・市場庁においてカルテル罪適用に関するガイドラインを公表することとされた(同法190A条)。

2 違反行為に対する措置

(1) 指示

 競争・市場庁は,ある協定又は行為が1998年競争法第1章(反競争的協定)又は第2章(支配的地位の濫用)に違反しているとの決定を下した場合,当該違反を終結させるために適切と考える指示を出すことができる(同法第32条,第33条)

(2) 仮処分

 競争・市場庁は,審査中の案件について,1998年競争法第1章又は第2章の違反行為を疑うに足る合理的な理由があり,特定の個人又は組織が重大かつ回復し難い損害を被るのを防ぐために,又は公共の利益を守るために,緊急に措置を採る必要があると考える場合には,適切と考える指示を出すことができる(同法第35条)。

(3) 事業者に対する制裁金

 競争・市場庁は,1998年競争法第1章又は第2章に違反した事業者に対し,当該事業者の全世界での売上高の10%を上限とする制裁金を賦課することができる(同法第36条)。

(4) 個人に対する刑事罰(カルテル罪)

 個人がカルテル(価格カルテル,市場の割当て,入札談合等)に関与した場合,5年以下の禁錮若しくは罰金に処せられるか,又はこれらが併科される(2002年企業法第188条,第190条)。

(5) 役員資格剥奪命令(1986年企業役員資格剥奪法第9A条;Company Directors Disqualification Act 1986)

 競争・市場庁のほか,電気通信及び電力・ガス等の規制当局の長は,裁判所に対して,競争法に違反した企業の役員(director)に役員資格剥奪命令(Competition Disqualification Order)を発出するよう求めることができる。

 裁判所は,以下の2つの要件が満たされた場合に役員資格剥奪命令を発出する。
ア 役員の所属する企業が競争法に違反したこと
対象となる違反行為は,反競争的協定(1998年競争法第1章違反又はEU機能条約第101条違反)又は支配的地位の濫用(1998年競争法第2章違反又はEU機能条約第102条違反)である。
イ 役員の行為が企業経営には不適当であると裁判所が認めること
不適当であるかどうかについては,当該役員が違反行為に寄与したか又は違反行為を防止できなかったか等を勘案する。
 役員資格剥奪の期間は最長15年間であり,剥奪期間中に企業の役員の職に就いたり,経営に関する役割を担った場合は刑事罰の対象となる。

3 制裁金の算定方法

 競争・市場庁は,制裁金額を決定する裁量を有している。制裁金額の算定については,前身の公正取引庁が2012年9月に公表した「適切な制裁金額に関する公正取引庁のガイダンス(2012年)」を引き継いており,以下のような手順で算定される(同ガイダンスPart2)。

(1) 違反行為の重大性(違反行為類型,対象商品の性質,市場構造,違反事業者の市場シェア,参入状況,競争者や第三者に与えた影響,将来他の事業者が同様の違反を犯さないよう抑止する必要性,消費者に対する損害が直接的か間接的かなどから判断)及び違反事業者の関連売上高(違反行為の影響を受けた関連市場における違反事業者の前年度売上高)を勘案して,当初の制裁金額(Starting Point)が算定される。

 なお,当初の制裁金額は,違反事業者の関連する製品市場及び地理的市場における売上高の30%を上限とする。

(2) 違反行為の実施期間に応じた調整(=増額又は減額)が行われる。

(3) 増減要素に基づく調整が行われる。
ア 増加要素

・執行を遅らせる不当な継続的行動

・違反事業者の首謀者としての役割

・管理職の関与

・他の事業者に対する違反の継続を目的とした報復その他の強制手段の行使

・調査開始後の違反継続

・同じ事業者あるいは同じグループの他の事業者による繰り返しの違反

・怠慢ではなく意図的に違反に関与したこと

・リニエンシー申請者に対する報復あるいは業務上の実力行使

イ 軽減要素

・当該事業者の役割(ex.強要・抑圧の下で行動していたか)

・違反となる合意・行動への関与が明確ではない   こと

・EU機能条約101条,102条及び第1章,第2章の遵守のために適切な行動をとったこと

・競争・市場庁の介入後直ちに違反を取りやめたこと

・執行手続をより効果的かつ迅速にするような協力

(4) 業者の財政状況や売上状況等を勘案した調整が行われる。

(5) 制裁金額が法定上限(違反事業者の全世界での売上高の10%)を超えている場合には上限額までの引下げ,2004年5月1以前の第1章,第2章違反については,当時の法定上限(英国国内の売上高の10%)まで引下げ,事業者団体による違反行為の場合も法定上限額(違反行為の影響を受けた市場における会員事業者の全世界での売上高の10%)まで引き下げられる。また,欧州委員会の制裁金等との二重処罰を回避するための調整が行われる。

(6) リニエンシー(下記参照)に基づいた制裁金の免除又は減額が行われる。

4 制裁金の減免(リニエンシー)

(1) 運用規定:カルテル事件におけるリニエンシー及び刑事免責の適用(2013年)

(2) 対象となる違反行為
 1998年競争法第1章違反又はEU機能条約第101条違反(価格カルテル,市場の割当て,入札談合等)

(3) 概要

ア 制裁金減免の条件
 制裁金の減免を受けるためには,以下の条件を満たす必要がある。
(ア) 違反の認容
 事業者の場合は,当該事業者がカルテル合意や同調的行動に参加したことを認め,個人の場合はカルテル罪に加担したことを認めなければならない。
(イ) 情報の提供
 申請者は,特権(privilege)により保護されない全ての情報,文書,証拠を競争・市場庁に提供しなければならない。
(ウ) 審査への協力
 申請者は事件の処分がなされるまで継続的かつ完全な協力をしなければならない。
(エ) 違反行為の取りやめ
申請者は,競争・市場庁に対してカルテル行為への関与を明らかにして以降カルテル行為への関与を取りやめなければならない。
(オ) 強制の有無
申請者は,カルテル行為への参加を他の事業者に強制してはならない(この条件は,後記イ(ウ)タイプCの事業者には適用がない。)。

イ リニエンシーのタイプ
(ア) タイプA
競争・市場庁が審査を開始する前に違反行為に関する証拠を最初に提供した事業者は,同庁が当該違反行為を立証するのに十分な情報を有していない場合,非裁量的に制裁金の免除を受け,従業員及び管理職は包括的な刑事免責を保障され,管理職は資格剥奪を免れることができる。ただし,タイプAのリニエンシーが認められるためには,カルテル行為への参加を他の事業者に強制した事実がないことが必要であり,この要件を満たさない場合には,後記(ウ)のタイプCのリニエンシーのみが認められ得ることとなる。
なお,申請者が個人である場合には,当該申請者の刑事免責が保障され,申請者の属する事業者及び同僚は,後記(イ)のタイプBのリニエンシーを受け得ることとなる。
(イ) タイプB
申請者が最初に競争・市場庁に対してカルテルの証拠を最初に提出したが,既に競争・市場庁が事前調査を行っていた場合,申請者は,競争・市場庁の裁量により制裁金の減免,包括的な従業員及び管理職の刑事免責を受けることができ,管理職は非裁量的に資格剥奪を免れることができる。ただし,タイプBのリニエンシーは,競争・市場庁が既に当該カルテルの存在について十分な情報を有していた場合には認められず,また,タイプAと同様,カルテル行為への参加を他の事業者に強制した事実がないことが必要とされる。
(ウ) タイプC
他の事業者が既に当該カルテルについて報告し,あるいは,申請者が他の事業者にカルテル行為への参加を強制した事実がある場合において,競争市場庁に対し有益な情報を提供した場合には,タイプCのリニエンシーのみが適用可能となる。タイプCのリニエンシーは,常に裁量的であるが,認められた場合には,最大50%の制裁金減額,特定個人の刑事免責のほか,事業者に対する制裁金の減額が認められれば当該事業者の管理職の資格剥奪も免除されることとなる。

5 個人に対する刑事訴追の免除

(1) 運用規定:カルテル事件におけるリニエンシー及び刑事免責の適用(2013年)

(2) 対象となる違反行為:2002年企業法第188条のカルテル罪

(3) 概要

 競争・市場庁は,カルテルへの関与を申し出た個人に対してノーアクションレター(no action letter)を交付することができ,ノーアクションレターの交付を受けた個人は,カルテル罪の刑事訴追を免れることができる。
 なお,前記タイプAのリニエンシーが認められる場合には,非裁量的な包括的刑事免責により全ての従業員及び管理職は前任者も含め刑事免責され,前記タイプBのリニエンシーでも裁量的に包括的刑事免責が認められることがある。タイプCのリニエンシーにおいて包括的刑事免責が認められることはないが特定個人の刑事免責が認められることがある。
 なお,ノーアクションレターの交付要件は以下のとおり。
ア カルテル罪への関与を認めること
イ 競争・市場庁に対し,カルテルの存在及び内容に関する入手可能な特権によって保護されないすべての情報,文書,証拠を提供すること
ウ 競争・市場庁の審査全体を通じて,かつ同庁の審査を受けて開始された刑事手続が結論に至るまで,全面的・継続的に協力すること
エ 競争・市場庁に対してカルテルを開示した後,当該カルテルに関与しないこと(ただし,同庁から指示があった場合を除く)
オ 他の事業者に対して,カルテルに関与するよう強制していないこと

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