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ホーム > 活動について > 事務総長定例会見 > 平成17年11月9日付 事務総長定例会見記録
[発言事項]
(事務総長)今日は,2点ほど述べておきたいと思います。
1点目は,昨日公表した広告業界の取引実態調査についてです。私どもは結構重要な調査だと思っていますが,なかなか報道していただいた社は少なかったようなので,少しコメントしておきたいと思います。
広告業界は,全体の市場規模が6兆円弱ということで,非常に巨大な産業ということですけれど,我々の目からみますと,率直に申し上げて,競争が必ずしも有効に機能していないという印象を与える業界というふうに思っているわけであります。私も今回知って驚いたわけですけれども,広告業界では報酬が15%という一律のコミッションで決められている。つまり,広告媒体の料金に一律15%というのが広告媒介の料金ということになっているようでありますが,その歴史をたどってみますと,報告書にもありますように,昭和19年に発令された価格統制令に基づいて,広告会社の報酬はその媒体枠の料金に一定報酬率を乗じて定める,一定率は15%にするというようなことが決定されたということでありまして,今日の我々の言葉で言えばカルテルが結ばれたわけであります。その後,今日まで60年以上,こういった報酬の決め方だけでなく,その当時と同じ報酬率が踏襲されているということでありまして,これまでもそういう印象を持っていたわけですけれども,今回このことを知って,私もなおさらその印象を強めたということであります。
戦前は,いろいろな業界でいろいろなカルテルを認めていたというのは事実でありますが,そのとき結ばれたものがそのまま取引慣行になって,今日まで残っているというのは,私どももあまり他の業界では聞いたことがない話だと思います。したがって,私が今申し上げたような印象を与える業界ということであります。このことを聞いて,経済学者がいろいろ議論している1940年体制論というのがありまして,それが今日の日本の諸問題の根源みたいな議論があるのですけれども,ちょっとそれを思い出した次第であります。
皆様方に関係の深い新聞広告についても,いろいろ記述されておりまして,今述べたことについては同じです。記事下広告というものについても,その媒体の値段の15%が,広告代理店の取り分になっているということであります。今回,アメリカのことも併せて調査をしたので,これも報告書に書いてありますが,米国でも1930年代以前には,要するに新聞社と広告主との間で広告取引が成立すれば,それを媒介した広告会社に対しては15%が一律に支払われるという状況にあったようであります。その後,広告会社が新聞社から広告枠を購入するというような取引が始まって,こういったことを契機に競争が進み,さらに1980年代以降になると,多くの広告主は,報酬率といいますか,そのコミッションが3%程度で広告枠を購入できるようになっている,競争がそこまで進んできたというようなことが書いてあるわけであります。
これは広告枠を提供する者の利益を考えてみますと,広告枠の料金が一定だといたしましても,媒介する広告代理店の取り分である報酬率が下がっていけば,広告主としては支出額が減るわけですから,もっと広告を載せようというふうになるのではないか,一般的な経済学の知識ではそうなります。だから,そういうことで新聞社の目から見ても,広告媒体,広告代理業のところで競争が活発化すれば,その利益を受けるような立場にあるのではないかという感じがするわけでありまして,現状では,広告主もあまり競争の便益を得ていないという感じがするのと同時に,広告スペース,枠を提供される方も競争の恩恵を受けていないのではないかという感じがいたします。ただ,私も業界の実態があまり分かりませんので,もし広告の枠そのものが非常に限られていて,競争が行われても増えないという制約の下にあるとすると今の議論は成り立たないわけで,今日までそういう状況が続いているというのは,それなりの理由があってのことという面はあろうと思います。いろんな分野でそうですけれども,使う側が,消費者なら消費者,ユーザー企業ならユーザー企業が競わせて安くていいものを得るという努力をしないと競争というのは機能し始めない,価格メカニズムが働かないということですので,したがって,広告業界では,どうもそうやって競わせることがあまり行われなかったのではないか,それはなぜだろうということで,いろいろなことを検討して報告書にまとめたということであります。
もう1点思いましたのは,やはり,これは前から言っていることですが,契約の書面化です。一般的にこの業界では契約を書面化するということはあまり行われていない,進んでいないということですけれども,外資系,外国の広告主との間では,広告主の方が要求しますから,当然,条件を契約できちんと書くというようなことが進んでいるわけであります。これも要求があるからとはいえ,内外の広告主で,国内はこう,海外はこうというような取引慣行というものが,今日のグローバル経済のもとでいいのだろうかという感じを強く与えるわけであります。報告書にあるのですけれども,なぜ書面化しないかというと,それは別に何も問題が起きないからである,何も起きないから書面化するインセンティブはないのであると。それはそうだと思うのですけれども,やはりこういった問題というのは取引条件の明確化という面もありますし,早目に取り組んでいったほうがいいのではないかというのが我々の受けた感じであります。
それから,インターネット広告というのがどんどん増えてきて,ある程度広告の中での地位を高めてきたということでありますが,インターネット広告については,さすがに新しいということもありまして,我々が今回既存の広告につき指摘したような問題点はないということでありまして,市場がそういう形で,インターネット広告が重要になればなるほど,そちらに引きずられて取引慣行というのが変わっていくだろう,そういう競争というのが十分期待できると思うのでありますが,これだけ大きな市場で競争が働いていくというのは重要なことでありますので,今までこの広告業界について,かなり掘り下げて行った分析というのはあまりないと自負しておりますので,ぜひ関係する業界あるいは各方面で,この報告書を読んでいただいて,競争というのがいかに重要か,あるいはそれをうまく使うためには,どのようになっていなければいけないのかというあたりを考えていただければと思う次第であります。
(事務総長)2点目は,いろいろアナウンスをしておきたいということでありますが,本日,独禁法・競争法にかかわっている有志の弁護士によって競争法フォーラムという団体が設立される予定になっております。今後,競争法・独禁法に関しまして調査研究を進める,それから,情報交換なり政策提言を行っていくというような目的で,有志の任意団体という位置づけでスタートされるということのようであります。私どもの独禁法の運用も相当強化されてきておりまして,独禁法関係の法律事務に携わられる弁護士も新規参入というのでしょうか,今までやっていなかった弁護士が競争法の分野へ入ってくるということが多々みられるわけでありますので,私ども,こういった団体が設立されて勉強されていくというのは非常にいいことではないかと思っています。我が国の競争政策というのは必ずしも世界の競争法の関係者から高い評価を受けてないということは,何度もここで申し上げたところですが,そういった活動というものが,特に我が国の法律事務の質を高めて,その評価を高めてもらえればいいのではないかと思っています。聞くところによりますと,今のところ会員となられる予定なり,申出があった数というのは130くらいと聞いていまして,アメリカでは1,000人単位の反トラスト部会というのが全米法曹協会にあるわけですけれども,それに比べれば少ないですが,ただ我々もこれまでは,日本で競争法にかかわる弁護士というのはどれぐらいいるのですかと聞かれると,我々の知っている範囲でいうと20〜30くらいなどと答えていました。100を超える方々が関係しているということは,結局,日本において競争法というものの実務的な重要性もそれだけ高いということになるわけですので,我々からみても非常に歓迎されるいいことではないかと思っているわけであります。
(事務総長)それから,来週の15,16の両日,ワシントンDCで,今申し上げた全米法曹協会の反トラスト部会の秋の大会が開催されまして,私がリーニエ ンシー制度に関するパネルディスカッションに参加するということにしております。あと2か月弱で改正独禁法の施行を迎えるわけですので,大いに向こうで PRしてきたいと思っております。
実はその次の週が勤労感謝の日ですから,2週連続でお休みすることになりますので,よろしくお願いいたします。
参考までですけれども,今,改正独禁法の中身について,いろいろな説明会を行っているところでありますが,そういうところで耳で聞くだけではなかなか理解が進まないということで,講演をする際にこういうことをお話しするという講演メモがあるものですから,それを公表することによって理解が深まるだろうということで,確か昨日か今日だと思いますけれども,東京で経済担当の小島審議官が講演している講演用のスピーチ原稿をホームページに載せております。私も見ましたけれども,45分ぐらいの中で改正独禁法について必要なことを全部述べるとすれば,このくらいかという,非常に要領よく全ての点にわたって,大事なことは全部書いてあるというものですので,改正独禁法の中身を知りたい方はぜひ一読いただきたいと思います。また,ホームページにも,改正独禁法のQ&Aコーナーというのがありまして,これは説明会場で受ける典型的なもの,共通なものがあれば,それをホームページで紹介していくということで,これは今後さらに強化させていく予定ですけれども,Q&Aもありますということで,大いに参考にしていただければと思っております。
私からは以上です。
[質疑応答]
(問)別に反論するわけじゃないですけれど,先ほど広告のところでちらっとおっしゃったように,広告の世界の供給曲線は相当硬直的で,単純に取引を透明化すれば需要が拡大する,マーケットが拡大するというわけじゃないですよね。
(事務総長)そうですね。我々も,今回の報告書というのは,たたき台的な議論のスタートということで,ここをこうすればこうなるというふうにきれいに処方せんを書けているとは認識していません。どの世界でもそうですけれども,取引高がどんなに多くなっても一定比率で,つまりこういうカーブで報酬が得られる産業というのは今はそうないのです。タクシーでも長距離になるとちょっと安くなるわけですから,広告でも相当お金を使っている方がいると思うのですけれども,どうしてそうなのか,あるいは何でそれが可能なのか,我々の感じたことをいろいろ書いてあるので,ぜひ議論をいただければと思います。
(問)特殊指定の見直しの関係ですが,例えば公聴会とかたたき台をある程度提示するとか,その辺のスケジュールはどうなるのでしょうか。
(事務総長)この前も申し上げたのですけれども,現体制で作業する以上,来年6月末を目途には作業してもらいたいというのが我々の考え方です。じゃあそれまでにどうやってやるかというと,特殊指定というのは,関係事業者の意見を聞くとか公聴会ということが法律で書いてあることもありまして,基本的には関係業界との間でいろんな意見の交換をして,これぐらいの改正が必要だろうとか,あるいはもういいだろうとかいうような話をして,一定の成案を得て,それを公聴会にお諮りする,あるいはパブコメにかけるという作業になると思います。したがって,そういう具体的な公聴会等の話が出るのは6月ぐらいにはなるのではないかと思います。業界紙も見させていただくと,前回の平成11年の見直しの際には,プロジェクトチームを作って,代表者と公取の間で十分議論したというような記事がありまして,そういうものを作る動きというのもあるように聞いていますので,それまでの間は,まずは関係業界に,我々の言わんとする趣旨をよく伝えたいと思います。どうも私がここでお話をした途端に業界から何か意見書が出されたようですので,それもちょっと変だと思うのですけれど,そういうようなことではいけないと考えるものですから,きちんと話し合いをしたいと思っております。
以上
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