第9章 国際契約等

第1 概 説

 独占禁止法第6条は,国内事業者と外国事業者との国際的協定又は国際的
契約(以下「国際契約」という。)について,不当な取引制限又は不公正な取
引方法に該当する事項を内容とするものの締結を禁止するとともに,国際契
約を締結した事業者に対し,契約成立の日から30日以内に当委員会に届け出
ることを義務付けている。

第2 国際契約の届出状況

 国際契約は,①我が国の事業者が外国事業者から資本投下若しくは技術の
提供を受け,又は製品・原材料を購入する契約(以下「対内契約」という。)
と,②我が国の事業者が外国事業者に対して資本投下若しくは技術の提供を
行い,又は製品・原材料を販売する契約(以下「対外契約」という。)とに大
別される。
 本年度における国際契約の届出件数は5,367件であり,前年度に比べて
3.5%(179件)の増加となった(第1表)。
 これを種類別にみると対内契約は,3,235件(全届出件数の60.3%)であ
り,前年度に比べて技術導入契約,合弁事業契約,商標契約及び著作権契約
が増加し,輸入代理店契約が減少している(第1図)。また,対外契約は,
2,132件(全届出件数の39.7%)であり,合弁事業契約が増加し,技術援助契
約,輸出代理店契約,商標契約,著作権契約は減少している(第2図)。
 対内契約の届出の内訳を見ると,種類別では,技術導入契約が1,916件で
最も多く,次いで輸入代理店契約が635件と続いており,この2種類の契約
で対内契約の78.9%を占めている。これを業種別に見ると,対内契約全体に
おいても,技術導入契約においても,サービス(主としてソフトウェア),

電気機械器具,化学製品関係がそれぞれ上位を占め,また,輸入代理店契約
においては,電気機械器具,化学製品,一般機械器具関係がそれぞれ上位を
占めている(付属資料5-1表)。
 対外契約の届出の内訳をみると,種類別では,技術援助契約が1,025件で
最も多く,次いで輸出代理店契約が624件と続いており,この2種類の契約
で対外契約の77.3%を占めている。これを業種別に見ると,対外契約全体に
おいても,技術援助契約及び輸出代理店契約においても,電気機械器具,輸
送用機械器具,化学製品関係がそれぞれ上位を占めている。
 契約の相手国・地域別に見ると,まず対内契約では,契約の種類すべてに
おいてアメリカが最も多く,対内契約全体で1,885件(対内契約全体の58.3%)
となっており,その内訳を見ると,技術導入契約が1,174件(技術導入契約
全体の61.3%),輸入代理店契約が275件(輸入代理店契約全体の43.3%)等
となっている。以下,対内契約全体においてはイギリス,フランス,西ドイ

ツが,技術導入においてはフラン
ス,西ドイツ,イギリスが,輸入代
理店契約においてはイギリス,フ
ランス,西ドイツがそれぞれ上位
を占めている。また, 対外契約に
おいても,アメリカが最も多く,対
外契約全体で436件(対外契約全
体の20.5%)となっており,その内
訳を見ると,技術援助契約が249
件(技術援助契約全体の24.3%),
輸出代理店契約が95件(輸出代理
店契約全体の15.2%)等となって
いる。以下,対外契約全体及び技
術援助契約においては韓国,台
湾,タイが,輸出代理店契約においては韓国,台湾,西ドイツが,合弁事業
契約においては タイ,韓国,中国がそれぞれ上位を占めている(付属資料
5-2表)。



第3 国際契約の指導等の状況

 届け出られた国際契約については,その内容を厳正に審査し,不当な取
引制限又は不公正な取引方法に該当するおそれがある事項を含むものにつ
いては,当該事項を修正又は削除するよう指導(以下「指導」という。)
している。また,当該契約条項の具体的な実施状況によっては法違反とな
る旨の注意を促し,法違反の発生の未然の防止を図る措置(以下「問題点
指摘」という。)も講じている(以下,これらの措置を含めて「指導等」と
いう。)。
 本年度における国際契約の指導等の件数は,契約件数で308件,指導等
の内容別件数で356件となっている(付属資料5-3表)。これは,前年
度の指導等の件数(契約件数194件,指導等の内容別件数223件)と比較
すると,大幅な増加となってい
る。
 これらの指導等の内容別件数
を見ると,競争品の取扱い等の
制限が95件(指導等の内容別件
数の26.7%)で最も多く,以下,
改良技術に関する制限76件(同
21.3%),再販売価格の制限55件
(同15.4%),並行輸入の阻止29
件(同8.1%)等となっている
(付属資料5-3表)。
 以上の指導等の内容別件数
を,当該事項の指導を行ったも
のと,問題点指摘を行ったもの
とに分けて見ると,第2表のと
おりである。
 主要な契約の種類別に指導等の状況を見ると,技術導入契約の指導等の件数は,契約件数で
144件(指導等の内容別件数では169件)であり,これは,前記国際契約の
指導等の契約件数の46.8%である。この件数は,前年度の件数97件と比較
すると,かなりの増加となっている。さらに,これを指導等の内容別件数
でみると,改良技術に関する制限が44件,競争品の取扱い等の制限が32件
で,この二つで指導等の件数の約半数を占めている(付属資料5-4表)。
 また,輸入代理店契約の指導等の件数は,契約件数で83件(指導等の内
容別件数では102件)であり,これは,国際契約の指導等の契約件数の
26.9%である。この件数は,前年度の77件と比較して増加傾向にある。
 これを指導等の内容別件数で見ると,競争品の取扱い等の制限が35件
(輸入代理店契約の指導等の内容別件数の34.3%)で最も多く,以下,再


販売価格の制限21件(同20.6%),並行輸入の阻止16件(同15.7%)等と
なっている(付属資料5-5表)。
 さらにこれを,輸入総代理店契約に限って見ると,第3表のとおりであ
り,輸入総代理店契約の指導等の契約件数は76件であり,輸入代理店契約
の指導等の契納件数のほとんどを占めている。

第4 海上運送事業者間の協定等

 船舶運航事業者が他の船舶運航事業者とする運賃及び料金その他の運送条
件,航路,配船並びに積取りに関する事項を内容とする協定,契約又は共同
行為(以下「協定等」という。)については,海上運送法第28条の規定により
原則として独占禁止法の適用が除外されている。しかし,同条ただし書によ
り,不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質
的に制限することにより不当に運賃及び料金を引き上げることとなる場合に
は,適用除外とはならない。海運業に係る不公正な取引方法については,独
占禁止法第2条第9項に基づく特殊指定でその内容が定められている。
 海上運送法第29条は,同法第28条に規定する協定等に関し,その締結,変
更についてあらかじめ運輸大臣に届け出なければならない旨規定し,同法施
行規則第26条第4項では,運輸大臣は, 協定等に関する届出書のうち1通を
当委員会に送付する旨規定している。
 当委員会が本年度において運輸大臣から受理した届出の件数は,334件で
あり,その内訳(1届出について,2以上にわたる場合の重複分を含む。)
は,締結10件,変更295件,参加12件,脱退15件であった。