第2章 違反被疑事件の審査及び処理
第1 違反被疑事件の審査及び処理の状況
独占禁止法は,事業者が私約独占又は不当な取引制限をすること,不公正
な取引方法を用いること等を禁止しているが(第3条,第19条ほか),当委
員会は,一般から提供された情報,自ら探知した事実等を検討し,これらの
禁止規定に違反する事実があると思料するときは,独占禁止法違反被疑事件
として必要な審査を行っている。
審査事件のうち,必要なものについては独占禁止法第46条に基づく権限を
行使して審査を行い,違反する事実があると認められたときは,勧告(第48
条第1項及び第2項)又は審判手続の開始(第49条第1項)を行い,勧告を
相手方が応諾した場合には勧告審決(第48条第4項),その他の場合は審判手
続を経て同意審決(第53条の3)又は正式審決(第54条)によりそれぞれ違
反行為の排除を命じている。また,審査事件は,上記の審決等の法的措置に
よる処理のほか,警告等の措置によっても処理している。
本年度における審査件数は,前年度からの繰越しとなっていたもの101件,
年度内に新規に着手したもの153件,合計254件であり,このうち,本年度
内に処理した件数は180件である。
180件のうち,何らかの措置を採ったもの164件の内訳は,勧告審決17件,
審判開始決定2件及び警告等145件であり,また,違反実事が認められな
かったため審査を打ち切ったもの16件となっている(第1表)。なお,本年度
においては8事業者団体及び延べ57名の事業者に対し22件の勧告を行った。
勧告審決,審判開始決定,警告又は注意のいずれかの措置を採ったものを
行為類型別に見ると,価格カルテル78件,その他のカルテル4件,不公正な
取引方法67件,その他の行為15件となっている(第2表)。
勧告審決を行った事件は,17件であり,このうち価格カルテル事件が9件
(事業者によるもの4件,事業者団体によるもの5件),不公正な取引方法に
係る事件が6件,その他事業者団体による構成員の事業活動制限等が2件と
なっている(第3表)。
なお,独占禁止法第45条第1項の規定に基づく報告が,書面により具体的
な事実を摘示して行われた場合には,報告者に対し,その措置結果等を通知
することとされており(第45条第3項),本年度においては,2,105件の通知
を行なった。