第2 勧 告 審 決

 勧告審決は,違反行為者に対し,独占禁止法第48条第1項又は第2項の規定
に基づいて適当な措置を採るべきことを勧告し,そのものが勧告を応諾した
ときに,同条第4項の規定に基づき,審判手続を経ないで当該勧告と同趣旨
の審決を行うものである。
 本年度は,独占禁止法第3条後段(不当な取引制限)違反4件,第8条第
1項第1号(事業者団体による競争の実質的な制限)違反5件,第8条第1
項第3号(事業者団体が,一定の事業分野における現在又は将来の事業者の
数を制限すること。)及び第5号(事業者団体が,事業者に不公正な取引方法
に該当する行為をさせるようにすること。)違反1件,第8条第1項第4号
(事業者団体による構成事業者の機能,活動の不当な制限)違反1件及び第
19条(不公正な取引方法)違反6件の勧告審決を行った。その概要は,以下
のとおりである。

(1) 独占禁止法第3条後段違反事件
サンエツ金属株式会社ほか8名に対する件(平成2年(勧)第6号)
1 関係人について
違反事実について
(1)  関係人9社は,かねてから営業部長級の者で構成される関東幹事
会,関西幹事会及び東西合同幹事会と称する会合において黄銅棒の
市況について情報交換を行ってきたところ,黄銅棒の需要が増大し
ているにもかかわらず,昭和63年初めごろからロールマージン(製
造業者の加工費と利潤の合計額)が減少していることに対処するた
め,同年9月9日,各社の代表取締役級の者及び営業部長級の者が
出席して,大阪府堺市所在の三宝伸銅工業株式会社あかがねクラブ
で開催した「黄銅棒会議及び懇親会」と称する会合において,卸売
業者向けの黄銅棒の販売価格に関し検討した結果,
 ロールマージンは,現行の水準を最低とし,今後,順次改善す
ること
 六角棒等の形状増値(異形棒についての形状の違いによる割増
額)を引き上げること
との基本方針を決定するとともに,これらの方針の実施について
は,各社の営業部長級の者による幹事会に一任することを決定し
た。
(2)  9社は,前記(1)アの決定に基づき,昭和63年9月26日以降,毎月
定期的に関東幹事会及び関西幹事会を開催し,それぞれの会合にお
いて,ロールマージンを維持し又は引き上げるよう,卸売業者向け
の黄銅棒の取引基準価格を決定している。
(3)  また,9社は,前記(1)イの決定に基づき,昭和63年11月21日,大
阪市北区所在の中央電気クラブ会議室で開催した東西合同幹事会に
おいて,異形棒の形状増値の引上げについて検討した結果,昭和64
年1月契約分から,六角棒及び四角棒の形状増値を,それぞれ現行
価格より10円引き上げることを決定した。
 なお,9社は,その後,前記決定の実施時期を平成元年3月契約
分からに変更することとした。
排除措置
(1)  9社は,卸売業者向けの黄銅棒の販売価格に関して昭和63年9月
9日に行った決定を破棄すること。
(2)  9社は,卸売業者向けの黄銅棒のうち異形棒についての形状増値
に関して昭和63年11月21日に行った決定を破棄すること。
(3)  9社は,今後,共同して,卸売業者向けの黄銅棒の取引基準価格
又は異形棒についての形状増値を決定しないこと。
(4)  9社は,前記措置を取引先及び需要者に周知徹底させること
(株)アサヒコーポレーションほか2名に対する件(平成2年(勧)第7
号)      
1 関係人について
違反事実について
 関係人3社は,平成元年2月27日に開催した営業担当役員の会合に
おいて,学童3品の販売価格について検討した結果, 同年4月から,
次のとおり,出荷価格を引き上げること等を決定した。
排除措置
(1)  3社は,平成元年2月27日に行った学童3品の出荷価格並びに卸
売業者及び小売業者の販売価格に関する決定を破棄すること。
(2)  3社は,上記決定に基づき,学童3品に関し,卸売業者に対し
行っている卸売価格の引上げの指示並びに小売業者に対し行ってい
る小売価格の引上げの要請及び希望最低小売価格を下回った価格で
販売されている場合の当該商品の買取り,出荷停止等の措置を取り
やめること。
(3)  3社は,次の事項を学童3品の取引先卸売業者,小売業者及び一
般消費者に周知徹底させること。
上記(1)(2)に基づいて採った措置
 3社は,今後,共同して学童3品の出荷価格を決定せず,各社
がそれぞれ自主的に決める旨
 3社は,今後,それぞれ,自己が製造した学童3品に関し,卸
売業者又は小売業者が販売価格を自主的に決定することを妨げな
い旨
日本セメント(株)ほか7名(北海道地区)に対する件及び小野田セメ
ント〈株)ほか8名(中国地区)に対する件
(平成2年(勧)第18号,19
号)
関係人について
違反事実等について
(1) 日本セメント(株)ほか7名(北海道地区)に対する件
違反事実について
(ア)  日本セメント(株)ほか7名の北海道地区の関係人8社(以下
「北海道8社」という。)は,他のセメント製造業者らとともに,
地区における各社のセメントの市場占有率を定めて各社の販売
数量を取り決め管理すること(以下「限度量管理」という。)に
ついて各社の営業担当責任者クラスの者で検討してきた状況を
踏まえ,北海道地区における限度量管理を課長会,支店長会等
で検討してきたところ,昭和60年6月下旬,札幌市中央区所在
の日本セメント株式会社北海道支店会議室で開催した支店長会
において,各社の拡散マインド,数量指向を払拭し,市況の安
定を図ること等を目的として,毎月,地区の総需要量を想定
し,これに各社の四半期別市場占有率を乗じて得た数量を各社
の販売限度量としてこれを遵守することを主たる内容とする限
度量管理を同年7月1日から実施することを決定した。また,
北海道8社は,昭和63年3月下旬に開催した支店長会におい
て,同年4月1日以降の各社の市場占有率を変更することを決
定した。
 北海道8社は,上記決定を実施するための事務局を札幌市中
央区所在の越山ビルに設置し,毎月,支店長会において各社の
販売限度量の決定を行う一方,毎月数回事務局で開催する会議
において各社の担当者が当月の販売実績を報告し合い,当月販
売限度量を超過しそうな社は制裁措置を受けないようにするた
め他社からあらかじめ支店長会で定めた価格でセメントを購入
して販売し,当月販売限度量を超過した社については超過量が
販売限度量の3パーセント以内の場合には当該社の翌月の販売
限度量から超過量を差し引き,各社から報告のあった販売実績
の監査を行う等して,昭和60年7月1日以降,限度量管理を実
施していた。
(イ)  北海道8社は,平成元年9月26日,北海道地区におけるセメ
ントの市況回復を図るため,札幌市中央区所在のポールスター
札幌で開催した支店長会において,セメントの販売価格の引上
げ及び普通ポルトランドセメントと高炉セメントとの値差縮小
について検討した結果,
 当面,セメントの販売価格の低迷している旭川地区,帯広
地区及び空知地区の生コンクリート製造業者向け普通ポルト
ランドセメント1トン当たりの販売価格を現行販売価格より
次を目途に引き上げること
旭川地区 平成元年11月1日出荷分から500円,更に平
成2年4月1日出荷分から1,000円
帯広地区 平成元年11月1日出荷分から500円,更に平
成2年4月1日出荷分から500円
空知地区 平成2年4月1日出荷分から1,000円
 高炉セメントの需要者渡し販売価格を現行販売価格より平
成2年4月1日報荷分から1トン当たり300円を目途に引き
上げること
を決定した。
排除措置
 本件違反行為は,既に終了していたため,独占禁止法第48条第
2項(既往の違反行為に対する措置勧告)の規定に基づき,北海
道8社に対し,次の措置を採るよう求めた。
(ア)  北海道8社は,次の事項を北海道地区内の取引先販売店及び
需要者に周知徹底させること。
 昭和60年6月下旬及び昭和63年3月下旬に行つた北海道地
区のセメントの販売数量制限に関する決定を破棄した旨
 平成元年9月26日に行った旭川地区,帯広地区及び空知地
区の生コンクリート製造業者向け普通ポルトランドセメント
の需要者渡し販売価格並びに北海道地区の高炉セメントの需
要者渡し販売価格の引上げに関する決定を破棄した旨
 今後,共同して,セメントの販売数量及び販売価格を決定
せず,各社がそれぞれ自主的に定める旨
(イ)  北海道8社は,今後3年間,毎月,北海道地区内におけるセ
メント販売数量を当委員会に報告すること。
(2) 小野田セメント(株)ほか8名(中国地区)に対する件
違反事実について
(ア)  小野田セメント(株)ほか8名の中国地区の関係人9社(以下
「中国9社」という。)は,限度量管理について各社の営業担当
責任者クラスの者で検討してきた状況を踏まえ,中国地区にお
ける限度量管理を委員会(議長クラスの会合),支店長会等で検
討してきたところ,昭和60年5月上旬,広島市中区所在の宇部
興産株式会社広島支店会議室で開催した支店長会において,各
社の拡販マインド,数量指向を払拭し,市況の安定を図ること
等を目的として,毎月,地区の総需要量を想定し,これに各社
の四半期別市場占有率を乗じて得た数量を各社の販売限度量と
してこれを遵守することを主たる内容とする限度量管理を同年
7月1日から実施することを決定した。
 中国9社は,上記決定を実施するための事務局を広島市中区
所在の八丁堀ビルに設置し,毎月,支店長会において各社の販
売限度量の決定を行う一方,毎月数回事務局で開催する会議に
おいて各社の担当者が当月の販売実績を報告し合い,当月販売
限度量を超過しそうな社は制裁措置を受けないようにするため
他社からあらかじめ支店長会で定めた価格でセメントを購入し
て販売し,当月販売限度量を超過した社については超過量が販
売限度量の3パーセント以内の場合には当該社の翌月の販売限
度量から超過量を差し引き,各社から報告のあった販売実績の
監査を行う等して,昭和60年7月1日以降,限度量管理を実施
していた。
(イ)  中国9社は,平成元年9月26日,中国地区におけるセメント
の市況回復を図るため,広島市中区所在のマルコーインで開催
した支店長会において,かねて委員会に検討させていたセメン
トの販売価格の引上げ及び普通ポルトランドセメントと高炉セ
メントとの値差縮小について検討した結果,セメント販売価格
の低迷している地区及び需要者を重点に,次のとおりセメント
の需要者渡し販売衛格の引上げを行うこと
基本方針
 中国地区全域を対象として,平成元年11月1日納入分か
ら,普通ポルトランドセメント1トン当たりの販売価格を現
行販売価格より500円及び高炉セメント1トン当たりの販売
価格を現行販売価格より1,000円を目途に引き上げること
陥没価格対策
(a)  岡山県南地区,福山地区及び呉地区の生コンクリート
製造業者向け普通ボルトランドセメントは1トン当たり
12,000円を目途として引き上げること
(b)  吹付け大手3社向け袋セメントは1袋当たり550円を目
途として引き上げること
(c)  二次製品大手向け普通ポルトランドセメントは1トン当
たり12,000円を目途として引き上げること
(d)  バラ工事物の普通ポルトランドセメントは1トン当たり
12,000円,高炉セメントは1トン当たり11,500円を目途と
して引き上げること
を決定した。
排除措置
 本件違反行為は,既に終了していたため,独占禁止法第48条第
2項(既往の違反行為に対する措置勧告)の規定に基づき,中国
9社に対し,次の措置を採るよう求めた。
(ア)  中国9社は,次の事項を中国地区内の取引先販売店及び需要
者に周知徹底させること。
 昭和60年5月上旬に行った中国地区のセメントの販売数量
制限に関する決定を破棄した旨
 平成元年9月26日に行った中国地区における普通ポルトラ
ンドセメント及び高炉セメントの需要者渡し販売価格の引上
げに関する決定を破棄した旨
 今後,共同して,セメントの販売数量及び販売価格を決定
せず,各社がそれぞれ自主的に定める旨
(イ)  中国9社は,今後3年間,毎月,中国地区内におけるセメン
ト販売数量を当委員会に報告すること。
(2) 独占禁止法第8条第1項第1号違反事件
 社団法人四国電気・管工事業協会電気工事部会(平成2年(勧)第2
号),社団法人四国電気・管工事業協会管工事部会(平成2年(勧)第3
号),社団法人香川県電気工事業協会(平成2年(勧)第4号)及び社団
法人香川県管工事業協会(平成2年(勧)第5号)に対する件
第1 社団法人四国電気・管工事業協会電気工事部会に対する件
1 関係人について
違反事実について
 社団法人四国電気・管工事業協会電気工事部会(以下「電気工事部
会」という。)は,昭和62年3月10日に開催した経営委員会において,
下記事項の決定に基づき,部会員に話合い等により受注予定者を決定
させていた。
 部会員は, 原則として次に掲げる四国地区の電気工事について,
入札参加の指名を受けた場合は,話合いにより当該工事の受注予定
者を決定すること。
 国及び国が出捐している公団,公社等が入札により発注する電
気工事については,その見積金額が500万円以上のもの
 香川県の区域に所在する地方公共団体(香川県及び高松市を除
く。)及びこれらが出捐している公社等が入札により発注する電
気工事については,その見積金額が500万円以上のもの
 徳島県が入札により発注する電気工事については,その見積金
額が1億円以上のもの
 話合いにより受注予定者が決定できないときは,各部会員の週去
における受注金額等を考慮して定めた一定の基準に基づいて受注予
定者を決定すること。
排除措置について
 電気工事部会は,前記決定を破棄すること。
 同部会は,次の事項を四国地区の電気工事を入札により発注する
官公庁等及び四国地区において電気工事業を営む者に周知徹底させ
ること。
 上記アに基づいて採った措置
 今後,同部会は,部会員に話合い等により受注予定者を決定さ
せる行為をせず,部会員がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,同部会は,部会員に話合い等により受注予定者を決定させ
る行為を行わないこと。
第2 社団法人四国電気・管工事業協会管工事部会に対する件
関係人について
違反事実について
 社団法人四国電気・管工事業協会管工事部会(以下「管工事部会」と
いう。)は,昭和63年5月13日に開催した部総会において,下記事項の決
定に基づき,部会員に話合い等により受注予定者を決定させていた。
 部会員は,原則として次に掲げる四国地区の管工事について,入
札参加の指名を受けた場合は,話合いにより当該工事の受注予定者
を決定すること。
 国及び国が出捐している公団,公社等が入札により発注する管
工事については,その見積金額が1,000万円以上のもの
 香川県の区域に所在する地方公共団体及びこれらが出捐してい
る公社等が入札により発注する管工事については,その見積金
額が5,000万円以上のもの
 話合いにより受注予定者が決定できないときは,各部会員の過去
における入札参加の指名を受けた回数,受注金額等を考慮して定め
た一定の基準に基づいて受注予定者を決定すること。
排除措置について
 管工事部会は,前記決定を破棄すること。
 同部会は,次の事項を四国地区の管工事を入札により発注する官
公庁等及び四国地区において管工事業を営む者に周知徹底させるこ
と。 
 上記アに基づいて採った措置
 今後,同部会は,部会員に話合い等により受注予定者を決定さ
せる行為をせず,部会員がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,同部会は,部会員に話合い等により受注予定者を決定させ
る行為を行わないこと。
第3 社団法人香川渠電気工事業協会に対する件
関係人について
違反事実について
 社団法人香川県電気工事業協会(以下「香電協会」という。)は,
昭和62年3月10日に開催した理事会において,下記事項の決定に基づ
き,会員に話合い等により受注予定者を決定させていた。
 会員は,香川県等が入札により発注する電気工事について,入札
参加の指名を受けた場合は,話合いにより当該工事の受注予定者を
決定すること。
 話合いにより受注予定者が決定できないときは,各会員の過去に
おける受注金額等を考慮して決めた一定の基準に基づいて受注予定
者を決定すること。
排除措置について
 香電協会は前記決定を破棄すること。
 同協会は,次の事項を電気工事を入札により発注する香川県等及
び香川県の区域において電気工事業を営む者に周知徹底させるこ
と。
a  上記アに基づいて採った措置
 今後,同協会は,会員に話合い等により受注予定者を決定させ
る行為をせず,会員がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,同協会は,会員に話合い等により受注予定者を決定させる
行為を行わないこと。
第4 社団法人香川県管工事業協会
関係人について
違反事実について
 社団法人香川県管工事業協会(以下「香管協会」という。)は,平成
元年6月5日に開催した理事会において,下記事項の決定に基づき,
会員に話合い等により受注予定者を決定させていた。
 会員は,香川県等が入札により発注する管工事について,入札参
加の指名を受けた場合は, 話合いにより当該工事の受注予定者を決
定すること。
 話合いにより受注予定者が決定できないときは,各会員の過去に
おける入札参加の指名を受けた回数,受注金額等を考慮して定めた
一定の基準に基づいて受注予定者を決定すること。
排除措置について
 香管協会は,前記決定を破棄すること。
 同協会は,次の事項を管工事を入札により発注する香川県等及び
香川県の区域において管工事業を営む者に周知徹底させること。
 上記アに基づいて採った措置
 今後,同協会は,会員に話合い等により受注予定者を決定させ
る行為をせず,会員が自主的に受注活動を行う旨
 今後、同協会は、会員に話合い等により受注予定者を決定させる
行為を行わないこと。
日本浄化槽送風機工業会に対する件(平成2年(勧)第17号)
関係人について
違反事実について
 日本浄化槽送風機工業会(以下「工業会」という。)は,小型浄化槽
用送風機(以下「小型浄化槽用ブロワ」という。)の販売価格の下落傾
向に対処するため,平成元年4月4日に開催した理事会において
(1)  会員が販売する浄化槽製造業者向け及び代理店向けの小型浄化槽
用ブロワの最低販売価格
(2)  上記(1)の最低販売価格を下回って販売している場合は, 同価格ま
で引き上げること
(3)  上記(1)及び(2)の実効を図るため,他の会員の得意先に対して新規
に取引を行わないこと並びに会員の得意先である浄化槽製造業者及
び代理店の名簿を相互に交換すること
を決定した。
排除措置について
 本件違反行為は既に終了していたため,独占禁止法第48条第2項
(既往の違反行為に対する措置勧告)の規定に基づき,工業会に対し,
次の措置を採るよう求めた。
(1)  会員の小型浄化槽用ブロワの販売価格及び販売の相手方の制限に
関して平成元年4月4日に行った決定を実施するため会員に配布し
た,会員の取引先である浄化槽製造業者及び代理店の名簿並びに代
理店マップと称する印刷物を回収して廃棄すること。
(2)  会員及び会員の小型浄化槽用ブロワの取引先に対し,会員の小型
浄化槽用ブロワの販売価格及び販売の相手方の制限に関して平成元
年4月4日に行った決定を破棄した旨及び今後,会員の小型浄化槽
用ブロワの販売価格及び販売の相手方の制限に関する決定をせず,
会員がそれぞれ自主的に決める旨を周知徹底させること。
(3) 独占禁止法第8条第1項第3号,第4号又は第5号違反事件
仙台港輸入木材調整協議会に対する件(平成2年(勧)第16号)
1 関係人について

違反事実について
(1)  仙台港輸入木材調整協議会(以下「仙台港調整会」という。)は,
非会員には保税上屋を利用させないことにより,仙台港での木材の
輸入を行わせないこととし,その具体策として,非会員から保税上
屋の利用の申込みがあってもこれを拒否するとともに,規約におい
て会員となる木材輸入業者の資格を宮城県輸入木材協同組合(以下
「輸入協組」という。)の組合員に限定し,同調整会への木材輸入業
者の新規加入を事実上制限している。
(2)  仙台港調整会は,非会員が仙台港において木材の輸入を行うこと
を阻止するため,港湾運送事業者に対し,かねてから非会員の輸入
木材の荷役業務を行わないよう要請してきた。しかしながら,非会
員の輸入木材が荷揚げされたことから,昭和59年10月,港湾運送事
業者に対し,非会員の輸入木材の荷役業務を行わないよう要請する
とともに,これに違反した場合の制裁措置を定めている。
(注) 法令の適用
(1) 前記2(1)及び(2) ……独占禁止法第8条第1項第3号
(2) 前記2(2)………………独占禁止法第8条第1項第5号
排除措置
(1)  規約において木材輸入業者の資格を輸入協組の組合員に限定して
いる部分を削除すること。
(2)  港湾運送事業者に非会員の輸入木材の荷役業務を行わせない旨の
決定を破棄すること。
(3)  上記ア及びイに基づいて採った措置を会員に通知するとともに,
宮城県における木材の輸入業者である非会員に対し周知徹底させる
こと。
(4)  今後,非会員の木材の輸入を不当に制限する行為を行わないこと。
社団法人上伊那歯科医師会に対する件(平成3年(勧)第1号)
関係人について
違反事実について
(1)  社団法人上伊那歯科医師会(以下「上伊那歯科医師会」という。)
は,伊那市及びその周辺地区において歯科医療機関を開設する者が
増加することが予想されたため,昭和51年ごろからその対策につい
て検討してきたところ,昭和52年3月26日,「社団法人上伊那歯
科医師会医療機関適正配置委員会」(以下「適正配置委員会」とい
う。)を設置することを決定し,次いで,同年l0月31日,適正配置委
員会の運営方法について定めた「社団法人上伊那歯科医師会適正配
置委員会規程」〈以下「委員会規程」という。)を決定した。
(2)  その後,上伊那歯科医師会は,昭和53年3月30日,適正配置委員
会において審議する歯科医療機関の開設等の基準等を定めた「社団
法人上伊那歯科医師会適正配置要綱」(以下「適正配置要綱」とい
う。)を決定した。
 適正配置要綱は,その後3度にわたって改定されているが,その
内容として,
 歯科医療機関の開設希望者は,上伊那歯科医師会に入会するこ

入会申込みに当たっては,入会申込書に,上伊那歯科医師会の
定める適正配置要綱等の諸規程を遵守する旨の誓約書を添付して
提出すること
 歯科医療機関を開設しようとする場合には,開設に関する申出
書を同会に提出し,適正配置委員会で当該申出の適否の審議を受
けること
 上記イの申出書を提出できる者は,歯科医療機関の開設前に同
会が実施する所定の研修を終了した者とすること
 歯科医療機関の設置場所の配置基準は,原則として既設歯科医
療機関から最短道路距離で200メートルとすること
 既設歯科医療機関の分設は認められないこと
 既設歯科医療機関の移転は,あらかじめ適正配置委員会の審議
を受けること
等が定められていた。
(3)  上伊那歯科医師会は,会員から歯科医療機関の開設等の申出が
あった場合は,適正配置委員会及び理事会において,前記の委員会
規程及び適正配置要綱に基づき,当該申出について承認又は不承認
の決定を行っていた。
(4)  本件について,当委員会が審査を開始したところ,上伊那歯科医
師会は,平成2年10月26日,臨時総会を開催して,前記の委員会規
程及び適正配置要綱を破棄する旨を決定した。
排除措置
 前記の委員会規程及び適正配置要綱を破棄した旨を会員に通知す
るとともに長野県に所在する歯科医師に周知徹底させること。
 今後,会員の行う歯科医療機関の開設,分設又は開設者の継承を
制限する行為を行わないこと。
(4) 独占禁止法第19条違反事件
(株)ヤシロに対する件(平成2年(勧)第8号)
関係人について
違反事実について
(1)  (株)ヤシロ(以下「ヤシロ」という。)は,平成元年5月ごろか
らフランス共和国パリ市11区ティトン通り27番地に所在するグ
ルーム・ディストリビュシオン・エス・アー・エル・エル(以下「グ
ルーム社」という。)が販売するハンドバッグ等の商品(以下「グ
ルーム社商品」という。)をャシロの関連会社である八代商事株式
会社を通じて購入し,これを国内の百貨店に販売しようとしてい
た。
 一方,東京都新宿区に所在する株式会社フジサンケイリビング
サービス(以下「フジサンケイ」という。)は,同商品を輸入して
フランス共和国パリ市における小売価格と同程度の価格で日本国内
の消費者に販売することを企図し,平成元年8月1日,「この価格を
付したグルーム社商品を掲載した「コレクション・アイ’89秋冬号」
と題する商品カタログ誌を発行した。
(2)  ヤシロは,平成元年8月18日ごろ,上記商品カタログ誌によりフ
ジサンケイが日本国内においてグルーム社商品を自社の希望小売価
格より大幅に低い価格で販売することを知り,これを放置すると自
社の取引先である百貨店におけるグルーム社商品の販売に重大な支
障が生じるおそれがあると考え,同年8月21日,グルーム社に対
し,フジサンケイとの取引を停止するよう要請した。
 このためフジサンケイは,グルーム社からグルーム社商品を仕入
れることができなかったものである。
排除措置
(1)  平成元年8月21日にグルーム社に対し,同社とフジサンケイとの
取引を停止するようにする旨の要請を撤回すること。
(2)  上記(1)に基づいて採った措置をフジサンケイに通知すること。
 (株)松葉屋に対する件,(株)マルイチ商事に対する件,(株)光陽に対
する件,(株)一世に対する件,(株)ワールドアオヤマに対する件
(平成
2年(勧)第9号,第11号,第12号,第13号,第14号)
関係人について
違反事実について
(1) ゲームボーイとドラクエⅣの販売をめぐる状況
ゲームボーイ
 任天堂(株)が平成元年4月21日発売開始した携帯用コンピュー
タゲーム機をいう。ゲームボーイは,発売開始後の平成元年7月
ごろから人気が出始め,その後小売業者にとって入荷量の確保が
困難な状況が続いた。
 (株)一世,(株)光陽,(株)マルイチ商事の二次卸3社は,平成
元年11月以降ゲームソフト3本を購入することを条件にゲーム
ボーイ1台を販売すること等を商品案内を取引先小売業者に送付
する等して通知し,かかる販売条件に応じて購入を希望した小売
業者に対し,各社に在庫となっているゲームソフトを抱き合わせ
て購入させた。
ドラクエⅣ
 (株)エニックスが平成2年2月11日発売開始したゲームソフト
をいう。ドラクエⅣは,ドラゴンクエスト・シリーズの前3作が
いずれも人気ゲームソフトとなったところから,前人気が高く,
同ゲームソフトの発売時には消費者が店頭に殺到することが予想
されたため,小売業者な同ゲームソフトの入荷量の確保に躍起と
なる状況にあった。
 二次卸4社は,平成元年12月以降ゲームソフト3本を購入する
ことを条件にドラクエⅣ1本を販売すること等を商品案内を取引
先小売業者に送付する等して通知し,かかる販売条件に応じて購
入を希望した小売業者に対し,各社に在庫となっているゲームソ
フトを抱き合わせて購入させた。
 また,(株)松葉屋は,二次卸である(株)光陽に対しゲームソフ
トの種類及び数量の明細を通知し,(株)松葉屋に在庫となってい
るゲームソフトを抱き合わせて購入させた。
(2) 抱き合わせ販売の概要
 卸売業者5社が行った抱き合わせ販売の概要は次のとおりであ
る。
ゲームボーイ
ドラクエⅣ

排除措置
 本件行為は,いずれも既に終了しているため,独占禁止法第48条第
2項の規定に基づき,各関係人に対し次の措置を採るよう求めた。
(1)  卸売業者5社は,次の事項を取引先小売業者((株)松葉屋につい
ては,二次卸を含む。)に周知徹底させること。
 ゲームボーイ又はドラクエⅣを販売する条件として, 自社に在
庫となっていた他のゲームソフトを抱き合わせて購入させていた
が,かかる行為を取りやめたこと。
 今後,上記行為と同様な行為は行わないこと。
(2)  卸売業者5社は,今後,家庭用テレビゲーム機又は家庭用テレビ
ゲーム機用ゲームソフトの販売に当たり,取引先販売業者に対し,
自社に在庫となっている他のゲームソフトを抱き合わせて購入させ
ないこと。