第10章 不公正な取引方法の指定 及び運用

第1 概  説

 独占禁止法における不公正な取引方法の規制については,第19条で事業者
が不公正な取引方法を用いることを禁止しているほか,事業者及び事業者団
体が不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際契約を締結するこ
と,事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるように
すること,会社及び会社以外の者が不公正な取引方法により株式を取得し又
は所有すること,会社が不公正な取引方法により役員の兼任を強制するこ
と,会社が不公正な取引方法により合併することなどの行為を禁止している
(第6条第1項,第8条第1項,第10条第1項,第13条第2項,第14条第1
項,第15条第1項等)。
 不公正な取引方法として実際に規制される行為の具体的な内容は,当委員
会が法律の枠内で告示により指定することとされている(第2条第9項,第
72条)。
不公正な取引方法に関しては,前記の規定に違反する事件の処理のほか,
不公正な取引方法の指定に関する調査,不公正な取引方法の防止のための指
導の業務がある。
 ここ数年来,事業者の流通分野に対する関心の高まりとともに不公正な取
引方法に関する照会が増加しており,当委員会ではこれらの相談に応ずるこ
とにより違反の未然防止に努めている。

第2 不公正な取引方法に関する実態調査及び改善指導

新  聞
 新聞業においては,独占禁止法及び景品表示法に基づく告示により,押
紙,拡材・無代紙の提供等の行為は禁止されているにもかかわらず,これ
らに係る違反事例の申告や情報提供が後を絶たない。そこで,当委員会
は,これらの全国的,全般的な実態を把握し,併せて新聞業における取引
の公正化を図るために,従来から各種の調査を実施するとともに新聞公正
取引協議委員会に対し,随時指導を行ってきている。
 本年度においては,昨年度に引き続き,当委員会の消費者モニターに対
し,拡材・無代紙の提供の有無等について,アンケート調査を実施するな
ど正常化の監視に努めるとともに,その調査結果を踏まえて,新聞公正取
引協議委員会に対し,問題点の改善指導及び正常化の推進について要望を
行った。
拘束預金
 当委員会は,昭和38年4月,金融機関の行う歩積・両建てなどのいわゆ
る拘束預金について,これが金融機関の取引上の優越した地位の濫用行為
(独占禁止法第2条第9項第5号,一般指定第14項)に該当する疑いがある
として金融機関に対し警告を行い,以後その自粛状況を監視し,併せてこ
れらの行為を規制する資料とするための実態調査を行ってきた。
 本年度は,例年のとおり,全国に所在する中小企業(中小企業基本法の
定義による。)の中から,製造業,建設業,卸売業,小売業及びサービス
業の5業種について任意抽出した4,000社について,第42回調査(平成2
年5月)を実施した。4,000社のうち,回答のあったものは,1,585社で
あった。



(1) 預金を拘束されている企業数及び借入件数比率(第1表,第2表)
 今回の調査結果によれば,金融機関から借入れのある1,585社のうち,
465社(29.3%)が何らかの形で預金を拘束されている。
 その内訳は,狭義の拘束預金があるものが159社(10.0%),事実上の
拘束預金があるものが333社(21.0%)である。
 次に,これを借入件数で見ると,1,585社は延べ3,494の金融機関から
借入れを受けており,そのうち何らかの形で預金を拘束されているものは
910件(26.0%)である。
 その内訳は,狭義の拘束預金があるものが5.7%,事実上の拘束預金が
あるものが21.2%である。
(2) 拘束預金比率(第3表)
 第3表は,1,585社の借入金の総合計額に対する拘束預金の総合計額の
比率を金融機関別に示したものである。
(3) 拘束預金比率等の推移(第4表)
 第4表は,第38回調査(昭和61年5月末)以降の拘束預金比率等の推移
を示したものである。
 拘束預金比率の推移を見ると,今回の調査においても,狭義の拘束預金
比率,事実上の拘束預金比率及び広義(「狭義」と「事実上」を合わせた
もの)の拘束預金比率は減少しており,長期的には漸減傾向にある。

第3 不公正な取引方法に関する相談状況

 独占禁止法の不公正な取引方法に関する電話・来庁等による一般からの相
談に対しては,従来から,積極的に応じてきている。
 また,平成元年度から,特許・ノウハウライセンス契約に係る事前相談制
度を導入している。本年度においては,事前相談制度に基づき,国際契約に
ついて3件の相談があった。