第11章 適用除外共同行為
第1 概 説
1 | 独占禁止法適用除外制度の概要 | ||||||||||||
独占禁止法は,市場における公正かつ自由な競争を促進することによ り,一般消費者の利益を確保するとともに国民経済の民主的で健全な発達 を促進することを目的とし,これを達成するために,私的独占,不当な取 引制限,不公正な取引方法等を禁止しているが,他方,他の経済政策目的 を達成する観点から,特定の分野における一定の行為に独占禁止法の禁止 規定等の適用を除外するという独占禁止法適用除外制度を設けている。 独占禁止法適用除外制度の根拠規定は,①独占禁止法自体に定められて いるもの,②適用除外法に定められているもの,③独占禁止法及び適用除 外法以外の個別の法律に定められているものに分けることができる。
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2 | 通用除外共同行為制度の概要 | ||||||||||||
独占禁止法適用除外制度により独占禁止法の禁止規定等の適用が除外さ れてし・る行為としては,カルテルが大部分を占めており,本年度末現在, 37の法律において,58のカルテル制度(一つの法律で複数のカルテル制度 を規定している場合には,複数に数えた。)が独占禁止法の適用除外とされ ている。これらの独占禁止法適用除外カルテルが許容されている理由は, おおむね,次の5類型に分類される。
カルテル及び合理化カルテルについては,当委員会が認可を行っており, また,特定の事業についての法律に基づくものは,一般に,当委員会の同 意を得,又は当委員会に協議若しくは通知を行って主務大臣が認可等を行 うこととなっている。 また,独占禁止法適用除外カルテルの認可については,一般に,不況の 克服等当該適用除外カルテル制度の目的を達成するために必要であること 等の積極的要件のほか,当該カルテルが行き過ぎて弊害をもたらさないよ うに,カルテルの目的を達成するために必要な限度を超えないこと,不当 に差別的でないこと等の消極的要件を充足することがそれぞれの法律によ り必要とされている。 さらに,このような適用除外カルテルは,不公正な取引方法に該当する 行為が用いられた場合等には,独占禁止法の適用除外とはならないとされ ている。 |
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3 | 適用除外共同行為の動向 | ||||||||||||
当委員会が認可し,又は当委員会の同意を得,若しくは当委員会に協議 若しくは通知を行って主務大臣が認可等を行ったカルテルの件数は,昭和 40年度末の1,079件(中小企業団体の組織に関する法律に基づくカルテル のように,同一業種について都道府県等の地区別に結成されている組合ご とにカルテルが締結されている場合等に,同一業種についてのカルテルを 1件と算定すると,件数は415件)をピークに減少傾向にあり,本年度末 現在では,248件(同51件)となった。そのうち,中小企業団体の組織に 関する法律に基づくもの等や小企業関係が大部分を占めている。 また,当委員会が届出を受け付けた消費税の転嫁に係るカルテルの件数 は,後記第4のとおりである。 |
第2 独占禁止法に基づく適用除外共同行為
1 | 不況に対処するための共同行為 |
独占禁止法は,事業者及び事業者団体によるカルテルを原則的に禁止し ているが,不況が深刻化した場合には,厳格な認可要件の下に,一時的, 例外的に不況に対処するため生産業者等が当委員会の認可を得て行う共同 行為(以下「不況カルテル」という。)を認めている。 しかしながら,平成元年10月以降,不況カルテルは実施されていない。 |
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2 | 企業合理化のための共同行為 |
独占禁止法は,第24条の4において,技術の向上,品質の改善,原価の 引下げ,能率の増進その他企業の合理化を遂行するため,特に必要がある 場合には,需要者の利益を害するおそれがないこと等一定の条件の下に, 生産業者等が,技術若しくは生産品種の制限,原材料若しくは製品の保管 若しくは運送の施設の利用又は副産物,くず若しくは廃物の利用若しくは 購入に係る共同行為(以下「合理化カルテル」という。)を当委員会の認 可を得て実施することを認めている。 しかしながら昭和57年1月以降,合理化カルテルは実施されていない。 |
第3 特別法に基づく適用除外共同行為等
1 | 概 要 |
本年度において,特別法に基づき主務大臣から当委員会に対し同意を求 め,又は協議,通知をしてきた共同行為等の処理状況は第1表のとおりで あり,このうち主な特別法に基づく共同行為等の動向は,次のとおりであ る。 なお,内航海運組合法,環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法 律,砂糖の価格安定等に関する法律,石炭鉱業合理臨時措置法,卸売市場 法,港湾運送事業法,酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律,真珠養 殖等調整暫定措置法及び果樹農業振興特別措置法に基づく共同行為に関す る同意,協議等は1件もなかった(第1表)。 |
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2 | 中小企業団体の組織に関する法律に基づく共同行為 |
本年度において,中小企業団体の組織に関する法律に基づく共同行為の うち,終了したものは安定事業4件であり,新たに設定されたものはな かった(第2表)。 本年度末現在における同法に基づく共同行為の件数は10業種170件(前 年度末は11業種174件)であり,すべて安定事業であって,合理化事業は 行われていない。 また,本年度においては,安定事業に係る事業活動規制命令は終了した ものも,新たに設定されたものもなかった。本年度末現在発動されている 事業活動規制命令は9件である。 本年度において,制限事項の一部を削除する,安定事業の緩和が行われ た(第3表)。 なお,同事業に係る事業活動規制命令等について,制限事項の緩和が行 われた(第4表)。 |
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3 | 輪出入取引法に基づく共同行為 |
本年度において,輸出入取引法に基づき新規に設定された共同行為はな く,本年度中に終了した共同行為は10件(うち1件は,年度内に設定,廃 止されている。)であり,本年度末現在における同法に基づく共同行為の 件数は34件となっている(第5表)。 また,本年度において新規に定められたアウトサイダー規制命令はな く,本年度末現在におけるアウトサイダー規制命令の件数は10件となって いる。 |
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4 | 漁業生産調整組合法に基づく共同行為 |
漁業生産調整組合法に基づき漁業生産調整組合が共同行為を行う場合に おいて,農林水産大臣がその認可をしようとするときは,当委員会に協議 しなければならないこととなっている。 本年度において協議を受けたものは,全国さんま棒受網漁業生産調整組 合が実施している漁船の登録,臨時休漁,陸揚数量の制限及び一時陸揚げ の制限に係る調整規程の期間の延長についての1件である。 これに対し,当委員会は,所要の調査を行った結果,特に問題ないと認 め,異議ない旨回答した。 本年度末現在における同法に基づく調整規程の件数は3件である。 |
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5 | 漁業再建整備特別措置法に基づく整備計画 |
漁業再建整備特別措置法は,政令で定めた業種に係る漁業協同組合等の 団体が行う漁船の隻数の縮減等の整備計画について農林水産大臣が同法第 6条第1項の規定に基づき認定しようとするときは,同法第16条の規定に 基づき当委員会に協議しなければならないこととしている。 本年度においては,以西底びき網漁業の整備計画に関し,農林水産大臣 から協議を受けた。これに対し,当委員会は,所要の調査を行った結果, 特に問題はないと認め,異議ない旨回答した。 |
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6 | 輸出水産業の振興に関する法律に基づく共同行為 |
輸出水産業の振興に関する法律に基づき輸出水産業組合が共同行為を行 う場合において,農林水産大臣が調整規程の届出を受理したときは,その 旨を当委員会に通知しなければならないこととなっている。 本年度において通知を受けたものは,日本水産缶詰輸出水産業組合が実 施しているさば及びいわし缶詰に係る調整規程の期間の延長に関するもの であったが,所要の調査を行った結果,問題はなかった。 本年度末現在における同法に基づく調整規程の件数は1件である。 |
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7 | 内航海運組合法に基づく共同行為 |
内航海運組合法に基づき内航海運組合又は内航海運組合連合会が共同行 為の設定,変更及び廃止を行う場合において,運輸大臣がその認可をし, 又はその届出を受理したときは,その旨を当委員会に通知しなければなら ないこととなっている。 本年度においては,運輸大臣から通知を受けたものはない。 本年度末現在における同法に基づく調整規程の件数は2件である。 |
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8 | 環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律に基づく共同行為 |
環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律に基づき環境衛生同業組 合又は環境衛生同業組合連合会が適正化事業を行う場合において,厚生大 臣(都道府県知事)がその認可をしようとするときは,当委員会に協議し なければならないこととなっている。 本年度末現在における同法に基づく共同行為である適正化規程は,理容 業の1業種のみであり,都道府県理容業環境衛生同業組合によって36件設 定されている。 なお,連合会が設定する適正化規程の基本となる適正化基準は,本年度 末現在,理容業のほか,美容業,クリーニング業の3業種について存続し ている。 |
第4 消費税の転嫁の方法及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為
平成元年4月1日からの消費税の導入に当たり,消費税の円滑かつ適正な
転嫁のため,「消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為」(転嫁カルテル)
及び「消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為」(表示カルテル)
を,一定の要件の下で独占禁止法に違反することなく行えるようにするた
め,本年度末(平成3年3月31日)まで,臨時・暫定的な立法措置(消費税
法附則第30条の規定による適用除外法の一部改正)が講じられたが,本年度
末をもって期限の到来により失効した。
1 | 届出の受理件数 | ||||
消費税法施行後(昭和63年12月30日)から本年度末までの届出件数は 「転嫁カルテル」が2,049件,「表示カルテル」が2,540件,合計4,589件で あった。 |
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2 | 届出の状況 | ||||
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