第15章 国機関係業務

第1 国際機関

経済協力開発機構(OECD)
(1) 競争政策委員会
 競争政策委員会(Committee on Competition Law and Policy,
以下「CLP委員会」という。)は,OECDに設けられている各種委
員会のうちの一つで,1961年12月に設立された。我が国は,1964年の
OECD加盟以来,その活動に参加してきている。CLP委員会は,
原則として年2回本委員会を開催し,また,その下に各種の作業部会
を設けて,随時会合を行っている(第1図)。本委員会では,加盟各国
の競争政策に関する年次報告が行われるほか,各作業部会の報告書の
検討,その時々の重要問題についての討議が行われている。
 本年度における会議の開催状況は,次のとおりである。
 1990年6月の第57回本委員会においては,日本,ノルウェー,フィ
ンランド,フランス,ギリシャ,アイルランド,イタリア,ルクセン
ブルグ,英国及び米国がそれぞれ競争政策について年次報告を行っ
た。このうち我が国はノルウェーとともに,年次報告国別審査(審査
担当国として選出された国が,審査対象国の年次報告をあらかじめ受
け取り,質問を事前に準備し,質問する)対象国であり,我が国並び
に審査担当国であるカナダ及びデンマークを中心に活発な質疑応答が
行われた。我が国の年次報告の審査に先立ち,梅澤委員長から,我が
国の競争政策に関する報告が行われた。
 10月の第58回本委員会においては,オーストリア及びニュージーラ
ンドの年次報告国別審査,オーストラリア,ベルギー, カナダ,デン
マーク,ドイツ,オランダ等の年次報告を行ったほか,カルテル行為
の探知に関する検討等が行われた。
 1991年3月の第59回本委員会は,現行の国別審査の見直しについて
検討を行うために通常6月に行われている本委員会を繰り上げて開催
された。その他の議題としては,日本,フィンランド,フランス,ギ
リシャ,アイルランド,スウェーデン,英国及び米国についての年次
報告,競争政策に関する国際協力についての検討等が行われた。
 CLP委員会に属する各作業部会の本年度における主要な活動は,
次のとおりである。
(ア)  第1作業部会では,「貿易に対する非関税障壁と競争」について
検討が行われ,報告書案の取りまとめ作業が行われた。
(イ)  第2作業部会では,競争政策と規制緩和に関する検討作業の一環
として行ってきた陸運業に関する報告書を取りまとめ,また,「競
争政策と放送業」に関する検討を開始した。
(ウ)  第3作業部会では,各国競争当局間の国際協力上の問題につい
て,通報・意見交換等の状況報告,国際合併の事例研究等が行われ
た。
(エ)  第4作業部会では,競争政策とフランチャイジングに関する報告
書の取りまとめ作業が行われた。
(2) 消費者政策委員会
 消費者政策委員会(Committee on ConsumerPolicy,以下「CCP
委員会」という。)は,加盟国の消費者行政についての情報交換及び調
査・検討のための国際協力の場として,1969年11月に期限付き(1972
年末まで)で設置することとされた。この期限はその後4度の延長決
議を経て1992年末までとなっている。CCP委員会は,年2回本委員
会を開催するほか,各種の作業部会を設けて随時会合を行っている。
 1991年3月現在,活動している作業部会は,「消費者の安全性」作
業部会及び「市場の透明性・消費者情報」作業部会の2部会である。
 1990年4月26日~27日に開催された第40回本委員会では,加盟国に
おける製造物責任ルール等について検討され,この問題に関する報告
書案について討議が行われた。
 また,危険製品の回収手続に関する1981年理事会勧告の見直しにつ
いても検討された。
 10月4日~5日に開催された第41回本委員会では,加盟国における
テレビ広告に関する規制及び自主規制について討議され,「金融サー
ビスに関する消費者情報」についての報告書が承認された。
国際連合貿易開発会議(UNCTAD)
 UNCTADでは,極めて多岐にわたる南北問題の討議が行われている
が,とくに当委員会に関係があるものとして,「制限的商慣行」及び「国際
技術移転行動規範」 の問題がある。
(1) 制限的商慣行
 1980年の第35回国連総会において,「制限的商慣行規制のための多
国間の合意による一連の衡平な原則と規則」(以下「原則と規則」とい
う。)が,国連加盟国に対する勧告として採択された。この「原則と規
則」は,国際貿易,特に発展途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を
及ぼす制限的商慣行を識別し,規制することにより,国際貿易と経済
発展に資することを目的としており,その主な内容は次のとおりであ
る。
(ア)  国際貿易,特に発展途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を及ぼ
すことになり,市場アクセスを制限し,又は競争を不当に制限する
こととなる場合に,
 競争企業間の協定,取決めによる次のような行為を行わないこ
と。
 ①価格協定,②入札談合,③市場・顧客分割,④販売・生産数
量割当てなど
 市場支配力の優越的地位を濫用することにより,次のような行
為・行動を行わないこと。
 ①競争者を排除するための原価以下の価格付けなどの競争者に
対する略奪的行為,②価格差別,③合併・取得,④輸出商品の再
販売価格維持行為,⑤並行輸入の阻止など
(イ) 事業が行われている国の所管官庁が制限的商慣行の規制を行うの
に際し,企業はその所管官庁と協議・協力し,情報を提供するこ
と。
 「原則と規則」の規定に関する制限的商慣行についての調査研究,
情報収集等を行うために制限的商慣行政府間専門家会合が設置されて
いる。
 本年度においては,1990年4月23日~27日にジュネーブにおいて第
9回会合が開催され,「原則と規則」 に関する見直し作業について検
討が行われた。
 また,11月26日~12月 7日にジュネーブにおいて,「原則と規則」の
全面見直しのための第2回国連会議が開催され,制限的商慣行に関す
る情報提供及び協議手続の明確化(情報提供及び協議を効果的に行う
ためのUNCTAD事務局によるチェックリストの作成等),技術協
力の強化(実施済技術協力の評価等によるフォローアップ,各種セミ
ナーの開催)等を内容とする決議が採択された。

(2) 技術移転
 国際的な技術移転取引における制限的商慣行の規制を主な内容とする
国際技術移転行動規範を作成するために国際技術移転行動規範国連会議
が設けられている。
 1976年から開始された同規範の具体的な草案作成作業が難航したこと
から,1981年には同規範の完成促進のために暫定委員会が設置された。
 その後,1983年に第5回国連会議,1985年に第6回国連会議が開催さ
れたが,同規範の最終合意には至らなかった。
 なお,本年度においては,特に進展はなかった。
その他
 当委員会は,OECDやUNCTAD以外にも,国連多国籍企業委員会,
世界知的所有権機関(WIPO),FAO/WHO合同食品規格委員会等で
行われている討議に対しても,競争政策及び表示規制の観点から積極的に
対応することとしている。

第2 国際協力

海外独占禁止当局との2国間意見交換
 近年,各国共通の競争政策上の問題が生じてきており,独占禁止法の分
野における意見交換等の国際的連携が重要になってきている。このため,
当委員会は,我が国との経済交流が特に活発であるアメリカ,ドイツ,フ
ランス,EC等との競争政策における協力関係を推進することとし,これ
らの独占禁止当局との間で定期的に競争政策に関する意見交換を行ってき
ている。
 本年度における意見交換の開催状況は,次のとおりである。
アジア・大洋州独占禁止政策情報センター
 アジア・大洋州独占禁止政策情報センターは,アジア・大洋州地域の12
か国(注)が,その競争政策に関する情報を交換することを通して参加各
国の競争政策を発展させることを目的として,1980年9月に当委員会事務
局内に設けられているものであり,本年度においても,競争政策に関する
資料を参加各国に配布した。
(注)  12か国は,オーストラリア,インド,インドネシア,マレーシア,ニュー
ジーランド,パキスタン,フィリピン,韓国,シンガポール,スリランカ,
タイ及び日本である。

第3 海外調査

 我が国の競争政策の運営に資するため,諸外国の独占禁止法制及びその運
用状況についての情報の収集及び調査研究を行っている。
 本年度においては,各国の流通・取引慣行,競争法違反行為に対する制裁
金・刑事罰に関する法制及びその運用,アメリカ・ECの独占禁止当局の政
策動向等に関して重点的に調査を行い,その内容の検討と紹介に努めた(諸
外国の競争政策の動向については,附属資料11参照)。