第5章 価格の同調的引上げに関する報告の徴収

第1 概   説

 独占禁止法第18条の2の規定により,年間国内総供給価額が300億円超
で,かつ,上位3社の市場占拠率の合計が70%超という市場構造要件を満た
す同種の商品又は役務につき,首位事業者を含む2以上の主要事業者(市場
占拠率が5%以上で第5位以内のもの)が,取引の基準として用いる価格に
ついて,3か月以内に,同一又は近似の額又は率の引上げをしたときは,当
委員会は,当該主要事業者に対し,当該価格の引上げ理由について報告を求
めることができる。
 この規定の運用については,当委員会は,その運用基準を明らかにすると
ともに,市場構造要件に該当する品目をあらかじめ調査し,これを運用基準
別表に掲げ,当該別表が改定されるまでの間,同別表に掲載された品目につ
いて価格の同調的引上げの報告徴収を行うこととしている。

第2 運用基準別表の改定

 当委員会は,市場構造要件について調査を実施し,別表の見直しを行って
おり,次のとおり,運用基準別表の改定を行った(平成3年8月 2日公表)。
これは,昭和63年の国内総供給価額及び市場占拠率に関する調査結果を踏ま
えて見直しを行ったものである。
 この結果,別表にシャッター,アルミサッシ,建設用クレーンなど23品目
及び昇降機保守業の1役務が新たに掲載され,ガラス製飲料容器など15品目
が削除されることとなった。改定後の別表掲載品目は82品目,1役務である
(第1表)。

         第1表 価格の同調的引上げ報告徴収対象品目
商  品


役  務

第3 価格の引上げ理由の報告徴収

 本年度において,独占禁止法第18条の2に規定する価格の同調的引上げに
該当すると認めてその引上げ理由の報告を徴収したものは,自動車用タイヤ
・チューブ,陰極線管用ガラスバルブ,鋳鉄管及びバス・トラックシャシー
の4件である。
 また,平成3年度中に行われた価格の同調的引上げについて,平成4年度
上期に価格の引上げ理由の報告徴収を行ったものは,冷延電気鋼帯、普通鋼
配管用鋼管,高抗張力鋼,ブリキ,魚肉ハム・ソーセージ及び一般日刊全国
新聞紙の6件である。
 各品目の価格引上げ理由の概要は以下のとおりである。

自動車用タイヤ・チューブ
 自動車用タイヤ・チューブの国内総供給価額は,昭和63年において
6,785億円であり,株式会社ブリヂストン(以下「ブリヂストン」とい
う。),横浜ゴム株式会社(以下「横浜ゴム」という。)及び住友ゴム工業
株式会社(以下「住友ゴム」という。)の上位3社の市場占拠率の合計は
75.3%である。首位事業者は,ブリヂストンであり,市場占拠率が5%以
上の事業者は,ブリヂストン,横浜ゴム,住友ゴム及び東洋ゴム工業株式
会社(以下「東洋ゴム」という。)の4社である。
 横浜ゴム及び住友ゴムは平成3年2月1日から,東洋ゴムは同年2月12
日から,ブリヂストンは同年2月21日から自動車用タイヤ・チューブのう
ち補修用自動車タイヤ・チューブの国内向け販売価格の引上げを実施した
が,この価格の引上げは,独占禁止法第18条の2に規定する価格の同調的
引上げに該当すると認められたので,当委員会は,平成3年11月7日,4
社に対して価格引上げ理由の報告を求めた。
(1) 補修用自動車タイヤ・チューブの価格引上げ状況
 価格引上げは,住友ゴム(平成2年12月27日),横浜ゴム(平成3年1
月10日),東洋ゴム(同年1月16日),ブリヂストン(同年1月28日)の順
で公表された。
 ブリヂストン,横浜ゴム,住友ゴム及び東洋ゴムの価格引上げの公表
日,取引先への通知日,価格引上げ予定日,実際に新価格で取引が行わ
れた日及び生産者販売価格の加重平均による引上げ状況は,下表のとお
りである。
(2) 各社の価格引上げ理由
 ブリヂストン,横浜ゴム,住友ゴム及び東洋ゴムから提出された報告
書によると,価格引上げの理由は,以下のとおりである。
ブリヂストン
 ブリヂストンは,補修用自動車タイヤ・チューブの価格引上げの主
たる理由として,原材料費(合成ゴム,カーボンブラック等),燃料
費,物流費等の上昇により,平成3年度上期(平成3年1月1日~6
月30日)の自動車用タイヤ・チューブ部門の総原価が平成2年度上期
(平成2年1月1日~6月30日)と比較して1トン当たり5.2%上昇
して,利益が減少することが見込まれたことを挙げている。
横浜ゴム
 横浜ゴムは,補修用自動車タイヤ・チューブの価格引上げの主たる
理由として,原材料費(合成ゴム,カーボンブラック等),燃料費,
人件費等諸経費の上昇により,平成3年度(平成3年1月1日~12月
31日)の補修用自動車タイヤ・チューブ部門の総原価が平成2年度
(平成2年1月1日~12月31日)と比較して1トン当たり6.0%上昇
して,目標としていた利益の確保が困難となったことを挙げている。
住友ゴム
 住友ゴムは,補修用自動車タイヤ・チューブの価格引上げの主たる
理由として,原材料費(合成ゴム,カーボンブラック等),物流費
人件費等諸経費の上昇により,平成3年年初見込みの補修用自動車タ
イヤ・チューブ部門の総原価が平成元年度(昭和64年1月1日~平成
元年12月31日)と比較して1トン当たり7.3%上昇して,利益が減少
することが見込まれたことを挙げている。
東洋ゴム
 東洋ゴムは,補修用自動車タイヤ・チューブの価格引上げの主たる
理由として,原材料費(合成ゴム,カーボンブラック等),燃料費,物
流費及び人件費の上昇により,平成3年度(平成3年4月1日~平成
4年3月31日)の補修用自動車タイヤ・チューブ部門の製造原価が平
成元年度(平成元年4月1日~平成2年3月31日)と比較して8.0%
上昇して,目標としていた利益の確保が困難となったことを挙げてい
る。
陰極線管用ガラスバルブ
 陰極線管用ガラスバルブの国内総供給価額は,昭和63年において1,554
億円であり,日本電気硝子株式会社(以下「日本電気硝子」という。)及び
旭硝子株式会社(以下「旭硝子」という。)の上位2社の市場占拠率の合計
は99.4%である。首位事業者は,日本電気硝子であり,市場占拠率が5%
以上の事業者は,日本電気硝子及び旭硝子の2社である。
 日本電気硝子及び旭硝子は,平成3年4月1日(旭硝子は一部同年3月
21日)から陰極線管用ガラスバルブのうちカラーテレビ用ガラスバルブの
販売価格の引上げを実施したが,この価格の引上げは,独占禁止法第18条
の2に規定する価格の同調的引上げに該当すると認められたので,当委員
会は,平成3年11月7日,2社に対して価格引上げの理由の報告を求め
た。
(1) カラーテレビ用ガラスバルブの価格引上げ状況
 日本電気硝子及び旭硝子の価格交渉開始日,交渉開始時の価格引上げ
予定日,実際の引上げ日及び販売価格の加重平均による引上げ状況は,
下表のとおりである。

(2) 各社の価格引上げ理由
 日本電気硝子及び旭硝子から提出された報告書によると,価格引上げ
の理由は,以下のとおりである。
日本電気硝子
 日本電気硝子は,カラーテレビ用ガラスバルブの価格引上げの主た
る理由として,原材料費(リサージ,炭酸ストロンチウム等),燃料
費, 物流費等の上昇により,平成2年10月~平成3年3月期のカラー
テレビ用ガラスバルブの製造原価が昭和63年10月~平成元年3月期と
比較して7.8%上昇すると見込まれ,さらに,平成3年度(平成3年
4月1日~平成4年3月31日)においては,平成2年度(平成2年4
月1日~平成3年3月31日)に対し,総原価が6.6%上昇することが
予想され,収益が悪化することが見込まれたことを挙げている。
旭硝子
 旭硝子は,カラーテレビ用ガラスバルブの価格引上げの主たる理由
として,原材料費(リサージ,炭酸ストロンチウム等),燃料費 物流
費等の上昇により,平成2年7月~9月期のカラーテレビ用ガラスバ
ルブの製造原価が昭和63年1月~6月期と比較して9.0%上昇するこ
とが見込まれ,陰極線管用ガラスバルブ部門の採算が極めて悪くなっ
ており,平成3年度において合理化に努めたとしても,なお採算の回
復が見込めなかったことを挙げている。
鋳鉄管
 鋳鉄管の国内総供給価額は,昭和63年において1,570億円であり,株式
会社クボタ(以下「クボ夕」という。),株式会社栗本鐵工所(以下「栗
本」という。)及び日本鋳鉄管株式会社(以下 「日本鋳鉄管」という。)の上
位3社の市場占拠率の合計は81.8%である。首位事業者は,クボタであ
り,市場占拠率が5%以上の事業者は,クボ夕,栗本及び日本鋳鉄管の3
社である。
 クボタは平成3年4月1日から 栗本は同年4月3日から,日本鋳鉄管
は同年4月19日から鋳鉄管の国内向け販売価格の引上げを実施したが,こ
の価格の引上げは,独占禁止法第18条の2に規定する価格の同調的引上げ
に該当すると認められたので,当委員会は,平成3年11月22日,3社に対
して価格引上げの理由の報告を求めた。
(1) 鋳鉄管の価格引上げ状況
 価格引上げは,クボ夕(平成2年11月28日),栗本(同年12月25日)の
順で2社が公表し,クボ夕,栗本及び日本鋳鉄管の3社すべてが取引先
へ通知している。
 クボ夕及び栗本の価格引上げの公表日並びにクボ夕,栗本及び日本鋳
鉄管の取引先への通知日,価格引上げ予定日,実際に新価格で取引が行
われた日及び建値の加重平均による引上げ状況は,下表のとおりであ
る。
(2) 各社の価格引上げ理由
 クボ夕,栗本及び日本鋳鉄管から提出された報告書によると,価格引
上げの理由は,以下のとおりである。
クボタ
 クボタは,鋳鉄管の価格引上げの主たる理由として,源材料費(外
注品受入費 鋼屑 塗料等),労務費 製造経費(外注加工費,支払運
賃,減価償却費等),販売費(運送費,労務費,保管料等)及び一般管
理費の上昇により,平成3年度(平成3年4月1日~平成4年3月31
日)の総原価が昭和62年度(昭和62年4月1日~昭和63年3月31日)
と比較して1トン当たり10.6%上昇して,目標としていた利益の確保
が困難になることが見込まれたことを挙げている。
栗 本
 栗本は鋳鉄管の価格引上げの主たる理由として,原材料費(鋼
屑,銑鉄等),労務費 外部工賃,製造経費(修繕費,減価償却費等),
物流費及び販売費用の上昇により,平成2年度上期(平成2年4月1
日~同年9月30日)の総原価が昭和61年度(昭和61年4月1日~昭和
62年3月31日)と比較して1トン当たり6.8%上昇したことにより,
目標としていた利益の確保が困難になることが見込まれたことを挙げ
ている。
日本鋳鉄管
 日本鋳鉄管は,鋳鉄管の価格引上げの主たる理由として,原材料費
(塗料,銑鉄,鋼屑等),労務費,物流費,減価償却費 修繕費等の上
昇により,平成3年度(平成3年4月1日~平成4年3月31日)の総
原価が平成元年度(平成元年4月 1日~平成2年3月31日)と比較し
て1トン当たり11.3%上昇して,収益が減少することが見込まれたこ
とを挙げている。
バス・トラックシャシー
 バス・トラックシャシーの国内総供給価額は,昭和63年において6,179
億円であり,三菱自動車工業株式会社(以下「三菱」という。),日野自動
車工業株式会社(以下「日野」 という。)及びいすゞ自動車株式会社(以下
「いすゞ」という。)の上位3社の市場占拠率の合計は87.2%である。首位
事業者は,三菱であり,市場占拠率が5%以上の事業者は,三菱,日野,
いすゞ及び日産ディーゼル工業株式会社(以下 「日産」という。)の4社で
ある。
 日野及びいすゞは平成3年11月1日から,三菱は同年12月1日から,日
産は同年12月20日から,バス・トラックシャシーのうちトラックシャシ一
の国内向け販売価格の引上げを実施したが,この価格の引上げは,独占禁
止法第18条の2に規定する価格の同調的引上げに該当すると認められたの
で,当委員会は,平成4年3月26日,4社に対して価格引上げの理由の報
告を求めた。
(1) トラックシャシーの価格引上げ状況
 価格引上げは,三菱(平成3年9月27日),日野(同年10月2日),日産
(同年10月7日),いすゞ(同年10月11日)の順で公表された。
 三菱,日野,いすゞ及び日産の価格引上げの公表日,取引先への通知
日,メーカー希望小売価格の引上げ日及びメーカー希望小売価格の加重
平均による引上げ状況は,下表のとおりである。
(2) 各社の価格引上げ理由
 三菱,日野,いすゞ及び日産から提出された報告書によると,価格引
上げの理由は,以下のとおりである。
三   菱
 三菱は,トラックシャシーの価格引上げの主たる理由として,原材
料費(機能部品,鋳造部品等),外注加工費,物流費,労務費,排ガス
規制対応による試験研究費,設備投資の減価償却費等諸経費の上昇に
より,平成3年度(平成3年4月1日~平成4年3月31日)のトラッ
クシャシー部門の総原価が平成元年度(平成元年4月1日~平成2年
3月31日)と比較して1台当たり平均10.1%上昇して,利益の減少が
予想されたことを挙げている。
日   野
 日野は,トラックシャシーの価格引上げの主たる理由として,原材
料費(外注部品,購入部品,普通鋼等),労務費,排ガス規制対応によ
る試験研究費,設備投資の減価償却費等諸経費の上昇により,平成3
年度(平成3年4月1日~平成4年3月31日)のトラックシャシー部
門の総原価が平成元年度(平成元年4月1日~平成2年3月31日)と
比較して1台当たり平均10.7%上昇して,収益が減少することが見込
まれたことを挙げている。
い す ゞ
 いすゞは,トラックシャシーの価格引上げの主たる理由として,原
材料費(購入部品,鉄鋼等),労務費 排ガス規制対応による試験研究
費,設備投資の減価償却費等諸経費の上昇により,平成2年度下期
(平成3年5月1日~平成3年10月31日)のトラックシャシー部門の
総原価が昭和63年度(昭和63年11月1日~平成元年10月31日)と比較
して1台当たり平均7.4%上昇して,収益の悪化が予想されたことを
挙げている。
日   産
 日産は,トラックシャシーの価格引上げの主たる理由として,原材
料費(鋳造部品,鉄鋼等),労務費,排ガス規制対応による試験研究
費,設備投資の減価償却費等諸経費の上昇により,平成3年度下期
(平成3年10月1日~平成4年3月31日)のトラックシャシー部門の
総原価が昭和63度下期(昭和63年10月1日~平成元年3月31日)と比
較して1台当たり平均8.8%上昇して,収益の減少が予想されたこと
を挙げている。
 鋼材4品目(冷延電気鋼帯,普通鋼配管用鋼管,高抗張力鋼,ブリキ)
 平成3年3月初旬,新日本製鐵株式会社(以下「新日鉄」という。)
が,主要鋼材を1トン当たり平均4,000円引き上げることとしたのに続
き,日本鋼管株式会社(以下 「NKK」という。),川崎製鉄株式会社(以
下 「川鉄」という。),住友金属工業株式会社(以下「佳金」という。),東
洋鋼鈑株式会社(以下「東洋鋼鈑」という。)等の鋼材メーカーもそれぞ
れ需要家との間で価格引上げ交渉を開始した。このうち,冷廷電気鋼帯,
普通鋼配管用鋼管 高抗張力鋼及びブリキの4品目(以下「鋼材4品目」
という。)の販売価格の引上げは,独占禁止法第18条の2に規定する価格
の同調的引上げに該当すると認められたので,当委員会は,平成4年7月
6日,鋼材4品目の主要事業者(市場占拠率が5%以上の事業者)5社に
対して価格引上げ理由の報告を求めた。
 鋼材4品目の昭和63年における国内総供給価額,上位3社の市場占拠
率,首位事業者及び主要事業者は,次表のとおりである。
(1) 鋼材4品目の価格引上げ状況
 鋼材4品目の価格引上げは,各社が,それぞれの需要家と個別に価格
交渉を進める形で行われた。各品目の主要事業者の価格交渉開始日,価
格引上げ予定時期,決着した引上げ時期及び実販売価格の加重平均引上
げ額は,次の各表のとおりである。
冷延電気鋼帯
普通鋼配管用鋼管
高抗張力鋼
ブ リ キ
(2) 各社の価格引上げ理由
 新日鉄 NKK,川鉄 佳金及び東洋鋼鈑から提出された報告書によ
ると,価格引上げの理由は,以下のとおりである。
 鋼材4品目について,各社に価格引上げ理由の報告を求めたところ,
東洋鋼鈑を除く各社は,鋼材の製造の特殊性を理由に,個別品目ではな
く鋼材の全体についての平均で価格引上げ理由を報告している。
新 日 鉄
 新日鉄は,価格引上げの主たる理由として,外注費,輸送費,設備
工事費, 原燃料費,諸資材費,人件費等の上昇により,平成3年度
(平成3年4月1日~平成4年3月31日)の鋼材の総原価が平成元年
度(平成元年4月1日~平成2年3月31日)と比較して1トン当たり
約5,400円上昇すると見込まれたことを挙げている。
N K K
 NKKは,価格引上げの主たる理由として,輸送費,原燃料費,諸
資材費,人件費,金利等の上昇により,平成3年度(平成3年4月1
日~平成4年3月31日)の鋼材の総原価が平成元年度(平成元年4月
1日~平成2年3月31日)と比較して1トン当たり約6,900円上昇す
ると見込まれたことを挙げている。
川   鉄
 川鉄は,価格引上げの主たる理由として,外注費,輸送費,原燃料
費,人件費等の上昇により,平成3年度(平成3年4月1日~平成4
年3月31日)の鋼材の総原価が平成元年度(平成元年4月1日~平成
2年3月31日)と比較して1トン当たり約7,300円上昇すると見込ま
れたことを挙げている。
佳   金
 住金は,価格引上げの主たる理由として,外注費,輸送費,原燃料
費,人件費等の上昇により,平成3年度(平成3年4月1日~平成4
年3月31日)の鋼材の総原価が平成元年度(平成元年4月1日~平成
2年3月31日)と比較して1トン当たり約5,700円上昇すると見込ま
れたことを挙げている。
 東洋鋼鈑
 東洋鋼鈑は,価格引上げの主たる理由として,主原料のホットコイ
ル価格の引上げ要請があり,また,外注費,包装費,輸送費,人件費
等が上昇したことにより,平成3年度(平成3年4月1日~平成4年
3月31日)の鋼材の総原価が平成2年度(平成2年4月1日~平成3
年3月31日)と比較して1トン当たり4,858円上昇すると見込まれた
ことを挙げている。
魚肉ハム・ソーセージ
 魚肉ハム・ソーセージの国内総供給価額は 昭和63年において446億円
であり,大洋漁業株式会社(以下「大洋」という。),丸大食品株式会社
(以下「丸大」という。),日本水産株式会社(以下「日水」という。)の上
位3社の市場占拠率の合計は70.4%である。首位事業者は 大洋であり,
市場占拠率が5%以上の事業者は,大洋,丸大,日水,東洋水産株式会社
(以下「東洋」という。)及び株式会社丸善(以下「丸善」という。)の5社
である。
 日水は平成3年9月1日から,丸大は同年9月 2日から,大洋は同年10
月21日から,東洋は同年11月1日から,丸善は同年12月1日から魚肉ハ
ム・ソーセージの全製品の販売価格の引上げを実施したが,この価格の引
上げは,独占禁止法第18条の2に規定する価格の同調的引上げに該当する
と認められたので,当委員会は,平成4年7月10日,5社に対して価格引
上げの理由の報告を求めた。
(1) 魚肉ハム・ソーセージの価格引上げ状況
 価格引上げは,丸大(平成3年8月23日)のみが公表し,大洋,丸
大,日水,東洋及び丸善の5社すべてが取引先へ通知している。丸大の
価格引上げの公表日並びに大洋,丸太,日水,東洋及び丸善の取引先へ
の通知日,取引先に予告した実施日,実際の実施日及びメーカー希望小
売価格の加重平均による引上げ状況は下表のとおりである。
(2) 各社の価格引上げ理由
 大洋,丸大,日水,東洋及び丸善から提出された報告書によると,価
格引上げの理由は,以下のとおりである。
大   洋
 大洋は,魚肉ハム・ソーセージの価格引上げの主たる理由として,
魚肉ハム・ソーセージの生産を全量委託しているところ,平成3年度
(平成3年4月1日~平成4年3月31日)においては,平成2年度
(平成2年4月1日~平成3年3月31日)に対し,主原料(すり身
等)の購入価格が上昇することにより,魚肉ハム・ソーセージの製造
原価がlkg当たり17.5%上昇し,これを委託先が吸収できないことが
予想されたことから,委託先からの仕入価格を15%引き上げる必要が
あったことを挙げている。
丸   大
 丸大は,魚肉ハム・ソーセージの価格引上げの主たる理由として,
平成3年9月1日からの1年間(平成3年9月1日~平成4年8月31
日)においては,平成2年9月1日からの1年間(平成2年9月1
日~平成3年8月31日)に対し,主原料(すり身等)の購入価格が上
昇することにより,魚肉ハム・ソーセージの製造原価が1㎏当たり
31.4%上昇することから,総原価が20.5%上昇し,収益が悪化するこ
とが予想されたことを挙げている。
日   水
 日水は,魚肉ハム・ソーセージの価格引上げの主たる理由として,
平成3年度(平成3年4月1日~平成4年3月31日)見直し後の予算
においては,平成3年度当初予算に対し,主原料(すり身等)の購入
価格が上昇することにより,魚肉ハム・ソーセージの製造原価がlkg
当たり11.3%上昇することから,総原価が6.2%上昇し,生産及び販
売コストの削減をしても,収益が悪化することが予想されたことを挙
げている。
東   洋
 東洋は,魚肉ハム・ソーセージの価格引上げの主たる理由として,
平成3年8月1日から同年10月31日までの期間においては,平成2年
8月1日から同年10月31日までの期間に対し,主原料(すり身)の購
入価格及び労務費が上昇することにより,魚肉ハム・ソーセージの製
造原価がlkg当たり19.8%上昇することから,総原価が9.0%上昇
し,収益が悪化することが予想されたことを挙げている。
丸   善
 丸善は,魚肉ハム・ソーセージの価格引上げの主たる理由として,
平成3年度(平成3年4月1日~平成4年3月31日)においては,平
成2年度(平成2年4月1日~平成3年3月31日)に対し,原料(す
り身,澱粉等)の購入価格,労務費及び諸経費が上昇することによ
り,魚肉ハム・ソーセージの製造原価がlkg当たり17.5%上昇するこ
とから,総原価が11.0%上昇し,でき得る限りの経営合理化を図って
収益の確保に努めても,収益が悪化することが予想されたことを挙げ
ている。
一般日刊全国新聞紙
 一般日刊全国新聞紙の国内総供給価額は,昭和63年において5,094億円
であり,株式会社読売新聞社(以下「読売」という。),株式会社朝日新聞
社(以下「朝日」という。)及び株式会社毎日新聞社(以下「毎日」とい
う。)の上位3社の市場占拠率は81.9%である。首位事業者は読売であり,
市場占拠率が5%以上の事業者は,読売,朝日,毎日,株式会社日本経済
新聞社(以下「日経」という。)及び株式会社産業経済新聞社(以下「産
経」という。)の5社である。
 読売,毎日及び日経は平成4年1月1日から,朝日及び産経は同年2月
1日から新聞購読料の引上げを実施したが,この購読料の引上げは,独占
禁止法第18条の2に規定する価格の同調的引上げに該当すると認められた
ので,当委員会は,平成4年5月18日,5社に対して価格引上げの理由の
報告を求めた。
(1) 一般日刊全国新聞紙の購読料引上げの状況
 購読料引上げは,読売(平成3年12月11日),毎日(同年12月18日),日
経(同年12月20日),朝日(平成4年1月19日)及び産経(同年1月22
日)の順で公表された。
 読売,朝日,毎日,日経及び産経の購読料引上げの公表日,公表日に
予告された実施日,実際の実施日及び引上げ状況は,下表のとおりであ
る。
(2) 各社の購読料引上げ理由
 読売,朝日,毎日,日経及び産経から提出された報告書によると,購
読料引上げの理由は,以下のとおりである。
読   売
 読売は,新聞購読料引上げの主たる理由として,販売店において人
件費の増加が経営を圧迫していること,本社において,平成3年5月
1日から同年12月31日までの期間は,平成元年5月1日から平成2年
4月30日までの期間に比べ,新聞製作設備の増設,人件費等の上昇に
より,新聞1部当たり費用が3.0%上昇したこと及び広告収入が減少
したことを挙げている。
 なお,購読料引上げ額は,主として販売店手数料及び援助費に充当
し,残りは新聞製作経費等に充当するとしている。
朝   日
 朝日は,新聞購読料引上げの主たる理由として,販売店において従
業員の年収改善,週休制実施のための要員増等を図る必要があるこ
と,本社において,平成3年度上期(平成3年4月1日~同年9月30
日)は,平成元年度上期〈平成元年4月1日~同年9月30日)に比
べ,海外取材網の充実,輪転機の増設・更新,印刷工場の建設,人件
費の上昇等により,新聞1部当たり費用が2.8%上昇したこと及び広
告収入が減少したことを挙げている。
 なお,購読料引上げ額は,主として販売店手数料及び援助費に充当
し,残りは新聞製作経費等に充当するとしている。
毎   日
 毎日は,新聞購読料引上げの主たる理由として,販売店において従
業員を確保するため週休制の実施等福利厚生を充実し,待遇改善を図
る必要があること,本社において,平成3年度上期(平成3年4月1
日~同年9月30日)は,平成元年度上期(平成元年4月1日~同年9
月30日)に比べ,製作設備の近代化,印刷工場の建設等により,新聞
1部当たり費用が6.9%上昇したこと及び広告収入が減少し,経営状
況が悪化したことを挙げている。
 なお,購読料引上げ額は,主として販売店手数料及び援助費に充当
し,残りは新聞製作経費等に充当するとしている。
日   経
 日経は 新聞購読料引上げの主たる理由として,販売店において従
業員確保のための経費が増加したこと,本社において,平成3年度下
期(平成3年7月1日~同年12月31日)は,平成元年度下期(平成元
年7月1日~同年12月31日)に比べ,ページ数・記事量の増加,取材
網整備,印刷工場の拡充,人件費の上昇等により,新聞1部当たり費
用が7.9%上昇したこと及び広告収入が減少し,経営状況が悪化した
ことを挙げている。
 なお,購読料引上げ額は,主として販売店手数料及び援助費に充当
し,残りは新聞製作経費等に充当するとしている。
産   経
 産経は,新聞購読料引上げの主たる理由として,販売店において人
件費が増加したこと,本社において,平成3年度上期(平成3年4月
1日~同年9月30日)は,平成2年度下期(平成2年10月1日~平成
3年3月31日)に比べ,印刷経費,人件費の上昇等により,新聞1部
当たり費用が4.1%上昇したこと及び広告収入が減少したことを挙げ
ている。
 なお,購読料引上げ額は,主として販売店手数料及び援助費に充当
し,残りは新聞製作経費等に充当するとしている。