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六大企業集団の概要及びその社長会の活動状況 |
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六大企業集団は,戦前の財閥のような持株会社を中心としたピラミッ
ド型の支配構造に基づく企業集団ではなく,銀行,総合商社をはじめ広
範な業種において我が国を代表する企業が独立性を保ちつつ社長会を構
成し,相互に株式の所有,役員の派遣等がみられ,緩やかな関係の企業
集団を形成しているものであり,その関係の程度は低下しつつある。
六大企業集団は,いずれも社長会を毎月1回(第一勧銀グループは3
か月に1回)定期的に開催しているが,外部講師による内外の経済情勢
等の講演や一般的な経済情勢についての情報交換,旧財閥系企業集団で
は商標・商号の使用許諾に関する報告,企業集団としての寄付の報告等
が行われている。
なお,六大企業集団の社長会の結成時期及びそのメンバー企業数は,
第1表のとおりである。


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(2) |
株式所有状況及び役員派遣等の状況 |
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六大企業集団メンバー企業間の株式所有関係については,六大企業集
団間で一様でないが,総じて半分以上のメンバー企業と株式所有関係を
有しているものの,株式所有関係の強さを示す平均持株率は,六大企業
集団平均で1.42%と大きくない。また,株式所有関係を有するメンバー
企業数は増加し,株式所有を通じた関係は広がっているものの,平均持
株率は低下し,同一企業集団のメンバー企業に所有されている株式の比
率は21.64%と昭和62年度(22.65%)よりも低下している。企業集団の
個々の株式所有を通じた関係は,平均的にみれば必ずしも強いものでな
く,その関係の程度は総じて低下しているものと考えられる。
六大企業集団のメンバー企業間の役員派遣については,六大企業集団
間で一様でないが,総じてメンバー企業の半分以上は,同一企業集団の
メンバー企業から役員を受け入れているものの,受け入れている役員の
役員総数に占める比率(比率は6.34%,人数としては1社当たり1.82
人)は低い。企業集団の役員派遣を通じた人的結合関係は必ずしも強く
なく,その関係の程度は低下している。
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(3) |
企業集団メンバー企業(金融機関を除く。)の取引の状況 |
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ア |
六大企業集団のメンバー企業間の集団内取引関係については,六大
企業集団間で大きな差があり,同一企業集団メンバー企業の6割以上
と取引関係にあるグループから,メンバー企業の3割程度としか取引
関係がないグループまである。
しかしながら,メンバー企業間の平均取引高率は,売上高で
0.85% 仕人高で1.16%と小さい。また,集団内取引比率でも売上高
7.28% 仕入高8.10%と昭和56年度(売上高10.8%,仕入高11.7%)
と比べてかなり低下している。さらに,集団内取引の大部分は総合商
社との取引となっている(売上高4.59%,仕入高5.12%)。
企業集団のメンバー企業間の取引関係は必ずしも強いものとなって
おらず,その関係の程度は総じて低下している。
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イ |
六大企業集団のメンバー企業の取引先上位30位までの企業(総取引
高の4割程度を占めている。)との取引の状況をみると,六大企業集団
間で大きな差はなく,取引先上位30位までの企業のうち,同一企業集
団メンバー企業が企業数で占める比率は,売上で7%程度,仕入で
6%程度であり,取引高で占める比率は売上で10%程度,仕人で15%
程度となっている。 |
ウ |
六大企業集団のメンバー企業が保有する汎用コンピュータの状況を
みると,同一企業集団内に汎用コンピュータのメーカーが属する企業
集団にあっては,三菱グループを除いて同一企業集団内の汎用コン
ピュータのメーカーのものがいずれも大きなウェイトを占めている。
しかしながら,汎用コンピュータについては,全体的にみれば,外
国メーカーのものが45.16%を占めている。 |
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(4) |
六大企業集団における金融機関の状況 |
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六大企業集団の金融機関の状況は次のとおりであり,金融機関は,都
市銀行を中心に,株式所有,役員派遣,金融取引の面において,ほと
んどのメンバー企業と相互に関係を有しているが,その関係の程度は
強くなっていない。
ア |
六大企業集団内の金融機関は,特に都市銀行を中心に,企業集団の
メンバー企業のほとんどと相互に株式を所有しているとともに,約半
数のメンバー企業に役員を派遣しているほか,メンバー企業のほとん
どに資金の貸付を行っている。 |
イ |
しかしながら,金融機関の貸出金依存率は,六大企業集団間で一様
でないが,六大企業集団平均で3.13%と総じて低く,また,低下して
いる。 |
ウ |
さらに,六大企業集団のメンバー企業の集団内借入金依存率は,六
大企業集団間で一様でないが,六大企業集団平均で17.48%と上場企
業の借入先第1位の金融機関からの借入金依存率の平均27.89%を下
回っている。 |
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(5) |
六大企業集団における総合商社の状況 |
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企業集団の総合商社の状況については,次のとおりであり,旧財閥系
企業集団と銀行系企業集団では差があるものの,株式所有及び役員派遣
の面では,総合商社は企業集団において金融機関のような存在になって
いるとはいいがたい。また,総合商社は,企業集団において集団内取引
の中心的な存在となっているが,その関係の程度は総じて低下してお
り,強くなっていないものと考えられる。
ア |
旧財閥系企業集団では,ほとんどの企業集団メンバー企業の株式を
所有し,株式所有関係の面で金融機関と並ぶ存在となっているともい
える。銀行系企業集団では,総合商社は企業集団メンバー企業のうち
54.33%の企業の株式を所有しているにすぎず,しかも,平均持株率
でも金融機関(都市銀行4.3%)を大幅に下回る比率であり,株式所
有関係の面では金融機関ほどの存在とはなっていない。 |
イ |
総合商社のメンバー企業への役員派遣の状況は,派遣会社比率
(10.25%),派遣役員比率(0.37%)をみても,いずれの企業集団も
金融機関(都市銀行の派遣会社比率49.51%,都市銀行の派遣役員比
率2.7%)に比べて低いものとなっている。 |
ウ |
総合商社の取引の状況をみると,総合商社は,メンバー企業のほと
んどすべてと取引しており,集団内取引の大部分は総合商社との取引
が占めている。総合商社の同一企業集団メンバー企業との取引の割合
は,売上高で2.64%,仕入高で7.56%であり,低下している。さら
に,総合商社の総取引高に占める同一企業集団メンバー企業1社当た
りの取引高の比率は売上高で0.12%,仕入高で0.38%と小さい。ま
た,メンバー企業の同一企業集団内総合商社との取引の割合も,売上
高で11.69%,仕入高で5.67%であり,総じて低下している。 |
エ |
鉄鋼メーカーの鉄鋼原料及び鋼材の取引を総合商社との取引を中心
に企業集団内取引の観点からみると,鉄鉱石及び鋼材は,同一企業集
団内の総合商社と鉄鋼メーカー間の取引が大きなウェイトを占めてい
る。
原料炭については,企業集団内の各鉄鋼メーカーとも,同一企業集
団に属さない総合商社との取引が大きなウェイトを占めている。
なお,六大企業集団に属していない鉄鋼メーカーにあっては,いず
れの取引においても,同一企業集団に高炉メーカーを持たない総合商
社との取引が大きなウェイトを占めている。 |

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(6) |
六大企業集団の共同出資会社の設立状況 |
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六大企業集団メンバー企業による共同出資会社の設立状況(昭和63年
4月から平成2年12月末までの設立件数751)についてみると,同一企
業集団メンバー企業のみの共同出資によるものは,六大企業集団合計で
6.39%しかなく,同一企業集団メンバー企業以外の企業が共同出資に参
加しているものが93.61%(同一企業集団メンバー企業以外の企業のみ
との共同出資77.1%,同一企業集団メンバー企業及び同一企業集団メン
バー企業以外の企業との共同出資16.51%)とほとんどを占めている。
また,外国企業との共同出資により設立したものは7.19%であり,同一
企業集団メンバー企業との共同出資によるものよりも高い。
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(7) |
六大企業集団の我が国経済に占める地位 |
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六大企業集団のメンバー企業(金融機関を除く。)の我が国経済に占め
る地位について,平成元年度における我が国の法人企業全体(金融機関
を除く。)に占める比率をみると,メンバー企業数では,0.008%を占め
るにすぎない。しかし,企業の総合的な経済力を表わす指標でみた場合
には,資本金で17.24% 総資産で13.54%,売上高で16.23%となって
おり,これらの比率は,昭和62年度と比べて上昇している。 |
(8) |
まとめ |
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以上のとおり,六大企業集団は,各企業集団で一様でないものの,総
じてメンバー企業間の株式所有関係や役員派遣関係は強いものではな
く,しかもその関係の程度は低下してきている。・また,メンバー企業の
取引全体に占める同一企業集団メンバー企業との取引の割合は,売上高
で7.28% 仕入高で8.10%であり,これは,メンバー企業と同一企業集
団に属さない企業との間で広く取引が行われていることを示しており,
しかもその割合は昭和56年度(売上高で10.8%,仕入高で11.7%)と比
べかなり低下してきている。
一般的に六大企業集団に関して,メンバー企業間の結びつきを背景
に,メンバー企業との取引を優先・選好する傾向にあるのではないかと
の指摘がある。この点については,今回の調査では,前記のとおり,メ
ンバー企業間の結びつきは強いものではなく,しかもその程度は低下し
ていること,また,全体的にみて,メンバー企業と同一企業集団に属さ
ない企業との間で広く取引が行われており,しかも集団内取引の割合は
低下していることが認められ,そのような傾向にあるとは言い難い。
しかしながら 六大企業集団の我が国経済に占める地位は依然として
大きく,かつそれぞれの業種においていずれも有力な企業がメンバー企
業となっていることにかんがみ,競争政策の見地から引き続き企業集団
の機能等を検討するうえで,今後とも定期的に実態の把握に努める必要
があると思われる。
なお,我が国における取引慣行や企業行動等について不透明感を持た
れることのないように,企業集団及びそのメンバー企業においても,例
えば社長会の状況や取引先選択の原則を明らかにする等透明性を高めて
いくための一層の努力が期待される。 |