第8章 事業者団体

第1 概   説

 我が国には事業者団体が多数存在し,政府等の公の機関との連絡, 会員間
の親睦活動 国内市場の調査,広報宣伝活動等, 多様な活動を行っている。
 これらの活動には競争を活発化させる側面があるものの,事業者団体は事
業者としての共通の利益の増進を図ることを目的とする主として同業者の結
合体であることから,事業者団体を通じた競争制限的行為が行われやすい側
面もある。
 このため,独占禁止法第8条は,事業者団体による競争の実質的な制限,
一定の事業分野における事業者の数の制限,構成事業者の機能又は活動の不
当な制限及び事業者に不公正な取引方法を用いさせること等の行為を禁止す
るとともに(同条第1項),事業者団体に対して,その成立,変更及び解散
の届出義務を課している(同条第2項から第4項まで)。

第2 事業者団体届出規則の改正

 独占禁止法第8条の規定に基づく届出制度は,事業者団体の活動を監視
し,その違反行為の発見・排除を容易にするとともに,この監視の目を事業
者団体自身に意識させ,違法な活動の自制を促すことを目的としている。
 届出制度の活用による事業者団体の活動の監視・指導の強化を図るため事
業者団体のシェア,内部組織等を届出事項に加えるとともにあわせて届出義
務者に対する負担軽減等を図る観点から所要の改正を行い,平成4年1月1
日から施行している。

第3 事業者団体の届出状況

 本年度において,独占禁止法第8条第2項から第4項までの規定に基づく
事業者団体からの届出件数は,成立届908件 変更届2,746件,解散届
744件,合計4,398件であった(第1図,第1表,附属資料5-1表)。
 本年度も前年度に引き続き,事業者団体届出制度の周知を図った結果,
昭和63年度において,消費税転嫁等の共同行為の届出に伴い成立・変更
の届出が急増して以来の高い水準で推移している。
 また,平成3年度までに公正取引委員会に対し成立届出を行って現存して
いる事業者団体は全体で14,863団体となっている(第1表)。

第4 協同組合の届出状況

 中小企業等協同組合法(以下「中協法」という。)に基づいて設立された事業
協同組合及び信用協同組合(以下「協同組合」 という。)は,当該組合が同法
第7条第1項各号の一に該当するものである限り,独占禁止法第24条第1号
の要件を備える組合とみなされ(中協法第7条第1項),他の所要の要件を充
足している場合には その行為について原則として独占禁止法の適用が除外
されている。
 しかしながら,資本の額又は出資の総額が原則として1億円を超え,か



つ,常時使用する従業員の数が原則として300人を超える大規模な事業者を
組合員に含む場合には,その協同組合が独占禁止法第24条第1号の要件を備
えているかどうかを判断する権限が当委員会に与えられており(中協法第7
条第2項),これらの協同組合に対しては,当該組合員が加入している旨,当
委員会に届け出る義務が課されている(中協法第7条第3項)。
 本年度における中協法第7条第3頃の規定に基づく届出件数は,294件で
あった。また,平成3年度までに当委員会に対し,届出があった組合数は,
全体で約3,400組合となっている(第2表,附属資料5-2表)。
 これらの組合について,組合が届出の原因となった大規模な事業者である
組合員を加入させている理由を見ると,「共同事業の成果を上げるため」,
「組合の信用を高め,イメージアップが図られるため」,「従来から中小企業
者として加入していたが規模が大きくなったため」等が挙げられている。ま
た,届出の原因となった当該組合員の組合への加入理由は,「組合員との関
係を強化することができるため」,「組合の持っている情報を得ることができ
るため」,「組合の事業を利用することにより,合理化を図ることができるた
め」等が挙げられている。

第5 事業者団体の活動に関する相談状況

 当委員会は,事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防止を図り,
その適切な活動に役立てるため,昭和54年8月に「事業者団体の活動に関
する独占禁止法上の指針」を,平成3年7月に流通・取引慣行ガイドライ
ン(第2部第4章参照)をそれぞれ作成・公表するとともに,事業者団体
が実施しようとする具体的な活動の適否について,電話・来庁等による相
談に応じ,業界の実態に則した個別具体的な回答・指導を行っているほ
か,各種事業者団体に対し説明会を開催し,事業者団体が独占禁止法に違
反することのないように未然防止を図っている。
 本年度においては,相談の件数は960件であり,前年度の845件を上回
り,過去最高の件数となった。これは,人件費 物流費等諸経費の増大
や,人手不足, 労働時間短縮への対処のため,団体としての取組が積極的
に行われるようになってきていること及び事業者団体の独占禁止法に対す
る認識が高まっていることによるものと考えられる。
 本年度における特徴的な相談としては,以下のようなものが挙げられ
る。
 労働時間短縮の促進という社会的要請に基づき,会員の休業日を増や
すため,休業日の基準を設定するなど,団体として業界全体の労働時間
短縮の促進を図るための取組に関する相談
 資源の有効利用の確保や廃棄物の発生の抑制,環境の保全のための廃
棄物処理対策に対する企業の関心が高まり,行政においても再生資源の
利用促進に関する法律の制定,廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改
正など,各種施策が講じられる中,廃棄物の処理費の有料化など,廃棄
物処理・環境保全のための団体としての取組に関する相談