第9章 国際契約等

第1 概   説

 独占禁止法第6条は,国内事業者と外国事業者との国際的協定又は国際的
契約(以下 「国際契約」という。)について,不当な取引制限又は不公正な取
引方法に該当する事項を内容とするものの締結を禁止するとともに,国際契
約を締結した事業者に対し,契約成立の日から30日以内に当委員会に届け出
ることを義務付けている。

第2 国際契約届出規則の改正

改正理由
 国際契約の主要な類型である特許・ノウハウライセンス契約及び総代理
店契約についてそれぞれガイドラインを作成・公表したことにより独占禁
止法違反行為に対する一般的予防効果が期待されることにかんがみ,事業
者の負担を軽減する等の観点から,国際契約の届出範囲を大幅に縮減する
こととし,「国際的協定又は国際的契約の届出に関する規則」(昭和46年公
正取引委員会規則第1号)を一部改正した(平成4年3月30日公布,施
行)。
改正内容
 主な改正内容は,次のとおりである。
(1)  技術提携契約については,1年を超えて技術に関する権利の独占的な
実施又は利用を許諾する契約であって,かつ,①有力な国内事業者(市
場占拠率が10%以上又は順位が上位3位以内)が行うもの,又は②販売
又は再販売に関する価格の設定に関する条項を含むものを届出の対象と
した。
(2)  継続的売買契約については,1年を超えて商品の一手販売権を許諾す
る契約であって,かつ,①有力な国内事業者(市場占拠率が10%以上又
は順位が上位3位以内)が行うもの,又は②販売又は再販売に関する価
格の設定に関する条項を含むものを届出の対象とした。
(3)  合弁事業契約については,経済活動のグローバル化が進む中で,国際
的な企業結合に対する有効な規制が求められているところ,会社の株
式,持分を取得して共同して事業の経営を1年を超えて行うものは引き
続き届出の対象とした。ただし,国内事業者が中小企業(独占禁止法第
7条の2第2項各号に該当するもの)である場合は届出の対象から除外
することとした。
(4)  国際カルテル等につながるおそれのあるものを規制する観点から,①
競争関係にある国内事業者が共同して売買,技術に関する権利の実施又
は利用許諾を1年を超えて継続して行うもの(共同購入・共同販売に係
る契約),②相互に輸出入に関する事業活動を拘束するもの(輸出入制
限協定)は引き続き届出の対象とした。
(5)  商標権・著作権(プログラム著作物は除く。)の使用許諾に係る契約は
届出の対象から除外することとした。
 今回の改正により,上記(1)から(4)までのいずれの要件にも合致しない国
際契約については届出を行う必要性はなく,この結果,事業者の負担は大
幅に軽減されることとなった。

第3 国際契約の届出状況

 国際契約は,①我が国の事業者が外国事業者から資本投下若しくは技術の
提供を受け,又は製品・原材料を購入する契約(以下「対内契約」という。)
と,②我が国の事業者が外国事業者に対して資本投下若しくは技術の提供を
行い,又は製品・原材料を販売する契約(以下「対外契約」という。)とに大
別される。
 本年度における国際契約の届出件数は5,680件であり,前年度に比べて
0.8%(48件)の減少となった(第1表)。
 これを種類別にみると,対内契約は,3,482件(全届出件数の61.3%)で
あり,また,対外契約は,2,198件(全届出件数の38.7%)である。

 対内契約の届出の内訳をみると,種類別では,技術導入契約が2,007件で
最も多く,次いで輸入代理店契約が620件と続いており,この2種類の契約
で対内契約の75.4%を占めている。これを業種別にみると,対内契約全体に
おいても,技術導入契約においても,サービス(主としてソフトウェア),
電気機械器具関係がそれぞれ上位を占め,また,輸入代理店契約において
は,電気機械器具,化学製品,一般機械器具関係が上位を占めている(附属
資料6-1表)。
 対外契約の届出の内訳をみると,種類別では,技術援助契約が1,093件で
最も多く,次いで輸出代理店契約が679件と続いており,この2種類の契約
で対外契約の80.6%を占めている。これを業種別にみると,対外契約全体に
おいても,技術援助契約においても,電気機械器具,化学製品,輸送用機械
器具関係がそれぞれ上位を占めている。
 契約の相手国・地域別にみると,まず対内契約では,アメリカが最も多
く,対内契約全体で2,001件(対内契約全体の57.5%)となっており,その
内訳をみると,技術導入契約が1,243件(技術導入契約全体の61.9%),輸入
代理店契約が288件(輸入代理店契約全体の46.5%)等となっている。以
下,対内契約全体においてはイギリス,フランス,ドイツが,技術導入契約
においてはフランス,イギリス,ドイツが,輸入代理店契約においてはイギ
リス,フランス,ドイツがそれぞれ上位を占めている。また,対外契約にお
いても,アメリカが最も多く,対外契約全体で368件(対外契約全体の
16.7%)となっており,その内訳をみると,技術援助契約が207件(技術援
助契約全体の18.9%),輸出代理店契約が92件(輸出代理店契約全体の13.5
%)等となっている。以下,対外契約全体及び技術援助契約においては韓
国,台湾が,輸出代理店契約においてはドイツ,韓国,台湾がそれぞれ上位
を占めている(附属資料6-2表)。

第4 国際契約の指導等の状況

 届け出られた国際契約については,その内容を審査し,不当な取引制限
又は不公正な取引方法に該当するおそれがある事項を含むものについて
は,当該事項を修正又は削除するよう指導(以下「指導」という。)してい
る。また,当該契約条項の具体的な実施状況によっては法違反となる旨の
注意を促し,法違反の発生の未然防止を図る措置(以下「問題点指摘」と
いう。)も講じている(以下,これらの措置を含めて「指導等」という。)。
 本年度における国際契約の指導等の件数は,契約件数で71件,指導等の
内容別件数で78件となっている(附属資料6-3表)。
 指導等の内容別件数について,指導を行ったものと,問題点指摘を行っ
たものとに分けてみると,第2表のとおりである。
 主要な契約の種類別に指導等の状況をみると,技術導入契約の指導等の
件数は,契約件数で39件(指導等の内容別件数では42件)であり(附属資
料6-4表),これは,前記国際契約の指導等の契約件数の54.9%である。
 また,輸入代理店契約の指導等の件数は,契約件数で25件(指導等の内
容別件数では28件)であり(附属資料6-5表),これは,国際契約の指導
等の契約件数の35.2%である。さらに,これを輸入総代理店契約に限って


みると,契約件数で22件(指導等の内容別件数では25件)であり,輸入代
理店契約の指導等の契約件数のほとんどを占めている。

第5 海上運送事業者間の協定等

 船舶運航事業者が他の船舶運航事業者とする運賃及び料金その他の運送条
件,航路,配船並びに積取りに関する事項を内容とする協定,契約又は共同
行為(以下「協定等」という。)については,海上運送法第28条の規定により
原則として独占禁止法の適用が除外されている。しかし,同条ただし書によ
り,不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質
的に制限することにより不当に運賃及び料金を引き上げることとなる場合に
は,適用除外とはならない。海運業に係る不公正な取引方法については,独
占禁止法第2条第9項に基づく特殊指定でその内容が定められている。
 海上運送法第29条は,同法第28条に規定する協定等に関し,その締結,変
更についてあらかじめ運輸大臣に届け出なければならない旨規定し,同法施
行規則第26条第4項では,運輸大臣は,協定等に関する届出書のうち1通を
当委員会に送付する旨規定している。
 当委員会が本年度において運輸大臣から受理した届出の件数は,349件で
あり,その内訳(1届出について,2以上にわたる場合の重複分を含む。)
は,締結9件,変更278件,参加16件,脱退46件であった。