第15章 国際関係業務

第1 ニ国間関係

1 海外独占禁止当局との二国間意見交換
 近年,各国共通の競争政策上の問題が生じてきており,独占禁止法の分
野における意見交換等の国際的連携が重要になってきている。このため,
当委員会は,我が国との経済交流が特に活発であるアメリカ,フランス,
EC等との競争政策における協力関係を推進することとし,これらの独占
禁止当局との間で定期的に競争政策に関する意見交換を行ってきている。
 本年度における意見交換の開催状況は,次のとおりである。
2 その他
(1) 日米構造問題協議
ア 日米構造問題協議の経緯
(ア) 開始から最終報告まで
 日米構造問題協議(SII)は,当時の宇野総理とブッシュ大統
領とによる経済問題に関する共同発表(1989年7月)に基づき,日
米両国で,貿易と国際収支の調整の上で障壁となっている構造問題
を識別し,解決していくことを目的として開催されることとなった
ものである。以降,この枠組みの中で5回の会合が開催され,1990
年6月28日に最終報告が作成・公表された。この最終報告は,今後
日米両国が採っていくべき措置として,日本側の措置(「貯蓄・投
資パターン」,「土地利用」,「流通」,「排他的取引慣行」,「系列」及
び 「価格メカニズム」の6項目)及び米側の措置(「貯蓄・投資パ
ターン」,「企業の投資活動と生産力」,「企業ビヘイビア」,「政府規
制」,「研究・開発」,「輸出振興」及び「労働力の教育及び訓練」の
7項目)から構成されている。
(イ) 第1回フォローアップ
 最終報告の措置については,3年間, フォローアップのための会
合を開催してその実施状況をレビューし,毎年春に両国がそれぞれ
報告書を作成・公表することとされた。これを受けて,最終報告の
公表以降3回のフォローアップ会合が開催され,1991年5月22日,
フォローアップ第1回年次報告が作成・公表された。
(ウ) SII再活性化と新規コミットメント
 1992年1月の宮澤総理・ブッシュ大統領会談の際の東京宣言に伴
い,日米両国間のグローバル・パートナーシップを築いていくため
の行動計画(アクション・プラン)が作成された。その1項目とし
て,両国間の主要な経済・貿易問題に関し探るべき措置として,両
国のビジネス環境にとって構造改革の障壁となり得る事項に対処す
るため,新たなコミットメントを含むSIIの再活性化を図ること
が盛り込まれた。
イ 日米構造問題協議におけるコミットメント
 日米構造問題協議最終報告の日本側措置は上記6項目から成ってい
るが,当委員会関係部分は,「流通」,「排他的取引慣行」及び「系
列」の3項目である。最終報告及び第1回年次報告におけるコミット
メントのうち,当委員会関係部分は以下のとおりである。
(ア) 排他的取引慣行
a 独占禁止法及びその運用の強化
① 法的措置の一層の活用
② 一層の透明性の確保
③ 外国事業者からの相談・苦情窓口の設置
④ 予算及び定員の充実・整備
⑤ 課徴金の引上げ
⑥ 刑事罰の活用・強化
⑦ 損害賠償制度の活用
⑧ 談合に対する効果的抑止
b 政府慣行
○独占禁止法適用除外制度の見直し
c 民間企業の調達慣行
○独占禁止法に反する市場行動の排除
(イ)  系   列
○ 公正取引委員会における検討等
①  系列関係にある事業者間取引の監視と流通・取引慣行ガイド
ラインの作成・公表
②  系列に関する調査の実施
(ウ)  流   通
a 規制緩和
① 新規参入の妨げにならないような景品規制制度の運用
② 景品に関する公正競争規約の見直し及び緩和
b 商慣行の改善
① 流通・取引慣行ガイドラインの作成・公表
② 独占禁止法違反行為の排除
(2) 貿易摩擦問題への対応
ア 個別業種に関する日米協議
 個別品目に関する貿易摩擦問題を解決すべく,これまでに,スー
パーコンピュータ,衛星,建設,コンピュータ,紙,自動車について
の会合が開催されてきている。1991年度においては,コンピュータ及
び紙について日米間で決着が図られたほか,建設については特例措置
のレビューの結果,その改訂が行われた。
 当委員会は,競争政策の観点から,外国企業の我が国市場への参入
に当たり反競争的行為があった場合にはこれに厳正に対処するとの観
点から,これらの協議に必要に応じ関与してきている。
イ グローバル・パートナーシップ行動計画(アクション・プラン)
 1992年1月の宮澤総理・ブッシュ大統領会談の際の東京宣言に伴
い,日米両国間のグローバル・パートナーシップを築いていくための
行動計画(アクション・プラン)が作成された。
 この行動計画は,日米間の緊密なグローバル・パートナーシップを
構築していくため,日米間の主要な経済・貿易問題に関し緊要とされ
ている行動について実施計画を定めたものであり,当委員会関係部分
としては,紙,ガラス,自動車及び自動車部品の4業種について,競
争政策の観点から,その実態を調査することが記載されている。

第2 多国間関係

1 経済協力開発機構(OECD)
(1) 競争政策委員会
ア  競争政策委員会(Committee on Competition Law and Policy)
は,OECDに設けられている各種委員会のうちの一つで,1961年12
月に設立された。我が国は,1964年のOECD加盟以来,その活動に
参加してきている。競争政策委員会は,原則として年2回本委員会を
開催し,また,その下に各種の作業部会を設けて,随時会合を行って
いる(第1図)。本委員会では,加盟各国の競争政策に関する年次報
告が行われるほか,各作業部会の報告書の検討,その時々の重要問題
についての討議が行われている。
 本年度における会議の開催状況は,次のとおりである。
イ  1991年11月の第60回本委員会においては,デンマークの年次報告国
別審査(審査担当国として選出された国が,審査対象国の年次報告を
あらかじめ受け取り,質問を事前に準備し,質問する。),EC,オー
ストラリア,オーストリア,ベルギー,カナダ,ドイツ,ギリシャ,
イタリア,オランダ,ニュージーランド,ノルウェー,ポルトガル,
スペイン,スイスの年次報告が行われた。また,競争政策の収斂に向
けた今後の作業計画に関する検討が行われたほか,全米法曹協会反ト
ラスト法部会,国際反トラスト特別委員会報告書に関する検討等が行
われた。
ウ  競争政策委員会に属する各作業部会の本年度における主要な活動
は,次のとおりである。
(ア)  第1作業部会では,「貿易に対する非関税障壁と競争」について
報告書案の検討が行われ,また,「競争政策と反ダンピング」に関
する検討を開始したほか,競争政策と貿易政策との相互連関につい
て検討を行うため,貿易委員会との共同作業を開始した。
(イ)  第2作業部会では,「競争政策と放送業」を検討中であるが,本
年度は会合は行われなかった。
(ウ)  第3作業部会では,各国競争当局間の国際協力上の問題につい
て,通報・意見交換等の状況報告,国際合併の事例研究等が行われ
た。
(エ)  第4作業部会では,「競争政策とフランチャイジング」について
報告書案の取りまとめ作業が行われた。なお,本報告書の最終化を
もって第4作業部会は解散することとなった。
(2) 消費者政策委員会
ア  消費者政策委員会(Committee on Consumer Policy)は,加盟
国の消費者行政についての情報交換及び調査・検討のための国際協力
の場として,1969年11月に期限付き(1972年末まで)で設置すること
とされた。この期限はその後4度の延長決議を経て1992年末までと
なっている。消費者政策委員会は,年2回本委員会を開催するほか,
各種の作業部会を設けて随時会合を行っている。
 1992年3月現在,活動している作業部会は,「消費者の安全性」 作
業部会及び「市場の透明性・消費者情報」作業部会の2部会である。
イ  1991年4月25日~26日に開催された第42回本委員会では,「金融・
サービスに関する消費者情報」につき理事会に公表を求め上程するこ
とが承認された。
 また,同年4月に開催された東欧・ソ連への技術支援に係る「市場
経済における消費者保護に関するウィーン・セミナー」の結果報告等
が行われた。
ウ  1991年10月10日~11日に開催された第43回本委員会では,90年代の
消費者政策の在り方,消費者政策委員会が今後取り組むべき作業のプ
ライオリティを決定するために10月8日~9日に開催された「90年代
の消費者政策に関するセミナー」の結果等につき討議が行われた。
エ  1992年3月18日~20日に開催された第44回本委員会では,危険製品
の回収手続に関する1981年理事会勧告の見直しについての報告書が了
承されたほか,食品表示と広告,比較広告,環境クレームと広告等に
つき討議が行われた。
2 国際連合貿易開発会議 (UNCTAD)
 UNCTADでは,極めて多岐にわたる南北問題の討議が行われている
が,特に当委員会に関係があるものとして,「制限的商慣行」及び「国際
技術移転行動規範」の問題がある。
(1) 制限的商慣行
ア  1980年の第35回国運総会において,「制限的商慣行規制のための多
国間の合意による一連の衡平な原則と規則」(以下「原則と規則」と
いう。)が,国連加盟国に対する勧告として採択された。この「原則
と規則」は,国際貿易,特に発展途上国の国際貿易と経済発展に悪影
響を及ぼす制限的商慣行を識別し,規制することにより,国際貿易と
経済発展に資することを目的としており,その主な内容は次のとおり
である。
(ア)  国際貿易,特に発展途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を及ぼ
すことになり,市場アクセスを制限し,又は競争を不当に制限する



こととなる場合に,
a  競争企業間の協定,取決めによる次のような行為を行わないこ
と。
 ①価格協定,②入札談合,③市場・顧客分割,④販売・生産数
量割当など
b  市場支配力の優越的地位を濫用することにより,次のような行
為・行動を行わないこと。
 ①競争者を排除するための原価以下の価格付け等競争者に対す
る略奪的行為,②価格差別,③合併・取得,④輸出商品の再販売
価格維持行為,⑤並行輸入の阻止など
(イ)  事業が行われている国の所管官庁が制限的商慣行の規制を行うに
際し,企業はその所管官庁と協議・協力し,情報を提供すること。
イ  「原則と規則」の規定に関する制限的商慣行についての調査研究,
情報収集等を行うために制限的商慣行政府間専門家会合が設置されて
いる。
 本年度においては,1991年10月21~25日にジュネーブにおいて第10
回会合が開催され,「原則と規則」に関する見直し作業について検討
が行われた。
(2) 技術移転
 国際的な技術移転取引における制限的商慣行の規制を主な内容とする
国際技術移転行動規範を作成するために国際技術移転行動規範国連会議
が設けられている。
 1976年から開始された同規範の具体的な草案作成作業が難航したこと
から,1981年には同規範の完成促進のために暫定委員会が設置された。
 その後,1983年に第5回国連会議,1985年に第6回国連会議が開催さ
れたが,同視範の最終合意には至らなかった。
 なお,本年度においては,特に進展はなかった。
3 アジア・大洋州の独占禁止当局との協力
(1) アジア・大洋州独占禁止政策会議
 1989年5月の第3回ソウル会合に続き,1991年4月30日~5月2日,
第4回会合がウエリントンで開催され,我が国を含め10か国(注)が参加
した。「各国の競争政策」というテーマの下,活発な意見交換が行われ
た。
(注)  参加10か国は オーストラリア,インド,韓国,マレーシア,
ニュージーランド,フィリンピン,シンガポール,スリランカ,
タイ及び日本である。
(2) アジア・大洋州独占禁止政策情報センター
 アジア・大洋州独占禁止政策情報センターは,アジア・大洋州地域の
12か国(注)が,その競争政策に関する情報を交換することを通して参
加各国の競争政策を発展させることを目的として,1980年9月に当委員
会事務局内に設けらたものであり,本年度においても,競争政策に関す
る資料を参加各国に配布した。
(注)  12か国は,オーストラリア,インド,インドネシア,韓国,マ
レーシア,ニュージーランド,パキスタン,フィリピン,シンガ
ポール,スリランカ,タイ及び日本である。
4 その他
 当委員会は OECDやUNCTAD以外にも,国連多国籍企業委員
会,世界知的所有権機関(WIPO),FAO/WHO合同食品規格委員
会等で行われている討議に対しても,競争政策及び表示規制の観点から積
極的に対応することとしている。

第3 海外調査

 我が国の競争政策の運用に資するため,諸外国の独占禁止法制及びその運
用状況についての情報収集や調査研究を行っている。
 本年度においては,諸外国の制裁金及び罰金に関する制度並びにその運
用,アメリカ,ECの独占禁止当局の政策動向及びアメリカ・EC独占禁止
協力協定等に関して重点的に調査を行い,その内容の分析と紹介に努めた
 (諸外国の競争政策の動向については,付属資料11参照。)。