第8章 事業者団体
第1 概 説
我が国には事業者団体が多数存在し,政府等の公の機関との連絡,会員間
の親睦活動,国内市場の調査,広報宣伝活動等,多様な活動を行っている。
これらの活動には競争を活発化させる側面があるものの,事業者団体は事
業者としての共通の利益の増進を図ることを目的とする主として同業者の結
合体であることから,事業者団体を通じた競争制限的行為が行われやすい側
面もある。
このため,独占禁止法第8条は,事業者団体による競争の実質的な制限,
一定の事業分野における事業者の数の制限,構成事業者の機能又は活動の不
当な制限,事業者に不公正な取引方法を用いさせること等の行為を禁止する
とともに(同条第1項),事業者団体に対して,その成立,変更及び解散の
届出義務を課している(同条第2項から第4項まで)。
第2 事業者団体の活動と独占禁止法上の諸問題
「事業者団体問題研究会」(座長 金子 晃 慶應義塾大学教授)は,事業
者団体(以下「団体」という。)の開放的で透明かつ無差別な活動の確保を
目的として,主要団体及び外国企業に対するアンケート調査結果等を適宜参
考としつつ,その活動における独占禁止法上の問題点の検討を行い,その結
果を平成5年3月に公表した。検討結果の概要は,次のとおりである。
1 | 団体の活動に対する独占禁止法上の考え方 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
団体は種々の有益な機能を果たしており,しかも,その分野,活動内 容,行政との関わり等において各々異なるものであり一律に判断すること は適当ではないが,団体の中には場合によっては独占禁止法上の問題を生 ずるおそれがあるものもあると考えられる。
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2 | 団体と行政との関係 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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3 | 団体の活動に対する対応(今後採るべき措置) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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第3 事業者団体の届出状況
本年度において,独占禁止法第8条第2項から第4項までの規定に基づく
事業者団体からの届出件数は,成立届766件,変更届1,873件,解散届
668件,合計3,307件であった(第1図,第1表,附属資料5-1表)。
本年度も前年度に引き続き,事業者団体届出制度の周知を図った結果,昭和63
年度において,消費税転嫁等の共同行為の届出に伴い成立・変更の届出が急増し
て以来の高い水準で推移している。
また,平成4年度までに公正取引委員会に対し成立届出を行って現存してい
る事業者団体は,全体で14,966団体となっている(第1表)。
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第4 協同組合の届出状況
中小企業等協同組合法
(以下「中協法」という。)に基づいて設立された事業協同組合及び信用協同
組合(以下「協同組合」という。)は,当該組合が同法第7条第1項各号の
一に該当するものである限り,独占禁止法第24条第1号の要件を備える組合
とみなされ(中協法第7条第1項),他の所要の要件を充足している場合に
は,その行為について原則として独占禁止法の適用が除外されている。
しかしながら,資本の額又は出資の総額が原則として1億円を超え,か
つ,常時使用する従業員の数が原則として300人を超える大規模な事業者を
組合員に含む場合には,その協同組合が独占禁止法第24条第1号の要件を備
えているかどうかを判断する権限が当委員会に与えられており(中協法第7
条第2項),これらの協同組合に対しては,当該組合員が加入している旨,
当委員会に届け出る義務が課されている(中協法第7条第3項)。
本年度における中協法第7条第3項の規定に基づく届出件数は,285件で
あった。また,平成4年度までに当委員会に対し,届出があった組合数は,
全体で約3,500組合となっている(第2表,附属資料5-2表)。
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これらの組合について,組合が届出の原因となった大規模な事業者である
組合員を加入させている理由を見ると,「共同事業の成果を上げるため」,
「組合の信用を高め,イメージアップが図られるため」,「従来から中小企業
者として加入していたが規模が大きくなったため」等が挙げられている。ま
た,届出の原因となった当該組合員の組合への加入理由は,「組合員との関
係を強化することができるため」,「組合の持っている情報を得ることができ
るため」,「組合の事業を利用することにより,合理化を図ることができるた
め」等が挙げられている。
第5 事業者団体の活動に関する相談状況
1 | 当委員会は,事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防止を図り, その適切な活動に役立てるため,昭和54年8月に 「事業者団体の活動に関 する独占禁止法上の指針」(団体ガイドライン)を,平成3年7月に「流 通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(流通・取引慣行ガイドライ ン)をそれぞれ作成・公表するとともに,事業者団体が実施しようとする 具体的な活動の適否について,電話・来庁等による相談に応じ,業界の実 態に即した個別具体的な回答(指導)を行っているほか,各種事業者団体 に対し説明会を開催し,事業者団体が独占禁止法に違反することのないよ うに未然防止を図っている。 |
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2 | 本年度においては,相談の件数は808件であった。このうち,特徴的な 相談としては,以下のようなものが挙げられる。 |
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なお,景気動向や人手不足等による経費の上昇を反映して,また,当委 員会が講じている一連の施策を契機として,会員の価格に関する相談が依 然として多い。 また,相談事例については 事業者団体の独占禁止法に対する理解を一 層深めるため,相談のあった事例のうち,他の事業者団体にも参考となる と思われるものの概要を主要相談事例集として取りまとめ,公表するとと もに,事業者団体及び関係官公庁に対し説明会を実施した。 |