第2部 各  論

第1章 独占禁止法制の動き

第1 所管法令の改正

 当委員会が所管する法令には,独占禁止法のほか,私的独占の禁止及び公
正取引の確保に関する法律の適用除外に関する法律(以下「適用除外法」と
いう。),下請法及び景品表示法並びに私的独占の禁止及び公正取引の確保に
関する法律施行令等の政令がある。その他,当委員会は,独占禁止法第76条
の規定に基づき,内部規律,事件の処理手続及び届出,認可又は承認の申請
その他の事項に関する必要な手続について規則を定めることができるとされ
ており,この規定に基づいて公正取引委員会の審査及び審判に関する規則等
が定められている。
 本年度における独占禁止法以外の所管法令の改正状況は,次のとおりであ
る。

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(昭和52年政令
第317号)が改正され,独占禁止法第9条の2の規定により株式保有額の
制限を受ける大規模会社の規模要件である資本金額及び純資産額を資本金
100億円以上又は純資産300億円以上の株式会社(金融業を除く。)から,
資本金350億円以上又は純資産1400億円以上の株式会社(金融業を除く。)
にそれぞれ引き上げられた。
 なお,この政令は平成7年4月26日に施行された。
 公正取引委員会の審判費用等に関する政令(昭和23年政令第332号)が
改正され,当委員会に出頭を命ぜられた参考人及び鑑定人に支払われる日
当額の上限が引き上げられた(平成6年政令第204号)。
 事務局の定員に関し,公正取引委員会事務局組織令等の一部改正が行わ
れた(附属資料1-1)。

第2 独占禁止法と他の経済法令等との調整等

法 令 調 整
 当委員会は,関係行政機関が特定の政策的必要性から経済法令の制定又
は改正を行おうとする際に,これら法令に独占禁止法の適用除外や競争制
限的効果をもたらす行政庁の処分についての規定を設けるなどの場合に
は,その企画・立案の段階で当該行政機関から協議を受け,独占禁止法及
び競争政策との調整を行っている。
 本年度において調整を行った主なものは,次のとおりである。
(1) 特定事業者の事業革新の円滑化に関する臨時措置法案
 産業空洞化や雇用環境の悪化に対する懸念を解消し,中長期的に国際
的に開かれた活力ある社会の実現のため,産業構造転換と雇用対策を一
体的に推進する必要があるとの観点から,通商産業省は,特定事業者の
事業革新の円滑化に関する臨時措置法案を立案した。
 この法案は,国が,内外価格差や取引慣行に関する調査を実施し,そ
の情報提供を行うことを規定するとともに,製造業者等が,新商品の開
発,新生産方式の導入,新販売方式の導入等(これらを法案上「事業革
新」という。)により既存の労働力などの経営資源を有効に活用できる
ような場合には,税制・金融上の支援措置等を講じることを主たる内容
とするものである。
 本法案においては,2以上の特定事業者(生産及び雇用が減少するお
それがある等として主務省令で定める業種に属する事業者)の共同の事
業革新は,独占禁止法の枠内で行うものとし,このため当委員会と主務
大臣との間で意見を調整する制度が設けられている。当委員会は,産業
空洞化及び雇用問題に対しては,規制緩和の推進等市場機能の活用によ
ることが基本であり,独占禁止法上の問題を生じないようにすることが
必要であるとの観点から,所要の調整を行った。
 なお,本法律案は,第132回国会に提出,審議された結果,平成7年
3月17日可決,成立し,同年3月31日に公布された。
(2) 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律案
 米穀,麦等の主要食糧の需給及び価格の安定を図るため,及び世界貿
易機関を設立するマラケシュ協定の実施に伴い,生産調整の円滑な推
進,備蓄の機動的な運営及び米穀の適正かつ円滑な流通の確保を図るた
めの措置並びに政府による主要食糧の買入れ,輸入及び売渡しの措置を
総合的に講ずるため,農林水産省は,米穀の流通規制の緩和,食糧管理
法の廃止等を内容とする主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律案
を立案した。
 従来,食糧管理法の規定によって行う行為については,独占禁止法の
規定が適用されないこととされていたが,本法律案により,私的独占の
禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律から食
糧管理法が削除されることとなる。当委員会は,米穀の流通規制の緩和
等により事業者間の競争が促進されることが重要であり,本法律案に基
づく行為については,食糧管理法とは異なり独占禁止法の適用除外とは
すべきではないとの観点から,所要の調整を行った。
 なお,本法律案は,第131回国会に提出,審議された結果,平成6年1
2月8日可決,成立し,同年12月14日に公布された。
(3) 保険業法案等
 内外の経済社会情勢の変化に対応し,保険会社の経営の健全性と保険
募集の公正を確保することにより保険契約者等の保護の徹底を図るとと
もに,保険会社の適正な競争の促進及び諸外国との調和のとれた保険制
度の構築を図る必要性にかんがみ,生命保険会社及び損害保険会社の子
会社方式による相互参入,保険商品,料金等に係る規制についての一部
届出制への移行等を内容とする保険制度の全般的な改革を実施するた
め,大蔵省は,保険業法の全部を改正する保険業法案及び保険業法の施
行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を立案した。
 当委員会は,保険業及び保険募集等における競争が促進されることが
重要であり,また,保険業法に基づく独占禁止法適用除外行為に対する
当委員会の監視を強化するとともに,独占禁止法の適用が除外されてい
る損害保険料率算出団体が算出する種目等に対する当委員会の監視を強
化することが重要であるとの観点から,所要の調整を行った。
 なお,本法案は,第132回国会に提出,審議された結果,平成7年5
月31日可決,成立し,同年6月 7日に公布された。
行 政 調 整
 当委員会は,関係行政機関が特定の政策的必要性から行う行政措置など
について,当該措置等が独占禁止法及び競争政策上問題がある場合には,
当該行政機関と調整を行うこととしているが,本年度においては,特に問
題となるものはなかった。