第3 同 意 審 決

 平成6年(判)第3号青山商事株式会社に対する審決

(1) 被 審 人
(2) 事件の経過
 本件は,当委員会が景品表示法第6条第1項の規定に基づき,青山商
事株式会社(以下「青山商事」という。)の販売する背広服の価格につ
いての表示が同法第4条第2号に違反するとして行った排除命令につい
て,青山商事がこれを不服として審判開始の請求を行ったので,同社に
対し同法第8条第2項の規定に基づき,審判開始決定を行い,審判官を
して審判手続を行わせていたものである。
 当委員会は,青山商事から,文書をもって,独占禁止法第53条の3の
規定に基づき同意審決を受けたい旨の申出があり,かつ,具体的措置に
関する計画書が提出されたので,これを精査した結果,適当と認められ
たので,その後の審判手続を経ないで,審決を行った。
(3) 認定した事実の概要
 青山商事は,紳士服等の販売業を営む事業者であり,平成5年8月
18日現在全国各地区に465店舗を設けている。
 青山商事は 自己の販売する背広服,礼服及び背広上衣(以下「背
広服等」という。)について,各店舗に,「自店通常販売価格」と称す
る価格から「9割引」,「8割引」,「7割引」,「6割引」又は「5割
引」と表示して販売する背広服等によって構成される「特別コー
ナー」と,それ以外の背広服等を販売する売場を設けている。
 青山商事は,自己の販売する背広服等に関し,「春物いきなり9・
8・7・6・5割引」と題するビラ及びこれと同種のビラを,新聞販
売店を通じて一般日刊紙に折り込み,新聞の購読者である一般消費者
に配布した。
 青山商事は,前記ウ記載のビラにおいて,実際の販売価格に比し著
しく高い価格を「自店通常販売価格」として表示し,これを比較対照
価格として実際の販売価格に併記しているが,当該ビラに記載された
背広服の大部分は,従前に販売されたことのないもの又は「自店通常
販売価格」として表示した価格よりも相当程度低い価格で販売されて
いたものであり,このような場合には「自店通常販売価格」との表示
は事実と異なるものであって,実際の販売価格が著しく値引きされて
いるかのように見せかける表示をしているものである。
 青山商事は,特別コーナー以外の売場で販売する背広服に付した値
札において,実際の販売価格に比し著しく高い価格を「小売価格」と
して表示し,これを比較対照価格として実際の販売価格に併記してい
るが,かかる「小売価格」として表示した価格は同社が任意に設定し
た架空のものであって,実際の販売価格が著しく安いかのように見せ
かける表示をしているものである。
(4) 法令の適用
 青山商事は,背広服の価格について,実際のものよりも取引の相手方
に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため,不当に顧客を誘引
し,公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示をしているも
のであって,これは景品表示法第4条第2号の規定に違反するものであ
る。
(5) 命じた主な措置
 青山商事は,①一般消費者の誤認を排除するために,前記ビラに記載
された事項のうち,背広服の比較対照価格に関する部分は事実と異なる
ものであり,また,前記値札に記載された事項のうち,比較対照価格に
関する部分は架空のものであり,これらは,背広服の販売価格について
実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であ
る旨を速やかに公示しなければならず,②今後,背広服等の取引に関
し,値札及びビラ,新聞,テレビ等における広告に,本件記載事実と同
様の表示をすることにより,販売価格について実際のものよりも著しく
有利であるとー般消費者に誤認される表示をしてはならず,⑧今後一年
間,背広服等の取引に関し,ビラ,新聞,テレビ等による広告をしたと
きは,直ちに,当委員会にその広告物を提出しなければならない。

第4 訴   訟

独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)に基づく損害賠償請求事件
 本年度当初において係属中の独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償
請求事件は,次の岩留工業株式会社による請求事件1件であり,また,本
年度中に新たに提起された事件はなかった。
(1) 事件の表示
東京高等裁判所平成5年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原 告  岩留工業株式会社   被 告  三蒲地区生コンクリート協同
組合
 提訴年月日  平成5年2月17日
(2) 事案の概要
 当委員会は,平成3年12月 2日,三蒲地区生コンクリート協同組合が
原告に対して行った砂利の購入妨害行為の排除を命じる審決を行った。
当該審決が確定した後,原告は,同協同組合に対して独占禁止法第25条
に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
(3) 訴訟手続の経過
 本件について,東京高等裁判所から平成5年3月 9日付けの独占禁止
法第84条第1項に基づく独占禁止法違反行為によって生じた損害額に
ついての求意見に対し,当委員会は,平成5年10月1日に意見書を同
裁判所に提出した。なお,本件は,本年度末現在,同裁判所に係属中で
ある。
その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等
(1) 旧埼玉土曜会談合事件に係る住民訴訟
事件の表示
浦和地方裁判所平成4年(行ウ)第13号
損害賠償請求事件
原 告   岩木英二ほか60名
被 告   鹿島建設株式会社ほか65名(訴えの一部取下げがあったの
 で29名に減少した。)
 提訴年月日  平成4年8月14日
事案の概要
 当委員会は,埼玉県発注に係る土木一式工事の入札談合について,
平成4年6月3日に鹿島建設株式会社ほか65名に対し当該行為の排除
を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,埼玉県の住民が,当
該建設業者等に対して,地方自治法に基づき埼玉県に代位して損害賠
償を求める住民訴訟を浦和地方裁判所に提起した。
訴訟手続の経過
 本件について,浦和地方裁判所は,本年度中に口頭弁論を6回(平
成4年度及び同5年度を含め計12回)行い,本件訴訟は本年度末現
在,同裁判所に係属中である。
 同裁判所は,本件に関し当委員会に対し平成5年5月31日に文書送
付嘱託を行い,当委員会は,同年8月27日,同裁判所に資料を提供し
た。その後,同裁判所から,平成6年3月24日に再度文書送付嘱託及
び調査嘱託があり,同年8月12日回答を行った。
(2) 社会保険庁発注に係る支払通知書等貼付用シールの供給業者に対する
不当利得返還請求訴訟
事件の表示
東京地方裁判所平成5年(ワ)第24034号
不当利得返還請求事件
原 告  国   被 告  トッパン・ムーア株式会社ほか2名
 提訴年月日  平成5年12月17日
事案の概要
 本件は,社会保険庁発注の年金受給者への支払通知等において使用
する支払通知書等各種貼付用シールの入札談合について,国が,民法
第704条に基づき,本件談合による落札価格と客観的価格(時価)と
の差額は被告らの不当利得であるとして,その返還を求める訴訟を東
京地方裁判所に提起したものである。
 なお,当委員会は,本件支払通知書等貼付用シールの入札談合につ
いて,平成5年4月22日にトッパン・ムーア株式会社ほか3社に対し
当該行為の排除を命じる審決を行い,同年9月24日課微金納付命令を
行った。3社は納付命令に不満があるとして審判手続の開始を請求
し,現在係属中である。
訴訟手続の経過
 本件について,東京地方裁判所は,本年度中に口頭弁論を4回行
い,本年度末現在,同裁判所に係属中である。
(3) アメリカ合衆国を債権者とする資産の仮差押異議申立事件(横須賀米
軍基地談合事件関係訴訟)
事件の表示
東京高等裁判所平成6年(ネ)第1295号
仮差押異議申立事件
控訴人  米国政府
被控訴人 保坂建設株式会社
  提訴年月日 平成2年6月27日
  判決年月日 (横浜地裁川崎支部)
平成6年3月17日(米国政府敗訴)
  控訴年月日 平成6年3月30日
事案の概要
 本件は,横須賀基地を中心とする在日海軍基地等における建設工事
等を競争入札により発注しているアメリカ合衆国の極東建設本部等
が,競争入札に参加する業者らのいわゆる談合行為により損害を被っ
たとして,談合行為が存在した契約のうち,当委員会が課徴金納付命
令の対象とした建設工事等に限定し,その損害賠償請求権を被保全権
利として,仮差押申請を行い仮差押決定を得ていたのに対し,債務者
が異議を申し立てたものである。なお,横浜地方裁判所川崎支部は,
本件に関し,当委員会に対し,平成3年7月31日,文書送付嘱託を
行ったのを受け,当委員会は,同年10月23日,同裁判所に資料を提供
した。
横浜地裁川崎支部判決の概要
 本判決は,債務者らの行為は独禁法に違反する談合行為に当たり,
一応,民法上の共同不法行為に該当し,債務者は同行為と相当因果関
係にある債権者の被った損害を賠償すべき義務があるとした上で,債
権者の主張する損害額を認めるに足る疎明はないことから,本件各仮
差押申請は,少なくとも,その被保全権利の存在につき,未だこれを
認めるに足りる疎明が不十分であるとして,本件各仮差押決定をいず
れも取り消し,債権者の本件各仮差押申請をいずれも却下した。
訴訟手続の経過
 本件について,東京高等裁判所は,本年度中に口頭弁論を1回行
い,本年度末現在,同裁判所に係属中である。
(4) 米軍厚木基地における入札談合事件損害賠償請求訴訟
事件の表示
東京地方裁判所平成6年(ワ)第18372号
損害賠償請求事件
原 告  米国政府
被 告  荒澤建設株式会社ほか52名
 提訴年月日  平成6年9月16日
事案の概要
 本件は,米国政府が米国海軍航空施設(厚木基地)における建設工
事等を競争入札により発注しているアメリカ合衆国の厚木駐在建設事
務官が,競争入札に参加する厚木建設部会会員73社の昭和59年から平
成2年にかけての談合行為により損害を被ったとして損害賠償を求め
る「通告書」を送付したが,これに応じなかった荒澤建設株式会社ほ
か52社に対して,民法第709条及び第719条に基づき損害賠償請求訴訟
を東京地方裁判所に提起したものである。
訴訟手続の経過
 本件については,本年度末現在,東京地方裁判所に係属中である。
審決取消請求事件
 本年度当初において審決取消請求事件は係属していなかったが,本年度
新たに次の3件の審決取消請求事件が提起され,これらの事件は,本年度
末現在,東京高等裁判所に係属中である。
(1) 株式会社協和エクシオによる審決取消請求事件
事件の表示
東京高等裁判所平成6年(行ケ)第80号
審決取消請求事件
原 告  株式会社協和エクシオ   被 告  公正取引委員会
 審決年月日  平成6年3月30日
 提訴年月日  平成6年4月14日
審決の概要
 当委員会は,株式会社協和エクシオに対し,独占禁止法第54条の2
第1項の規定に基づき,2,212万円の課徴金の納付を命ずる審決を
行った。
 本審決が認定した本件違反事件の概要は次のとおりである。
株式会社協和エクシオは,同業9社とともに,遅くとも昭和56年
2月末までに,米国空軍契約センター発注に係る電気通信設備の運
用保守サービス(電話通信及びマイクロ通信の連用保守サービス)を
円滑に受注できるようにするため「かぶと会」を設立するとともに,
あらかじめ上記発注に係る物件につき受注予定者を決め,受注予定者
以外の入札参加会員は,受注予定者が受注できるよう協力する旨の
合意をし,同年4月1日から昭和63年5月10日までの間,米国空軍
契約センターが発注した27の物件につき,受注予定者を決定してき
た。
事案の概要
 本件は,株式会社協和エクシオが,本件審決には,①本件主要事
実を立証する実質的な証拠がなく,また,仮に本件審決の認定事実
を認めたとしても,②法令違反(可罰的競争制限性の欠如,除斥期
間の経過)が存するとして,審決の取消しを求めているものである。
訴訟手続の経過
 本件について,東京高等裁判所は,本年度,準備手続を5回行っ
た。
(2) 東芝ケミカル株式会社による審決取消等請求事件
事件の表示
東京高等裁判所平成6年(行ケ)第144号
審決取消等請求事件
原 告  東芝ケミカル株式会社   被 告  公正取引委員会
審決年月日(旧審決)   平成4年 9月16日
提訴年月日(一次訴訟)  平成4年10月16日
判決年月日(一次判決)  平成6年 2月25日(取消し,差戻し)
審決年月日(再審決)   平成6年 5月26日
提訴年月日(本件訴訟)  平成6年 6月24日
審決の概要
 審決の概要は,本章第2のとおりである。
事案の概要
 当委員会は,平成4年9月16日に東芝ケミカル株式会社に対して審
決(旧審決)を行ったところ,同社から審決取消等請求訴訟(一次訴
訟)が東京高等裁判所に提起され,同裁判所は,平成6年2月25日,
旧審決を取り消し,事件を当委員会に差し戻す旨の判決を行い,同判
決は確定した。
 同判決は,独占禁止法の規定する審判手続は準司法手続としての性
格が強く,審判者の公平確保が不可欠であるとした上で,当委員会の
委員が任命前に特定事件の審査にかかわった場合,議事・議決の定足
数の規定に照らし,当該委員が審決に加わる必要性のない限り,当該
委員は審決に関与する資格を失うというべきであるところ,訴外A委
員が関与した旧審決は,審判者の公平を確保するという準司法手続に
関する法の基本原則に違反し,違法なものであり,旧審決は取消しを
免れず,訴外A委員を構成員としない当委員会において更に審理判断
させるのが相当であるとして,旧審決を取り消し,事件を当委員会に
差し戻したものである。
 本件は,当委員会の東芝ケミカル株式会社に対する平成6年5月26
日付け再審決について,同社が,本件再審決には,審決に係る手続に
法令違反(差戻し後審判を開かず,直接陳述の機会を与えなかったこ
と,旧審決に関与した訴外B委員が再審決にも関与していること)が
あり,また,本件審決は審決の基礎となった事実を立証する実質的な
証拠を欠くものであって違法であるとして,主位的には審決の取消し
を,予備的には,本件審判手続における違法(正当な理由なく原告の
文書提出命令申立て(被審人取締役の調書)を却下した違法)を理由
として,事件の差戻しを求めているものである。
訴訟手続の経過
 本件について,東京高等裁判所は,本年度,口頭弁論を1回,準備
手続を2回行った。
(3) 東京もち株式会社による審決取消請求事件
事件の表示
東京高等裁判所平成6年(行ケ)第232号
審決取消請求事件
原 告  東京もち株式会社   被 告  公正取引委員会
 審決年月日  平成6年9月29日
 提訴年月日  平成6年10月19日
審決の概要
審決の概要は,本章第2のとおりである。
事案の概要
 本件は,東京もち株式会社が,当委員会の裁量権に関し,①景品表
示法違反行為の処分については,あらかじめ裁量基準を定めてお〈べ
きであるのに,当委員会はその義務を果たしておらず,また,②当委
員会の裁量処分には,動機の違法・平等原則違反等が存することか
ら,裁量権を逸脱した違法があるなどと主張して,審決の取消しを求
めているものである。
訴訟手続の経過
 本件について,東京高等裁判所は,本年度,準備手続を2回行っ
た。
その他の当委員会関係の訴訟
 本年度において係属中の当委員会が関係する訴訟は,豊田商法の被害者
による国家賠償請求事件2件,一光社ほか29名による行政処分取消等請求
事件(いわゆる消費税定価表示事件)1件の計3件であり,これらのうち
いわゆる消費税定価表示事件については本年度中に東京高等裁判所におい
て判決があり,控訴人らのうち30名が上告した。他の2件はいずれも本年
度末現在係属中である。
(1) 豊田商法の被害者(867名)による国家賠償請求事件(大阪豊田商事
事件)
事件の表示
大阪高等裁判所平成5年(ネ)第2733号
国家賠償請求事件
控訴人(原告)  田中俊男ほか866名    被控訴人(被告)  国
 提訴年月日  昭和63年4月23日(一次)
 昭和63年11月4日(二次)
 判決年月日(一審)  平成5年10月6日(原告の請求棄却)
 控訴年月日  平成5年10月19日
事案の概要
 本件は,豊田商事株式会社(以下「豊田商事」という。)による「金
地金の売買」と「純金ファミリー契約」を組み合わせた,いわゆる豊
田商法によって被害を受けたとする者らが,被告国の公務員である当
委員会,法務省,警察庁,大蔵省,経済企画庁の各担当者には豊田商
法による被害の発生を防止すべくその有する規制権限を行使すべき義
務があり,また,通商産業省の担当者には同様に上記被害を防止すべ
くその権限に属する行政指導をすべき義務があるのにこれを怠ったこ
とにより被害を被ったとして,国家賠償法第1条第1項に基づいて,
被告国に対し,損害賠償を求めているものである。
 なお 当委員会に対する原告らの主張は,豊田商法が独占禁止法第
19条(「不公正な取引方法」一般指定第8項のぎまん的顧客誘引)及び
景品表示法第4条第1号及び第2号(不当表示)の各規定に該当する
ことは明らかであり,当委員会はこれを認識し,調査することが可能
であったから,前記各法律に基づき,その権限を行使して,排除勧
告,排除命令等の行政措置を行う作為義務を負っていたにもかかわら
ず,漫然と豊田商法の継続,拡大を放置したため,原告らに被害をも
たらしたとするものである。
ウ  一審(大阪地方裁判所)判決の概要
(ア)  総論(規制権限行使義務の発生要件)
 本判決は,規制権限の不行使が違法となる要件として,次の5点
を挙げた。
 当該個別の国民の生命,身体,健康並びにこれに匹敵するほど
重要な財産等に具体的危険が切迫していたといえるか(危険の切
迫)
 当該公務員がその危険を知り又は容易に知り得る状態にあった
といえるか(予見可能性)
 当該公務員が当該規制権限の行使により容易に結果を回避し得
たといえるか(結果回避可能性)
 当該公務員が当該規制権限を行使しなければ結果発生を防止し
得なかったといえるか(補充性)
 国民が当該公務員による当該規制権限の行使を要請ないし期待
している状況にあったといえるか(国民の期待)
(イ) 当委員会の責任に関する裁判所の判断
 本判決は,豊田商事が独占禁止法第19条の「事業者」に当たるこ
とを肯定し,不作為の違法の要件である危険の切迫,予見可能性,
補充性が存在したことは認めたが,国民が公務員による規制権限の
行使を期待している状況にあったこと及び公務員が規制権限を行使
すれば容易に結果を回避できたことについてはいずれも認めず,ま
た,当委員会が有する広範な裁量権をも総合考慮すれば,規制権限
の不行使が著しく不合理であったとはいえないとした。
訴訟手続の経過
 本件について,大阪高等裁判所は,本年度口頭弁論を3回行い,本
件訴訟は,本年度末現在,同裁判所に係属中である。
(2) 豊田商法の被害者(2名)による国家賠償請求事件
事件の表示
神戸地方裁判所昭和60年(ワ)第826号,第849号
国家賠償請求事件
原 告  石田三奈子ほか1名   被 告   国
 提訴年月日(第826号事件につき)  昭和60年6月11日
(第849号事件につき)  昭和60年6月14日(第826号事
 件に併合)
事案の概要
 本件は,昭和56年から60年にかけて豊田商事が行った,顧客との間
で純金の売買契約を締結し,同時に顧客が購入した純金を同社が預
かって運用することなどを内容とする純金ファミリー契約と称する契
約を締結して純金の現物の代わりに証券を交付するといういわゆる豊
田商法により,純金の売買代金及び手数料名下に金員を騙し取られた
として,顧客ら2名が,国に対し,国家賠償法第1条第1項に基づ
き,損害賠償の支払いを求めているものである。
 なお,当委員会に関する原告らの主張は,豊田商法は独占禁止法の
不公正な取引方法及び景品表示法の不当表示に該当する行為であり,
両法に違反することは比較的客観的に解明できるのであるから,これ
を認識していた当委員会は,その権限を行使して必要な措置を採る法
律上の義務があったにもかかわらず,何ら権限を行使することなく消
費者の利益を確保する義務を怠ったとするものである。
訴訟手続の経過
(ア)  本件は,豊田商法の被害者2名が,国及び豊田商事に対し損害賠
償の支払いを求めたものであったが,被告豊田商事については,昭
和62年12月11日の第13回口頭弁論期日において訴えが取り下げられ
ている。
 なお,国に対する請求は,当初,国会議員,通商産業省,経済企
画庁,農林水産省,法務省,警察庁及び内閣の豊田商法に対する不
作為の違法を主張していたが,昭和62年9月11日の第12回口頭弁論
期日において,当委員会についても豊田商法に対する規制権限の不
行使は違法であるとして,追加主張がされた。
(イ)  本件について,神戸地方裁判所は,口頭弁論期日を追って指定す
ることとしており,本件訴訟は,本年度末現在,同裁判所に係属中
である。
(3) (株)一光社ほか29名による行政処分の取消等請求上告事件(消費税定
価表示事件)
事件の表示
最高裁判所平成6年(行ツ)第136号
行政処分の取消等請求上告事件
上告人(株) 一光社ほか29名   被上告人  公正取引委員会,国
提訴年月日  平成元年7月20日
判決年月日(一審)  平成4年3月24日(原告の請求棄却)
判決年月日(二審)  平成6年4月18日(控訴人の控訴棄却)
 上告年月日  平成6年4月27日
事案の概要
本件は,出版社等30名(提訴時は35名)が,再販売価格は消費税込
みの価格であるとする当委員会の平成元年2月22日付け「消費税導入
に伴う再販売価格維持制度の運用について」と題する公表文(以下
「本件公表文」という。)の公表や指導等によって,書籍の定価の表示
のし直しを強制されたことにより,カバーの刷り直し,新表示のシー
ル貼り等の出費を余儀なくされ,損害を被ったとして,当委員会に対
しては本件「行政処分」(公表文の公表)の取消しあるいは無効確認
を,国に対しては国家賠償を求めるものである。
一審(東京地方裁判所)判決の概要
(ア) 本件公表文の公表の取消し等を求める訴えについて
 本件公表文の公表は,抗告訴訟の対象となる行政処分には該当し
ないとして,その取消しあるいは無効確認を求める当委員会に対す
る本件各訴えを却下した。
(イ) 国家賠償請求の訴えについて
 独占禁止法第24条の2第1項にいう再販売価格は,消費者が支払
う消費税込みの価格であるとする本件公表文中の当委員会の法解釈
は正しく,当委員会の事務当局者による指導あるいは本件公表文の
公表は,国家賠償法第1条第1項にいう国の公務員の違法な公権力
の行使には当たらないとして,国に対する請求を棄却した。
二審(東京高等裁判所)判決の概要
 二審判決は,原判決の理由に対して若干の付加,訂正を加えたほか
は,原判決を維持し,控訴人らの控訴を棄却した。
訴訟手続の経過
 本件については,二審判決後,控訴人ら(30名)が上告しており,
本件訴訟は,本年度末現在,最高裁判所に係属中である。