ア |
メーカーと代理店との取引 |
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メーカーは,1社平均16.6社の代理店と取引しており,5年以上継
続して取引している代理店が約90%を占める。代理店は,1社平均
5.3社のメーカーと取引している。取引が継続的になる理由として,
メーカーは,タイヤメーカーと合成ゴムメーカーとの直接取引もあっ
て代理店の新規参入が少ないこと,品質の向上,技術サービスの提供
など,メーカーの活動がユーザーに評価されていることなどを挙げて
おり,一方,代理店は,過去の取引実績に基づく信用を重視している
こと,ユーザーが仕入商品についてメーカー名を指定することなどを
挙げている。 |
イ |
代理店・メーカーとユーザーとの取引 |
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代理店は1社平均46社のユーザーと取引し,メーカーは1社平均25
社のユーザーと直接取引している。一方,ユーザーは,1社平均7.4
社の代理店と取引し,また,1社平均3.3社のメーカーと取引してい
る。
代理店とユーザーとの取引では,5年以上継続して取引している
ユーザーが92.6%を占め,メーカーとユーザーとの取引では,5年以
上継続して取引しているユーザーが84%を占める。ユーザーは仕入先
との取引が継続的になる理由として,仕入先が販売業者の場合には,
過去の取引実績に基づく信用を重視していることや,仕入れに適した
製品のメーカーの代理店になっていることなどを,仕入先がメーカー
の場合には,過去の取引実績に基づく信用を重視していることのほ
か,他の業者に比べて価格,取引条件等が有利なためであることなど
を挙げている。 |
ウ |
代理店の価格交渉・価格決定に対するメーカーの関与 |
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代理店を経由する取引においても,メーカーがユーザーへの販売価
格を実質的に決定することが多いという実態がみられたが,メーカー
がユーザーとの間で直接に価格等の取引条件を決定し,代理店は代金
回収に対する手数料を得ているにすぎないなど,実質的にみて,メー
カーがユーザーに販売していると認められる取引が多いと考えられ
る。しかし,実質的にみて代理店がユーザーに販売していると認めら
れる場合に,メーカーが代理店のユーザーへの販売価格に関与するこ
ととなれば独占禁止法上の問題が生じるおそれがある。メーカーが,
代理店との取引基本契約書において,メーカーの指定する販売価格で
の販売に努める旨の条項を設けている例がみられたが,これについて
は本調査の実施を契機に既に関係事業者により自主的に是正されてい
る。 |
エ |
代理店による競合他社品の取扱い |
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メーカーの中には,メーカーと代理店との取引基本契約書におい
て,代理店が競合他社品の取扱いを行う場合には,あらかじめメー
カーと協議する旨の条項を設けるとともに,代理店にリベートを供与
する場合に,リベートの算定要素の1つとして競合他社品の取扱率の
多寡によってリベートの率に差が生じるように査定する例がみられた
が,これについては本調査の実施を契機に既に関係事業者により自主
的に是正されている。 |
オ |
メーカーと代理店,メーカー・代理店とユーザーとの結び付き |
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メーカー14社のうち11社は,代理店の株式を所有しており,代理店
63社のうち26社は,メーカーの株式を所有しているが,これらの株式
所有比率は1%未満が多い。また,メーカー14社のうち8社は,代理
店に役員を派遣している。また,代理店18社のうち3社は,ユーザー
に役員を派遣している。
メーカーと大手ユーザー間の一部で,株式の相互持ち合いや役員派
遣が行われ,取引も大量かつ継続的になっているケースがみられる
が,これらのケースには,合成ゴムメーカーの設立に際してタイヤ
メーカーが出資し,合成ゴムを共同で開発してきたことなどの経緯が
ある。ただし,この場合にもタイヤメーカーが株式所有先である合成
ゴムメーカーの販売先を制約している事実はなく,また,タイヤメー
カー自身が自己の株式所有先とライバル関係にある国内メーカーの製
品や海外メーカーの製品も購入しており,株式所有等の結び付きによ
り取引先の選択及び製品の販売又は購入が制約されているとは認めら
れない。 |
力 |
主要ユーザー(タイヤメーカー)の取引等の状況 |
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合成ゴムの主要ユーザーであるタイヤメーカー5社は,海外合成ゴ
ムメーカーを含め1社平均20.8社を仕入先としている。そのうち,代
理店が1社平均8.6社,国内メーカーが1社平均8.0社であり,その他
のユーザーと比べて仕入先の数はかなり多く,また,多くのメーカー
と直接取引している。
タイヤメーカー5社と仕入先との取引では,仕入先が代理店の場合
には5年以上継続して取引している代理店が93%を占め,仕入先が
メーカーの場合にはすべて5年以上継続して取引している。取引が継
続的である理由として,タイヤメーカー5社は,仕入先がメーカーの
場合には,価格,取引条件等が有利なこと及び品質が良いことを重視
していることを挙げ,仕入先が代理店の場合には,それに加えてサー
ビス体制が優れていることを挙げるものが多い。
タイヤメーカー5社のうち4社は,仕入先メーカーの株式を所有し
ており,その株式所有比率は,大手タイヤメーカー2社がそれぞれ合
成ゴムメーカーの設立時に出資したものを除き,すべて1%未満であ
る。また,大手タイヤメーカー2社は,合成ゴムメーカーの設立に際
し,出資するとともに役員も派遣している。 |
キ |
輸入の状況 |
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海外メーカーの中には,我が国に販売子会社を設立し,これを通じ
て商社やユーザーに販売しているものと,我が国には販売拠点を持た
ずに,商社,ユーザー,合成ゴムメーカーに販売しているものとがあ
る。
輸入品の取扱状況をみると,代理店の57.1%が輸入品を取り扱って
いる。代理店18社のうち10社は,海外メーカーと取引しており,さら
に,5年以上継続的に取引している海外メーカーが約80%を占め,国
産品だけでなく輸入品についても継続的な取引が行われている。一
方,輸入品を購入しているユーザーが57.6%を占め,特に,タイヤ
メーカー5社はすべて輸入品を購入している。ユーザーの合成ゴムの
購入額全体に占める輸入品の割合は,10%未満であることが多く,国
内出荷量に占める輸入品の割合は必ずしも高いとはいえない。その要
因としては,輸入品の品質,納期等に難点があると評価されているこ
とや,ユーザーが合成ゴムの購入に関し,安定供給,迅速なクレーム
処理その他の技術サービス等を重視し,従来どおりの購入を継続する
傾向があることが考えられる。今後,海外メーカーにおいて品質,納
期等に対する改善努力が行われる一方,ユーザーにおいてその特性に
応じて輸入品を使いこなしていくことにより,合成ゴム市場において
国産品及び輸入品を含めた活発な競争が一層促進されることが期待さ
れる。 |