1 |
三菱化成㈱と三菱油化㈱との合併(平成6年8月合併届出受理,10月合
併) |
|
(1) |
概 要 |
|
本件は,総合化学メーカーである三菱化成株式会社(以下「三菱化
成」という。)と石油化学メーカーである三菱油化株式会社(以下「三菱
油化」という。)が事業環境の変化への対応,国際競争力の確保等を目的
として合併するものである。 |
(2) |
一定の取引分野 |
|
石油化学製品は,エチレン等の基礎製品,基礎製品を原料として生産
される誘導品及び誘導品を原料として生産される最終製品によって構成
されるが,基礎製品及び誘導品の各製品それぞれが製法,形状,伸長
性,強度,可塑性,耐熱性,耐薬品性等の点で特色を持ち,それらが
様々な最終製品に加工されていくものであることから,本件において
は,石油化学製品の各製品それぞれの販売分野に「一定の取引分野」が
成立すると判断した。 |
(3) |
問題点及び考慮事項 |
|
ア |
問 題 点 |
|
(ア) |
総合的事業能力の拡大 |
|
三菱化成は総合化学メーカーとして(同社の石油化学製品の売上
構成比約38%),また三菱油化は石油化学メーカーとして,それぞ
れ国内第1位の地位にあり,合併新会社は,総合化学及び石油化学
の分野において,さらに大規模な企業となることにより,総合的事
業能力が拡大し,他の競争者との格差がさらに拡大する。 |
(イ) |
個々の石油化学製品のシェアの増加 |
|
合併新会社は,石油化学製品のうち基礎製品であるエチレン,プ
ロピレン,ベンゼン及びB-B留分の生産能力シェアが,いずれも
15%以上かつ第1位となる。また,合併新会社は,石油化学製品の
うち誘導品であるアセトン,高級アルコール,低密度ポリエチレン
及びポリプロピレンの出荷数量シェアが,25%以上あるいは15%以
上かつ第1位となる。 |
|
イ |
考 慮 事 項 |
|
(ア) |
総合的事業能力の拡大について |
|
石油化学製品のうち基礎製品はナフサを分解することにより製造
される。これを行うエチレンセンターを有する12社の生産能力でみ
ると,合併新会社の生産能力シェアは22.3%かつ第1位となるが,
国内に10%合の生産能力シェアを有する有力な競争者が複数存在し
ている。
また,有力な競争者にあっては,アジア諸国に石油化学コンビ
ナートを稼働中ないし建設中であるのに対し,当事会社はいずれも
こうしたエチレンを中核とする大規模なコンビナート拠点を海外に
有しておらず,近年のアジア諸国の石油化学製品の国際的コスト競
争力の強さを考慮すると,合併新会社がこのような海外生産拠点を
有しておらず,海外展開が遅れていることは,合併新会社の競争力
を減殺することとなる。
さらに,合併新会社は世界第9位の化学メーカーとなるが,上位
企業である欧米化学メーカーに比べると売上高,研究開発費等の点
で格差がある。また,基礎製品の輸入圧力は大きくないが,誘導品
及び最終製品の輸入圧力が増大しており,特にアジア諸国からの汎
用品は価格競争力が強く,欧米からの高付加価値製品はその技術力
等に対する評価が高く,輸入量が増大傾向にある。 |
(イ) |
個々の石油化学製品のシェアの増加について |
|
a |
基 礎 製 品 |
|
当事会社それぞれの生産する基礎製品の大半は,自社の誘導品
製造プラントにおいて自家消費されており,自家消費分について
は誘導品相互の生産バランスからして企業経済的にも機械物理的
にもこれらの量的関係を崩すことは難しく,生産能力があるから
といって外販シェアを伸ばせるものではない。基礎製品の出荷数
量シェアをみると,B-B留分を除いて両社の合算シェアは高く
なく,同製品については三菱化成は全量自家消費しており,外販
していない。さらに,国内には他に海外にコンビナートを有する
企業を始めとする有力な競争者が存在し,海外メーカーもかなり
優位な供給者とみられる。 |
b |
誘 導 品 |
|
誘導品のうち,アセトンについては,出荷数量シェアは28%と
なるが第2位であり,他に25%程度の出荷数量シェアを有する有
力な競争者が存在し,かつ,アセトンはその用途においてイソブ
チレン(メタクリル樹脂の原料),メチルエチルケトン,酢酸メ
チル等(溶剤用)と代替性があるとみられる。
高級アルコールについては,合併新会社の出荷数量シェアは
20%かつ第1位となるが,石油化学系高級アルコールは天然系の
ものと競合関係にあり,石油化学系高級アルコールについて20%
近い出荷数量シェアを有し,しかも天然系高級アルコールも販売
している有力な競争者が複数存在している。
低密度ポリエチレン及びポリプロピレンについては,合併新会
社の出荷数量シェアは低密度ポリエチレン19.6%かつ第1位及び
ポリプロピレン17.1%かつ第1位となるが,いずれも他に10%台
の出荷数量シェアを有する有力な競争者が複数存在する。また,
低密度ポリエチレン及びポリプロピレンのうち汎用品について
は,両社が参加する共同販売会社による共同販売が行われてお
り,本件合併により変化が生じるものではなく,他の共同販売会
社が有力な競争者として存在する。 |
|
|
|
(4) |
本件の処理 |
|
上記の点を総合的に勘案すると,本件合併によって直ちに一定の取引
分野における競争を実質的に制限することとなるとはいえないと判断し
た。 |
|
2 |
住友化学工業㈱,日本ゼオン㈱及びサン・アロー化学㈱による塩化ビニ
ル樹脂事業の統合(平成7年4月営業譲受け届出受理) |
|
(1) |
概 要 |
|
本件は,塩化ビニル樹脂の共同販売会社の一つである第一塩ビ販売株
式会社(以下「第一塩ビ販売」という。)グループ4社のうちの住友化学
工業株式会社,日本ゼオン株式会社及びサン・アロー化学株式会社(株
式会社トクヤマの100%出資会社)の3社(以下「3社」という。なお,
他の1社は第一塩ビ販売から離脱する。)が,コストの低減と国際競争力
の確保等を目的として,塩化ビニル樹脂事業を統合(第ー塩ビ販売を母
体として塩化ビニル樹脂の製造・販売・研究開発を一体的に行う会社と
し,3社がそれぞれの塩化ビニル樹脂事業を譲渡)するものである。 |
(2) |
一定の取引分野 |
|
塩化ビニル樹脂は,サスペンジョン,ペースト及びコポリマーの3種
類に大別されるが,
ア |
サスペンジョン,ペースト及びコポリマーは,いずれも塩化ビニル
モノマーを重合して得られる熱可塑性樹脂であって,重合度等に違い
があるにすぎないこと |
イ |
塩化ビニル樹脂は,種々の塩化ビニル製品の原料として用いられる
が,フィルムシート,床材,壁紙等については,サスペンジョン,
ペースト及びコポリマーのいずれもが使用されていること |
ウ |
サスペンジョンは主として少品種大量生産用途に使用され,押出
し・圧延設備を使って加工するのに対し,ペーストは多品種少量生産
用途に使用され,塗布設備を使って加工するのに適しているという違
いはあるものの,ペーストは軟質塩化ビニル製品を製造するための1
つのグレードとして位置付けられており,需要者は加工形態・ロット
により使い分けているにすぎないこと |
エ |
海外,国内ともに通常「塩ビ」という場合には,サスペンジョン,
ペースト及びコポリマーを包含していること,
|
等から,本件においては,サスペンジョン,ペースト及びコポリマー
を合わせた塩化ビニル樹脂全体の販売分野に「一定の取引分野」が成立
すると判断したが,念のため,本件統合により出荷数量シェアが高くな
るペーストの販売分野にも「一定の取引分野」が成立するとみて,ペー
ストの販売分野における競争への影響についても検討した。
(注) |
サスペンジョン,ペースト及びコポリマーの異同は,次のと
おりである。
サスペンジョン |
: |
塩化ビニルモノマーを重合して得られる熱
可塑性樹脂であって,粒径が100ミクロン
程度の粒状樹脂であり,主として押出し,
圧延等の汎用機脂加工に用いられる。 |
ペースト |
: |
塩化ビニルモノマーを重合して得られる熱
可塑性樹脂であって,粒径が1ミクロン程
度の粒状樹脂であり,可塑剤と混用して塗
布などのペースト加工に用いられる。 |
コポリマー |
: |
塩化ビニルモノマーと酢酸ビニル等とを共
重合して得られる熱可塑性樹脂であり,低
温加工などに用いられる。 |
|
|
(3) |
問題点及び考慮事頃 |
|
ア |
問 題 点 |
|
本件統合により,塩化ビニル樹脂全体の販売分野についてみると,
3社の出荷数量シェアは16.1%であるが,ペーストの販売分野につい
てみると,3社(ただし,うち1社はペーストを製造していない。)の一
生産能力シェア及び出荷数量シェアは40%を超え,国内におけるペー
ストのメーカーは5社から4社となる。 |
イ |
考 慮 事 項 |
|
(ア) |
塩化ビニル樹脂全体 |
|
塩化ビニル樹脂全体の販売分野についてみると,3社の出荷数量
シェアは16.1%であり,他の塩化ビニル樹脂の共同販売会社との対
比においてはもとより,競争メーカーとの対比でも著しく優位な地
位にはない。 |
(イ) |
ペ ー ス ト |
|
ペーストの販売分野についてみても,国内における他の競争メー
カー3社のペーストの生産能力シェアは,1社が約30%であり,他
の2社がいずれも10%超であり,有力な競争者とみられる。
さらに,ペーストについては,従来は,需要が多品種少量である
こと,壁紙用のペーストの需要者などから品質面での要求が多いこ
とから,海外品の影響をあまり受けなかったが,最近になって海外
品の売り込みが強くなってきており,原価引下げを目的として比較
的品質差の少ない床材用を中心にして輸入の増加が見込まれる。加
えて,生産設備の新増設が行われたタイ及び韓国などからの輸入圧
力が強まると見込まれる。
また,ペーストに対してはサスペンジョンのうち高重合度サスペ
ンジョンが極めて有効な代替品として機能する。 |
|
|
(4) |
本件の処理 |
|
上記の点を総合的に勘案すると,本件営業譲受けによって直ちに一定
の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとはいえないと
判断した。 |
|
3 |
旭化成工業㈱と㈱トクヤマによる炭化水素系イオン交換膜の共同生産会
社の設立 |
|
(1) |
概 要 |
|
本件は,旭化成工業株式会社(以下「旭化成」という。)及び株式会社
トクヤマ(以下「トクヤマ」という。)が,経費削減,製造原価引下げ等
を目的として,共同出資により,主に製塩用電気透析装置に使用される
炭化水素系イオン交換膜を製造する共同生産会社(以下「新会社」とい
う。)を設立するというものである。 |
(2) |
一定の取引分野 |
|
イオン交換膜には,フッ素系イオン交換膜と炭化水素系イオン交換膜
とがあるが,①膜の薄膜化の程度,②イオン選択透過性等に差があるこ
とから,フッ素系イオン交換膜は苛性ソーダの製造工程及び燃料電池に
使用され,また,炭化水素系イオン交換膜は製塩及び食品(醤油等)の
脱塩等に使用されており,それぞれ用途が異なり代替性がないことか
ら,「一定の取引分野」を異にすると判断し,本件においては,炭化水
素系イオン交換膜の販売分野について検討を行った。 |
(3) |
問題点及び考慮事項等 |
|
ア |
問 題 点 |
|
炭化水素系イオン交換膜の国内メーカーは,旭化成,トクヤマ及び
旭硝子株式会社(以下「旭硝子」という。)の3社だけであり,新会社
の設立により国内メーカー数が新会社と旭硝子の2社に減少する。世
界的にみても,炭化水素系イオン交換膜のメーカーは,他にアイオニ
クス社(米国)など数社しか存在しない。
また,新会社は生産の共同化を目的とするものであるが,炭化水素
系イオン交換膜の販売に関して当事会社間に結合ないし協調関係が生
じることとなれば,当事会社の合算した出荷価額シェアは55.5%(製
塩用炭化水素系イオン交換膜でみると出荷価額シェア約80%)と高く
なり,さらに,炭化水素系イオン交換膜の輸入はほとんどない。 |
イ |
考 慮 事 項 |
|
本件は,稼働率が低く,採算が悪い炭化水素系イオン交換膜製造設
備を一箇所に集約することにより合理化を図るための共同生産会社の
設立であって,新会社は,両出資者の委託を受けて,それぞれ両出資
者から譲り受けた製造設備を用いて炭化水素系イオン交換膜の製造を
行い,両出資者は,それぞれ独自に販売するものである。
また,炭化水素系イオン交換膜を使用する際には,製品の品質保証
の問題もあって透析装置のメーカーが供給している炭化水素系イオン
交換膜が用いられている(透析装置とこれに使用する炭化水素系イオ
ン交換膜とは同じメーカーが生産している。)ことから,取引関係が固
定化されているが,透析装置の販売については,新会社設立後も現在
と変わりなく競争が行われれば,炭化水素系イオン交換膜の販売分野
における競争に変化がないと考えられる。 |
ウ |
事前相談に対する判断 |
|
本件について,当委員会は,当事会社に対し,新会社の設立によっ
て,炭化水素系イオン交換膜の国内メーカーの数が3社から2社に減
少すること及び旭化成とトクヤマとの間で透析装置又は炭化水素系イ
オン交換膜の販売に関して結合ないし協調関係が生じることとなれ
ば,両当事会社の合算シェアが極めて高くなることから,炭化水素系
イオン交換膜の販売分野における競争を実質的に制限することとなる
おそれがある旨指摘した。 |
エ |
当事会社の対応 |
|
上記指摘に対し,当事会社から,旭化成とトクヤマとの間で透析装
置及び炭化水素系イオン交換膜の販売に関して結合ないし協調関係が
生じることのないよう,炭化水素系イオン交換膜の受委託数量・価格
についての情報を知り得る新会社の役職員については,新会社の運営
に必要な範囲を超えて当該情報を他方の当事会社に開示しない旨の秘
密保持契約を締結する等の措置を採る旨の申出があった。 |
|
(4) |
本件の処理 |
|
上記当事会社の措置案等を総合的に考慮すると,新会社設立によっ
て,直ちに一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる
とはいえないと判断した。
|
|
4 |
小野田セメント㈱と秩父セメント㈱との合併(平成6年7月合併届出受
理,10月合併) |
|
(1) |
概 要 |
|
本件は,セメントメーカーである小野田セメント株式会社(以下「小
野田セメント」という。)と秩父セメント株式会社(以下「秩父セメン
ト」という。)とが,セメント需要の低成長化に対応するため,企業体質
の強化と経営基盤の安定化等を目的として合併するものである。 |
(2) |
一定の取引分野 |
|
小野田セメントを含む大手メーカー5社は,全国的に事業展開してお
り,これらメーカーは独自に(2社),あるいは共同販売会社を通じて
(3社),全国にセメントを販売しており,本件合併により影響を受け
る地域は全国となる一方で,セメントは重量物であり,販売価格に占め
る輸送コストの比率が高く,輸送距離に限度があるため,一般的に,各
メーカーの物流体制や営業体制は北海道,東北,関東,東海,北陸,近
畿,中国,四国,九州及び沖縄の各ブロックを管轄地域とする支店を単
位として運営されていることから,本件においては全国及び各ブロック
におけるセメントの販売分野に「一定の取引分野」が成立すると判断し
た。
なお,セメントは,一般的に,ポルトランドセメント,混合セメン
ト,特殊セメントに大別されるが,普通ポルトランドセメントの用途の
範囲が非常に広いこと,ポルトランドセメントと混合セメントの用途・
製造方法の違いはわずかであること等から,ポルトランドセメント及び
混合セメント(以下「セメント」という。)で一つの商品分野が成立し,
特殊セメントは各種類ごとに商品分野が成立すると判断した。 |
(3) |
問題点及び考慮事項 |
|
ア |
問 題 点 |
|
本件合併により,合併新会社の全国におけるセメントの出荷数量
シェアが23.9%かつ第1位となる。
各ブロックにおける出荷数量シェアをみると,10ブロックのうち,
東北ブロック,関東ブロック及び東海ブロックにおいて合併新会社の
出荷数量シェアは25%以上となる(東北ブロック29.5%,関東ブロッ
ク33.3%,東海ブロック25.3%)。 |
イ |
考 慮 事 項 |
|
(ア) |
全国における競争の状況 |
|
合併新会社は,全国における出荷数量シェアが23.9%となるが,
10%台の出荷数量シェアを有する競争業者が複数存在している上,
長期的にみると上位企業の出荷数量シェアは低下傾向にある。
また,ユーザーの複数銘柄購買等の影響から,合併新会社の出荷
数量シェアは,当事会社の出荷数量シェアを合計したものを下回る
と見込まれる。
さらに,ユーザーが輸入品を扱うことに抵抗感が薄くなってきて
いるといわれており,韓国,台湾の供給力が強まってきていること
から,今後,輸入品との競争が期待できる。 |
(イ) |
各ブロックにおける競争の状況 |
|
合併新会社は 東北ブロック,関東ブロック及び東海ブロックに
おいて出荷数量はシェア25%以上となるが,このうち東北ブロック
には25%前後の出荷数量シェアを有する競争者,20%前後の出荷数
量シェアを有する競争者がそれぞれ1社存在しており,東海ブロッ
クにも20%前後の出荷数量シェアを有する競争者が1社,10%前後
の出荷数量シェアを有する競争者が複数存在している。また,関東
ブロックには,20%前後の出荷数量シェアを有する競争者が1社,
10%前後の出荷数量シェアを有する競争者が複数存在している。
さらに,東北プロック,関東ブロック及び東海ブロックでの当事
会社の合計出荷数量シェアは趨勢的に低下しており,特に出荷数量
シェアの高くなる関東地区においてその低下の程度が大きい。
また,近年における道路網の整備により長距離輸送による安定供
給が可能になり,臨海工場からタンカーによるコスト低下を図った
大量輸送が可能になっていることから,隣接市場からの進出や既進
出企業が供給量を拡大することができる状況にあるとみられる。 |
ウ |
事前相談に対する判断 |
|
本件について,当委員会は,当事会社に対し,本件合併により直ち
に全国におけるセメントの販売分野における競争を実質的に制限する
こととなるとはいえないが,東北ブロック,関東ブロック及び東海ブ
ロックについては,当該ブロックにおけるセメントの販売分野におけ
る競争を実質的に制限することとなるおそれがある旨指摘した。 |
エ |
当事会社の対応 |
|
上記指摘に対し,当事会社において,当該ブロックの出荷数量シェ
アの削減のため,①保管サイロ等の第三者への譲渡を含む削減,②工
事現場用サイロの第三者への譲渡を含む削減等の措置を採る旨の申出
があった。 |
|
|
(4) |
本件の処理 |
|
上記当事会社の措置案等を総合的に勘案すると,本件合併によって直
ちに一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとはい
えないと判断した。 |
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5 |
住友セメント㈱と大阪セメント㈱との合併(平成6年8月合併届出受
理,10月合併) |
|
(1) |
概 要 |
|
本件は,セメントメーカーである住友セメント株式会社(以下「住友
セメント」という。)と大阪セメント株式会社(以下「大阪セメント」と
いう。)が,それぞれ参加していた共同販売会社を解散した上,セメント
需要の減少に対応するため,長期的な経営基盤の安定化と物流コストの
低減等を目的として合併するものである。 |
(2) |
一定の取引分野 |
|
住友セメントを含む大手メーカー5社は,全国的に事業展開してお
り,これらメーカーは独自に(2社),あるいは共同販売会社を通じて
(3社),全国にセメントを販売しており,本件合併により影響を受け
る地域は全国となる一方で,セメントは重量物であり,販売価格に占め
る輸送コストの比率が高く,輸送距離に限度があるため,一般的に,各
メーカーの物流体制や営業体制は北海道,東北,関東,東海,北陸,近
畿,中国,四国,九州及び沖縄の各ブロックを管轄地域とする支店を単
位として運営されていることから,本件においては全国及び各ブロック
におけるセメントの販売分野に「一定の取引分野」が成立すると判断し
た。
なお,セメントは,一般的に,ポルトランドセメント,混合セメン
ト,特殊セメントに大別されるが,普通ポルトランドセメントの用途の
範囲が非常に広いこと,ポルトランドセメントと混合セメントの用途・
製造方法の違いはわずかであること等から,ポルトランドセメント及び
混合セメント(以下「セメント」という。)で一つの商品分野が成立し,
特殊セメントは各種類ごとに商品分野が成立すると判断した。 |
(3) |
問題点及び考慮事項 |
|
ア |
問 題 点 |
|
本件合併により,合併新会社の全国のセメントの出荷数量シェアが
18.0%かつ第2位となる。
各ブロックにおける出荷数量シェアをみると,10ブロックのうち,
東海ブロック及び近畿ブロックにおいて25%以上となり(東海ブロッ
ク29.9%,近畿ブロック30.2%),四国ブロックにおいて15%以上か
つ第1位となる(20.5%)。 |
イ |
考 慮 事 項 |
|
(ア) |
全国における競争の状況 |
|
合併新会社は,全国における出荷数量シェアが18.0%となるが,
小野田セメント株式会社と秩父セメント株式会社の合併による新会
社に次ぐ第2位であり,他に10%台の出荷数量シェアを有する競争
者が複数存在している上,長期的にみると上位企業の出荷数量シェ
アは低下傾向にある。 |
(イ) |
各ブロックにおける競争の状況 |
|
合併新会社は,東海ブロック及び近畿ブロックにおいて出荷数量
シェアが約30%となり,四国ブロックにおいて出荷数量シェアが
15%以上かつ第1位となるが,東海ブロックには小野田セメント株
式会社と秩父セメント株式会社の合併による新会社が25%台の出荷
数量シェアを有することとなる上に,10%台の出荷数量シェアを有
する競争者が3社存在し,近畿ブロックには10%台の出荷数量シェ
アを有する競争者が3社存在し,四国ブロックには僅差で第2位と
なる出荷数量シェアを有する競争者が存在している。
また,当事会社の合計出荷数量シェアは,東海ブロック及び四国
ブロックでは横ばい傾向にあるが,近畿ブロックでは低下傾向にあ
り,また,ユーザーの複数銘柄購買等の影響から,合併新会社の出
荷数量シェアは,当事会社の出荷数量シェアを合計したものを下回
ると見込まれる。
さらに,ユーザーが輸入品を扱うことに抵抗感が薄くなってきて
いるといわれており,韓国,台湾の供給力が強まってきていること
から,今後,輸入品との競争が期待でき,特に東海ブロックは輸入
品の流入が多い。
また,近年における道路網の整備により長距離輸送による安定供
給が可能になり,臨海工場からタンカーによるコスト低下を図った
大量輸送が可能になっていることから,隣接市場からの進出や既進
出企業が供給量を拡大することができる状況にあるとみられる。 |
|
ウ |
事前相談に対する判断 |
|
本件について,当委員会は,当事会社に対し,本件合併により直ち
に全国におけるセメントの販売分野における競争を実質的に制限する
こととなるとはいえないが,東海ブロック及び近畿ブロックについて
は,当該ブロックにおけるセメントの販売分野における競争を実質的
に制限することとなるおそれがある旨指摘した。 |
エ |
当事会社の対応 |
|
上記指摘に対し,当事会社において,当該ブロックの出荷数量シェ
アの削減のため,①保管サイロ等の第三者への譲渡を含む削減,②工
事現場用サイロの第三者への譲渡を含む削減の措置を採る旨の申出が
あった。 |
|
(4) |
本件の処理 |
|
上記当事会社の措置案等を総合的に勘案すると,本件合併によって直
ちに一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとはい
えないと判断した。 |
|
6 |
日本電信電話㈱及びNTT移動通信網㈱等によるPHSサービスの共同
事業会社の設立 |
|
(1) |
概 要 |
|
本件は,日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)及び携帯
電話サービス事業を行うNTT移動通信網株式会社,NTT北海道移動
通信網株式会社,NTT東北移動通信網株式会社等(以下,これらを総
称して「ドコモ」という。)が,共同出資により,全国を北海道,東
北,関東・信越,東海,北陸,関西,中国,四国及び九州・沖縄の9つ
のブロックに分けて,各ブロックに簡易型携帯電話(以下「PHS」と
いう。)サービス事業を行う会社(以下「新会社」という。)を設立する
というものである。 |
(2) |
一定の取引分野 |
|
PHSと携帯電話とは,基本料,通信料,端末価格に大きな差がある
が,高速移動中の使用可能性,利用地域の広狭を除くと基本的に機能は
同一である。
また,将来的にみると,①携帯電話の基本料・通話料については,現
在,基地局設置コストが下がる現象があり,これにより,PHSの料金
水準に近づく可能性があること,②携帯電話の端末価格については,現
在,価格低下の傾向が見られること,③PHSの利用可能地域について
は,当初は限定されているものの,その後エリアが拡大し携帯電話のエ
リアに接近していくと見込まれること等から、携帯電話とPHSの区別
は薄れるとみられている。
これらのことから,本件においては,携帯電話とPHSのサービス分
野(以下「携帯電話等サービス分野」という。)に「一定の取引分野」
が成立すると判断した。 |
(3) |
問題点及び考慮事項等 |
|
ア |
問 題 点 |
|
(ア) |
ドコモによる新会社の株式所有による影響 |
|
携帯電話サービス事業者は,各ブロックに2~4社ずつ存在する
が,ドコモは,各ブロックにおいてそれぞれ約5~7割のシェア
(契約台数ベース)を有している。PHSサービス事業者は携帯電
話サービス事業者と競争関係に立つが,PHSサービス事業の免許
はブロックごとに3以内しか与えられないことから,そのうちの1
社である新会社とドコモとの間に結合関係が生じれば,携帯電話等
サービス分野における競争単位が1社減ることとなる。 |
(イ) |
NTTによる新会社の株式所有による影響 |
|
NTTは現在のところ全国的通信網を有する唯一の事業者であ
り,特にその公衆網は,実質的にほとんどすべてのユーザーを対象
とし,極めて利便性の高いネットワークとなっている。このような
事情から,NTTの公衆網に接続することなくPHSサービス事業
を営むことは,著しく困難な状況にある。このため,NTTと新会
社の間に結合関係が生じ,新会社がNTTとの結合関係を利用する
こととなれば,新会社は,携帯電話等サービス分野において取引条
件等で他の新規参入業者よりも優位に立つこととなる。 |
|
イ |
考 慮 事 項 |
|
(ア) |
ドコモによる新会社の株式所有による影響について |
|
本件は,PHSサービス事業という新規の事業分野への進出のた
めに共同出資会社を設立するものであるが,他に有力な競争者が同
分野への参入を予定している。
また,ドコモの「範囲の経済性」を考慮する必要性があり,通信
事業においてNTTに対する有力な競争相手を育成するという観点
からは,.ドコモが携帯電話サービスに併せPHSサービスも提供す
ることが望ましい。 |
(イ) |
NTTによる新会社の株式所有による影響について |
|
NTTは,PHSサービス事業に必要な交換機及び専用線の供給
について,新会社を含むすべてのPHSサービス事業者に平等に供
給するとしている。
また,郵政省が公表した「簡易型携帯電話システム(PHS)の
事業化の在り方について」においても,公衆網事業者(NTTはこ
れに当たる。)は,PHSサービス事業者を公平に接続できるよう
にすべきことが挙げられている。 |
|
ウ |
事前相談に対する判断 |
|
本件について,当委員会は,当事会社に対し,新会社とNTT及び
ドコモとの間に結合関係が生じることとなれば,携帯電話等サービス
分野における競争に与える影響が大きく,携帯電話等サービス分野に
おける競争を実質的に制限することとなると懸念される旨の指摘を
行った。
また,NTTと新会社との直接の結合関係を解消しても現状ではN
TTが直接・間接にドコモの株式のほとんどを所有していることか
ら,ドコモを通じた間接の結合関係は残ることを考慮して,NTTと
PHSサービス事業者との取引の公正化を図る必要がある旨の指摘を
行った。 |
エ |
当事会社の対応 |
|
上記指摘に対し,当事会社から,
(ア) |
NTTは,株式所有によって新会社の経営方針等に影響を及ぼす
ことのない程度に株式所有比率を引き下げること, |
(イ) |
NTTは,PHSサービス事業者の事業展開を円滑にするため,
各PHSサービス事業者との接続及び取引については,公平かつ適
切な条件で行うこと, |
(ウ) |
新会社は,NTTの購買力を利用することのないようNTTとの
共同資材調達を行わず,また,NTTの販売力を不当に利用するよ
うな営業活動は行わないこと, |
等を内容とする措置を採る旨の申出があった。 |
|
(4) |
本件の処理 |
|
上記当事会社の措置案等を総合的に考慮すると,新会社設立によっ
て,直ちに一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる
とはいえないと判断した。 |
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7 |
北大阪花き地方卸売市場及び南大阪花き地方卸売市場の開設に伴う卸売
業者の統合 |
|
(鶴見市場関係2社:平成6年5月営業譲受け届出受理,7月営業譲受
け,泉大津市場関係1社:平成5年8月営業譲受け届出受理,10月営業譲
受け) |
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(1) |
概 要 |
|
本件は,花き卸売市場の整備と集荷力の強化を目的として,大阪府下
に所在する花き卸売業者21社(22市場)のうち16社(17市場)を新設会
社3社に統合し(16社のうち11社から新設会社3社が営業を譲り受け,
5社は仲卸業者に転換する。なお,他の5社は引き続き花き卸売業者と
して営業を続ける。),新設会社3社のうち2社(以下,一方を「A社」
といい,他方を「B社」という。)が第3セクター方式によって設立さ
れた株式会社大阪鶴見フラワーセンターの開設する北大阪花き地方卸売
市場(以下「鶴見市場」という。)に入場し (卸売業者2社制),うち1
社(以下「C社」という。)が第3セクター方式によって設立された株
式会社大阪泉大津市フラワーセンターの開設する南大阪花き地方卸売市
場(以下「泉大津市場」という。)に入場する(卸売業者1社制)もの
である。 |
(2) |
一定の取引分野 |
|
大阪府下における花き卸売市場は,それぞれの距離別の供給比率及び
参集する小売買参人(卸売市場におけるセリへの参加者)比率から判断
すると,おおむね,規模の大きい市場では半径20km程度,規模の小さい
市場では半径15km程度の地域をその主たる供給地域としている。
本件においては,統合される花き卸売業者の取引先である小売買参人
が鶴見市場に入場する卸売業者2社又は泉大津市場に入場する卸売業者
との取引を継続するとみて,鶴見市場又は泉大津市場から半径20km以内
の範囲における花きの卸売分野に「一定の取引分野」が成立すると判断
した。 |
(3) |
問題点及び考慮事頃 |
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ア |
問 題 点 |
|
(ア) |
鶴見市場関係 |
|
A社の花き取扱額シェア(卸売市場から半径20km以内の範囲に所
在する小売買参人に対する花きの卸売に係る取扱額でみたシェア)
が29.2%となり,B社の花きの取扱額シェアが22.7%となる。 |
(イ) |
泉大津市場関係 |
|
C社の花き取扱額シェアが39.1%となる。 |
|
イ |
考 慮 事 項 |
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(ア) |
鶴見市場関係 |
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鶴見市場では,A社及びB社が花き卸売業者として入場する複数
制が採用されており,これら卸売業者間で競争が行われることに加
えて,鶴見市場から直線距離で14km地点に大阪花き園芸地方卸売市
場(兵庫県生花株式会社)及び同27km地点に泉大津市場が存在し,
これらの花き卸売市場の花き卸売業者との間で競争が行われるが,
鶴見市場から半径20km以内の範囲において,前者が約22%,後者が
約17%の花きの取扱額シェアを有し,他に有力な競争者が存在す
る。 |
(イ) |
泉大津市場関係 |
|
泉大津市場では,C社が花き卸売業者として入場する単数制が採
用され,その花きの取扱額シェアは39.1%と高いが,泉大津市場か
ら直線距離で27km地点に鶴見市場及び同28km地点に大阪花き園芸地
方卸売市場が存在し,これらの花き卸売市場の花き卸売業者との間
で競争が行われるが,泉大津市場から半径20km以内の範囲におい
て,鶴見市場のA社及びB社がそれぞれ,約25%,約19%のシェア
を有するほか,大阪花き園芸地方卸売市場も約8%のシェアを有
し,他に有力な競争者が存在する。 |
(ウ) |
当事会社の措置等 |
|
本件統合に当たり,卸売市場の公共性に鑑み,各新会社にあって
は,小売買参人を不当に差別せず,また,小売買参人が他の花き卸
売業者と取引することを制限するなどの行為はしない旨,市場開設
者にあっては,各市場内に設置される運営協議会を活用するなどし
て,統合後の市場運営について公正かつ自由な競争が維持されるよ
う配慮するとともに,小売買参人の登録に当たっては,小売買参人
が希望する市場に登録することとし,2重,3重の登録やその変更
を妨げない旨等を申し出ている。 |
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|
(4) |
本件の処理 |
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上記の点を総合的に勘案すると,本件統合により直ちに一定の取引分
野における競争を実質的に制限することとなるとはいえないと判断し
た。
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8 |
生コンクリート製造業者による共同生産会社の設立(平成7年3月営業
譲受け届出受理,4月営業譲受け) |
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(1) |
本件の概要 |
|
本件は,北海道旭川市近郊の上川北部生コンクリート協同組合(以下
「上川北部協組」という。)の組合員である名寄生コンクリート株式会
社(名寄工場),有限会社名寄高圧コンクリート興業及び株式会社真鍋
コンクリート(以下「3社」という。)が,同協同組合の組合員である
山一生コンクリート株式会社(以下「山一生コン」という。)の出資も
得て,生コンクリート工場の集約化を目的として,共同出資により3社
の共同生産会社(以下「新会社」という。)を設立するというものであ
る。 |
(2) |
一定の取引分野 |
|
上川北部協組は生コンクリートの共同販売を行っており,その販売地
域は同協同組合の地区内に限られているため,本件においては,同協同
組合の地区における生コンクリートの販売分野に「一定の取引分野」が
成立すると判断した。 |
(3) |
問題点及び考慮事項等 |
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ア |
問 題 点 |
|
協同組合が行う共同販売等の共同経済事業は,一定の要件の下に独
占禁止法の適用が除外されているが,組合員の株式所有等については
適用除外とはなっていない。
また,共同販売事業が行われている場合,これに参加している組合
員間に販売面における競争は原則として存在しないが,生産面におけ
る競争は行われており,生産量の多寡が販売シェアの割当ての変更を
通じて販売面に影響する上,組合員は共同経済事業に参加しないこと
としたり,協同組合から脱退することもできることから,組合員は潜
在的な競争関係にあるところ,新会社設立によって上川北部協組の地
区における生コンクリート販売に関して,3社の間に結合ないし協調
関係が生じることとなれば,3社の合算した出荷数量シェアが28.6%
となる。
また,生コンクリート工場の集約とは関係のない山一生コンが新会
社に出資しており,新会社設立によって,山一生コンと3社との間に
結合ないし協調関係が生じる可能性もある。 |
イ |
考 慮 事 項 |
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上川北部協組の地区に隣接する旭川地区から,同協同組合の地区内
における生コンクリートよりも安価な生コンクリートが流入してお
り,同地区における生コンクリートの価格に対する牽制力となってい
る。
また,本件は3社の生コンクリート工場が老朽化したこともあっ
て,合理化のために生コンクリート工場の集約化を図るために行われ
るものであり,生コンクリートの製造コストの削減が図られれば競争
の促進に資すると考えられる。
さらに,3社は,上川北部協組による割決(共同販売事業を行う協
同組合が受注した物件を組合員に割り当てることをいう。)によって
受注した生コンクリートを新会社に製造委託し,同協同組合に独自に
販売委託するものである。 |
ウ |
事前相談に対する判断 |
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本件について,当委員会は,当事会社に対し,上川北部協組の地区
における生コンクリート販売に関して,当事会社の間に結合ないし協
調関係が生じることとなれば,同分野における競争を実質的に制限す
ることとなるおそれがある旨の指摘を行った。 |
エ |
当事会社の対応 |
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上記指摘に対し,当事会社から,3社は上川北部協組による割決に
よって受注した生コンクリートを同協同組合に独自に販売委託すると
ともに,山一生コンはその所有している新会社の株式を速やかに処分
する旨の申出があった。 |
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(4) |
本件の処理 |
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上記当事会社の措置案等を総合的に考慮すると,新会社設立によっ
て,直ちに一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる
とはいえないと判断した。
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